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科目別憲法民法刑法
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憲法憲法第30条の定める納税の義務は、国家の存立と国政の運営に必要となる国家の財政を支えるため、国民が税金を納めるのは当然であるという考えに基づくものであり、この義務は、租税法律主義の観点から、法律の規定により内容が具体化される。憲法この問題の模試受験生正解率 89.5%結果正解解説憲法30条は、国民の納税の義務を定めているが、この規定は、国家の存立には国民が能力に応じてその財政を支えなければならないのは当然の義務であることを明示すると同時に、国民の納税の義務は「法律の定めるところにより」具体化されるとしたものである。よって、本記述は正しい。参考佐藤幸(日本国憲法論)191~192頁。
野中ほか(憲法Ⅰ)565頁。 -
民法判例の趣旨に照らした場合,夫婦の一方が知らない間に、他方が離婚の届出をしこれが受理された場合であっても、協議上の離婚の効力を生じない。
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刑法判例の立場に従って検討した場合、信書開封罪は、告訴がなければ公訴を提起することができない親告罪であるが、秘密漏示罪は非親告罪である。刑法この問題の模試受験生正解率 65.7%結果正解解説信書開封罪及び秘密漏示罪(刑法134条)は、ともに親告罪である(同135条)。両罪の保護法益は個人の秘密であり、両罪は、比較的軽微な法益侵害行為であることから、あえて被害者の意思に反してまで訴追する必要はないとして、親告罪となっている。よって、本記述は誤りである。参考大塚ほか(基本刑法Ⅱ)96~97頁。
条解刑法418頁。
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憲法最高裁判所の判例の趣旨に照らした場合,裁判所による出版物の頒布等の事前差止めは、事前抑制に該当するものであって、とりわけ出版物が公職選挙の候補者に対する評価、批判等の表現行為に関するものである場合には、その表現が私人の名誉権に優先する社会的価値を含み憲法上特に保護されるべきであることに鑑みると、当該表現行為に対する事前差止めは、原則として許されない。憲法この問題の模試受験生正解率 75.9%結果正解解説判例は、知事選挙への立候補を予定していた者が、その名誉を毀損する内容の記事が掲載された雑誌の販売等を差し止める仮処分を申請し、無審尋でこれを認める仮処分決定がなされたことについて、憲法21条に違反するかが争われた事例において、「表現行為に対する事前抑制は、新聞、雑誌その他の出版物や放送等の表現物がその自由市場に出る前に抑止してその内容を読者ないし聴視者の側に到達させる途を閉ざし又はその到達を遅らせてその意義を失わせ、公の批判の機会を減少させるものであり、また、事前抑制たることの性質上、予測に基づくものとならざるをえないこと等から事後制裁の場合よりも広汎にわたり易く、濫用の虞があるうえ、実際上の抑止的効果が事後制裁の場合より大きいと考えられるのであって、表現行為に対する事前抑制は、表現の自由を保障し検閲を禁止する憲法21条の趣旨に照らし、厳格かつ明確な要件のもとにおいてのみ許容されうるものといわなければならない」とした上で、「出版物の頒布等の事前差止めは、このような事前抑制に該当するものであって、とりわけ、その対象が公務員又は公職選挙の候補者に対する評価、批判等の表現行為に関するものである場合には、そのこと自体から、一般にそれが公共の利害に関する事項であるということができ、……憲法21条1項の趣旨……に照らし、その表現が私人の名誉権に優先する社会的価値を含み憲法上特に保護されるべきであることにかんがみると、当該表現行為に対する事前差止めは、原則として許されないものといわなければならない」としている(最大判昭61.6.11 「北方ジャーナル」事件 憲法百選Ⅰ〔第7版〕68事件 )。よって、本記述は正しい。
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民法判例の趣旨に照らした場合,虚偽表示の目的物である土地を差し押さえた仮装譲受人の一般債権者は、民法第94条第2項にいう「第三者」に当たらない。民法この問題の模試受験生正解率 76.8%結果正解解説判例は、仮装譲渡された不動産を差し押さえた仮装譲受人の一般債権者は、民法94条2項の「第三者」に当たるとしている(最判昭48.6.28)。よって、本記述は誤りである。参考佐久間(総則)126頁。
佐久間ほか(民法Ⅰ)160頁。 -
刑法判例の立場に従って検討した場合、公務執行妨害罪にいう「職務を執行するに当たり」とは、公務員が職務の遂行に直接必要な行為を現に行っている場合に限られない。刑法この問題の模試受験生正解率 88.3%結果正解解説判例は、公務執行妨害罪における「職務を執行するに当たり」について、「具体的・個別的に特定された職務の執行を開始してからこれを終了するまでの時間的範囲及びまさに当該職務の執行を開始しようとしている場合のように当該職務の執行と時間的に接着しこれと切り離しえない一体的関係にあるとみることができる範囲内の職務行為をいう」とした上で、「職務の性質によっては、その内容、職務執行の過程を個別的に分断して部分的にそれぞれの開始、終了を論ずることが不自然かつ不可能であって、ある程度継続した一連の職務として把握することが相当と考えられるものがあ」るとして、一時中断中の職務に対する公務執行妨害罪の成立を認めている(最判昭53.6.29)。したがって、「職務を執行するに当たり」とは、公務員が職務の遂行に直接必要な行為を現に行っている場合だけを指すのではなく、公務員が職務執行のため勤務に就いている状態にある場合も含まれる。よって、本記述は正しい。参考西田(各)446~447頁。
大塚ほか(基本刑法Ⅱ)493~495頁。
大コメ(刑法・第3版)(6)138頁。
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憲法憲法上の人権規定には、未成年者に対して成年者とは異なった特別な保護を与えているものがある。憲法この問題の模試受験生正解率 53.6%結果正解解説未成年者は、心身ともに発達途上であることから、憲法は、同26条2項前段で、「子女」に「普通教育」を受ける権利を保障し、同27条3項で、「児童は、これを酷使してはならない。」と規定して特別な保護を与えている。よって、本記述は正しい。参考芦部(憲法)88頁。
佐藤幸(日本国憲法論)155~157頁。
渋谷(憲法)110頁。
新基本法コメ(憲法)81頁。 -
民法弁済期が到来した利息債権は、元本債権に対して独立性を有するから、元本債権から分離して譲渡することができる。民法この問題の模試受験生正解率 49.9%結果正解解説利息債権は、「基本権としての利息債権」と「支分権としての利息債権」とに分けられ、元本に対して、一定の利息を生じさせることを内容とする債権である「基本権としての利息債権」の効果として、一定期間の経過により一定の率による利息を支払うことを内容とする「支分権としての利息債権」が生じるという関係にある。「基本権としての利息債権」は、元本債権が消滅すれば消滅し、元本債権が譲渡されればこれに随伴するなど、元本債権に対して付従性が強いのに対し、「支分権としての利息債権」は、元本債権に対する付従性が弱く、一度発生すれば元本債権から独立して存在するから、これのみを処分することができる。弁済期が到来した利息債権は、「支分権としての利息債権」であるから、元本債権と分離して処分することが可能である。よって、本記述は正しい。参考内田Ⅲ68頁。
中田(債総)61頁。 -
刑法刑法が定める刑の種類の中には、懲役、禁錮、拘留及び労役場留置があるが、そのいずれもが自由刑である。刑法この問題の模試受験生正解率 55.5%結果正解解説刑の種類については、刑法9条は「死刑、懲役、禁錮、罰金、拘留及び科料を主刑とし、没収を付加刑とする。」と規定している。このうち、懲役、禁錮、拘留は、対象者を刑事施設に拘置することにより、その身体の自由をはく奪する刑罰であり(同12条2項、13条2項、16条)、これを自由刑という。これに対して、労役場留置は、罰金又は科料を言い渡されたが、これらを完納できない者について、一定の期間刑事施設に付設された労役場に留置するものである(同18条)。その性格については、これを罰金又は科料に換えて自由刑を科する換刑処分とみるか、罰金又は科料の特別な執行方法とみるか争いがあるが、いずれと解するにしても、労役場留置は、同9条に挙げられておらず、刑法が定める刑の種類に含まれない。よって、本記述は誤りである。参考条解刑法23頁、31~32頁。
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憲法憲法第40条は、刑事手続において身体を拘束された者が後に無罪判決を受けた場合における刑事補償請求権を定めている。同様の規定は、大日本帝国憲法にもあったが、現実になされる補償は極めて不十分という問題があった。憲法この問題の模試受験生正解率 25.7%結果正解解説憲法40条は、刑事手続において身体を拘束された者が後に無罪判決を受けた場合の損失を塡補するために、刑事補償請求権を定めている。しかし、大日本帝国憲法には、この種の規定はなく、国の恩恵的施策としての性格を有する刑事補償法が制定されていたにすぎず、現実になされる補償も極めて不十分という問題があった。よって、本記述は誤りである。参考芦部(憲法)269頁。
野中ほか(憲法Ⅰ)557頁。 -
民法判例の趣旨に照らした場合,賃貸人が賃借人の意思に反して保存行為をしようとする場合において、そのために賃借人が賃借をした目的を達することができなくなるときは、賃借人は、賃貸借契約を解除することができる。民法この問題の模試受験生正解率 57.1%結果正解解説賃貸人が賃貸物の保存に必要な行為をしようとするときは、賃借人は、これを拒むことができない(民法606条2項)。そして、賃貸人が賃借人の意思に反して保存行為をしようとする場合において、そのために賃借人が賃借した目的を達することができなくなるときは、賃借人は、契約を解除することができる(同607条)。よって、本記述は正しい。参考潮見(基本講義・債各Ⅰ)161頁。
中田(契約)401頁。 -
刑法判例の立場に従って検討した場合、公務員が、その在職中に請託を受けて職務上不正な行為をしたことに関し、公務員の身分を失った後に賄賂を収受した場合には、事後収賄罪(刑法第197条の3第3項)が成立する。刑法この問題の模試受験生正解率 60.0%結果正解解説事後収賄罪(刑法197条の3第3項)は、「公務員であった者が、その在職中に請託を受けて職務上不正な行為をしたこと又は相当の行為をしなかったことに関し、賄賂を収受し、又はその要求若しくは約束をしたとき」に成立する。よって、本記述は正しい。参考山口(各)626~627頁。
大塚ほか(刑法Ⅱ)472~473頁。
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憲法国会議員には当然に憲法改正原案を国会に提出する権利が認められるが、国会議員が当該原案を国会に提出するには、各議院においてそれぞれ一定数の賛成を要するものとする旨を法律で定めても、直ちに違憲とはいえないと解されている。憲法この問題の模試受験生正解率 56.5%結果正解解説憲法96条は、憲法改正手続について、国会の発議と国民の承認という二段階の要件を定め、天皇による公布を予定している。国会による発議の前提として、憲法改正原案の提出(発案)がなされなければならないが、両議院の議員には発案権が当然に認められている。もっとも、国会法68条の2は、議員が憲法改正原案を国会に提出するためには「衆議院においては議員100人以上、参議院においては議員50人以上の賛成を要する」として、一定数の国会議員の賛成を要する旨を定めており、このような要件を課すことも憲法改正の重要性から直ちに違憲とはいえないと解されている。よって、本記述は正しい。参考芦部(憲法)405頁。
