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科目別憲法民法刑法
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憲法特別会は,衆議院の解散又は衆議院議員の任期満了による総選挙後に召集される国会であり,その目的は,内閣総理大臣の指名であるから,内閣総理大臣の指名が終われば,直ちに会期は終了する。憲法この問題の模試受験生正解率 58.1%結果正解解説特別会とは,衆議院の解散後,総選挙が行われた後に召集される国会をいう。衆議院議員の任期満了による総選挙後に召集される国会は,特別会ではなく,臨時会である。また,特別会の主たる目的は,内閣総理大臣の指名(憲法67条1項前段)であるが,その審議事項について,特に制約はない。そのため,会期中であれば,内閣総理大臣の指名以外の事項について審議することは可能であって,内閣総理大臣の指名がされたからといって,直ちに特別会の会期が終了するわけではない。よって,本記述は誤りである。参考野中ほか(憲法Ⅱ)116頁。
渡辺ほか(憲法Ⅱ)253頁。
注釈日本国憲法(3)662頁。 -
民法多数当事者の債権及び債務に関して,数人の債権者がいる場合に,可分な債権の目的を当事者の意思表示によって不可分とすることができる。民法この問題の模試受験生正解率 38.7%結果正解解説不可分債権とは,一個の不可分な給付について多数の債権者がいる場合に,同一の不可分給付を目的とする債権が債権者の数だけ生じる債権関係をいう。平成29年民法改正前は,債権の目的が性質上不可分であるもののほか,意思表示により不可分とされるものも,不可分債権に含まれていた。しかし,連帯債権との区別が不明瞭であり,また,同改正によりあえて性質上可分な場合を不可分債権とする実益がなくなったため,意思表示による不可分債権は廃止し,同改正前の意思表示による不可分債権に相当するものは,連帯債権として扱うこととされた(民法428条・432条参照)。よって,本記述は誤りである。参考内田Ⅲ473頁,475頁。
潮見(プラクティス債総)596頁。
中田(債総)515~516頁。 -
刑法判例の立場に従って検討した場合,甲と乙は,裁判所に提出する目的で,市立病院の医師丙を教唆して内容虚偽の診断書を作成させる共謀をし,乙は,丙にこれを依頼したが,丙に断られたため,甲と相談することなく,当初と同一の目的で,医師でない丁を教唆して市立病院医師丙名義の診断書を作成させた。この場合,甲には,有印公文書偽造教唆罪の共同正犯が成立する。刑法この問題の模試受験生正解率 52.5%結果正解解説判例は,保釈の請求に使用するため,刑務所医師をして虚偽内容の診断書を作成せしめることを共謀した者のうちの一人が,他の共犯者に謀ることなく同一の目的のため他人をして刑務所医師名義の診断書を作成せしめたという事例において,本件の故意の内容は虚偽公文書作成罪(刑法156条)の教唆であり,結果は公文書偽造罪(同155条)の教唆であるところ,「この両者は犯罪の構成要件を異にするもその罪質を同じくするものであり且法定刑も同じである。而して右両者の動機目的は全く同一である」から,他の共謀者について,「法律上本件公文書偽造教唆につき故意を阻却しない」として有印公文書偽造教唆罪の共同正犯(同条1項,61条1項,60条)の成立を認めている(最判昭23.10.23 刑法百選I〔初版〕53事件)。したがって,本記述において,甲には,有印公文書偽造教唆罪の共同正犯が成立する。よって,本記述は正しい。参考大谷(講義総)465~466頁。
井田(総)556~557頁。
大塚ほか(基本刑法I)347頁。
条解刑法160頁。
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憲法法律で,「町村は,条例で,議会を置かず,選挙権を有する住民の総会を設けることができる。」と定めることは,違憲ではないと解されているが,これまでにこのような町村総会が設置された例はない。憲法この問題の模試受験生正解率 70.7%結果正解解説直接選挙で選ばれる議員によって構成される議決機関としての議会の設置は,憲法93条の要求するところである。そして, 地方自治法も「普通地方公共団体に議会を置く。」と規定する(同89条)。この規定にかかわらず,町村は,条例で,議会を置かず,選挙権を有する者の総会を設けることができる(同94条)。そして,このような町村総会も憲法上の「議会」に当たると解されている。地方自治法下において,町村総会を設置した例としては,東京都八丈支庁管内宇津木村がある。よって,本記述は誤りである。参考野中ほか(憲法Ⅱ)373頁。
渡辺ほか(憲法Ⅱ)426頁。
リーガルクエスト(憲法I)374頁。 -
民法Aが所有する甲土地とBが所有する乙土地が隣接している場合,判例の趣旨に照らすと,乙土地上に生えている樹木の枝が,境界線を越えて甲土地上に伸びてきたときは,Aは,Bの承諾なくその枝を切り取ることができる。民法この問題の模試受験生正解率 73.7%結果正解解説隣地の竹木の枝が境界線を越えるときは,その竹木の所有者に,その枝を切除させることができる(民法233条1項)。したがって,本記述において,Aは,Bの承諾なく自ら乙土地上の樹木の枝を切り取ることはできない。よって,本記述は誤りである。参考松井(物権)175頁。
新注釈民法(5)445頁。 -
刑法判例の立場に従って検討した場合,違法な業務も,業務妨害罪の客体になり得る。刑法この問題の模試受験生正解率 66.5%結果正解解説業務妨害罪における「業務」は,職業その他の社会生活上の地位に基づいて継続して従事する事務のことをいう(大判大10.10.24)。同罪は,事実上平穏に行われている人の社会的活動の自由を保護しようとするものであるから,その業務の適法性については,刑法的な保護に値するものであれば足り,違法なものでも同罪の業務に含まれると解されている(東京高判昭27.7.3,東京高判昭24.10.15等参照)。判例も,行政代執行の手続をとるべきであったが,相手方や目的物の特定等の点で困難があるので,そのような手続を踏まずに東京都の職員が路上生活者の段ボール小屋を撤去した事例において,「やむを得ない事情に基づくものであって,業務妨害罪としての要保護性を失わせるような法的瑕疵があったとは認められない」としている(最決平14.9.30 刑法百選Ⅱ〔第8版〕24事件)。よって,本記述は正しい。参考西田(各)138頁。
大塚ほか(基本刑法Ⅱ)110~111頁。
条解刑法715~716頁。
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憲法最高裁判所の判例の趣旨に照らすと,信仰上の理由から剣道実技の履修を拒否した高等専門学校の生徒に対して学校長が行った原級留置処分や退学処分が,当該生徒がそれら各処分による不利益を避けるために剣道実技の履修という自己の信仰上の教義に反する行動を採ることを余儀なくされるという性質を有する場合には,当該生徒の信教の自由を直接的に制約するものであるから,学校長はそれらの処分をするに当たり,当然そのことに相応の考慮を払う必要がある。憲法この問題の模試受験生正解率 57.8%結果正解解説判例は,公立の高等専門学校での剣道実技の履修を信仰上の理由から拒否したため,学校長(注:上告人)から原級留置処分及び退学処分を受けた生徒(注:被上告人)が,当該処分は信教の自由を侵害するものとしてその取消しを求めた事例において,「被上告人は,信仰上の理由による剣道実技の履修拒否の結果として,他の科目では成績優秀であったにもかかわらず,原級留置,退学という事態に追い込まれたものというべきであり,その不利益が極めて大きいことも明らかである。また,本件各処分(注:原級留置処分及び退学処分)は,その内容それ自体において被上告人に信仰上の教義に反する行動を命じたものではなく,その意味では,被上告人の信教の自由を直接的に制約するものとはいえないが,しかし,被上告人がそれらによる重大な不利益を避けるためには剣道実技の履修という自己の信仰上の教義に反する行動を採ることを余儀なくさせられるという性質を有するものであったことは明白である」ところ,「上告人の採った措置が,信仰の自由や宗教的行為に対する制約を特に目的とするものではなく,教育内容の設定及びその履修に関する評価方法についての一般的な定めに従ったものであるとしても,本件各処分が右のとおりの性質を有するものであった以上,上告人は,・・・・・・当然そのことに相応の考慮を払う必要があった」としている(最判平8.3.8 憲法百選I〔第7版〕41事件)。同判決によれば,信仰上の理由から剣道実技の履修を拒否した高等専門学校の生徒に対して学校長が行った原級留置処分及び退学処分は,生徒の信教の自由を直接的に制約するものではない。よって,本記述は誤りである。参考芦部(憲法)163~164頁。
渡辺ほか(憲法I)180~181頁。 -
民法判例の趣旨に照らした場合,Aは,Bとの間で,真実その所有する動産を売却する意思がないのに,Bにその動産を売却し,その代金をBがCに支払う旨の契約を締結したが,BがAの真意を知っていた場合,受益の意思表示をしたCがAの真意につき善意無過失であっても,Bは,Cに対して売買契約の無効を主張することができる。民法この問題の模試受験生正解率 31.3%結果正解解説諾約者は,第三者のためにする契約に基づく「抗弁」をもって,受益者に対抗することができる(民法539条)。この「抗弁」には,同時履行の抗弁権のほか,契約の無効,取消し,解除の効果を主張することも含まれる。また,無効又は取消しを主張する場合,第三者のためにする契約における受益者は善意の第三者(同93条2項,94条2項,95条4項,96条3項)として保護されることはない。本記述の場合,Aの売却の意思表示は,心裡留保(同93条1項本文)に当たるが,BがAの真意を知っているためAB間の売買契約は無効となる(同項ただし書)。そして,この場合,意思表示をした者の真意を知らない第三者は同条2項により保護されるが,受益者であるCについては,同項の適用はない。そのため,Bは,AB間の売買契約の無効をCに対して主張することができる。よって,本記述は正しい。参考新基本法コメ(債権2)41頁。
論点体系判例民法(6)92頁。 -
刑法判例の立場に従って検討した場合,甲は,乙の同意を得て,差押えを受けている乙所有の自動車に放火してこれを燃やしたが, 公共の危険が生じなかった。この場合,甲には,建造物等以外放火罪は成立しない。刑法この問題の模試受験生正解率 80.9%結果正解解説他人が所有する自動車を放火する場合は,刑法110条1項の成立が問題となるところ,その者の同意がある場合には,財産権侵害がなく,自己所有物との均衡を考えて,同条2項が適用される。しかし,その物が差押えを受けている場合には,同115条より同110条1項の成立が再び問題となる。もっとも,建造物等以外放火罪(同条)は,他人所有・自己所有いずれの場合も,「よって公共の危険を生じさせた」場合にのみ処罰される。本記述では,公共の危険が生じなかった以上,同罪は成立しない。よって,本記述は正しい。参考西田(各)329~330頁。
大塚ほか(基本刑法Ⅱ)371~372頁。
条解刑法367~369頁。
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憲法天皇の国事行為は,憲法によって限定列挙されているから,法律によって,新たに国事行為を創設することはできない。憲法この問題の模試受験生正解率 74.5%結果正解解説天皇の国事行為は,憲法6条,7条が列挙するもの「のみ」(同4条1項)に限定される。したがって,法律によって新たに国事行為を創設することはできない。よって,本記述は正しい。
なお,国事行為の具体的内容は,同6条,7条に列挙されているが,同4条2項の国事行為の委任も国事行為の一つに数えられることがある。参考野中ほか(憲法I)123頁。