佐藤幸(日本国憲法論)48頁。
野中ほか(憲法Ⅱ)408頁。
新基本法コメ(憲法)502頁。 -
民法判例の趣旨に照らした場合,将来の一定期間内に発生すべき債権を目的とする債権譲渡契約について、当該期間の長さ等の契約内容が譲渡人の営業活動等に対して社会通念に照らし相当とされる範囲を著しく逸脱する制限を加えるものであるなどの特段の事情の認められる場合には、当該将来債権譲渡契約は公序良俗に反するなどとして、その効力の全部又は一部が否定される場合がある。民法この問題の模試受験生正解率 76.8%結果正解解説将来債権譲渡契約の締結時において譲渡の目的債権の発生の可能性が低かったことは、当該契約の効力を当然に左右するものではない。しかし、最判平11.1.29 民法百選Ⅱ〔第8版〕26事件 は、契約締結時における譲渡人の資産状況や、契約当時における譲渡人の営業等の推移に関する見込み、契約内容、契約が締結された経緯等を総合的に考慮し、将来の一定期間内に発生すべき債権を目的とする債権譲渡契約について、当該期間の長さ等の契約内容が譲渡人の営業活動等に対して社会通念に照らし相当とされる範囲を著しく逸脱する制限を加え、又は他の債権者に不当な不利益を与えるものであるとみられるなどの特段の事情の認められる場合には、当該将来債権譲渡契約は公序良俗に反するなどとして、その効力の全部又は一部が否定されることがあることを認めている。よって、本記述は正しい。参考内田Ⅲ253~254頁。
潮見(プラクティス債総)467頁。
中田(債総)642~644頁。 -
刑法判例の立場に従って検討した場合、誰かが怪我をすればいいと思って歩道橋から石を投げ落としたところ、下を歩いていた小学生の頭部に当たったため、同人は脳内出血を起こし、早期に治療を受けなければ死亡する危険のある状態となった。行為者が、悔悟の念を生じて同人を病院に運んだところ、手当てが早かったため死亡するに至らなかった場合、行為者には中止犯が成立する。刑法この問題の模試受験生正解率 42.8%結果正解解説中止犯は、自己の意思により犯罪を「中止した」場合であって、犯罪の完成に至っていないことが必要である。本記述においては、行為者が誰かに怪我を負わせようと思って、現実に小学生に死亡の危険のある傷害を負わせており、既に傷害罪(刑法204条)が成立している。したがって、中止犯は成立しない。よって、本記述は誤りである。参考大コメ(刑法・第3版)(4)119~120頁。
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憲法最高裁判所の判例の趣旨に照らした場合,農業災害補償法が一定の稲作農業者を農業共済組合に当然に加入させる仕組みを採用したことの合憲性は、当該仕組みが国民の主食である米の生産の確保と稲作を行う自作農の経営の保護を目的とすることから、当該仕組みより緩やかな規制によってはその目的を達成することができないか否かによって判断されるべきである。憲法この問題の模試受験生正解率 74.5%結果正解解説判例は、農業災害補償法(平成11年法律第69号による改正前のもの。以下「法」という。)が一定の稲作農業者を農業共済組合に当然に加入させる仕組み(以下「当然加入制」という。)を採用したことの合憲性が問題となった事例において、「法が、水稲等の耕作の業務を営む者でその耕作面積が一定の規模以上のものは農業共済組合の組合員となり当該組合との間で農作物共済の共済関係が当然に成立するという仕組み……を採用した趣旨は、国民の主食である米の生産を確保するとともに、水稲等の耕作をする自作農の経営を保護することを目的」とするものであるとした上で、「当然加入制の採用は、公共の福祉に合致する目的のために必要かつ合理的な範囲にとどまる措置ということができ、立法府の政策的、技術的な裁量の範囲を逸脱するもので著しく不合理であることが明白であるとは認め難い」から、「上記の当然加入制を定める法の規定は、職業の自由を侵害するものとして憲法22条1項に違反するということはできない」としている(最判平17.4.26 平17重判憲法8事件)。このように、同判決は、農業災害補償法が当然加入制を採用したことの合憲性について、最大判昭47.11.22(小売市場事件 憲法百選Ⅰ〔第7版〕91事件)を引用し、明白の原則を適用して合憲の判断を下している。よって、本記述は誤りである。参考芦部(憲法)245頁。
毛利ほか(憲法Ⅱ)296頁。 -
民法16歳の未成年者Aの法定代理人が、Aが法定代理人の同意を得ずに自己が所有する不動産の売買契約を締結したのを知ってから5年間、取消権を行使しなかった場合であっても、Aは、固有の取消権を行使することができる。民法この問題の模試受験生正解率 68.4%結果正解解説未成年者の法定代理人は、未成年者の行為を知った時から、追認をなし得るようになり(民法124条1項、2項1号参照)、その時から5年で取消権が時効によって消滅する(同126条前段)。そして、未成年者の法定代理人の取消権が時効によって消滅すれば、本人の取消権も消滅すると解されている。これは、どちらの取消権も発生原因が同一である上、法律関係を可及的速やかに安定させるという同条の趣旨に沿うからである。したがって、本記述において、未成年者Aの法定代理人が、Aが売買契約を締結したのを知ってから5年間、取消権を行使しなかった場合、法定代理人の取消権が消滅するのに伴い、Aの固有の取消権も消滅する。よって、本記述は誤りである。参考佐久間(総則)228~229頁。
佐久間ほか(民法Ⅰ)257~258頁。
平野(総則)228頁、230~231頁。 -
刑法判例の立場に従って検討した場合、甲は、乙の財物を強取しようと考え、乙に対して客観的に反抗を抑圧するに足りる程度の暴行を加えたところ、乙は、畏怖したものの反抗抑圧状態にはならず、下手に抵抗して怪我でもしたらつまらないと思い、甲に財布を手渡した。この場合、甲には、強盗罪が成立する。刑法この問題の模試受験生正解率 70.5%結果正解解説判例は、強盗罪(刑法236条)と恐喝罪(同249条)の区別は、財物奪取の手段たる暴行・脅迫が、社会通念上一般に被害者の反抗を抑圧するに足りる程度かという客観的基準によるとしている(最判昭24.2.8)。そして、同判決は、被害者に対し反抗抑圧に足りる程度の暴行を加えれば、実際には被害者の反抗抑圧に至らなくても、強盗既遂罪が成立するとしている。したがって、本記述において、甲が客観的に反抗を抑圧するに足りる程度の暴行を加え、その結果財物が交付された以上、甲には、強盗既遂罪が成立する。よって、本記述は正しい。参考山口(各)217頁。
大塚ほか(基本刑法Ⅱ)161頁。
条解刑法756頁。
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憲法国務大臣の任命は天皇により認証されるが、認証は効力要件ではないから、内閣総理大臣が国務大臣を任命した時点で、合議体としての内閣が成立する。憲法この問題の模試受験生正解率 69.3%結果正解解説内閣は、内閣総理大臣及びその他の国務大臣により構成される合議体である(憲法66条1項)。そして、国務大臣の任命(同68条1項本文)は、天皇により認証されるが(同7条5号)、認証は効力要件ではないから、内閣総理大臣による国務大臣の任命によって、合議体としての内閣は成立する。よって、本記述は正しい。参考佐藤幸(日本国憲法論)531頁。
野中ほか(憲法Ⅱ)192頁。 -
民法判例の趣旨に照らした場合,Aの単独親権に服するBが、Aから代理権を与えられていないにもかかわらず、Aに無断でAの代理人と称して、A所有の甲土地につき、Bの代理権の不存在について善意無過失のCと売買契約を締結した場合において、その後、Aの追認を得られなかったときは、Bは、Cに対し、無権代理人の責任を負う。民法この問題の模試受験生正解率 41.7%結果正解解説無権代理人は、本人の追認がなければ、無権代理であることにつき善意無過失の相手方に対し履行又は損害賠償の責任を負うが(民法117条1項、2項1号、2号本文)、無権代理人が制限行為能力者である場合は、その責任を負わない(同項3号)。したがって、本記述において、Aの単独親権に服するBは、未成年者であり(同818条1項参照)、制限行為能力者であるから(同5条1項参照)、Cに対し、無権代理人の責任を負わない。よって、本記述は誤りである。
なお、制限行為能力者が法定代理人の同意を得て無権代理行為をした場合には、無権代理人の責任を負うと解されている。参考佐久間(総則)298~299頁。
佐久間ほか(民法Ⅰ)224~225頁。
我妻・有泉コメ256頁。 -
刑法判例の立場に従って検討した場合、犯罪行為の重さと法定刑が著しく均衡を失する刑罰法規は、罪刑法定主義に反する。刑法この問題の模試受験生正解率 58.9%結果正解解説罪刑法定主義には、刑罰法規の適正性が含まれる。そして、その具体的内容の1つとして、罪刑の均衡が要請される。判例も、「刑罰規定が罪刑の均衡その他種々の観点からして、著しく不合理なものであって、とうてい許容し難いものであるときは、違憲の判断を受けなければならない」として、罪刑均衡の原則を認めている(最大判昭49.11.6 猿払事件上告審 憲法百選Ⅰ〔第7版〕12事件)。よって、本記述は正しい。参考大谷(講義総)63頁。
高橋(総)41頁。
今井ほか(刑法総論)24~25頁。
大塚ほか(基本刑法Ⅰ)18頁。
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憲法最高裁判所の判例の趣旨に照らした場合,集会の用に供される公の施設において、当該公の施設の管理者が、主催者が集会を平穏に行おうとしているのに、その集会の目的や主催者の思想、信条等に反対する者らが、これを実力で阻止し、妨害しようとして紛争を起こすおそれがあることを理由に当該公の施設の利用を拒むことができるのは、警察の警備等によってもなお混乱を防止することができないなど特別な事情がある場合に限られる。憲法この問題の模試受験生正解率 84.8%結果正解解説判例は、死亡した労働組合連合体の幹部について、合同葬を行うために、当該組合連合体が市の福祉会館(以下「本件会館」という。)の使用許可申請をしたところ、内ゲバ殺人である可能性がある旨の報道に照らして、当該組合連合体と対立する者らの妨害による混乱のおそれがあることなどを理由に不許可処分となったことから、当該組合連合体が市に対して国家賠償請求訴訟を提起した事例において、地方自治法「244条に定める普通地方公共団体の公の施設として、本件会館のような集会の用に供する施設が設けられている場合、住民等は、その施設の設置目的に反しない限りその利用を原則的に認められることになるので、管理者が正当な理由もないのにその利用を拒否するときは、憲法の保障する集会の自由の不当な制限につながるおそれがある」とした上で、「主催者が集会を平穏に行おうとしているのに、その集会の目的や主催者の思想、信条等に反対する者らが、これを実力で阻止し、妨害しようとして紛争を起こすおそれがあることを理由に公の施設の利用を拒むことができるのは、……公の施設の利用関係の性質に照らせば、警察の警備等によってもなお混乱を防止することができないなど特別な事情がある場合に限られる」としている (最判平8.3.15 上尾市福祉会館事件 地方自治百選〔第4版〕57事件、平8重判憲法6事件)。よって、本記述は正しい。参考佐藤幸(日本国憲法論)322~323頁。
野中ほか(憲法Ⅰ)368頁。 -
民法判例の趣旨に照らした場合,夫婦の一方は、他方の兄弟姉妹の子に対して扶養義務を負うことはあるが、他方の兄弟姉妹の配偶者に対して扶養義務を負うことはない。民法この問題の模試受験生正解率 57.8%結果正解解説直系血族及び兄弟姉妹は、相互に扶養義務を負う(民法877条1項)。また、3親等内の親族間においては、家庭裁判所の審判により扶養義務が生じることがある(同条2項)。夫婦の一方からみて、他方の兄弟姉妹の子は、他方の兄弟姉妹の血族であり3親等の姻族に当たるので、3親等内の親族である(同725条3号)。そのため、他方の兄弟姉妹の子に対しては、家庭裁判所の審判によって扶養義務を負うことがある。これに対して、夫婦の一方からみて、他方の兄弟姉妹の配偶者は、他方の配偶者の血族ではなく、また、本人の血族の配偶者でもないため、姻族に当たらない。そのため、他方の兄弟姉妹の配偶者に対しては扶養義務を負うことはない。よって、本記述は正しい。参考窪田(家族法)42~43頁、341頁。
前田陽ほか(民法Ⅵ)24~26頁、216~217頁。
新基本法コメ(親族)17頁、351~352頁。 -
刑法判例の立場に従って検討した場合、公務員になろうとする者が、その担当すべき職務に関し、請託を受けて、賄賂の収受を約束した後に公務員となったが、結局、賄賂を収受しなかった場合、事前収賄罪(刑法第197条第2項)は成立しない。刑法この問題の模試受験生正解率 60.0%結果正解解説事前収賄罪(刑法197条2項)は、「公務員になろうとする者が、その担当すべき職務に関し、請託を受けて、賄賂を収受し、又はその要求若しくは約束をしたときは、公務員となった場合」に成立する。したがって、公務員になった後、賄賂を収受しなかったとしても、賄賂の収受を約束している以上、事前収賄罪が成立する。よって、本記述は誤りである。参考山口(各)624頁。
大塚ほか(基本刑法Ⅱ)472頁。
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憲法形式的意味の憲法とは、憲法としての法形式に着目した憲法概念であるが、最低限度、その内容が国家の統治の基本を定めたものでなければならない。憲法この問題の模試受験生正解率 53.3%結果正解解説形式的意味の憲法とは、憲法制定権者が制定した法には「憲法」という形式が与えられるという、法形式に着目した憲法概念であり、その内容がどのようなものであるかには関わらない。したがって、その内容が国家の統治の基本を定めたものでなければならないわけではない。よって、本記述は誤りである。参考芦部(憲法)4頁。
野中ほか(憲法Ⅰ)7~8頁。 -
民法判例の趣旨に照らした場合,権利能力なき社団の代表者が社団の名においてした取引上の債務については、社団の財産が第一次的な責任財産となり、構成員各自は、第二次的な責任を負う。民法この問題の模試受験生正解率 57.5%結果正解解説判例は、「権利能力なき社団の代表者が社団の名においてした取引上の債務は、その社団の構成員全員に、1個の義務として総有的に帰属するとともに、社団の総有財産だけがその責任財産となり、構成員各自は、取引の相手方に対し、直接には個人的債務ないし責任を負わない」としている(最判昭48.10.9 民法百選Ⅰ〔第8版〕9事件)。したがって、構成員は、第二次的な責任も負わない。よって、本記述は誤りである。参考佐久間(総則)385頁。
佐久間ほか(民法Ⅰ)99頁。 -
刑法判例の立場に従って検討した場合、強盗殺人被告事件の被告人の弁護人が、上告審係属中に、「真犯人は、被告人ではなく被害者の兄である。」旨の上告趣意書を提出した上、記者会見でそれを発表し、さらに、同内容の本を執筆して出版する行為は、正当な弁護活動であり、正当業務行為として違法性が阻却される。刑法この問題の模試受験生正解率 90.0%結果正解解説判例は、刑事事件の弁護人による真犯人の指摘や公表は訴訟外救援活動であって弁護目的との関連も著しく間接的であり、正当な弁護活動の範囲を超えるものというほかはないとして、名誉毀損罪(刑法230条1項)の成立を認めている(最決昭51.3.23 刑法百選Ⅰ〔第2版〕27事件)。よって、本記述は誤りである。参考山口(総)113頁。
大塚ほか(基本刑法Ⅰ)157~158頁。
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憲法最高裁判所が具体的事件についてある法律を違憲無効と判断した場合の違憲判決の効力について、一般的効力説によると、法的安定性が害され、憲法第14条の平等原則に反する事態も生じるおそれがあり、他方、個別的効力説によると、一種の消極的立法を認めることになるので、国会のみが立法権を行使するという憲法第41条の原則に反するおそれがある。憲法この問題の模試受験生正解率 72.1%結果正解解説最高裁判所が具体的事件において、ある法律を違憲無効と判断した場合の違憲判決の効力について、①違憲無効とされた法律は、客観的無効となるとする一般的効力説と、②違憲無効とされた法律は、当該事件に限って適用が排除されるとする個別的効力説、③違憲無効とされた法律の効力については、法律の定めるところによるとする法律委任説がある。そして、①説に対しては、裁判所が一種の消極的立法を行うことになり、憲法41条に違反するおそれがあるとの批判が、②説に対しては、法的安定性ないし予見可能性が害され、同14条の平等原則に反するおそれがあるとの批判がある。よって、本記述は誤りである。参考芦部(憲法)401~402頁。
佐藤幸(日本国憲法論)719~721頁。
野中ほか(憲法Ⅱ)319~323頁。 -
民法判例の趣旨に照らした場合,債務の不履行について当事者が損害賠償の額を予定している場合であっても、裁判所は、過失相殺により賠償額を減額することができる。民法この問題の模試受験生正解率 72.1%結果正解解説当事者は、債務の不履行について損害賠償の額を予定することができ(民法420条1項)、当事者が損害賠償の額を予定している場合、裁判所は、実際の損害が予定賠償額より過大であったり、過小であったりしても、予定賠償額を増減することは認められない。もっとも、判例は、「当事者が民法420条1項により損害賠償額を予定した場合においても、債務不履行に関し債権者に過失があったときは、特段の事情のない限り、裁判所は、損害賠償の責任及びその金額を定めるにつき、これを斟酌すべきものと解するのが相当である」としている(最判平6.4.21)。よって、本記述は正しい。参考内田Ⅲ201頁。
潮見(プラクティス債総)164頁。
中田(債総)223頁。 -
刑法判例の立場に従って検討した場合、甲は、バスの中で乗客の手提げかばんから財布を窃取した直後、その犯行状況を目撃して甲を逮捕しようとした警察官乙に対し、逮捕を免れる目的で、反抗を抑圧するに足りる程度の暴行を加えたが、乙に逮捕された。この場合、甲には、事後強盗未遂罪が成立する。刑法この問題の模試受験生正解率 70.5%結果正解解説事後強盗罪(刑法238条)の既遂・未遂は、先行する窃盗の既遂・未遂によって決定される(最判昭24.7.9)。また、暴行・脅迫の対象は、窃盗の被害者に限られず、追跡・逮捕しようとした第三者や警察官も含まれる。本記述において、甲は、バスの乗客の財布を窃取し、窃盗が既遂に達した後、甲を逮捕しようとした警察官乙に対して反抗抑圧に足りる程度の暴行を加えているから、事後強盗既遂罪が成立する。したがって、甲には、事後強盗未遂罪(同243条、238条)は成立しない。よって、本記述は誤りである。参考西田(各)192~193頁、195頁。
大塚ほか(基本刑法Ⅱ)189頁、191~192頁。
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憲法最高裁判所の判例の趣旨に照らした場合,尊属殺という特別の罪を設け、刑罰を加重すること自体、一種の身分制道徳の見地に立つものというべきであって、個人の尊厳と人格価値の平等を基本的立脚点とする民主主義の理念と抵触するものであるから、憲法第14条第1項に違反する。憲法この問題の模試受験生正解率 74.0%結果正解解説判例は、削除前の刑法200条所定の尊属殺人罪で起訴された被告人が、同条は憲法14条1項に違反すると主張した事例において、「尊属に対する尊重報恩は、社会生活上の基本的道義というべく、このような自然的情愛ないし普遍的倫理の維持は、刑法上の保護に値する」とし、「尊属の殺害は通常の殺人に比して一般に高度の社会的道義的非難を受けて然るべきであるとして、このことをその処罰に反映させても、あながち不合理であるとはいえない」としながらも、「刑法200条は、尊属殺の法定刑を死刑または無期懲役刑のみに限っている点において、その立法目的達成のため必要な限度を遥かに超え、普通殺に関する刑法199条の法定刑に比し著しく不合理な差別的取扱いをするものと認められ、憲法14条1項に違反して無効である」としている(最大判昭48.4.4 尊属殺重罰規定判決 憲法百選Ⅰ〔第7版〕25事件)。したがって、同判決は、尊属殺という特別の罪を設けること自体、個人の尊厳と人格価値の平等を基本的な立脚点とする民主主義の理念と抵触するとはしていない。よって、本記述は誤りである。
なお、同判決の田中二郎裁判官の意見は、「尊属殺人に関する特別の規定を設けることは、一種の身分制道徳の見地に立つもの」であって、「個人の尊厳と人格価値の平等を基本的な立脚点とする民主主義の理念と牴触するものとの疑いが極めて濃厚である」とし、「尊属殺人に関し、普通殺人と区別して特別の規定を設けること自体が憲法14条1項に抵触する」としている。 -
民法判例の趣旨に照らした場合,抵当権設定者Aは、抵当権の被担保債権に係る債務を弁済した場合、抵当権設定登記の抹消登記をしなければ、第三者に対し、その抵当権の消滅を主張することができない。民法この問題の模試受験生正解率 68.3%結果正解解説参考道垣内(担物)233~234頁。
新基本法コメ(物権)309頁。
我妻・有泉コメ649頁。
新版注釈民法(6)646~647頁。 -
刑法判例の立場に従って検討した場合、公証人である甲は、乙の承諾を得て、業務上取り扱ったことによって知った乙の秘密を、これを知らなかった丙に告知した。この場合、甲には、秘密漏示罪は成立しない。刑法この問題の模試受験生正解率 70.3%結果正解解説秘密漏示罪(刑法134条1項)は、医師、薬剤師、医薬品販売業者、助産師、弁護士、弁護人、公証人又はこれらの職にあった者が、正当な理由がないのに、その業務上取り扱ったことについて知り得た人の秘密を漏らした場合に成立するところ、秘密を他人に知らせることにつき、秘密の主体たる本人の承諾を得ていた場合には、正当な理由が存するといえる。したがって、本記述において、甲には、秘密漏示罪は成立しない。よって、本記述は正しい。参考大谷(講義各)165頁。
大塚ほか(基本刑法Ⅱ)96~97頁。
条解刑法417頁。
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憲法最高裁判所の判例の趣旨に照らした場合,公立図書館は、そこで閲覧に供された図書の著作者にとっては、その思想、意見等を公衆に伝達する公的な場でもあるということができるから、公立図書館の職員が著作者の思想・信条を理由とする不公正な取扱いによって既に閲覧に供された図書を廃棄することは、当該著作者が著作物によってその思想、意見等を公衆に伝達する利益を不当に損なうものといわなければならない。憲法この問題の模試受験生正解率 80.7%結果正解解説判例は、公立図書館の職員が、当該図書館における図書館資料の除籍基準に該当しないにもかかわらず、独断で、蔵書の一部を廃棄したことが、著作者の人格的利益等を侵害しないかが問題となった事例において、「公立図書館は、住民に対して思想、意見その他の種々の情報を含む図書館資料を提供してその教養を高めること等を目的とする公的な場」であり、「他方、公立図書館が、……住民に図書館資料を提供するための公的な場であるということは、そこで閲覧に供された図書の著作者にとって、その思想、意見等を公衆に伝達する公的な場でもあるということができる」から、「公立図書館の図書館職員が閲覧に供されている図書を著作者の思想や信条を理由とするなど不公正な取扱いによって廃棄することは、当該著作者が著作物によってその思想、意見等を公衆に伝達する利益を不当に損なうものといわなければならない」としている(最判平17.7.14 憲法百選Ⅰ〔第7版〕70事件)。よって、本記述は正しい。