渡辺ほか(憲法Ⅱ)90~91頁。
新井ほか(憲法I)66頁。 -
民法判例の趣旨に照らした場合,.Aに代理権を与えたBは,AがCとの間でしたその代理権の範囲内の行為が,Aの詐欺を理由としてCにより取り消された場合であっても,Aの詐欺について善意無過失であるときは,Cに対し,その行為の効果が自己に帰属することを主張することができる。民法この問題の模試受験生正解率 87.8%結果正解解説判例は,代理人の詐欺によって相手方が意思表示をした場合,民法101条1項の適用を認めている(大判明39.3.31,大判昭7.3.5)。すなわち,代理人の詐欺は本人の詐欺と同視され,相手方は,本人が代理人の詐欺を知っているか否かにかかわらず,本人に対して詐欺による意思表示の取消しを対抗することができる。したがって,本記述において,Bは,代理人であるAの詐欺について善意無過失であっても,Cに対し,その行為の効果が自己に帰属することを主張することはできない。よって,本記述は誤りである。
なお,学説は,代理人は,本人が契約締結のために用いた者であり,同96条2項の「第三者」に含まれないとして同項の適用を排除することで,同条1項の原則どおり詐欺による取消しを可能として,判例と同じ結論を導いている。参考平野(総則)293~294頁。
リーガルクエスト(総則)196~197頁。 -
刑法判例の立場に従って検討した場合,甲は,Aが所有する絵画を手に入れたいと思い,乙に対し,Aから絵画を盗んでくれは高値で買ってやると申し向け,乙がAから盗んできた絵画を買い受けた。甲には,窃盗教唆罪及び盗品等有償譲受け罪が成立し,これらは牽連犯となる。刑法この問題の模試受験生正解率 72.1%結果正解解説判例は,盗品等有償譲受け罪(刑法256条2項)と窃盗教唆罪(同61条1項,235条)とは,各別個独立の犯罪であるから,同一人が盗品を買い受ける目的をもって他人に対して窃盗を教唆し,その窃取してきた物を有償で譲り受けたときでも,窃盗教唆罪とは別に盗品等有償譲受け罪が成立するとしている(大判大5.6.15)。そして,この両罪の関係について,判例は,牽連犯(同54条1項後段)が成立するためには,「ある犯罪と他の犯罪との間に通常手段又は結果の関係があることが必要であって,被告人が主観的にある犯罪を他の犯罪の手段として行ったということだけでは足りない」とした上で,窃盗教唆と盗品有償譲受けとの間には通常手段又は結果の関係はないのであるから,被告人が盗品有償譲受けの手段として窃盗教唆を行ったものであっても,牽連犯に当たるものではなく,両者は併合罪の関係に立つとしている(最判昭25.11.10)。したがって,本記述において,甲には,窃盗教唆罪及び盗品等有償譲受け罪が成立し,これらは併合罪となる。よって,本記述は誤りである。参考西田(各)298頁。
大塚ほか(基本刑法Ⅱ)348頁。
大コメ(刑法・第3版)(13)751~752頁。
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憲法憲法第13条後段の保障する幸福追求権は,それ自体一つの権利としての性格を持つ個別的基本権を包括する基本権であるが,個別の権利条項が妥当しない場合に限り,補充的に同条後段が適用される。憲法この問題の模試受験生正解率 69.3%結果正解解説憲法13条後段は,幸福追求権について規定しており,かかる権利は,具体的権利性を有すると考えられている。そして,他の人権規定と同条後段との関係については,幸福追求権が個人の尊重にとって必要な権利を包括的に保障したものであることから,個別の権利条項と幸福追求権の保障とは,特別法と一般法の関係に立ち,前者の保障の及ばない範囲を同条後段がカバーするものとされている。よって,本記述は正しい。参考野中ほか(憲法I)271頁。
渋谷(憲法)179頁。
新・コンメ(憲法)151頁。 -
民法売買の目的物として買主に引き渡された物が品質に関して契約の内容に適合しない場合において,その不適合が売主の責めに帰することができない事由によるものであれば,買主は,売主に対して,代金の減額を請求することはできない。民法この問題の模試受験生正解率 58.5%結果正解解説売買の目的物の種類,品質,数量に関する契約不適合における代金減額請求権(民法563条)の要件として,契約不適合が売主の責めに帰すべき事由によるものであることは要求されない。したがって,同条の要件を備える限り,売主の帰責事由の有無にかかわらず,代金減額請求をすることができる。よって,本記述は誤りである。参考潮見(新契約各論I)146頁。
新基本法コメ(債権2)126頁。
新・コンメ民法(財産法)963頁。 -
刑法判例の立場に従って検討した場合,甲は,乙が運転する自動車との接触事故により,全治3日間の軽傷を負ったが,乙から多額の賠償金を得ようと考え,行使の目的で,真正な市立病院丙医師作成名義の診断書から切り取った丙医師の署名及び押なつ部分を,甲が当該事故により全治1か月の傷害を負った旨の虚偽の事実を記入した診断書と題する書面の下方に接続させた上で,複写機を使用してこれをコピーし,あたかも真正な丙医師作成の診断書の写しであるかのような外観を呈する文書を作成した。この場合,甲には,有印公文書偽造罪が成立する。刑法この問題の模試受験生正解率 45.0%結果正解解説判例は,真正な供託金受領証から切り取った供託官の記名印及び公印押なつ部分を,虚偽の供託事実を記入した供託所用紙の下方に接続させてこれを電子複写機で複写する方法により作成された写真コピーの文書性が争われた事例において,「公文書偽造罪の客体となる文書は,これを原本たる公文書そのものに限る根拠はなく,たとえ原本の写であっても,原本と同一の意識内容を保有し,証明文書としてこれと同様の社会的機能と信用性を有するものと認められる限り,これに含まれる」とした上で,写真コピーは,原本と同様の機能と信用性を有し得ない場合を除き,公文書偽造罪の客体たり得るとしている(最判昭51.4.30 刑法百選Ⅱ〔第8版〕88事件)。また,同判決は,「原本の作成名義を不正に使用し,原本と異なる意識内容を作出して写真コピーを作成するがごときことは,もとより原本作成名義人の許容するところではなく,また,そもそも公文書の原本のない場合に,公務所または公務員作成名義を一定の意識内容とともに写真コピーの上に現出させ,あたかもその作成名義人が作成した公文書の原本の写真コピーであるかのような文書を作成することについては,右写真コピーに作成名義人と表示された者の許諾のあり得ないことは当然であって,行使の目的をもってするこのような写真コピーの作成は,その意味において,公務所または公務員の作成名義を冒用して,本来公務所または公務員の作るべき公文書を偽造したものにあたる」とし,さらに,写真コピーが有印であるか無印であるかについて,「作成名義人の印章,署名の有無についても,写真コピーの上に印章,署名が複写されている以上,これを写真コピーの保有する意識内容の場合と別異に解する理由はないから,原本作成名義人の印章,署名のある文書として公文書偽造罪の客体たりうるものと認めるのが相当である」としている。したがって,本記述では,甲には,有印公文書偽造罪が成立する。よって,本記述は正しい。参考西田(各)378頁。
大塚ほか(基本刑法Ⅱ)412~413頁。
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憲法最高裁判所の判例の趣旨に照らすと,議員の当選の効力を定める手続において,選挙権のない者がした投票について,その投票が何人に対して行われたのかを取り調べることは,投票の秘密を侵害するものとはいえず,認められる。憲法この問題の模試受験生正解率 42.2%結果正解解説判例は,議員の当選の効力を決定する手続において,選挙権のない者の投票及び正当な選挙人でない者が選挙人の名で行ったいわゆる代理投票が何人に対して行われたのかを調べることが秘密選挙との関係で許されるかが争われた事例において,「選挙権のない者又はいわゆる代理投票をした者の投票についても,その投票が何人に対しなされたかは,議員の当選の効力を定める手続において,取り調べてはならない」としている(最判昭25.11.9 憲法百選Ⅱ〔第7版〕159事件)。よって,本記述は誤りである。
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民法判例の趣旨に照らした場合,AがBに300万円を貸すが,Aの気が向いたらBに請求し,請求を受けるとBは返済しなければならないという契約は無効である。民法この問題の模試受験生正解率 74.7%結果正解解説停止条件付法律行為は,その条件が単に債務者の意思のみに係るときは,無効とされる(民法134条)。同条は,債権者の意思のみに係る条件には適用はない。本記述の契約は,条件が債権者たるAの意思のみに係るので,同条の適用はなく,有効である。よって,本記述は誤りである。
なお,解除条件付法律行為においては,条件が債権者の意思のみに係る場合はもちろん,債務者の意思のみに係る場合も,当該法律行為は有効であると解されている。参考四宮・能見(総則)401~402頁。
リーガルクエスト(総則)267頁。 -
刑法判例の立場に従って検討した場合,わいせつの目的をもって未成年者を誘拐した場合,未成年者誘拐罪は成立せず,わいせつ目的誘拐罪のみが成立する。刑法この問題の模試受験生正解率 56.7%結果正解解説判例は,刑法225条所定の目的をもって未成年者を誘拐したときは,同条の罪のみが成立するとしている(大判明44.12.8)。よって,本記述は正しい。参考山口(各)94頁。
条解刑法208頁,680頁。
大コメ(刑法・第3版)⑾539頁。
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憲法最高裁判所の判例の趣旨に照らすと,喫煙の自由が憲法第13条の保障する基本的人権の一つに含まれるとしても,未決拘禁者は,刑事施設という営造物を利用する関係において,特別の法律上の原因に基づく,一般の統治関係とは異なる特別権力関係に属し,国家は未決拘禁者を包括的に支配することができるため,未決拘禁者について喫煙の自由を一般に認めないのはやむを得ない措置というべきである。憲法この問題の模試受験生正解率 55.5%結果正解解説判例は,刑事施設の被収容者の喫煙を禁止した旧監獄法施行規則の合憲性が争われた事例において,「未決勾留は,刑事訴訟法に基づき,逃走または罪証隠滅の防止を目的として,被疑者または被告人の居住を監獄内に限定するものであるところ,監獄内においては,多数の被拘禁者を収容し,これを集団として管理するにあたり,その秩序を維持し,正常な状態を保持するよう配慮する必要がある。このためには,被拘禁者の身体の自由を拘束するだけでなく,右の目的に照らし,必要な限度において,被拘禁者のその他の自由に対し,合理的制限を加えることもやむをえないところである」とした上で,未決拘禁者の喫煙の自由を認めることは,通謀とそれに伴う罪証隠滅のおそれ及び火災発生による被拘禁者の逃走のおそれを生じさせること,煙草が嗜好品にすぎず,喫煙の禁止が人体に直接障害を与えるものではないことからすれば,喫煙の自由は憲法13条の保障する基本的人権の一に含まれるとしても,あらゆる時,所において保障されなければならないものではないこと等を総合考察すると,「喫煙禁止という程度の自由の制限は,必要かつ合理的なものであると解するのが相当であり,(旧)監獄法施行規則96条中未決勾留により拘禁された者に対し喫煙を禁止する規定が憲法13条に違反するものといえない」としている(最大判昭45.9.16 憲法百選Ⅰ〔第7版〕A4事件)。したがって,同判決は,在監関係には特別権力関係が成立し,特別権力関係の下では,国家が未決拘禁者を包括的に支配することができるため,未決拘禁者の喫煙を禁止することも許されると判断しているわけではない。よって,本記述は誤りである。