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民法A、B及びCが甲土地を共有している場合,判例の趣旨に照らすと,Aは、その持分割合にかかわらず、単独で甲土地の分割を請求することができる。民法この問題の模試受験生正解率 48.0%結果正解解説各共有者は、いつでも共有物の分割を請求することができる(共有物分割請求自由の原則 民法256条1項本文)。持分割合は、共有物分割請求の要件となっていない。よって、本記述は正しい。参考佐久間(物権)214~215頁。
松井(物権)203頁。
石田剛ほか(民法Ⅱ)172頁。 -
刑法判例の立場に従って検討した場合、重過失とは、重大な結果を惹起する危険のある不注意な行為をすることをいう。刑法この問題の模試受験生正解率 75.0%結果正解解説重過失とは、注意義務違反の程度が著しい場合、すなわち、通常の過失に比べ、わずかな注意で結果を予見でき、かつ容易に結果の発生を回避し得るのに、その注意義務を怠った場合をいう。よって、本記述は誤りである。参考西田(総)294頁。
大塚ほか(基本刑法Ⅰ)131~132頁。
条解刑法153頁。
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憲法「主権」の概念は多義的であり、①国家権力(統治権)そのもの、②国家権力の属性としての最高独立性(対外的独立性と対内的最高性)、③国政についての最高決定権という三つの異なる意味で用いられる。「主権」に関して,ポツダム宣言8項にある「日本国ノ主権ハ本州、北海道、九州及四国並ニ吾等ノ決定スル諸小島ニ局限セラルベシ」との部分における「主権」は、②の意味であるとされている。憲法この問題の模試受験生正解率 61.4%結果正解解説「主権」の概念は多義的であり、①国家権力(統治権)そのもの、②国家権力の属性としての最高独立性(対外的独立性と対内的最高性)、③国政についての最高決定権という三つの異なる意味に分類されている。①の「国家権力そのもの」とは、立法権・司法権・行政権等の複数の「国家の権利」ないし「統治活動をなす権力」を総称する観念であり、伝統的に統治権と呼ばれる。②の「国家権力の属性としての最高独立性」とは、国家権力が、対外的には他のいかなる権力主体からも意思形成において制限されず独立であり、対内的には他のいかなる権力主体にも優越して最高であることを意味している。③の「国政についての最高決定権」とは、国内における最高権力、あるいは「国の政治の在り方を最終的に決定する力又は権威」を意味する。ポツダム宣言8項の「日本国ノ主権ハ本州、北海道、九州及四国並ニ吾等ノ決定スル諸小島ニ局限セラルベシ」との部分における「主権」は、①国家権力(統治権)そのものを意味するとされている。よって、本記述は誤りである。参考芦部(憲法)39~40頁。
芦部(憲法学Ⅰ)220~223頁。 -
民法判例の趣旨に照らした場合,民法第724条第1号にいう被害者が損害を知った時とは、被害者が損害の発生を現実に認識した時をいう。民法この問題の模試受験生正解率 56.2%結果正解解説判例は、民法724条は、不法行為に基づく法律関係が、未知の当事者間に、予期しない事情に基づいて発生することがあることに鑑み、被害者による損害賠償請求権の行使を念頭に置いて、消滅時効の起算点に関して特則を設けたのであるから、同条1号にいう「損害及び加害者を知った時」とは、被害者において、加害者に対する損害賠償請求が事実上可能な状況の下に、その可能な程度にこれらを知った時を意味するとした上で、同号にいう被害者が損害を知った時とは、被害者が損害の発生を現実に認識した時をいうとしている(最判平14.1.29 平14重判民法9事件)。よって、本記述は正しい。参考窪田(不法行為)501頁。
潮見(基本講義・債各Ⅱ)138~139頁。
橋本ほか(民法Ⅴ)244頁。 -
刑法判例の立場に従って検討した場合、甲は、乙との間でVを殺害することを共謀し、その後、乙がVを殺害した。甲と乙の共謀の内容が、仮にVとけんかになる等の事態になればVの殺害もやむを得ないというものであった場合でも、甲には、殺人罪の共同正犯が成立し得る。刑法この問題の模試受験生正解率 82.8%結果正解解説判例は、本記述と同様の事例において、「謀議された計画の内容においては被害者の殺害を一定の事態の発生にかからせていたとしても、そのような殺害計画を遂行しようとする被告人の意思そのものは確定的であったのであり、被告人は被害者の殺害の結果を認容していたのであるから、被告人の故意の成立に欠けるところはない」として、殺人罪の共同正犯の成立を認めている(最決昭56.12.21 刑法百選Ⅰ〔第2版〕46事件)。したがって、甲には、殺人罪の共同正犯が成立し得る。よって、本記述は正しい。参考高橋(総)188頁。
新基本法コメ(刑法)118頁。
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憲法最高裁判所の判例の趣旨に照らした場合,憲法第38条第1項は、自己が刑事上の責任を問われるおそれのある事項について供述を強要されないことを保障するとともに、その実効性を担保するため、供述拒否権の告知を義務付けている。憲法この問題の模試受験生正解率 56.9%結果正解解説判例は、国税犯則取締法(国税通則法に編入されることにより、平成30年廃止)に基づく質問調査に憲法38条1項の供述拒否権の保障が及ぶかどうかが問題となった事例において、「国税犯則取締法上の質問調査の手続は、犯則嫌疑者については、自己の刑事上の責任を問われるおそれのある事項についても供述を認めることになる」ので、「憲法38条1項の規定による供述拒否権の保障が及ぶ」とするものの、同「項は供述拒否権の告知を義務づけるものではなく、右規定による保障の及ぶ手続について供述拒否権の告知を要するものとすべきかどうかは、その手続の趣旨・目的等により決められるべき立法政策の問題と解される」としている(最判昭59.3.27 憲法百選Ⅱ〔第7版〕119事件)。したがって、同項は、供述拒否権の告知を義務付けていない。よって、本記述は誤りである。
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民法判例の趣旨に照らした場合,相手方に対する意思表示について第三者が詐欺を行った場合において、相手方がその事実を知ることができたときは、その意思表示を取り消すことができる。民法この問題の模試受験生正解率 64.3%結果正解解説ある者に対する意思表示につき、第三者が詐欺を行った場合においては、相手方がその事実を知り、又は知ることができたときに限り、その意思表示を取り消すことができる(民法96条2項)。詐欺を行っていない意思表示の相手方の信頼を保護するため、取消しの範囲を限定したものである。よって、本記述は正しい。参考佐久間(総則)170~171頁。
佐久間ほか(民法Ⅰ)184頁。 -
刑法判例の立場に従って検討した場合、身の代金目的略取誘拐罪を犯した者が、公訴が提起される前に被拐取者を安全な場所に解放した場合、その刑は必要的に減軽される。刑法この問題の模試受験生正解率 24.1%結果正解解説身の代金目的略取誘拐罪を犯した者が、公訴提起される前に、被拐取者を安全な場所に解放した場合、その刑は必要的に減軽される(刑法228条の2)。同条は、同罪においては、被拐取者の生命、身体の危険が大きいことから、その安全を図るために政策的に必要的減軽を定めたものである。よって、本記述は正しい。参考西田(各)95頁。
大塚ほか(基本刑法Ⅱ)68頁。
条解刑法692頁。
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憲法愛媛県玉串料訴訟判決(最高裁判所平成9年4月2日大法廷判決、民集51巻4号1673頁)に関して,この判決は、一般に、神社自体がその境内において挙行する恒例の重要な祭祀に際し、県が公金を支出して玉串料等を奉納することは、時代の推移によって既にその宗教的意義が希薄化し、慣習化した社会的儀礼にすぎないものになっているとはいえないとした。憲法この問題の模試受験生正解率 80.9%結果正解解説本問の判決は、問題となった県の公金支出行為について、「県が特定の宗教団体の挙行する重要な宗教上の祭祀にかかわり合いを持ったということが明らかである」とした上で、「一般に、神社自体がその境内において挙行する恒例の重要な祭祀に際して右のような玉串料等を奉納することは、建築主が主催して建築現場において土地の平安堅固、工事の無事安全等を祈願するために行う儀式である起工式の場合とは異なり、時代の推移によって既にその宗教的意義が希薄化し、慣習化した社会的儀礼にすぎないものになっているとまでは到底いうことができず、一般人が本件の玉串料等の奉納を社会的儀礼の一つにすぎないと評価しているとは考え難い」としている。よって、本記述は正しい。
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民法判例の趣旨に照らした場合,債務者が弁済の準備ができない経済状態にあり、口頭の提供ができない場合であっても、債権者が契約の存在を否定するなど、弁済を受領しない意思が明確と認められるときは、債務者は、口頭の提供をしなくても債務不履行の責任を免れる。民法この問題の模試受験生正解率 47.4%結果正解解説判例は、債務者が口頭の提供をしても、債権者が契約の存在を否定するなど弁済を受領しない意思を明確にしている場合には、口頭の提供をしなくても債務不履行責任を負わないが(最大判昭32.6.5)、「弁済の準備ができない経済状態にあるため言語上の提供もできない債務者は、債権者が弁済を受領しない意思が明確と認められるときでも、弁済の提供をしないことによって債務不履行の責を免かれない」としている(最判昭44.5.1 民法百選Ⅱ〔初版〕37事件)。よって、本記述は誤りである。参考内田Ⅲ106~107頁。
潮見(プラクティス債総)291~292頁。
中田(債総)368頁。 -
刑法判例の立場に従って検討した場合、現行刑法上、過失犯の未遂を処罰する規定は存在しない。刑法この問題の模試受験生正解率 75.0%結果正解解説刑法典上、過失犯については、未遂を処罰する規定は存在しない。過失犯についてその未遂犯を処罰することは著しい処罰の拡張となり妥当でないからである。よって、本記述は正しい。参考山口(総)280頁。
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憲法最高裁判所の判例の趣旨に照らした場合,裁判所によるテレビフィルムの提出命令が許されるか否かを判断するに当たり、当該フィルムを証拠として提出させられることによる報道機関の不利益が考慮されるが、既に放映されたものを含む放映のために準備されたフィルムが証拠として使用されることで報道機関が受ける不利益は、報道の自由そのものではなく、将来の取材の自由が妨げられるおそれがあるというにとどまる。憲法この問題の模試受験生正解率 78.3%結果正解解説判例は、テレビ放送会社が学生と機動隊との衝突事件の現場を撮影したテレビフィルム(以下「本件フィルム」という。)に対して裁判所が発した提出命令が表現の自由を保障した憲法21条に違反するか否かが争われた事例において、同条の精神に照らし十分尊重に値する取材の自由も「公正な裁判の実現というような憲法上の要請があるときは、ある程度の制約を受けることのあることも否定することができない」とした上で、公正な刑事裁判の実現のために報道機関が取材活動によって得たものに対して提出命令を発することにより取材の自由を制限することが許されるか否かは、「審判の対象とされている犯罪の性質、態様、軽重および取材したものの証拠としての価値、ひいては、公正な刑事裁判を実現するにあたっての必要性の有無を考慮するとともに、他面において取材したものを証拠として提出させられることによって報道機関の取材の自由が妨げられる程度およびこれが報道の自由に及ぼす影響の度合その他諸般の事情を比較衡量して決せられるべき」であるとし、本件フィルムは、「すでに放映されたものを含む放映のために準備されたものであり、それが証拠として使用されることによって報道機関が蒙る不利益は、報道の自由そのものではなく、将来の取材の自由が妨げられるおそれがあるというにとどまる」としている(最大決昭44.11.26 博多駅事件 憲法百選Ⅰ〔第7版〕73事件)。よって、本記述は正しい。
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民法判例の趣旨に照らした場合,留置権者が留置権を主張して目的物の返還を拒むとともに、被担保債権について履行を求めた場合、被担保債権の消滅時効の完成が猶予される。民法この問題の模試受験生正解率 62.3%結果正解解説留置権の行使は、債権の消滅時効の進行を妨げない(民法300条)。留置権を行使して、目的物の留置を継続していても、被担保債権を行使していることにはならないからである。しかし、留置権を主張して、目的物の返還を拒むと同時に、被担保債権の履行を求めれば、「催告」として時効の完成が猶予される(同150条1項)。よって、本記述は正しい。参考内田Ⅲ672~673頁。
道垣内(担物)35頁。
松井(担物)152頁。
新・コンメ民法(財産法)463頁。 -
刑法判例の立場に従って検討した場合、不作為犯は、結果発生を防止しなければならない義務が法律上の規定に基づくものでなければ、成立する余地はない。刑法この問題の模試受験生正解率 64.0%結果正解解説判例は、「シャクティ治療」と称する独自治療を唱導していた被告人が、その信奉者から重篤な患者である親族に対する「シャクティ治療」を依頼され、同患者を入院中の病院から運び出させた上、必要な医療措置を受けさせないまま放置した事例において、「被告人は、自己の責めに帰すべき事由により患者の生命に具体的な危険を生じさせた上、患者が運び込まれたホテルにおいて、被告人を信奉する患者の親族から、重篤な患者に対する手当てを全面的にゆだねられた立場にあったものと認められる。その際、被告人は、患者の重篤な状態を認識し、これを自らが救命できるとする根拠はなかったのであるから、直ちに患者の生命を維持するために必要な医療措置を受けさせる義務を負っていたものというべきである」とし(最決平17.7.4 刑法百選Ⅰ〔第8版〕6事件)、先行行為、保護の引受け、排他的支配を根拠に、作為義務(直ちに患者の生命を維持するために必要な医療措置を受けさせる義務)があったとしており、法律上の規定から作為義務を導いてはいない。したがって、不作為犯は、結果発生を防止しなければならない義務が法律上の規定に基づくものでない場合であっても、成立する余地がある。よって、本記述は誤りである。参考西田(総)126~129頁。
大塚ほか(基本刑法Ⅰ)85~86頁。
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憲法最高裁判所の判例の趣旨に照らした場合,憲法第8章の地方自治に関する規定の趣旨に鑑みれば、憲法第93条第2項にいう「住民」とは、地方公共団体の区域内に住所を有する日本国民のみを意味するものとは解されないことから、法律をもって、その居住する地域の地方公共団体と特段に緊密な関係を持つに至った外国人に地方公共団体の長、その議会の議員等に対する選挙権を付与する措置を講ずることは、憲法上禁止されているものではない。憲法この問題の模試受験生正解率 53.0%結果正解解説判例は、定住外国人に地方公共団体の選挙権を認めない地方自治法の規定が、憲法前文、14条、15条、93条2項に反するかが問題となった事例において、同15条1項の「規定は、国民主権の原理に基づき、公務員の終局的任免権が国民に存することを表明したものにほかならないところ、主権が「日本国民」に存するものとする憲法前文及び1条の規定に照らせば、憲法の国民主権の原理における国民とは、日本国民すなわち我が国の国籍を有する者を意味することは明らかである」とした上で、「前記の国民主権の原理及びこれに基づく憲法15条1項の規定の趣旨に鑑み、地方公共団体が我が国の統治機構の不可欠の要素を成すものであることをも併せ考えると、憲法93条2項にいう「住民」とは、地方公共団体の区域内に住所を有する日本国民を意味するものと解するのが相当であり、右規定は、我が国に在留する外国人に対して、地方公共団体の長、その議会の議員等の選挙の権利を保障したものということはできない」としている(最判平7.2.28 憲法百選Ⅰ〔第7版〕3事件)。よって、本記述は誤りである。
なお、同判決は、「憲法第8章の地方自治に関する規定は、民主主義社会における地方自治の重要性に鑑み、住民の日常生活に密接な関連を有する公共的事務は、その地方の住民の意思に基づきその区域の地方公共団体が処理するという政治形態を憲法上の制度として保障しようとする趣旨に出たものと解されるから、我が国に在留する外国人のうちでも永住者等であってその居住する区域の地方公共団体と特段に緊密な関係を持つに至ったと認められるものについて、その意思を日常生活に密接な関連を有する地方公共団体の公共的事務の処理に反映させるべく、法律をもって、地方公共団体の長、その議会の議員等に対する選挙権を付与する措置を講ずることは、憲法上禁止されているものではない」としている。 -
民法本人が後見開始の審判を受けた場合、委任による代理権は消滅する。民法この問題の模試受験生正解率 68.1%結果正解解説本人に生じた事由により代理権が消滅するのは、本人が死亡した場合のみであり(民法111条1項1号)、本人が後見開始の審判(同7条)を受けても代理権は消滅しない。また、委任による代理権は、委任の終了によって消滅するところ(同111条2項)、委任者(本人)が後見開始の審判を受けたことは、委任の終了事由とはされていない(同653条参照)。よって、本記述は誤りである。参考佐久間(総則)256頁。
佐久間ほか(民法Ⅰ)198頁。 -
刑法判例の立場に従って検討した場合、緊急避難の要件である「生じた害が避けようとした害の程度を超えなかった場合」には、避難行為によって生じた害が、避けようとした害と同程度の場合も含まれる。刑法この問題の模試受験生正解率 80.5%結果正解解説緊急避難の要件である「生じた害が避けようとした害の程度を超えなかった場合」(刑法37条1項本文)とは、避けようとした害が避難行為によって生じた害と同程度であるか、又は、優越する場合をいう。よって、本記述は正しい。参考山口(総)154~155頁。
大塚ほか(基本刑法Ⅰ)211頁。
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憲法判例は、政党がその所属党員に対してした除名その他の処分の当否について、裁判所は、原則として適正な手続にのっとってされたか否かを審査して判断すべきであり、一般市民としての権利利益を侵害する場合に限り処分内容の当否を審査することができるとしている。憲法この問題の模試受験生正解率 42.4%結果正解解説判例は、政党が除名処分を受けた元党役員に対し、当該党役員に利用させてきた家屋の明渡しを求めた事例において、「政党の結社としての自主性にかんがみると、政党の内部的自律権に属する行為は、法律に特別の定めのない限り尊重すべきであるから、政党が組織内の自律的運営として党員に対してした除名その他の処分の当否については、原則として自律的な解決に委ねるのを相当とし、したがって、政党が党員に対してした処分が一般市民法秩序と直接の関係を有しない内部的な問題にとどまる限り、裁判所の審判権は及ばない」とした上で、「右処分が一般市民としての権利利益を侵害する場合であっても、右処分の当否は、当該政党の自律的に定めた規範が公序良俗に反するなどの特段の事情のない限り右規範に照らし、右規範を有しないときは条理に基づき、適正な手続に則ってされたか否かによって決すべきであり、その審理も右の点に限られる」としている(最判昭63.12.20 憲法百選Ⅱ〔第7版〕183事件)。したがって、政党がその所属党員に対してした除名その他の処分の当否については、一般市民法秩序と直接の関係を有しない限り、裁判所の審判権は及ばず、当該処分が一般市民としての権利利益を侵害する場合でも、処分内容の当否を審査することはできない。よって、本記述は誤りである。
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民法判例の趣旨に照らした場合,国が国家公務員に対して負担する安全配慮義務に違反したことを理由として損害賠償を請求する訴訟においては、原告が、その義務内容を特定し、かつ、義務違反に該当する事実を主張立証する責任を負う。民法この問題の模試受験生正解率 52.3%結果正解解説判例は、「国が国家公務員に対して負担する安全配慮義務に違反し、右公務員の生命、健康等を侵害し、同人に損害を与えたことを理由として損害賠償を請求する訴訟において、右義務の内容を特定し、かつ、義務違反に該当する事実を主張・立証する責任は、国の義務違反を主張する原告にある、と解するのが相当である」としている(最判昭56.2.16 民法百選Ⅱ〔第2版〕3事件)。よって、本記述は正しい。参考内田Ⅲ154頁。
中田(債総)139頁。 -
刑法判例の立場に従って検討した場合、甲は、日本国外で販売しようと考え、日本国内において、わいせつな写真を保管し、所持した。この場合、甲には、わいせつ図画有償頒布目的所持罪が成立する。刑法この問題の模試受験生正解率 74.7%結果正解解説判例は、刑法175条2項にいう「有償で頒布する目的」とは、国内における有償頒布目的を意味するとした上で、わいせつ図画等を国内で所持していた場合でも、国外での有償頒布目的があったにすぎないときには、同項の罪は成立しないとしている(最判昭52.12.22 刑法百選Ⅱ〔第5版〕100事件)。したがって、本記述において、甲にわいせつ図画有償頒布目的所持罪(同項)は成立しない。よって、本記述は誤りである。参考山口(各)514頁。
大塚ほか(基本刑法Ⅱ)456頁。
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憲法憲法第89条後段の「公の支配」の意義に関し、国又は地方公共団体が当該事業の予算を定め、その執行を監督し、更にその人事に関与するなど、その事業の根本的方向に重大な影響を及ぼすことのできる権力を有することを要すると解する見解は、同条後段の趣旨を私的事業の自主性を確保するために公権力による干渉の危険を除こうとするところに求める立場と結び付く。憲法この問題の模試受験生正解率 60.2%結果正解解説憲法89条後段の趣旨については、必ずしも明確ではなく、学説上も見解が分かれている。本記述の見解は、同条後段の趣旨について、私的事業の自主性を確保するために公権力による干渉の危険を除こうとするところに求める立場(自主性確保説)である。この見解は、同条後段の「公の支配」の意義について、国又は地方公共団体が当該事業の予算を定め、その執行を監督し、更にその人事に関与するなど、その事業の根本的方向に重大な影響を及ぼすことのできる権力を有することを要すると解する見解(厳格説)に立つとされる。これにより、国が財政的援助をする以上は事業の自主性を認めず、事業の自主性を認める以上は援助しないと憲法が割り切っていると解することになる。よって、本記述は正しい。参考芦部(憲法)375~376頁。
佐藤幸(日本国憲法論)573~574頁。