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民法債務者の交替による更改は,債権者と更改後に債務者となる者との契約によってすることができるが,更改前の債務者が承諾をしなければその効力を生じない。民法この問題の模試受験生正解率 35.0%結果正解解説債務者の交替による更改は,債権者と更改後に債務者となる者との契約によってすることができ,この場合において,更改は,債権者が更改前の債務者に対してその契約をした旨を通知した時に,その効力を生ずる(民法514条1項)。したがって,債権者と更改後に債務者となる者は,更改前の債務者の意思に反しても,債務者の交替による更改をすることができるのであって,その承諾は要しない。よって,本記述は誤りである。参考内田Ⅲ119~120頁。
潮見(新債権総論Ⅱ)334~335頁。
中田(債総)493頁。 -
刑法判例の立場に従って検討した場合,秘密漏示罪の「秘密」にいわゆる公知の事実は含まれない。刑法この問題の模試受験生正解率 90.3%結果正解解説秘密漏示罪(刑法134条)における「秘密」は,少数者にしか知られていない事実で,他人に知られることが本人の不利益となるものである。いわゆる公知の事実は秘密たり得ない。よって,本記述は正しい。参考西田(各)119頁。
大塚ほか(基本刑法Ⅱ)97頁。
条解刑法417頁。
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憲法判例によれば,憲法第81条の規定は,最高裁判所が違憲審査権を有する終審裁判所であることを明らかにした規定であって,下級裁判所が違憲審査権を有することを否定する趣旨ではなく,下級裁判所も違憲審査権を行使し得る。憲法この問題の模試受験生正解率 91.4%結果正解解説判例は,「憲法は国の最高法規であってその条規に反する法律命令等はその効力を有せず,裁判官は憲法及び法律に拘束せられ,また憲法を尊重し擁護する義務を負うことは憲法の明定するところである」から,「裁判官が,具体的訴訟事件に法令を適用して裁判するに当り,その法令が憲法に適合するか否かを判断することは,憲法によって裁判官に課せられた職務と職権であって,このことは最高裁判所の裁判官であると下級裁判所の裁判官であることを問わない。憲法81条は,最高裁判所が違憲審査権を有する終審裁判所であることを明らかにした規定であって,下級裁判所が違憲審査権を有することを否定する趣旨をもっているものではない」としている(最大判昭25.2.1 憲法百選Ⅱ〔第4版〕200事件)。よって,本記述は正しい。参考芦部(憲法)396頁。
佐藤幸(日本国憲法論)675頁。
野中ほか(憲法Ⅱ)277頁。 -
民法判例の趣旨に照らした場合,Aの所有する甲土地にAのBに対する債務を担保するために抵当権が設定され,その旨の登記がされていたが,Cの申請によりその登記が不法に抹消された場合であっても,抵当権の対抗力は失われない。民法この問題の模試受験生正解率 50.0%結果正解解説判例は,有効になされた抵当権設定登記が第三者の申請によって不法に抹消された事例において,「登記は物権の対抗力発生の要件であって,この対抗力は法律上消滅事由の発生しないかぎり消滅するものではないと解すべきである」から,「抵当権設定登記が抵当権者不知の間に不法に抹消された場合には,抵当権者は対抗力を喪失するものでない」としている(最判昭36.6.16)。よって,本記述は正しい。参考佐久間(物権)122頁。
リーガルクエスト(物権)85頁。
論点体系判例民法(2)60~61頁。 -
刑法判例の立場に従って検討した場合,甲は,客を集めて有料でわいせつな映画を観覧させて利益を得る目的で,自宅付近の人通りの多い路上で,通行人に声を掛け,これに応じた5名の客に対し,外部との交通を厳重に遮断した自宅の一室においてわいせつな映画を観覧させて利益を得た。この場合,甲には,わいせつ物公然陳列罪は成立しない。刑法この問題の模試受験生正解率 54.7%結果正解解説わいせつ物公然陳列罪(刑法175条1項前段)の「公然と」とは,不特定又は多数の者が認識することができる状態をいう。判例は,わいせつな映画を上映した部屋が,外部との交通が遮断されていて,観客も5名程度に限られていても,その5名が不特定多数人を勧誘して集められた者であれば,結果としてわいせつな映画を不特定の者に観覧可能な状態にしたといえるとした原審の判断を是認している(最決昭33.9.5)。したがって,甲には,わいせつ物公然陳列罪が成立する。よって,本記述は誤りである。参考山口(各)512頁。
大塚ほか(基本刑法Ⅱ)455頁。
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憲法判例によれば,憲法第32条は,国民が憲法又は法律によって定められた裁判所以外の機関によって裁判をされることはないことを保障するのみならず,訴訟法で定める管轄権を有する具体的裁判所において裁判を受ける権利についても保障するものである。憲法この問題の模試受験生正解率 50.5%結果正解解説判例は,管轄違いの裁判所によって言い渡された判決が原審によって是認されたため,被告人等が憲法32条の保障する正当な裁判所で裁判を受ける権利を侵害されたと主張した事例において,「憲法第32条は,何人も裁判所において裁判を受ける権利を奪はれないと規定しているが,同条の趣旨は凡て国民は憲法又は法律に定められた裁判所においてのみ裁判を受ける権利を有し,裁判所以外の機関によって裁判をされることはないことを保障したものであって,訴訟法で定める管轄権を有する具体的裁判所において裁判を受ける権利を保障したものではない」としている(最大判昭24.3.23 憲法百選Ⅱ〔第4版〕131事件)。よって,本記述は誤りである。参考野中ほか(憲法Ⅰ)550頁。
新基本法コメ(憲法)262頁。 -
民法判例の趣旨に照らした場合,法人は,受遺者となることができる。民法この問題の模試受験生正解率 84.2%結果正解解説夫婦,親子,兄弟姉妹といった身分を前提とする相続については,法人に認めることはできないが,法人が遺贈を受けることは可能であると解されている。よって,本記述は正しい。参考平野(総則)79頁。
新注釈民法(1)729頁。 -
刑法判例の立場に従って検討した場合,甲は,自己が所有する不動産について,Aを権利者とする抵当権を設定したが,その抵当権設定登記が完了する前に,同不動産について,Bを権利者とする抵当権を設定し,その抵当権設定登記を完了した。この場合,甲には,横領罪が成立する。刑法この問題の模試受験生正解率 35.2%結果正解解説横領罪(刑法252条1項)は,「自己の占有する他人の物」を客体として,それを「横領した」場合に成立する。本記述において,甲は,当該不動産の所有者であって,他人の物の占有者ではないから,同罪が成立することはない。したがって,甲には,横領罪は成立しない。よって,本記述は誤りである。
なお,判例は,本記述と同様の事例において,本来2番抵当権者となるべき者に1番抵当権を設定してその登記をした行為は,本来1番抵当権者となるべき者に対する背任罪(同247条)を構成するとしている(最判昭31.12.7 刑法百選Ⅱ〔第8版〕70事件)。参考西田(各)219頁,256頁。
大塚ほか(基本刑法Ⅱ)280頁,324頁。
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憲法判例によれば,公職選挙における立候補の自由は,憲法第15条第1項の保障する重要な基本的人権の一つであるから,労働組合が,公職選挙における統一候補を決定し,組合を挙げて,その選挙運動を推進している場合であっても,組合の方針に反して立候補をしようとしている組合員に対し,立候補を思いとどまるよう,勧告又は説得することは許されない。憲法この問題の模試受験生正解率 58.1%結果正解解説判例は,労働組合が市議会議員選挙に向けて統一候補を決定したところ,その決定に反して当該選挙に立候補した組合員を,当該労働組合の執行部役員が統制違反者として権利停止処分にしたことなどが公職選挙法違反に当たるとして起訴された事例において,「憲法28条による労働者の団結権保障の効果として,労働組合は,その目的を達成するために必要であり,かつ,合理的な範囲内において,その組合員に対する統制権を有」するが,この「労働組合が行使し得べき組合員に対する統制権には,当然,一定の限界が存するものといわなければならない。殊に,公職選挙における立候補の自由は,憲法15条1項の趣旨に照らし,基本的人権の一つとして,憲法の保障する重要な権利であるから,これに対する制約は,特に慎重でなければならず,組合の団結を維持するための統制権の行使に基づく制約であっても,その必要性と立候補の自由の重要性とを比較衡量して,その許否を決すべきであ」るとした上で,「統一候補以外の組合員で立候補しようとする者に対し,組合が所期の目的を達成するために,立候補を思いとどまるよう,勧告または説得をすることは,組合としても,当然なし得るところである。しかし,当該組合員に対し,勧告または説得の域を超え,立候補を取りやめることを要求し,これに従わないことを理由に当該組合員を統制違反者として処分するがごときは,組合の統制権の限界を超えるものとして,違法といわなければならない」としている(最大判昭43.12.4 三井美唄労組事件 憲法百選Ⅱ〔第7版〕144事件)。したがって,労働組合は,組合の方針に反して立候補をしようとしている組合員に対し,立候補を思いとどまるよう,勧告又は説得することは許される。よって,本記述は誤りである。
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民法判例の趣旨に照らした場合,下請会社の労働者が,元請会社の作業現場で事故に遭った場合,元請会社と下請会社の労働者との間には直接の契約関係がない以上,元請会社が当該事故について,債務不履行責任を負うことはない。民法この問題の模試受験生正解率 60.8%結果正解解説元請会社の労働者が,事故に遭った場合,元請会社が安全配慮義務違反による債務不履行責任を負う。これに対して,下請会社の労働者が,元請会社の作業現場で事故に遭った場合には,元請会社と下請会社の労働者との間には契約関係がないため,契約の効果として給付義務たる安全配慮義務が導かれるのであれば,債務不履行責任は認められないことになる。しかし,判例は,下請企業に雇用された社外工として元請企業の経営する造船所において勤務してきた者に対する元請企業の安全配慮義務の有無が争われた事例において,下請企業の労働者が元請企業の造船所で労務の提供をするに当たっては,元請企業の管理する設備,工具等を用い,事実上元請企業の指揮,監督を受けて稼働し,その作業内容も元請企業の従業員であるいわゆる本工とほとんど同じであったというのであり,このような事実関係の下においては,元請企業は,「下請企業の労働者との間に特別な社会的接触の関係に入ったもので,信義則上,右労働者に対し安全配慮義務を負う」としている(最判平3.4.11 民法百選Ⅱ〔第4版〕4事件)。したがって,元請会社と下請会社の労働者との間には直接の契約関係がない場合であっても,元請会社が事故について,債務不履行責任を負うことがある。よって,本記述は誤りである。参考内田Ⅲ152頁。
中田(債総)138~139頁。
平野(債総)105頁。 -
刑法判例の立場に従って検討した場合,甲は,Vを眠らせてVの財布から現金を抜き取るつもりで,コーヒ-の入ったコップに一時的に意識喪失を生じさせるのに十分な量の睡眠薬を入れて,Vに飲むようすすめたが,Vは,これを飲まなかった。この場合,甲には昏酔強盗罪の実行の着手が認められる。刑法この問題の模試受験生正解率 64.6%結果正解解説昏酔強盗罪(刑法239条)における「昏酔させる」とは,一時的又は継続的に相手方に意識喪失その他意識又は運動機能の障害を生じさせて,財物に対する有効な支配を及ぼし得ない状態に陥らせることをいう。そして,財物を盗取する目的で相手方を昏酔させる行為を開始した時点で実行の着手が認められる。本記述では,甲は,Vを眠らせてVの財布から現金を抜き取るつもりで,コーヒ-の入ったコップに一時的に意識喪失を生じさせるのに十分な量の睡眠薬を入れて,Vに飲むようすすめており,その時点で昏酔強盗罪の実行の着手が認められる。よって,本記述は正しい。参考条解刑法768~769頁。
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憲法大日本帝国憲法には,平等原則に関する一般的な定めはなく,ただ公務就任資格に関する平等の規定が置かれているにすぎなかった。憲法この問題の模試受験生正解率 32.9%結果正解解説大日本帝国憲法は,平等原則に関する一般的な規定は置かず,公務就任資格に関する個別の規定しか置いていなかった(同19条)。他方,日本国憲法では,同14条1項により,平等原則に関する一般的な規定を置いている。よって,本記述は正しい。参考芦部(憲法)130~131頁。
野中ほか(憲法Ⅰ)281頁。 -
民法判例の趣旨に照らした場合,賭博によって生じた債務の履行のために振り出された小切手の支払に関する和解は,無効である。民法この問題の模試受験生正解率 86.3%結果正解解説判例は,賭博によって生じた債務の履行のために交付された小切手の支払について和解がされた事例において,賭博に勝った者が賭博に負けた者に対して小切手金の支払を求めることは,公序良俗に違反するものとして許されないというべきであり,その支払についてされた和解上の金銭支払の約束も,実質上,その金額の限度で賭博に勝った者をして賭博による金銭給付を得させることを目的とするものであることが明らかであるから,同じく,公序良俗に違反するものとして,無効とされなければならないとしている(最判昭46.4.9 手形小切手百選〔第7版〕88事件)。よって,本記述は正しい。参考潮見(新契約各論Ⅱ)478頁。
中田(契約)601頁。 -
刑法判例の立場に従って検討した場合,他人の事務処理の用に供する権利義務に関する電磁的記録を不正に作った場合,目的のいかんにかかわらず,電磁的記録不正作出罪が成立する。刑法この問題の模試受験生正解率 69.1%結果正解解説人の事務処理を誤らせる目的で,その事務処理の用に供する権利,義務又は事実証明に関する電磁的記録を不正に作った場合,電磁的記録不正作出罪(刑法161条の2第1項)が成立する。したがって,上記の目的がない場合には同罪は成立しない。よって,本記述は誤りである。参考西田(各)404頁。
大塚ほか(基本刑法Ⅱ)411頁。
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憲法内閣は,行政権の行使について国会に対して連帯して責任を負うが,この連帯責任は,個々の国務大臣の責任を否定するものではないから,衆議院において,国務大臣に対する不信任決議が可決された場合には,当該国務大臣は辞職すべき法的義務を負う。憲法この問題の模試受験生正解率 70.2%結果正解解説内閣は行政権の行使について国会に対し連帯して責任を負う(憲法66条3項)。内閣が内閣総理大臣の下に一体となって政治を行う原則から,内閣が負う責任も一体として負うこととされているが,国務大臣の単独責任を否定する趣旨ではないとされている。そのため,個々の国務大臣が,その所管事項に関して違法又は不当な行為をした場合などに,国会が当該国務大臣の責任を問うことは,憲法上否定されない。もっとも,国務大臣に対する衆議院の不信任決議については憲法に規定がないため,衆議院において当該国務大臣に対する不信任決議が可決されたとしても,法的効果は生じない。したがって,衆議院において不信任決議が可決されても,当該国務大臣は辞職すべき法的義務を負わない。よって,本記述は誤りである。参考芦部(憲法)339~340頁。
佐藤幸(日本国憲法論)549~550頁。
渡辺ほか(憲法Ⅱ)280頁。 -
民法判例の趣旨に照らした場合,養子が尊属又は年長者であることを理由とする養子縁組の取消しは,縁組の当事者又はその親族から,いつでも家庭裁判所に請求することができる。民法この問題の模試受験生正解率 43.9%結果正解解説養子が尊属又は年長者であることを理由とする養子縁組の取消しについては,取消権の行使期間に制限がないと解されている(民法805条参照,大連判大12.7.7 家族法百選〔初版〕50事件)。これは,同条による取消しが公益的見地から規定されているためである。よって,本記述は正しい。参考新基本法コメ(親族)181頁。
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刑法判例の立場に従って検討した場合,緊急避難は,避難行為により避けようとした害が避難行為から生じた害の程度を超える場合に限り成立し,前者と後者が同等の場合には成立し得ない。刑法この問題の模試受験生正解率 63.3%結果正解解説緊急避難の要件である「生じた害が避けようとした害の程度を超えなかった場合」(刑法37条1項本文)とは,避難行為により避けようとした害,すなわち保全法益が,避難行為から生じた害,すなわち侵害法益と同等か,又は侵害法益よりも大きい場合をいう。緊急避難の本質が,自己に降り掛かった危難を避けるため,その危難の発生とは無関係の他人の犠牲の下に避難行為を行う点にあるためである。したがって,保全法益と侵害法益とが同等の場合にも緊急避難は成立する。よって,本記述は誤りである。参考西田(総)155~156頁。
大塚ほか(基本刑法Ⅰ)211頁。
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憲法付随的違憲審査制は,伝統的な司法の観念に立脚するものであり,個人の権利保護を第一の目的とする私権保障型の憲法保障制度であるから,事件・争訟として適切に裁判所に提起されている場合,その当事者は,特定の第三者の憲法上の権利を主張することは一切許されない。憲法この問題の模試受験生正解率 91.4%結果正解解説付随的違憲審査制は,伝統的な司法の観念に立脚するものであり,個人の権利保護を第一の目的とする(私権保障型の憲法保障制度)。そのため,事件・争訟の当事者が特定の第三者の憲法上の権利を主張することは,原則として許されない。もっとも,違憲の主張をする者の利益の程度,援用される憲法上の権利の性格,違憲の主張をする者と第三者の関係,第三者が別の訴訟で自己の権利侵害につき違憲の主張をすることの可能性等の要素を考慮した上で,その主張を当事者にさせることが適切な状況があり,またそのことが第三者に実質的な不利益を与えない限り,その主張を認めてもよいとする等,これを認める見解が一般的である。判例も,憲法81条はこの付随的違憲審査制を規定するものであり(最大判昭27.10.8 警察予備隊違憲訴訟 憲法百選Ⅱ〔第7版〕187事件),当初,「他人の権利に容喙干渉」(最大判昭35.10.19)することは許されないとして,事件・争訟の当事者が特定の第三者の憲法上の権利を主張することを認めなかったが,その後,これを認めている(最大判昭37.11.28 第三者所有物没収事件 憲法百選Ⅱ〔第7版〕107事件)。したがって,付随的違憲審査制から直ちに,事件・争訟の当事者が,特定の第三者の憲法上の権利を主張することが一切許されないということにはならない。よって,本記述は誤りである。参考芦部(憲法)392~393頁。
佐藤幸(日本国憲法論)682~684頁。
野中ほか(憲法Ⅱ)298~301頁。
リーガルクエスト(憲法Ⅰ)322~326頁。 -
民法判例の趣旨に照らした場合,建物が滅失した後,その跡地に同様の建物が新築された場合において,旧建物の既存の登記について表示の変更登記をすることにより,登記記録の表題部が新築建物の構造・坪数と合致するように変更されたときは,旧建物の既存の登記は,新建物の登記として有効となる。民法この問題の模試受験生正解率 50.0%結果正解解説判例は,「建物が滅失した後,その跡地に同様の建物が新築された場合には,旧建物の登記簿は滅失登記により閉鎖され,新建物についてその所有者から新たな所有権保存登記がなさるべきものであって,旧建物の既存の登記を新建物の右保存登記に流用することは許されず,かかる流用された登記は,新建物の登記としては無効」であり,流用時に本記述のように変更がなされても,登記としての効力は認められないとしている(最判昭40.5.4 民法百選Ⅰ〔第4版〕84事件)。その理由として,同判決は,「旧建物が滅失した以上,その後の登記は真実に符合しないだけでなく,新建物についてその後新たな保存登記がなされて,1個の不動産に二重の登記が存在するに至るとか,その他登記簿上の権利関係の錯雑・不明確をきたす等不動産登記の公示性をみだすおそれがあり,制度の本質に反する」ことを挙げている。よって,本記述は誤りである。参考佐久間(物権)124頁。
松井(物権)121頁。
リーガルクエスト(物権)86頁。 -
刑法判例の立場に従って検討した場合,甲は,Aからパソコンを借りて保管していたが,同パソコンを売却してその代金を自己の借金の返済に充てるつもりで,無断で,同パソコンの買取りをBに持ち掛けたが,Bはいまだ買受けの意思表示をしていなかった。この場合,甲には,横領罪は成立する。
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憲法判例によれば,条例中に罰則を設けるには法律の授権が必要であるが,条例は,行政府の命令と異なり,地方公共団体の議会によって制定される民主的立法であり実質的に法律に準ずるもので,条例への罰則の委任は一般的・包括的委任で足りる。憲法この問題の模試受験生正解率 56.3%結果正解解説判例は,罰則を定める条例によって処罰された者が,当該条例は憲法31条に違反するとして争った事例において,「条例は,法律以下の法令といっても,……公選の議員をもって組織する地方公共団体の議会の議決を経て制定される自治立法であって,行政府の制定する命令等とは性質を異にし,むしろ国民の公選した議員をもって組織する国会の議決を経て制定される法律に類するものであるから,条例によって刑罰を定める場合には,法律の授権が相当な程度に具体的であり,限定されておればたりると解するのが正当である」としている(最大判昭37.5.30 憲法百選Ⅱ〔第7版〕208事件)。したがって,条例への罰則の委任は,一般的・包括的なものでは足りない。よって,本記述は誤りである。
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民法債権者の交替による更改は,更改前の債権者,更改後に債権者となる者との二者間の契約によってすることができる。民法この問題の模試受験生正解率 35.0%結果正解解説債権者の交替による更改は,債権の譲渡人と譲受人間の契約によってする債権譲渡と異なり,更改前の債権者,更改後に債権者となる者及び債務者の三面契約によってする(民法515条1項)。いずれの者の意思をも無視することができないことによる。よって,本記述は誤りである。参考内田Ⅲ120頁。
潮見(新債権総論Ⅱ)335頁。
中田(債総)493頁。
新・コンメ民法(財産法)869頁。 -
刑法判例の立場に従って検討した場合,甲は,A社の炭坑内にある同社所有の工業用掘削機械を自己の所有物であるとしてリサイクル業者Bに売却し,Bから転売を受けた情を知らない乙をして同機械を炭坑から搬出させた。この場合,甲には,窃盗罪の間接正犯が成立する。