野中ほか(憲法Ⅱ)343~346頁。 -
民法判例の趣旨に照らした場合,Bは、Aから甲動産を詐取してCに売却し、Cは、甲動産がBの所有物であると過失なく信じて、現実の引渡しを受けた。この場合、Aは、甲動産を詐取された時から2年以内であれば、Cに対し、甲動産の返還を求めることができる。民法この問題の模試受験生正解率 53.9%結果正解解説民法193条は、同192条が定める要件を満たした場合であっても、占有物が「盗品又は遺失物」である場合、被害者又は遺失者は、盗難又は遺失の時から2年間、その物の回復請求をすることができるとしている。これは、「盗品又は遺失物」のように、被害者又は遺失者の意思によらないで占有を離れた物について、特に同人の権利を保護するためのものである。詐欺により物の占有を失った場合には、あくまで占有者がその意思に基づいて物の占有を移転していることから、同193条の適用又は類推適用は認められないと解されており、判例も、同条の適用を否定している(大判明35.11.1)。したがって、本記述において、Aは、甲動産を詐取された時から2年以内であっても、Cに対し、同条に基づく回復請求として甲動産の返還を求めることはできない。よって、本記述は誤りである。参考佐久間(物権)156頁。
松井(物権)143頁。
石田剛ほか(民法Ⅱ)103~104頁。
新注釈民法(5)187頁。 -
刑法判例の立場に従って検討した場合、精神に障害のない場合、心神喪失とは認められない。
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憲法最高裁判所の判例の趣旨に照らした場合,現在、学校教育法に規定する小学校、中学校などの義務教育諸学校においては、法律により、教科書は無償で配布されているが、当該法律を改正して教科書を有償としても、義務教育の無償を規定する憲法第26条第2項後段に違反しない。憲法この問題の模試受験生正解率 61.1%結果正解解説判例は、公立小学校に子を在学させている親が、義務教育期間中の教科書代金の徴収行為の取消し等を求めた事例において、「憲法26条2項後段の「義務教育は、これを無償とする。」という意義は、国が義務教育を提供するにつき有償としないこと、換言すれば、子女の保護者に対しその子女に普通教育を受けさせるにつき、その対価を徴収しないことを定めたものであり、教育提供に対する対価とは授業料を意味するものと認められるから、同条項の無償とは授業料不徴収の意味と解するのが相当である」としつつ、「国が保護者の教科書等の費用の負担についても、これをできるだけ軽減するよう配慮、努力することは望ましいところであるが、それは、国の財政等の事情を考慮して立法政策の問題として解決すべき事柄であって、憲法の前記法条の規定するところではない」としている(最大判昭39.2.26 教科書費国庫負担請求事件 憲法百選Ⅱ〔第7版〕A11事件)。現在、義務教育諸学校の教科用図書の無償措置に関する法律等によって、義務教育に係る教科書も無償で配布されているが、同判決によれば、これは憲法上の要請ではないから、当該法律を改正して有償としても、義務教育の無償を規定する憲法26条2項後段に違反しない。よって、本記述は正しい。参考渡辺ほか(憲法Ⅰ)393~394頁。
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民法判例の趣旨に照らした場合,袋地を買い受けた者は、所有権移転登記を経由していなくても、袋地を囲んでいる土地(以下「囲繞地」という。)の所有者ないし利用権者に対し、公道に至るため、その囲繞地の通行権を主張することができる。民法この問題の模試受験生正解率 74.2%結果正解解説判例は、「袋地の所有権を取得した者は、所有権取得登記を経由していなくても、囲繞地の所有者ないしこれにつき利用権を有する者に対して、囲繞地通行権を主張することができる」としている(最判昭47.4.14 民法百選Ⅰ〔第5版新法対応補正版〕56事件)。その理由として、同判決は、民法の相隣関係の規定(同209条~238条)は、いずれも、相隣接する不動産相互間の利用の調整を目的とする規定であって、同210条の囲繞地通行権も、相隣関係にある所有権共存の一態様として、囲繞地の所有者に一定の範囲の通行受忍義務を課し、袋地の効用を高めようとするもので、「このような趣旨に照らすと、袋地の所有者が囲繞地の所有者らに対して囲繞地通行権を主張する場合は、不動産取引の安全保護をはかるための公示制度とは関係がない」ことを挙げている。よって、本記述は正しい。参考佐久間(物権)168頁。
松井(物権)167頁。
石田剛ほか(民法Ⅱ)137頁。 -
刑法判例の立場に従って検討した場合、甲は、乙が覚醒剤の密輸入を企てていることを知りながら、その資金として、同人に対し金員を供与した。その後、乙は、当該金員を用いて、2度にわたり覚醒剤を密輸入した。この場合、甲には、2個の覚醒剤輸入罪の幇助犯が成立し、両罪は併合罪となる。刑法この問題の模試受験生正解率 60.6%結果正解解説判例は、「幇助罪は正犯の犯行を幇助することによって成立するものであるから、成立すべき幇助罪の個数については、正犯の罪のそれに従って決定される」とした上で、「幇助罪が数個成立する場合において、それらが刑法54条1項にいう1個の行為によるものであるか否かについては、……幇助行為それ自体についてこれをみるべき」としている(最決昭57.2.17 刑法百選Ⅰ〔第8版〕107事件)。したがって、本記述において、甲には2個の覚醒剤輸入罪の幇助犯(覚醒剤取締法13条、41条1項、刑法62条1項)が成立し、幇助行為は金員供与1個であるから、両罪は観念的競合(同54条1項前段)となる。よって、本記述は誤りである。参考山口(総)409~410頁。
大塚ほか(基本刑法Ⅰ)415頁。
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憲法最高裁判所の判例の趣旨に照らした場合,インターネットには、利用者の対等性と反論の容易性という特徴があるということに加え、個人利用者がインターネット上で発信した情報の信頼性は一般に低いものと受け止められていることにも鑑みると、個人利用者がインターネットを使って名誉毀損的表現に及んだ場合には、当該個人利用者が、摘示した事実が真実でないことを知りながら発信したか、あるいは、インターネットの個人利用者に対して要求される水準を満たす調査を行わず真実かどうか確かめないで発信したといえるときに初めて名誉毀損罪が成立する。憲法この問題の模試受験生正解率 80.7%結果正解解説判例は、個人が、インターネット上に自己が開設したホームページにおいて、ある会社につきその名誉を毀損する記載をしたとして起訴された事例において、「所論は、被告人は、一市民として、インターネットの個人利用者に対して要求される水準を満たす調査を行った上で、本件表現行為を行っており、インターネットの発達に伴って表現行為を取り巻く環境が変化していることを考慮すれば、被告人が摘示した事実を真実と信じたことについては相当の理由があると解すべきであって、被告人には名誉毀損罪は成立しない」と主張するが、「個人利用者がインターネット上に掲載したものであるからといって、おしなべて、閲覧者において信頼性の低い情報として受け取るとは限らないのであって、相当の理由の存否を判断するに際し、これを一律に、個人が他の表現手段を利用した場合と区別して考えるべき根拠はない。そして、インターネット上に載せた情報は、不特定多数のインターネット利用者が瞬時に閲覧可能であり、これによる名誉毀損の被害は時として深刻なものとなり得ること、一度損なわれた名誉の回復は容易ではなく、インターネット上での反論によって十分にその回復が図られる保証があるわけでもないことなどを考慮すると、インターネットの個人利用者による表現行為の場合においても、他の場合と同様に、行為者が摘示した事実を真実であると誤信したことについて、確実な資料、根拠に照らして相当の理由があると認められるときに限り、名誉毀損罪は成立しないものと解するのが相当であって、より緩やかな要件で同罪の成立を否定すべきものとは解されない」としている(最決平22.3.15 ラーメンフランチャイズ事件 メディア百選〔第2版〕111事件)。したがって、同決定は、インターネットの個人利用者による表現行為についても、他の場合と同様の名誉毀損法理(相当性の理論)が妥当するとしている。よって、本記述は誤りである。参考芦部(憲法)194~195頁。
野中ほか(憲法Ⅰ)401頁。 -
民法判例の趣旨に照らした場合,建物の賃借人が、造作引渡債務との同時履行の抗弁権の付いた賃貸人に対する造作代金支払債権を自働債権とし、賃料債権を受働債権として相殺をすることは、許されない。民法この問題の模試受験生正解率 54.3%結果正解解説自働債権に抗弁権が付着している場合には、相殺を認めると自働債権の債務者が有する抗弁権を一方的に奪うことになるから、相殺は許されない。判例は、建物の賃借人が造作買取請求権(借地借家法33条1項)を行使することによって発生する造作代金支払債務は、造作引渡債務と対価的関係に立つとして、賃貸人は賃借人に対して、造作の引渡しがあるまで造作代金の支払を拒むことができる同時履行の抗弁権を有するとした上で、賃借人が賃貸人に対し、造作代金支払債権を自働債権、賃料その他の債権を受働債権として相殺することは許されないとしている(大判昭13.3.1)。よって、本記述は正しい。参考中田(債総)473~474頁。
潮見(新債総Ⅱ)283頁。
論点体系判例民法(5)302~303頁。 -
刑法判例の立場に従って検討した場合、甲は、妻乙が殺人罪を犯したことを知り、逮捕を免れさせるため、同人を自己の所有する別荘にかくまった。この場合、甲には、犯人蔵匿罪が成立するが、親族による犯罪に関する特例の適用により、甲は、必ずその刑を免除される。刑法この問題の模試受験生正解率 48.8%結果正解解説犯人蔵匿罪(刑法103条前段)の行為は、犯人等を蔵匿することであるが、「蔵匿」とは場所を提供してかくまうことをいう。本記述では、甲は殺人罪(同199条)を犯した乙を自己が所有する別荘にかくまっており、蔵匿したといえる。そのため、甲には犯人蔵匿罪が成立する。もっとも、乙は甲の妻であるから、親族による犯罪に関する特例(同105条)が適用され、その刑を免除することができる(裁量的免除)。したがって、甲は必ずその刑を免除されるわけではない。よって、本記述は誤りである。参考西田(各)483頁、490頁。
大塚ほか(基本刑法Ⅱ)515~516頁、530頁。
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憲法内閣は、憲法第73条第1号により法律を誠実に執行する義務を負うから、たとえ内閣が違憲と判断する法律であっても、その法律を執行しなければならない。憲法この問題の模試受験生正解率 65.2%結果正解解説憲法73条1号は、内閣が「法律を誠実に執行」する旨を規定している。「誠実に執行」とは、たとえ内閣の賛成できない法律であっても、法律の目的にかなった執行を行うことを義務付ける趣旨である。つまり、法律が違憲かどうかについては、国会の判断が内閣のそれに優先し、国会で合憲であるものとして制定した以上、内閣はその判断に拘束されるということである。したがって、内閣は、自らが違憲と判断する法律であっても、その法律を執行しなければならない。よって、本記述は正しい。参考佐藤幸(日本国憲法論)541~542頁。
渡辺ほか(憲法Ⅱ)285~286頁。 -
民法判例の趣旨に照らした場合,建物の賃借人は、当該建物の賃貸人による敷地所有権の取得時効を援用することができる。民法この問題の模試受験生正解率 68.1%結果正解解説判例は、係争地の所有権を時効取得すべき者又はその承継人から、その土地上に同人らが所有する建物を賃借しているにすぎない者は、当該土地の取得時効の完成によって直接利益を受ける者ではないから、当該土地の所有権の取得時効を援用することはできないとしている(最判昭44.7.15)。よって、本記述は誤りである。参考佐久間(総則)434頁。