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憲法判例によれば,憲法第29条の規定に照らせば,法律で一旦定められた財産権の内容を事後の法律で変更し,特段の補償を行わないものとしても,それが公共の福祉に適合するようにされたものである限り,これをもって違憲ということはできない。憲法この問題の模試受験生正解率 69.6%結果正解解説判例は,国有農地等の売払に関する特別措置法によって,その制定前に農地の売払の申込みをしていた旧所有者に対する売却の価格を買収対価相当額から時価の7割に変更したことが,憲法29条に反しないかが争われた事例において,「法律でいったん定められた財産権の内容を事後の法律で変更しても,それが公共の福祉に適合するようにされたものである限り,これをもって違憲の立法ということができないことは明らかである。そして,右の変更が公共の福祉に適合するようにされたものであるかどうかは,いったん定められた法律に基づく財産権の性質,その内容を変更する程度,及びこれを変更することによって保護される公益の性質などを総合的に勘案し,その変更が当該財産権に対する合理的な制約として容認されるべきものであるかどうかによって,判断すべきである」としている(最大判昭53.7.12 憲法百選Ⅰ〔第7版〕99事件)。よって,本記述は正しい。
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民法甲土地を所有していたAが死亡し,Aには法定相続人として妻B,子C及びDがいるが,いまだ遺産分割はされていない。この場合に関して判例の趣旨に照らした場合,Aが遺産分割の方法の指定として甲土地をDに相続させる旨の遺言をしていた場合において,DがAの死亡以前に死亡したときであっても,AがそのときにはDの代襲者Eに甲土地を相続させる旨の意思を有していたとみるべき特段の事情があると認められるときには,その遺言は効力を生じる。民法この問題の模試受験生正解率 52.1%結果正解解説判例は,「遺産を特定の推定相続人に単独で相続させる旨の遺産分割の方法を指定し,当該遺産が遺言者の死亡の時に直ちに相続により当該推定相続人に承継される効力を有する「相続させる」旨の遺言」は,「当該遺言により遺産を相続させるものとされた推定相続人が遺言者の死亡以前に死亡した場合には,当該「相続させる」旨の遺言に係る条項と遺言書の他の記載との関係,遺言書作成当時の事情及び遺言者の置かれていた状況などから,遺言者が,上記の場合には,当該推定相続人の代襲者その他の者に遺産を相続させる旨の意思を有していたとみるべき特段の事情のない限り,その効力を生ずることはない」としている(最判平23.2.22 平23重判民法14事件)。したがって,本記述においては,DがAの死亡以前に死亡したときにはDの代襲者Eに相続させる旨の意思をAが有していたと認められるから,その遺言は効力を生じる。よって,本記述は正しい。参考窪田(家族法)469頁。
潮見(詳解相続法)478~479頁。
リーガルクエスト(親族・相続)407~408頁。 -
刑法判例の立場に従って検討した場合,裁判所より,医師としての知識,経験に基づく診断を含む医学的判断を内容とする鑑定を命じられた医師が,その過程で知り得た人の秘密を漏示しても,その秘密は,医師の業務上知った秘密ではなく,鑑定人の業務上知った秘密であるから,秘密漏示罪は成立しない。刑法この問題の模試受験生正解率 90.3%結果正解解説判例は,「医師が,医師としての知識,経験に基づく,診断を含む医学的判断を内容とする鑑定を命じられた場合には,その鑑定の実施は,医師がその業務として行うものといえるから,医師が当該鑑定を行う過程で知り得た人の秘密を正当な理由なく漏らす行為は,医師がその業務上取り扱ったことについて知り得た人の秘密を漏示するものとして刑法134条1項の秘密漏示罪に該当すると解するのが相当である」としている(最決平24.2.13 平24重判刑法6事件)。よって,本記述は誤りである。参考西田(各)118~119頁。
大塚ほか(基本刑法Ⅱ)96~97頁。
条解刑法418頁。
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憲法判例によれば,憲法第14条第1項後段所定の事由に基づいて差別が行われるときには,合憲性の推定は排除され,裁判所は厳格な基準によってその差別が合理的であるかどうかを審理すべきである。憲法この問題の模試受験生正解率 32.9%結果正解解説判例は,憲法14条1項後段列挙事由(人種,信条,性別,社会的身分又は門地)は例示的なものと解しており,当該事由に本記述のような特段の効果を認めていない(最大判昭25.10.11,最大判昭39.5.27等)。よって,本記述は誤りである。
なお,本記述は,最大判昭60.3.27(サラリーマン税金訴訟 憲法百選Ⅰ〔第7版〕31事件)の伊藤正己裁判官の補足意見である。参考芦部(憲法)135頁。
佐藤幸(日本国憲法論)225~226頁。
野中ほか(憲法Ⅰ)286~287頁。
渋谷(憲法)202~203頁。 -
民法判例の趣旨に照らした場合,A及びBは,Aを養親,Bを養子とする養子縁組の届出をしたが,Aは養子縁組を他の目的のために利用する意思であって,真にBと養親子関係の設定を欲する意思を有していなかった場合,BがAの真意を過失なく知らなかったとしても,AB間の養子縁組は無効である。民法この問題の模試受験生正解率 65.4%結果正解解説「当事者間に縁組をする意思がないとき」は,養子縁組は無効である(民法802条1号)。判例は,同号の「当事者間に縁組をする意思がないとき」とは,当事者間に真に養親子関係の設定を欲する効果意思を有しない場合を指すものであるから,たとえ養子縁組の届出自体については当事者間に意思の一致があったとしても,それが単に他の目的を達するための便法として仮託されたにすぎず,真に養親子関係の設定を欲する効果意思がなかった場合においては,養子縁組は効力を生じないとした上で,この無効は絶対的なものであって,同93条1項ただし書の適用を待って初めて無効となるものではないとしている(最判昭23.12.23 家族法百選〔第2版〕59事件)。よって,本記述は正しい。参考四宮・能見(民法総則)229頁。
論点体系判例民法⑴235頁。 -
刑法判例の立場に従って検討した場合,甲は,警察官乙から現行犯逮捕の現場で覚せい剤入りの注射器を差し押さえられた際,乙の面前で同注射器を足で踏み付けて壊した。この場合,甲には,公務執行妨害罪は成立しない。刑法この問題の模試受験生正解率 75.0%結果正解解説公務執行妨害罪(刑法95条1項)における「暴行」とは,不法な有形力の行使をいい,直接に公務員の身体に向けられたものである必要はなく,職務執行を妨害するに足りる程度の暴行といえる限り,間接的に公務員に向けられたもの(間接暴行)で足りる(最判昭37.1.23 続刑法百選23事件)。判例は,司法巡査が現行犯逮捕の現場で差し押さえて整理のために同所に置いた覚せい剤入りのアンプルを,被告人が足で踏んで損壊した事例において,司法巡査の職務の執行中にその執行を妨害するに足りる暴行を加えたものであり,その暴行は間接的に司法巡査に対するものというべきであるとして本罪の成立を認めている(最決昭34.8.27)。したがって,甲には公務執行妨害罪が成立する。よって,本記述は誤りである。参考西田(各)451頁。
大塚ほか(基本刑法Ⅱ)490~491頁。
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憲法最高裁判所の判例の趣旨に照らすと,受刑者が国会議員あての請願書の内容についての取材・調査・報道を求める旨を記載した手紙を新聞社に送付しようとする場合,刑事施設の長がこれを制限し得るのは,具体的事情の下でそれを許可することにより刑事施設内の規律及び秩序の維持が害される明らかな差し迫った危険の発生が具体的に予見される場合に限られる。憲法この問題の模試受験生正解率 55.5%結果正解解説判例は,受刑者が国会議員あての請願書の内容についての取材・調査・報道を求める旨を記載した新聞社あての手紙の発信許可を刑事施設の長に求めたところ,当該刑事施設の長がこれを不許可としたことから,当該受刑者がそれにより精神的苦痛を被ったとして,国に対し国賠法1条1項に基づき慰謝料を請求した事例において,「表現の自由を保障した憲法21条の規定の趣旨,目的にかんがみると,受刑者のその親族でない者との間の信書の発受は,受刑者の性向,行状,監獄内の管理,保安の状況,当該信書の内容その他の具体的事情の下で,これを許すことにより,監獄内の規律及び秩序の維持,受刑者の身柄の確保,受刑者の改善,更生の点において放置することのできない程度の障害が生ずる相当のがい然性があると認められる場合に限って,これを制限することが許される」としている(最判平18.3.23)。よって,本記述は誤りである。参考芦部(憲法)110頁。
佐藤幸(日本国憲法論)179頁。
渡辺ほか(憲法Ⅰ)49頁。 -
民法判例の趣旨に照らした場合,和解契約は当事者が互いに譲歩することを成立要件とするから,当事者ではなく第三者が対価を給付することを和解契約の内容とすることはできない。
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刑法判例の立場に従って検討した場合,甲は,乙から,Vの殺害に用いるための猛毒の青酸ソーダを入手するよう依頼されてこれを承諾し,致死量の青酸ソーダを入手してこれを乙に渡した。しかし,乙は,この青酸ソーダを使用せず,別途調達した睡眠薬をVに服用させた上,Vを絞殺した。この場合,甲には,殺人予備罪の共同正犯が成立する。刑法この問題の模試受験生正解率 61.0%結果正解解説判例は,本記述と同様の事例において,甲に殺人予備罪の共同正犯(刑法201条,60条)の成立を認めた原審の判断を是認している(最決昭37.11.8 刑法百選Ⅰ〔第8版〕80事件)。よって,本記述は正しい。参考西田(総)423頁。
大塚ほか(基本刑法Ⅰ)337頁。
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憲法憲法第9条第1項の「国際紛争を解決する手段」としての戦争について,国際法上の用例を尊重し,国家の政策としての戦争,すなわち侵略戦争を意味すると解するとしても,同条全体により自衛戦争を含めた全ての戦争が放棄されているという結論を導くことはできる。憲法この問題の模試受験生正解率 80.5%結果正解解説憲法9条1項の「国際紛争を解決する手段」としての戦争について,国際法上の用例を尊重し,「国家の政策としての戦争」,すなわち侵略戦争を意味するならば,同項で放棄されているのは侵略戦争ということになり,自衛戦争は放棄されていないことになる。もっとも,この見解に立っても,同条2項前段の「前項の目的を達するため」にいう「前項の目的」について,戦争を放棄するに至った動機を一般的に指すものと解釈し,同項で戦力の保持が無条件で禁止され,また,交戦権まで否認されていると解釈するならば,同条1項で留保された自衛戦争も事実上不可能となり,同条全体で自衛戦争を含めた全ての戦争が放棄されているという結論を導くことができる。よって,本記述は正しい。参考芦部(憲法)57~58頁。
野中ほか(憲法Ⅰ)164~168頁。
芦部(憲法学Ⅰ)255~259頁。
辻村(憲法)68~70頁。 -
民法判例の趣旨に照らした場合,占有者から動産を買い受けることによりその占有を取得した者は,即時取得を主張するために,当該動産について,取引の相手方が権利者であると信じたことについて自己に過失がなかったことを立証する必要がある。民法この問題の模試受験生正解率 72.0%結果正解解説判例は,民法192条にいう「過失がないとき」とは,「物の譲渡人である占有者が権利者たる外観を有しているため,その譲受人が譲渡人にこの外観に対応する権利があるものと誤信し,かつこのように信ずるについて過失のないことを意味するものであるが,およそ占有者が占有物の上に行使する権利はこれを適法に有するものと推定される以上(民法188条),譲受人たる占有取得者が右のように信ずるについては過失のないものと推定され,占有取得者自身において過失のないことを立証することを要しない」としている(最判昭41.6.9 昭41重判民法3事件)。したがって,本記述において,即時取得を主張する占有者は,自己の無過失について立証する必要はない。よって,本記述は誤りである。参考佐久間(物権)147頁。
松井(物権)142頁。
リーガルクエスト(物権)100頁。 -
刑法判例の立場に従って検討した場合,幇助行為が日本国外でなされた場合には,正犯が日本国内で実行行為をしたときでも,従犯として処罰することはできない。刑法この問題の模試受験生正解率 78.1%結果正解解説判例は,日本国外で幇助行為をした者であっても,正犯が日本国内で実行行為をした場合には,刑法1条1項の「日本国内において罪を犯した」者に当たるとしている(最決平6.12.9 平6重判刑法1事件)。したがって,幇助行為が日本国外でなされた場合であっても,正犯が日本国内で実行行為をしたときは,従犯として処罰することができる。よって,本記述は誤りである。参考山口(総)417頁。
大塚ほか(基本刑法Ⅰ)462頁。
条解刑法259~260頁。
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憲法判例は,内閣総理大臣は,閣議にかけて決定された方針が存在しない場合には,内閣の明示の意思に反しないとしても,行政各部に対し指導,助言等の指示を与える権限を有しないとしている。憲法この問題の模試受験生正解率 74.1%結果正解解説判例は,内閣総理大臣が当時の運輸大臣(現:国土交通大臣)に対して航空会社に特定の航空機の選定購入を勧奨するよう働きかけた行為が内閣総理大臣の職務権限に属するかが争われた事例において,「内閣総理大臣は,憲法上,行政権を行使する内閣の首長として(66条),国務大臣の任免権(68条),内閣を代表して行政各部を指揮監督する職務権限(72条)を有するなど,内閣を統率し,行政各部を統轄調整する地位にあるものである。そして,内閣法は,閣議は内閣総理大臣が主宰するものと定め(4条),内閣総理大臣は,閣議にかけて決定した方針に基づいて行政各部を指揮監督し(6条),行政各部の処分又は命令を中止させることができるものとしている(8条)。このように,内閣総理大臣が行政各部に対し指揮監督権を行使するためには,閣議にかけて決定した方針が存在することを要するが,閣議にかけて決定した方針が存在しない場合においても,内閣総理大臣の右のような地位及び権限に照らすと,流動的で多様な行政需要に遅滞なく対応するため,内閣総理大臣は,少なくとも,内閣の明示の意思に反しない限り,行政各部に対し,随時,その所掌事務について一定の方向で処理するよう指導,助言等の指示を与える権限を有する」としている(最大判平7.2.22 ロッキード事件丸紅ルート 憲法百選Ⅱ〔第7版〕174事件)。よって,本記述は誤りである。
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民法Aが所有する甲土地をBが不法に占有している場合に関して,判例の趣旨に照らすと,Aが第三者に甲土地を譲渡し,所有権移転登記をした場合,Aは,Bに対して所有権に基づいて甲土地の返還を請求することはできない。
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刑法判例の立場に従って検討した場合,刑罰法規において,刑の種類も刑の分量も全く定めないことは罪刑法定主義に反するが,刑の種類のみを定めていれば,刑の分量を全く定めなくとも,罪刑法定主義に反しない。刑法この問題の模試受験生正解率 74.7%結果正解解説罪刑法定主義には,刑罰法規の適正性が含まれる。そして,その具体的内容の1つとして,絶対的不確定刑も禁止される。絶対的不確定刑とは,①「……した者は,刑に処する」というように,刑の種類と刑の分量をともに法定しない場合,及び②「……した者は,懲役に処する」というように刑の種類だけを定めて刑の分量を法定しない場合の法定刑をいう。よって,本記述は誤りである。参考井田(総)38~39頁。
大塚ほか(基本刑法Ⅰ)18頁。
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憲法最高裁判所の判例の趣旨に照らすと,憲法第21条第2項前段の「検閲」の禁止は,表現の自由を保障するために定められているが,この検閲にも公共の福祉を理由とする例外が認められる場合がある。憲法この問題の模試受験生正解率 68.9%結果正解解説判例は,税関検査が憲法21条2項前段の「検閲」に当たるかどうか等が争われた事例において,「憲法21条2項前段は,「検閲は,これをしてはならない。」と規定する。憲法が,表現の自由につき,広くこれを保障する旨の一般的規定を同条1項に置きながら,別に検閲の禁止についてかような特別の規定を設けたのは,検閲がその性質上表現の自由に対する最も厳しい制約となるものであることにかんがみ,これについては,公共の福祉を理由とする例外の許容(憲法12条,13条参照)をも認めない趣旨を明らかにしたものと解すべきである」としている(最大判昭59.12.12 札幌税関検査訴訟 憲法百選Ⅰ〔第7版〕69事件)。したがって,同判決は,同21条2項前段の検閲の禁止は,公共の福祉を理由とする例外を許容しない,絶対的禁止と捉えている。よって,本記述は誤りである。
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民法判例の趣旨に照らした場合,引き渡された売買の目的物の品質が契約の内容に適合しない場合において,履行の追完の方法として目的物の修補と代替物の引渡しとが可能であるときは,買主は,売主に対し,どちらかを任意に選択して履行の追完を請求することができる。民法この問題の模試受験生正解率 58.9%結果正解解説引き渡された目的物が種類,品質又は数量に関して契約の内容に適合しないものであるときは,買主は,売主に対し,目的物の修補,代替物の引渡し又は不足分の引渡しによる履行の追完を請求することができる(民法562条1項本文)。同項は,追完の方法の選択肢が複数存在する場合,そのうちいかなる方法を採るのかの選択権を第一次的に買主に委ねたものである。よって,本記述は正しい。
なお,売主は,買主に不相当な負担を課するものでないときは,買主が請求した方法と異なる方法による履行の追完をすることができる(同項ただし書)。参考潮見(基本講義・債各Ⅰ)94頁。
中田(債総)318頁。
新・コンメ民法(財産法)961頁。 -
刑法判例の立場に従って検討した場合,拘禁中に逃走した者をその事情を知りつつこれを蔵匿した場合,犯人蔵匿罪が成立する。刑法この問題の模試受験生正解率 74.7%結果正解解説犯人蔵匿罪(刑法103条前段)の客体は,「罰金以上の刑に当たる罪を犯した者」又は「拘禁中に逃走した者」である。「拘禁中に逃走した者」とは,法令により拘禁中に逃走した者をいい,その範囲は,同99条の「法令により拘禁された者」と一致するものとされ,裁判の執行により拘禁された既決,未決の者や勾引状の執行を受けた者(同97条,98条)のほか,現行犯逮捕された者,緊急逮捕されて令状が発せられる前の者がこれに当たる。よって,本記述は正しい。参考西田(各)477頁,483頁。
大塚ほか(基本刑法Ⅱ)516頁,543頁。
条解刑法330頁,336頁。
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憲法公の支配に属しない事業への,公金その他の公の財産の支出を禁止する,憲法第89条後段の規定の趣旨を,公費の濫用を防止することにあると解する立場は,「公の支配」の意義について,公権力が当該事業の運営,存立に影響を及ぼすことにより,当該事業が公の利益に沿わない場合にはこれを是正し得る途が確保されていれば足りるという見解と結び付く。憲法この問題の模試受験生正解率 63.9%結果正解解説憲法89条後段は,公金その他の公の財産は「公の支配に属しない慈善,教育若しくは博愛の事業に対し,これを支出し,又はその利用に供してはならない。」と定めている。そして,この規定の趣旨に関しては,大別して①私的事業に対して公金支出を行う場合には,財政民主主義の観点から,公費の濫用を来さないように当該事業を監督すべきことを要求するものであるとする立場(公費濫用防止説)と,②私的事業への不当な公権力の支配が及ぶことを防止し,事業の自主性を確保するための規定と解する立場(自主性確保説)とがある。そのうち,①の立場は,公費が濫用されない程度に,事業についての監督が及んでいればよいと考えるから,「公の支配」に属するという意味を,「国又は地方公共団体の一定の監督が及んでいることをもって足りる」というように,緩やかに解している。具体的には,業務や会計の状況に関し報告を徴したり,予算について必要な変更をすべき旨を勧告する程度の監督権を持っていれば足りるとする。よって,本記述は正しい。参考芦部(憲法)376~377頁。
佐藤幸(日本国憲法論)574~575頁。
野中ほか(憲法Ⅱ)343~347頁。 -
民法判例の趣旨に照らした場合,Aが家出をして行方不明になり,その生死が10年間明らかでなかったため,利害関係人の請求により,Aについて失踪宣告がされたが,その1年後に,Aの生存が明らかとなったので,失踪宣告が取り消された。この場合,失踪宣告によりAを単独相続したDは,Aの生存につき善意であったときは,当該相続によって得た財産を不当利得として返還する義務を負わない。民法この問題の模試受験生正解率 77.1%結果正解解説失踪宣告を受けた者が生存していることの証明があったときは,家庭裁判所は,本人又は利害関係人の請求により,失踪宣告を取り消さなければならない(民法32条1項前段)。取消しの結果,失踪宣告の効果として生じた身分上・財産上の変動はなかったものとされる。したがって,失踪宣告が取り消されると,失踪宣告を受けた者を被相続人とする相続は開始しなかったことになるから,この相続によって財産を得た者は,失踪者の生存について善意であったか悪意であったかにかかわらず,これを不当利得として返還しなければならない(同条2項本文)。よって,本記述は誤りである。
なお,同項ただし書は,返還の範囲について,特に善意・悪意を区別せず「現に利益を受けている限度」としているが,同項ただし書は善意者のみに適用があり,悪意者は,同704条の場合と同様,全部の利益に利息を付して返還しなければならないとする見解がある。参考佐久間(総則)31~33頁。
リーガルクエスト(総則)53~55頁。 -
刑法判例の立場に従って検討した場合,刑法第36条第1項における「自己又は他人の権利」は,個人的法益に限られる。刑法この問題の模試受験生正解率 81.3%結果正解解説刑法36条1項にいう「権利」には,個人的法益にとどまらず,国家的法益ないし社会的法益も含まれると解されている。判例も,「国家的,国民的,公共的法益についても正当防衛の許さるべき場合が存することを認むべきである」としている(最判昭24.8.18 刑法百選〔初版〕11事件)。よって,本記述は誤りである。
なお,同判決は,国家的・公共的法益「のための正当防衛等は,国家公共の機関の有効な公的活動を期待し得ない極めて緊迫した場合においてのみ例外的に許容されるべきもの」としている。参考西田(総)166頁。
大塚ほか(基本刑法Ⅰ)185~186頁。