佐久間ほか(民法Ⅰ)322~323頁。 -
刑法判例の立場に従って検討した場合、「自己若しくは第三者の利益を図る目的」は、本人の利益を図る目的が併存する場合であっても認められ得る。刑法この問題の模試受験生正解率 80.6%結果正解解説背任罪が成立するためには、他人のためにその事務を処理する者が、「自己若しくは第三者の利益を図り又は本人に損害を加える目的」(図利・加害目的)をもって、その任務に背く行為をすることが必要である。図利・加害目的と本人図利目的とが併存する場合には、両目的の主従によって背任罪の成否が決定されると解されており、判例も、両者が併存する事例において、本人の利益を図る目的が「決定的な動機」ではなかったとして、図利・加害目的を認めている(最決平10.11.25 刑法百選Ⅱ〔第8版〕73事件)。したがって、「自己若しくは第三者の利益を図る目的」は、本人の利益を図る目的が併存する場合であっても認められ得る。よって、本記述は正しい。参考西田(各)278~279頁。
大塚ほか(基本刑法Ⅱ)326~329頁。
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憲法会計年度開始前までに予算が成立しない場合,内閣は,前年度の予算を施行することができるし,暫定予算を作成し,国会に提出することもできる。憲法この問題の模試受験生正解率 45.3%結果正解解説憲法86条は,国の収入及び支出が,毎年,予算という形式で国会に提出され審議・議決されなければならないという近代国家に通ずる大原則を定めたものである。もっとも,国会での審議が遅れ議決されないなどの事情により,会計年度開始前までに本予算が成立しない場合があり得る。大日本帝国憲法は,予算が会計年度開始前までに成立しない場合に備えて,前年度の予算の施行を認めていたが(同71条),これでは財政における国会中心主義に反する。そこで,日本国憲法の下では,内閣は,必要に応じて,一会計年度のうちの一定期間を対象とする暫定予算を作成し,国会に提出することができるとする,暫定予算制を採用している(財政法30条1項)。よって,本記述は誤りである。参考芦部(憲法)373~375頁。
佐藤幸(日本国憲法論)581頁,585頁。
渡辺ほか(憲法Ⅱ)413~414頁。 -
民法判例の趣旨に照らした場合,代位弁済者が弁済による代位によって取得した担保権を実行する場合において,その被担保債権は,代位弁済者の債務者に対する求償権である。民法この問題の模試受験生正解率 56.4%結果正解解説判例は,「弁済による代位の制度は,代位弁済者が債務者に対して取得する求償権を確保するために,法の規定により弁済によって消滅すべきはずの債権者の債務者に対する債権(以下「原債権」という。)及びその担保権を代位弁済者に移転させ,代位弁済者がその求償権の範囲内で原債権及びその担保権を行使することを認める制度であり,したがって,代位弁済者が弁済による代位によって取得した担保権を実行する場合において,その被担保債権として扱うべきものは,原債権であって,保証人の債務者に対する求償権でないことはいうまでもない」としている(最判昭59.5.29 民法百選Ⅱ〔第8版〕36事件)。よって,本記述は誤りである。参考潮見(プラクティス債総)360~361頁。
中田(債総)417~418頁。 -
刑法判例の立場に従って検討した場合,盗品等有償譲受け罪の犯人が本犯である窃盗犯人の配偶者である場合,当該盗品等有償譲受け罪の犯人について,その刑は免除される。刑法この問題の模試受験生正解率 53.4%結果正解解説配偶者との間又は直系血族,同居の親族若しくはこれらの者の配偶者との間で盗品等に関する罪を犯した者は,その刑が免除されるところ(刑法257条1項),判例は,同項の適用について,当該親族関係は,本犯の犯人と盗品等関与罪の犯人との間に存在することが必要であるとしている(最決昭38.11.8)。したがって,盗品等有償譲受け罪の犯人が本犯である窃盗犯人の配偶者である場合,その刑は免除される。よって,本記述は正しい。参考西田(各)299頁。
大塚ほか(基本刑法Ⅱ)353頁。
条解刑法849頁。
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憲法両議院は,各々国政に関する調査を行うことができるが,この国政調査権は,各議院を構成する個々の国会議員についても認められている権能であるので,個々の国会議員も行使することができる。憲法この問題の模試受験生正解率 59.7%結果正解解説両議院は,「各々国政に関する調査を行」うことができる(憲法62条前段)。これが議院の国政調査権と呼ばれるものである。この国政調査権は,あくまで議院に認められる権能であって,議院を構成する個々の議員の権能ではない。よって,本記述は誤りである。参考芦部(憲法)328頁。
佐藤幸(日本国憲法論)508頁。
野中ほか(憲法Ⅱ)143頁。
新基本法コメ(憲法)355頁。 -
民法Aは,Bとの間で,自己が所有する別荘用の木造建物(以下「甲」という。)を,1か月後に引渡し及び所有権移転登記,その5日後に代金支払の約定でBに売却する旨の契約(以下「本件契約」という。)を締結した。この事例に関して,本件契約が締結された1か月後に,Aは,Bに甲を引き渡すとともに,Bへの所有権移転登記をしたが,その3日後に,甲は落雷によって滅失した。この場合,Bは,Aからの代金支払請求を拒むことができない。民法この問題の模試受験生正解率 90.6%結果正解解説売主が買主に目的物を引き渡した場合において,その引渡しがあった時以後にその目的物が当事者双方の責めに帰することができない事由によって滅失し,又は損傷したときは,買主は,代金の支払を拒むことができない(民法567条1項後段)。同項は,公平の観点から,売主から買主への目的物滅失の危険の移転の基準時を,目的物の引渡しの時点としたものである。よって,本記述は正しい。参考一問一答(民法(債権関係)改正)287頁。
平野(新債権法の論点と解釈)349頁。 -
刑法判例の立場に従って検討した場合,甲は,乙が居住する家屋に隣接する乙所有の無人の倉庫に灯油をまいて放火したところ,予想に反して乙居住の家屋に延焼した。この場合,甲には延焼罪(刑法第111条第1項)が成立する。刑法この問題の模試受験生正解率 74.1%結果正解解説刑法111条1項の延焼罪は,自己所有非現住建造物等放火罪(同109条2項)又は自己所有建造物等以外放火罪(同110条2項)を犯したときにのみ成立する。本記述において,甲が放火したのは乙所有の無人の倉庫であり,他人所有の非現住建造物である。したがって,甲には延焼罪は成立せず,他人所有非現住建造物等放火罪が成立する。よって,本記述は誤りである。参考西田(各)331頁。
大塚ほか(基本刑法Ⅱ)387~388頁。
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憲法最高裁判所の判例の趣旨に照らすと,無拠出制の年金給付の実現が国民年金事業の財政及び国の財政事情に左右されるところが大きいこと等に鑑みると,無拠出制の年金を設けるかどうか,その受給権者の範囲,支給要件等をどうするかの決定についての立法府の裁量は,拠出制の年金の場合に比べて更に広範である。憲法この問題の模試受験生正解率 59.0%結果正解解説判例は,大学在学中に障害を負った者が障害基礎年金の支給裁定を申請したが,国民年金に任意加入しておらず被保険者資格がないことを理由に不支給処分を受けたため,当該処分の取消訴訟と国家賠償請求訴訟を提起した事例において,20歳以上の学生に対し無拠出制の年金を支給する旨の規定を設けるなどの措置を講じなかった立法不作為が憲法14条及び25条に違反するという原告の主張に対して,「無拠出制の年金給付の実現は,国民年金事業の財政及び国の財政事情に左右されるところが大きいこと等にかんがみると,立法府は,保険方式を基本とする国民年金制度において補完的に無拠出制の年金を設けるかどうか,その受給権者の範囲,支給要件等をどうするかの決定について,拠出制の年金の場合に比べて更に広範な裁量を有している」とした上で,上記の立法措置を講じなかったことは同条,14条1項に違反しないとしている(最判平19.9.28 学生無年金障害者訴訟 憲法百選Ⅱ〔第7版〕134事件)。よって,本記述は正しい。参考安西ほか(読本)234頁。
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民法判例の趣旨に照らした場合,A及びBが甲土地を共有している場合において,AB間の合意により甲土地をAが単独で使用する旨を定めた場合,Aは,甲土地を単独で使用することができるが,その使用による利益についてBに対し不当利得返還債務を負う。民法この問題の模試受験生正解率 55.6%結果正解解説判例は,「共有者は,共有物につき持分に応じた使用をすることができるにとどまり,他の共有者との協議を経ずに当然に共有物を単独で使用する権原を有するものではない。しかし,共有者間の合意により共有者の一人が共有物を単独で使用する旨を定めた場合には,右合意により単独使用を認められた共有者は,右合意が変更され,又は共有関係が解消されるまでの間は,共有物を単独で使用することができ,右使用による利益について他の共有者に対して不当利得返還義務を負わない」としている(最判平10.2.26 平10重判民法13事件)。よって,本記述は誤りである。参考平野(物権)323~324頁。
松井(物権)198頁。 -
刑法判例の立場に従って検討した場合,法人事業主は,その従業者が法人の業務に関して行った犯罪行為について,両罰規定が定められている場合には,選任監督上の過失がなかったとの証明がなされない限り,刑事責任を免れることができない。刑法この問題の模試受験生正解率 58.1%結果正解解説両罰規定とは,従業者が業務に関して違法行為をした場合に,その従業者と共に事業主をも罰する旨の規定をいう。そして,判例は,「事業主が人である場合の両罰規定については,その代理人,使用人その他の従業者の違反行為に対し,事業主に右行為者らの選任,監督その他違反行為を防止するために必要な注意を尽さなかった過失の存在を推定したものであって,事業主において右に関する注意を尽したことの証明がなされない限り,事業主もまた刑責を免れ得ないとする法意と解するを相当とする」とした上で,「右法意は,……事業主が法人(株式会社)で,行為者が,その代表者でない,従業者である場合にも,当然推及されるべきである」としている(最判昭40.3.26 刑法百選Ⅰ〔第8版〕3事件)。このように,判例は,両罰規定は,選任監督上の過失を推定した規定であり,無過失の証明がなされない限り,事業主は処罰されるとして責任主義との調和を図っている。よって,本記述は正しい。参考西田(総)82~83頁。
大塚ほか(基本刑法Ⅰ)53~54頁。
条解刑法20~21頁。
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憲法最高裁判所の規則制定権は,司法部内における最高裁判所の統制権と監督権を強化するために,国会が国の唯一の立法機関であるとする憲法第41条の例外として憲法上認められたものであるから,最高裁判所は,下級裁判所に関する規則を定める権限であっても,当該権限を下級裁判所に委任することはできない。憲法この問題の模試受験生正解率 68.9%結果正解解説最高裁判所の規則制定権(憲法77条1項)は,①権力分立の見地から裁判所の自主性を確保し,司法部内における最高裁判所の統制権と監督権を強化すること,さらに,②裁判実務に通じた裁判所の専門的知見を尊重するために認められている。そして,同条3項は,最高裁判所が下級裁判所に関する規則制定権を下級裁判所に委任することを認めている。同項は,②の趣旨からすれば,当然の規定である。よって,本記述は誤りである。参考芦部(憲法)363頁。