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憲法判例によれば,法令の合憲性の審査に当たり,当該法令を制定する場合の基礎を形成し,かつその合理性を支える事実,いわゆる立法事実を検討することがあるが,立法事実はあくまで当該法令の制定時の事実が考慮されるのであって,当該法令の制定後の事実の変化は考慮されない。憲法この問題の模試受験生正解率 68.1%結果正解解説判例は,日本人の父と外国人の母との間に生まれた非嫡出子について,父からの認知だけでなく父母の婚姻により嫡出子たる身分を取得した場合のみ届出による日本国籍取得を認めるとする旧国籍法3条1項の合憲性が争われた事例において,日本国民である父の生後認知子が父母の婚姻による準正によって,我が国社会との密接な結び付きが生じ,国籍取得を認めるに足る状況が認められるために,準正を要件としたという立法目的自体には合理的な根拠があることを認めた上で,旧「国籍法3条1項の規定が設けられた当時の社会通念や社会的状況の下においては,日本国民である父と日本国民でない母との間の子について,父母が法律上の婚姻をしたことをもって日本国民である父との家族生活を通じた我が国との密接な結び付きの存在を示すものとみることには相応の理由があったものとみられ,当時の諸外国における……国籍法制の傾向にかんがみても,同項の規定が認知に加えて準正を日本国籍取得の要件としたことには,……立法目的との間に一定の合理的関連性があったものということができる」として,同項の制定時の事実を考慮して,制定当時における立法目的と準正を出生後における届出による日本国籍取得の要件とすることとの間に一定の合理的関連性を認めている(最大判平20.6.4 国籍法違憲判決 憲法百選Ⅰ〔第7版〕26事件)。もっとも,同判決は,「我が国を取り巻く国内的,国際的な社会的環境等の変化に照らしてみると,準正を出生後における届出による日本国籍取得の要件としておくことについて,……立法目的との間に合理的関連性を見いだすことがもはや難しくなっているというべきである」としている。つまり,同判決は,旧国籍法3条1項の制定後の事実の変化をも考慮している。よって,本記述は誤りである。参考野中ほか(憲法Ⅱ)303頁。
渋谷(憲法)710頁。 -
民法判例の趣旨に照らした場合,債務者が契約から生じた債務を履行期に履行しなかったため,債権者が相当の期間を定めて履行の催告をしたが,その期間内に履行がなかったため,解除権が発生した場合であっても,債権者は,契約を解除せずに債務者に対して履行に代わる損害賠償を請求することができる。民法この問題の模試受験生正解率 57.0%結果正解解説債務の履行に代わる損害賠償の請求が認められる場合の一つとして,債務が契約によって生じたものである場合において,債務の不履行による契約の解除権が発生したとき(民法415条2項3号後段)がある。この場合,同541条,542条1項3号から5号までの規定により解除権が発生すれば,債権者は,解除をしなくても債務の履行に代わる損害賠償の請求をすることができる。よって,本記述は正しい。
なお,同542条1項1号,2号によっても解除権が発生するが,これらの場合には,同415条2項3号後段ではなく,同項1号,2号によって債務の履行に代わる損害賠償の請求が認められる。参考内田Ⅲ145~146頁。
潮見(プラクティス債総)131~132頁。
中田(債総)183頁。 -
刑法判例の立場に従って検討した場合,犯人の親族が,犯人を庇護する目的で,犯人との間に親族関係がない者を教唆して犯人を隠避させた場合,犯人隠避教唆罪が成立し,その刑は免除されない。刑法この問題の模試受験生正解率 74.7%結果正解解説罰金以上の刑に当たる罪を犯した者の親族が,犯人のために犯人蔵匿等罪(刑法103条)を犯したときは,適法行為の期待可能性が低く責任が減少することを考慮し,裁量的な刑の免除が認められているところ(同105条),判例は,犯人の親族が犯人を庇護する目的で他人を教唆して犯人を隠避させた場合には,犯人隠避教唆罪(同103条後段,61条1項)が成立するとしており(大判昭8.10.18),同105条の適用を否定している。よって,本記述は正しい。参考西田(各)491頁。
大塚ほか(基本刑法Ⅱ)531頁。
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憲法1789年のフランス人権宣言第16条は,「権利の保障が確保されず,権力の分立が定められていない社会は,すべて憲法を持つものではない」と規定していたが,これは「立憲的意味の憲法」の観念を典型的に表現したものと受け取られている。憲法この問題の模試受験生正解率 70.9%結果正解解説「立憲的意味の憲法」とは,権力を制限することにより自由を保障しようという考えを基本理念とする憲法をいう。そして,1789年のフランス人権宣言16条は,「権利の保障が確保されず,権力の分立が定められていない社会は,すべて憲法を持つものではない」と規定していたところ,これは「立憲的意味の憲法」の観念を典型的に表現したものと受け取られている。よって,本記述は正しい。参考芦部(憲法)5頁。
野中ほか(憲法Ⅰ)5~6頁。 -
民法Aが所有する甲土地をBが不法に占有している場合に関して,判例の趣旨に照らした場合,Bが,権原のない第三者との間で締結した使用貸借契約に基づいて20年以上にわたり甲土地の使用を継続している場合において,Aが,所有権に基づき,甲土地の返還を求めた場合,Bは,返還請求権の消滅時効を主張して甲土地の返還を拒むことができる。
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刑法判例の立場に従って検討した場合,責任主義の観点から,結果的加重犯の成立には,基本となる犯罪についての故意のほか,重い結果についての過失を要する。刑法この問題の模試受験生正解率 66.7%結果正解解説結果的加重犯とは,基本となる犯罪から生じた結果を重視して,基本となる犯罪に対する刑よりも重い法定刑を規定した犯罪をいう。結果的加重犯の意義に関しては,重い結果について過失が必要か否かが問題となるところ,判例は,夫が妻に暴行を加え,その結果妻をショック死させた事例において,「傷害罪の成立には暴行と死亡との間に因果関係の存在を必要とするが,致死の結果についての予見を必要としない」としており(最判昭32.2.26 刑法百選Ⅰ〔第8版〕50事件),重い結果について過失がない場合にも結果的加重犯が成立するというのが判例の立場である。よって,本記述は誤りである。参考大谷(講義総)196~197頁。
条解刑法145頁,619頁。
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憲法最高裁判所の判例の趣旨に照らすと,企業内においても,労働者の思想,信条は十分尊重されるべきであるから,企業秩序違反行為の調査をするために行われたことが明らかであったとしても,雇用者が労働者に対し,調査目的との関連性を明らかにしないまま,政党所属の有無を尋ねることや,特定の政党に所属していないことを書面にして交付するよう求めることは,強要にわたるものでなくても許されない。憲法この問題の模試受験生正解率 58.8%結果正解解説判例は,企業の営業所の内部情報が特定政党の機関紙に記載されたことに関連して,当該営業所の所長Yが従業員Xに対し調査をした際,当該政党の党員かどうかを尋ねたこと,そして,これに対してそうではない旨の返答があったため,それを書面にするよう求めたことが,Xの思想・良心の自由を侵害するかどうかが争われた事例において,Yによる「話合いは企業秘密の漏えいという企業秩序違反行為の調査をするために行われたことが明らかであるから……本件話合いを持つに至ったことの必要性,合理性は,これを肯認することができる」とした上で,本件政党の機関紙の記事の取材源ではないかと疑われているXに対し,本件政党「との係わりの有無を尋ねることには,その必要性,合理性を肯認することができないわけではなく,また,本件質問の態様は,返答を強要するものではなかった」から,「本件質問は,社会的に許容し得る限界を超えてXの精神的自由を侵害した違法行為であるとはいえない」としている(最判昭63.2.5 憲法百選Ⅰ〔第7版〕35事件)。また,同判決は,本件政党の党員でないと返答したことについて書面交付を要求した行為についても,その要求が強要にわたるものではなく,「Xが本件書面交付の要求を拒否することによって不利益な取扱いを受ける虞のあることを示唆した」事実がないこと等から,本件書面交付の要求も,「社会的に許容し得る限界を超えてXの精神的自由を侵害した違法行為であるということはできない」としている。よって,本記述は誤りである。
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民法判例の趣旨に照らした場合,利息付きの消費貸借において,貸主は,借主が元本を受け取った日以後の利息を請求することができる。民法この問題の模試受験生正解率 67.6%結果正解解説民法上,利息の支払は消費貸借の成立の要素とはされていないため(同587条,587条の2第1項),貸主は,特約がある場合に限り,借主に対し利息を請求することができる(同589条1項)。そして,利息は,元本使用の対価であるから,貸主は,借主に対し,借主が元本を使用できる状況に置かれた時,すなわち,借主が元本を受け取った日以後の利息を請求することができる(同条2項)。よって,本記述は正しい。参考潮見(基本講義・債各Ⅰ)131頁。
中田(契約)365頁。
新基本法コメ(債権2)176頁。 -
刑法判例の立場に従って検討した場合,不作為犯は,結果発生を防止しなければならない義務が法律上の規定に基づくものでなければ,成立する余地はない。刑法この問題の模試受験生正解率 93.4%結果正解解説判例は,「シャクティ治療」と称する独自治療を唱導していた被告人が,その信奉者から重篤な患者である親族に対する「シャクティ治療」を依頼され,同患者を入院中の病院から運び出させた上,必要な医療措置を受けさせないまま放置した事例において,「被告人は,自己の責めに帰すべき事由により患者の生命に具体的な危険を生じさせた上,患者が運び込まれたホテルにおいて,被告人を信奉する患者の親族から,重篤な患者に対する手当てを全面的にゆだねられた立場にあったものと認められる。その際,被告人は,患者の重篤な状態を認識し,これを自らが救命できるとする根拠はなかったのであるから,直ちに患者の生命を維持するために必要な医療措置を受けさせる義務を負っていたものというべきである」とし(最決平17.7.4 刑法百選Ⅰ〔第8版〕6事件),先行行為,保護の引受け,排他的支配を根拠に,作為義務(直ちに患者の生命を維持するために必要な医療措置を受けさせる義務)があったとしており,法律上の規定から作為義務を導いてはいない。したがって,不作為犯は,結果発生を防止しなければならない義務が法律上の規定に基づくものでない場合であっても,成立する余地がある。よって,本記述は誤りである。参考西田(総)128頁。
大塚ほか(基本刑法Ⅰ)86頁。
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憲法憲法第9条第1項で放棄されている戦争とは侵略戦争であって,自衛戦争は放棄されていないとし,同条第2項前段の「前項の目的を達するため」を,侵略戦争放棄という同条第1項の目的を達するためとする見解によると,自衛のための戦力は保持できることになるが,この見解に対しては,自衛のための戦力と侵略のための戦力は実際上区別できないとの批判が当てはまる。憲法この問題の模試受験生正解率 80.5%結果正解解説憲法9条1項で放棄されている戦争とは侵略戦争であって,自衛戦争は放棄されていないとし,同条2項前段の「前項の目的を達するため」の意味を,侵略戦争放棄という同条1項の目的を達するためとする立場に立つと,同条2項は,侵略のための戦力は保持せず(つまり,自衛のための戦力は保持できる。),また,交戦権の否認は交戦国が持つ諸権利は認めないとの意味にとどまることになる。この見解に対しては,憲法自体に内閣構成員の資格としての文民規定(同66条2項)以外に戦争・軍隊を前提とする他の規定がないこと,自衛のための戦力と侵略のための戦力を実際上区別できないことなどの批判がある。よって,本記述は正しい。参考芦部(憲法)56~58頁。