佐藤幸(日本国憲法論)661頁。
野中ほか(憲法Ⅱ)252~254頁。
新基本法コメ(憲法)409頁。 -
民法判例の趣旨に照らした場合,AがB所有の甲土地を占有し,取得時効が完成した場合において,その取得時効が完成する前に,Cが甲土地をBから譲り受け,その取得時効の完成後にCが甲土地の所有権移転登記をしたときは,Aは,Cに対し,甲土地の所有権を時効取得したことを対抗することができない。民法この問題の模試受験生正解率 55.6%結果正解解説判例は,不動産の取得時効完成前に,原所有者から当該不動産の所有権を譲り受けた者(以下「譲受人」という。)が,取得時効完成後に所有権移転登記を経由した事例において,取得時効完成当時の当該不動産の所有者は譲受人であり,時効取得者と譲受人は,当該不動産の所有権の得喪のいわば当事者の立場に立つから,時効取得者は,その時効取得を登記なくして譲受人に対抗することができ,このことは,その後譲受人が当該不動産につき所有権移転登記をしたとしても変わりはないとしている(最判昭42.7.21)。したがって,Cは「第三者」に当たらず,AはCに対し,甲土地の所有権を時効取得したことを対抗することができる。よって,本記述は誤りである。参考松井(物権)85頁。
論点体系判例民法(2)77頁。 -
刑法判例の立場に従って検討した場合,甲は,窃盗事件を犯して逃走中のAを,その事実を知りながら自宅にかくまった。甲は,Aが窃盗事件を犯したことは知っていたが,窃盗罪が罰金以上の刑に当たる罪であるとの認識はなかった。この場合,甲には犯人蔵匿罪が成立しない。刑法この問題の模試受験生正解率 88.9%結果正解解説判例は,密入国者をかくまった事例において,犯人蔵匿罪の故意について,密入国者であることを認識すれば足り,密入国罪の刑が罰金以上であることまで認識する必要はないとしている(最決昭29.9.30)。したがって,窃盗罪の刑が罰金以上である限り,その刑が罰金以上であることの認識がなくても,窃盗犯人であると認識してAをかくまった甲には犯人蔵匿罪が成立する。よって,本記述は誤りである。参考山口(各)581頁。
大塚ほか(基本刑法Ⅱ)516~517頁。
条解刑法337頁。
科目名
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解答日・解答結果
設問
設問・解答
解答
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憲法憲法前文第3段は,他国との共存の必要性・政治道徳の普遍性を謳い,主権国家として国際協調主義の立場に立つことを定めており,このことは憲法本文で具体化されている。憲法この問題の模試受験生正解率 75.8%結果正解解説憲法前文第3段では,他国との共存の必要性と政治道徳の普遍性を謳い,主権国家として国際協調主義の立場に立つことを定めている。そして,国際協調主義は同98条2項によって具体化されている。よって,本記述は正しい。参考佐藤幸(日本国憲法論)87頁。
新・コンメ憲法25頁。 -
民法判例の趣旨に照らした場合,債権者代位権を行使するためには,保存行為の場合を除き,債権者代位権を行使する時点で被保全債権の弁済期が到来している必要があるが,詐害行為取消権を行使するためには,詐害行為の時点で被保全債権の弁済期が到来している必要はない。民法この問題の模試受験生正解率 45.7%結果正解解説債権者は,保存行為を除き,自己の債権(被保全債権)の期限が到来しない間は,債務者に属する権利を行使することができない(民法423条2項)。すなわち,原則として,債権者代位権を行使する時点で,被保全債権の弁済期が到来している必要がある。一方,判例は,債務者の財産が一般債権者の共同担保であり,詐害行為取消権は債権者が債務者の財産に対して有するその担保の利益が害されるのを防止することを目的とするから,被保全債権の弁済期がいまだ到来していない場合においても,弁済の資力に乏しい債務者がその所有する財産を処分するときは,被保全債権の弁済期が既に到来している場合と同様に債権者に不利益が及ぶことを理由に,詐害行為当時に被保全債権の弁済期が到来していなくても,債権者は,詐害行為取消権を行使することができるとしている(大判大9.12.27)。よって,本記述は正しい。参考内田Ⅲ338頁,364頁。
潮見(プラクティス債総)182~183頁,226頁。
中田(債総)249頁,285~286頁。 -
刑法判例の立場に従って検討した場合,外国人甲は,某外国において日本人Vから財物を窃取した。この場合,甲の行為について刑法(窃盗罪)が適用される。刑法この問題の模試受験生正解率 64.1%結果正解解説日本国外において日本国民を被害者とする一定の重大な罪を犯した者には,その者が日本国民でなくても,刑法が適用される(刑法3条の2)。もっとも,これらの罪には,窃盗罪(同235条)は含まれていない(同3条の2各号参照)。したがって,甲の行為について刑法は適用されない。よって,本記述は誤りである。参考大塚ほか(基本刑法Ⅰ)465頁。
条解刑法8~9頁。
科目名
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解答日・解答結果
設問
設問・解答
解答
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憲法最高裁判所の判例の趣旨に照らすと,憲法第39条前段にいう「実行の時に適法であつた行為」には,行為当時の最高裁判所の判例の示す法解釈に従えば無罪となるべき行為が含まれるから,当該行為をした被告人を処罰することは,同条に違反する。憲法この問題の模試受験生正解率 82.9%結果正解解説判例は,行為当時は最高裁判所の判例上適法とされた行為について,判例変更をして処罰をすることが憲法39条前段に違反するかが争われた事例において,「行為当時の最高裁判所の判例の示す法解釈に従えば無罪となるべき行為を処罰することが憲法39条に違反する旨をいう点は,そのような行為であっても,これを処罰することが憲法の右規定に違反しない」としている(最判平8.11.18 平8重判刑法2事件)。よって,本記述は誤りである。参考長谷部(憲法)275頁。
市川(憲法)207~208頁。
新基本法コメ(憲法)287頁。 -
民法甲土地の所有者Aが隣接するB所有の乙土地を通行する権利(以下「本件通行権」という。)を有している場合に関して,本件通行権が通行地役権に当たる場合,Aは,乙土地に通路を開設することができるが,本件通行権が囲繞地通行権に当たる場合,Aは,乙土地に通路を開設することはできない。
なお,袋地とは,他人の土地に囲まれて公道に通じない土地を,囲繞地とは,袋地を囲んでいる土地をいい,囲繞地通行権とは,公道に至るための他の土地の通行権をいう。民法この問題の模試受験生正解率 64.1%結果正解解説地役権は,承役地を要役地の便益に供する目的で設定されるものであるから,地役権者は,地役権の内容を実現するのに必要な付随行為をすることができる。この付随行為は,地役権の内容によって異なるが,通行地役権の場合,通行に必要な通路を開設することが挙げられる。また,囲繞地通行権者も,必要な場合には通路を開設することができる。したがって,本件通行権が囲繞地通行権に当たる場合,Aは,乙土地に通路を開設することはできないとする点において,本記述は誤っている。よって,本記述は誤りである。参考新版注釈民法(7)338頁,947頁。 -
刑法判例の立場に従って検討した場合,甲は,所持金を全く有していなかったため,当初から運賃を支払うことなくタクシーで目的地へ行こうと考え,乙の運転するタクシーに乗車するやいなや,乙の反抗を抑圧するに足りる程度の暴行を加えた上で,行き先を告げ,乙の意に反してタクシーを目的地まで走行させた後,運賃を支払うことなく逃走した。この場合,甲には強盗利得罪が成立する。刑法この問題の模試受験生正解率 63.7%結果正解解説刑法236条2項の強盗利得罪の客体である「財産上……の利益」とは,同条1項の財物以外の全ての財産上の利益をいい,そこには財産的価値のある役務(輸送サービス等)の提供が含まれる。そして,相手の反抗を抑圧するに足りる程度の暴行・脅迫を加えた結果,相手方が事実上債務の弁済請求ができない状態に陥った場合には,強盗利得罪が成立する(最判昭32.9.13等)。本記述において,甲はタクシーの運転手である乙に対し,反抗を抑圧するに足りる程度の暴行を加えて,目的地まで走行させた後,運賃を支払うことなく逃走している。したがって,甲には強盗利得罪が成立する。よって,本記述は正しい。参考アクチュアル刑法(各)188頁。
条解刑法759~760頁。
科目名
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解答日・解答結果
設問
設問・解答
解答
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憲法天皇は,内閣の助言と承認により,国民のために,大赦・特赦・減刑・刑の執行の免除及び復権を決定する。憲法この問題の模試受験生正解率 50.0%結果正解解説天皇は,内閣の助言と承認により,国民のために,「大赦,特赦,減刑,刑の執行の免除及び復権を認証する」(憲法7条6号)。これら恩赦の決定は,内閣の権能である(同73条7号)。よって,本記述は誤りである。参考佐藤幸(日本国憲法論)545頁,566頁。
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民法判例の趣旨に照らした場合,Aが所有する甲土地にBのための第一順位の抵当権が設定され,その後,甲土地上にA所有の乙建物が建てられ,さらに,甲土地にCのための第二順位の抵当権が設定された後,Cの申立てに基づいて抵当権が実行された結果,Dが甲土地の所有者になった場合,甲土地に乙建物のための法定地上権は成立しない。民法この問題の模試受験生正解率 58.5%結果正解解説民法388条前段は,「土地及びその上に存する建物が同一の所有者に属する場合において,その土地又は建物につき抵当権が設定され,その実行により所有者を異にするに至ったときは,その建物について,地上権が設定されたものとみなす。」と規定する(法定地上権)。そこで,同条から,法定地上権の成立要件としては,①抵当権設定時に土地の上に建物が存在すること,②その土地と建物とが同一の所有者に属すること(以下「同一所有者要件」という。),③土地又は建物に抵当権が設定されたこと,及び,④競売の結果,土地と建物とが異なる所有者に属するに至ったことが必要である。
判例は,「土地について一番抵当権が設定された当時土地と地上建物の所有者が異なり,法定地上権成立の要件が充足されていなかった場合には,土地と地上建物を同一人が所有するに至った後に後順位抵当権が設定されたとしても,その後に抵当権が実行され,土地が競落されたことにより一番抵当権が消滅するときには,地上建物のための法定地上権は成立しないものと解するのが相当である」としている(最判平2.1.22 民法百選Ⅰ〔第5版新法対応補正版〕89事件)。したがって,抵当権が実行された結果,第一順位のBの抵当権が消滅している本記述においても,甲土地に乙建物のための法定地上権は成立しない。よって,本記述は正しい。参考道垣内Ⅲ215~216頁。
内田Ⅲ521~522頁。
道垣内Ⅲ224頁。
松井(担物)79~80頁。 -
刑法判例の立場に従って検討した場合,甲は,深夜,市街地にある幅員の狭い道路上に無灯火のまま駐車していた普通乗用自動車の後部トランク内にVを監禁したところ,数分後,たまたま普通乗用自動車で通り掛かった乙が居眠り運転をして同車を甲の自動車の後方に衝突させ,Ⅴは全身打撲の傷害を負い死亡した。この場合,甲の監禁行為とⅤの死亡の結果との間に,因果関係がある。