野中ほか(憲法Ⅰ)164~167頁。
渋谷(憲法)72~73頁。 -
民法判例の趣旨に照らすと,未分離の果実は,土地の定着物であり,土地と独立に所有権の対象とすることはできない。民法この問題の模試受験生正解率 59.1%結果正解解説未分離の果実は,本来,土地の定着物として(民法86条1項),土地又は樹木の一部とみるべきであるが,判例は,樹木又は土地とは別個独立して所有権の対象となり,明認方法によりその所有権を第三者に対抗することを認めている(大判大5.9.20 民法百選Ⅰ〔初版〕63事件,大判大9.5.5,大判昭13.9.28など))。よって,本記述は誤りである。参考リーガルクエスト(総則)112~113頁。
新・コンメ民法(財産法)51頁。 -
刑法判例の立場に従って検討した場合,甲は,乙から商品を購入する際,偽造通貨を真正な通貨のように装って乙に代金として同通貨を交付し,商品を得た。この場合,甲には,偽造通貨行使罪が成立し,詐欺罪は偽造通貨行使罪に吸収される。刑法この問題の模試受験生正解率 41.5%結果正解解説判例は,本記述と同様の事例において,詐欺罪(刑法246条1項)は,偽造通貨行使罪(同148条2項)に当然に吸収され,別罪を構成しないとしている(大判明43.6.30)。したがって,甲には,偽造通貨行使罪が成立し,詐欺罪は偽造通貨行使罪に吸収される。よって,本記述は正しい。参考西田(各)353頁。
大塚ほか(基本刑法Ⅱ)440頁。
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解答
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憲法判例によれば,政党は,政治上の信条,意見等を共通にする者が任意に結成する政治結社であって,内部的には,通常,自律的規範を有し,その成員である党員に対して政治的忠誠を要求したり,一定の統制を施すなどの自治権能を有するものであり,国民がその政治的意思を国政に反映させ実現させるための最も有効な媒体であって,議会制民主主義を支える上において極めて重要な存在であるということができる。憲法この問題の模試受験生正解率 63.1%結果正解解説判例は,政党が除名処分を受けた元党役員に対し,当該党役員に利用させてきた家屋の明渡しを求めた事例において,「政党は,政治上の信条,意見等を共通にする者が任意に結成する政治結社であって,内部的には,通常,自律的規範を有し,その成員である党員に対して政治的忠誠を要求したり,一定の統制を施すなどの自治権能を有するものであり,国民がその政治的意思を国政に反映させ実現させるための最も有効な媒体であって,議会制民主主義を支える上においてきわめて重要な存在であるということができる」としている(最判昭63.12.20 共産党除名処分事件 憲法百選Ⅱ〔第7版〕183事件)。よって,本記述は正しい。
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民法Aが所有する甲土地をBが不法に占有している場合に関して,判例の趣旨に照らすと,Aが自己の債権者のために甲土地を譲渡担保に供した場合であっても,Aは,特段の事情のない限り,Bに対して甲土地の返還を請求することができる。民法この問題の模試受験生正解率 84.7%結果正解解説判例は,譲渡担保契約による目的物件の所有権移転の効力は,債権担保の目的を達するのに必要な範囲内においてのみ認められるのであって,譲渡担保権設定者は,譲渡担保権者が目的物件の換価処分を完結するまでは,被担保債務を弁済して目的物件についての完全な所有権を回復することができるのであるから,正当な権原なく目的物件を占有する者がある場合には,特段の事情のない限り,当該占有者に対してその返還を請求することができるとしている(最判昭57.9.28)。したがって,本記述において,Aは,特段の事情のない限り,Bに対して甲土地の返還を請求することができる。よって,本記述は正しい。参考松井(担物)191頁。
リーガルクエスト(物権)344頁。 -
刑法判例の立場に従って検討した場合,遺棄罪(刑法第217条)の客体は,「老年,幼年,身体障害又は疾病のために扶助を必要とする者」と規定されているが,扶助を必要とする原因として挙げられている「老年,幼年,身体障害又は疾病」は,例示列挙である。刑法この問題の模試受験生正解率 55.6%結果正解解説遺棄罪(刑法217条)の客体は,「老年,幼年,身体障害又は疾病のために扶助を必要とする者」であるところ,要扶助状態の原因として挙げられている「老年,幼年,身体障害又は疾病」は,制限列挙であるとされる。よって,本記述は誤りである。参考西田(各)29頁。
大塚ほか(基本刑法Ⅱ)19~20頁。
新基本法コメ(刑法)468頁。
科目名
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解答日・解答結果
設問
設問・解答
解答
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憲法泉佐野市民会館事件判決(最高裁判所平成7年3月7日第三小法廷判決,民集49巻3号687頁)に関して,この判決は,憲法第21条第1項が保障する集会の自由には,表現活動や集会に必要な場所の提供を公権力に請求し得る権利が当然に含まれるから,集会の用に供される施設が設けられている場合,当該施設の管理者がその利用を拒否し得るのは,利用の希望が競合する場合のほかは,施設をその集会のために利用させることによって,他の基本的人権が侵害され,公共の福祉が損なわれる危険がある場合に限られるとした。憲法この問題の模試受験生正解率 42.8%結果正解解説本問の最高裁判所判決(最判平7.3.7 泉佐野市民会館事件 憲法百選Ⅰ〔第7版〕81事件)は,市民会館の使用許可の申請を,条例の定める「公の秩序をみだすおそれがある場合」に該当するとして不許可にした処分の違憲性が争われた事例において,「地方自治法244条にいう普通地方公共団体の公の施設として,本件会館のように集会の用に供する施設が設けられている場合」,当該施設の管理者が,公共施設の管理の点から「利用を不相当とする事由が認められないにもかかわらずその利用を拒否し得るのは,利用の希望が競合する場合のほかは,施設をその集会のために利用させることによって,他の基本的人権が侵害され,公共の福祉が損なわれる危険がある場合に限られる」としている。したがって,本記述の結論は正しい。もっとも,同判決は,公の施設について,「住民は,その施設の設置目的に反しない限りその利用を原則的に認められることになるので,管理者が正当な理由なくその利用を拒否するときは,憲法の保障する集会の自由の不当な制限につながるおそれが生ずることになる」としているが,同21条1項が保障する集会の自由には,表現活動や集会に必要な場所の提供を公権力に請求し得る権利が当然に含まれるとはしていない。よって,本記述は誤りである。
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民法AのBに対する意思表示に関して,AがBに対し,承諾の期間を定めて契約の申込みをし,Bがその期間内にAに対し承諾の通知を発したが,当該通知が期間経過後にAに到達した場合,Aがした申込みは,その効力を失う。民法この問題の模試受験生正解率 53.3%結果正解解説承諾の期間の定めのある契約の申込みをした者が,その期間内に承諾の通知を受けなかったときは,その申込みは,その効力を失う(民法523条2項)。本記述において,Bの承諾の通知は,承諾の期間経過後にAに到達しているので,Aがした申込みはその効力を失う。よって,本記述は正しい。参考潮見(基本講義・債各Ⅰ)23~24頁。
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刑法判例の立場に従って検討した場合,甲は,右前方を歩行中の乙に自動車で接近し,運転席の窓から手を出して乙がひじに提げていたハンドバッグを奪い取ろうとして,そのさげひもを引っ張ったところ,乙がこれを離さなかったため,そのまま加速して自動車を走行させ,乙を同バッグもろとも引きずって転倒させて,同バッグを奪って逃走した。乙は引きずられたことにより,加療約1か月を要する傷害を負った。この場合,甲には,強盗致傷罪が成立する。刑法この問題の模試受験生正解率 64.3%結果正解解説強盗罪の「暴行又は脅迫」は,被害者の反抗を抑圧するに足りる程度のものであることを要する。そして,いわゆるひったくりのように暴行が専ら財物を奪取する直接の手段として用いられている場合には,暴行が反抗の抑圧に向けられたものとはいえないから,通常は,「暴行」が認められず,窃盗罪が成立するにすぎない。もっとも,判例は,本記述と同様の事例において,「ハンドバックを離そうとしない女性を車もろとも引きずって転倒させたり,車体に接触させたり,また道路脇の電柱に衝突させて女性に暴行を加えてその反抗を抑圧し,その結果ハンドバックを奪取した」として強盗致傷罪(刑法240条前段)の成立を認めている(最決昭45.12.22 刑法百選Ⅱ〔第2版〕34事件)。したがって,甲には,強盗致傷罪が成立する。よって,本記述は正しい。参考西田(各)182~183頁。
大塚ほか(基本刑法Ⅱ)164~165頁。
科目名
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憲法最高裁判所の判例の趣旨に照らすと,憲法第34条前段の弁護人依頼権は,単に被疑者が弁護人を選任することを官憲が妨害してはならないというにとどまるものではなく,被疑者に対し,弁護人を選任した上で,弁護人に相談し,その助言を受けるなど弁護人から援助を受ける機会を持つことを実質的に保障している。憲法この問題の模試受験生正解率 65.4%結果正解解説判例は,刑訴法39条3項の規定(接見指定)が憲法34条等に違反するかどうかが争われた事例において,「憲法34条前段は,「何人も,理由を直ちに告げられ,且つ,直ちに弁護人に依頼する権利を与へられなければ,抑留又は拘禁されない。」と定める。この弁護人に依頼する権利は,身体の拘束を受けている被疑者が,拘束の原因となっている嫌疑を晴らしたり,人身の自由を回復するための手段を講じたりするなど自己の自由と権利を守るため弁護人から援助を受けられるようにすることを目的とするものである。したがって,右規定は,単に被疑者が弁護人を選任することを官憲が妨害してはならないというにとどまるものではなく,被疑者に対し,弁護人を選任した上で,弁護人に相談し,その助言を受けるなど弁護人から援助を受ける機会を持つことを実質的に保障している」としている(最大判平11.3.24 憲法百選Ⅱ〔第7版〕120事件)。よって,本記述は正しい。
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民法判例の趣旨に照らすと,責任能力のない未成年者の行為によって,第三者に傷害結果が生じた場合,当該行為について違法性がないときであっても,その未成年者の監督義務者は,民法第714条第1項に基づく監督義務者の責任を負うことがある。民法この問題の模試受験生正解率 73.6%結果正解解説判例は,責任能力のない未成年者の行為に違法性がない場合には,その未成年者の監督義務者は,監督義務者の責任(民法714条1項本文)を負わないとしている(最判昭37.2.27)。すなわち,同項の監督義務者の責任は,行為者本人が責任無能力であるがゆえに賠償責任を負わない場合に限り問題となるのであって,本人の行為が責任能力がないという理由以外の理由によって不法行為を構成しない場合には,問題となり得ない。よって,本記述は誤りである。参考リーガルクエスト(事務管理・不当利得・不法行為)256頁。
論点体系判例民法(9)391頁。