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科目別憲法民法刑法
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憲法最高裁判所の判例の趣旨に照らした場合、憲法第37条第2項は、刑事被告人は、公費で自己のために強制的手続により証人を求める権利を有する旨規定するところ、同項は、被告人が有罪の判決を受けた場合、その被告人に証人尋問の費用の負担を命ずることを禁止する趣旨ではないが、被告人の費用負担への不安から十分な証人喚問をためらうことのないよう、少なくとも、その費用のうち強制にかかる費用については国家が負担すべきである。憲法この問題の模試受験生正解率 59.2%結果正解解説憲法37条2項後段は、被告人に「公費で自己のために強制的手続により証人を求める権利」(証人喚問権)を保障している。ここにいう「公費で」について、判例は、「証人訊問に要する費用、すなわち、証人の旅費、日当等は、すべて国家がこれを支給するのであって、訴訟進行の過程において、被告人にこれを支弁せしむることはしない。被告人の無資産などの事情のために、充分に証人の喚問を請求するの自由が妨げられてはならないという趣旨」であって、有罪判決を受けた場合になお被告人に対しそれを訴訟費用として負担させてはならないという趣旨ではないとしている(最大判昭23.12.27)。したがって、同判決は、被告人の費用負担への不安から十分な証人喚問をためらうことのないよう、少なくとも、その費用のうち強制にかかる費用については国家が負担すべきであるとはしていない。よって、本記述は誤りである。
なお、同判決のように考えても、有罪となりそうであれば、被告人は費用の最終的な負担を恐れて証人喚問権を行使しないことが予想され、同条の趣旨にそぐわないのではないかという懸念から、被告人が有罪となったとしても強制にかかる費用のみを国家が負担すると解する方が同条の文言に適合的だとする見解もある。参考注釈日本国憲法⑶396~397頁。
新基本法コメ(憲法)281頁。 -
民法判例の趣旨に照らした場合、土地の所有者は、電気、ガス又は水道水の供給その他これらに類する継続的給付を受けるために必要な範囲内で他人が所有する設備を使用することができる場合、その利益を受ける割合に応じて、その設備の改築、修繕及び維持に要する費用を負担しなければならない。民法この問題の模試受験生正解率 72.9%結果正解解説土地の所有者は、他人が所有する設備を使用しなければ電気、ガス又は水道水の供給その他これらに類する継続的給付を受けることができないときは、継続的給付を受けるため必要な範囲内で、他人が所有する設備を使用することができる(民法213条の2第1項)。例えば、他人の所有する給排水設備を使用しなければ給排水ができない宅地がある場合に、その宅地の所有者に、宅地の給排水のために必要な範囲内で、他人の給排水設備を使用する権利が認められる。そして、土地の所有者は、同項により他人の所有する設備を使用することができる場合においては、その利益を受ける割合に応じて、その設置、改築、修繕及び維持に要する費用を負担しなければならないものとされている(同条7項)。よって、本記述は正しい。参考山野目(物権)195~197頁。
平野(物権)310~311頁。
Q&A令和3年改正民法33~34頁。 -
刑法判例の立場に従って検討した場合、暴力団組員である甲と乙は、記者であるXが、甲と乙が所属する暴力団の資金源であるフロント企業を誹謗中傷する記事を書いたことに対して憤激し、Xに対して暴行を加えて傷害を負わせる旨を共謀し、共にXに暴行を加えたが、その際におけるXの言動が気に食わず激高した乙が、殺意をもって護身用に所持していたピストルをXに向けて発砲しXを殺害した。この場合、甲には傷害致死罪の共同正犯が成立する。刑法この問題の模試受験生正解率 78.0%結果正解解説判例は、暴行ないし傷害を共謀した者のうち1名が未必的故意をもって被害者を殺害したという事例において、「殺人罪と傷害致死罪とは、殺意の有無という主観的な面に差異があるだけで、その余の犯罪構成要件要素はいずれも同一であるから」、殺意のなかった者らについては、「殺人罪の共同正犯と傷害致死罪の共同正犯の構成要件が重なり合う限度で軽い傷害致死罪の共同正犯が成立する」としている(最決昭54.4.13 刑法百選Ⅰ〔第8版〕92事件)。したがって、本記述において、殺意をもってXを殺害した乙には殺人罪(刑法199条)の単独犯が成立し、殺意のなかった甲との間では傷害致死罪の限度で共同正犯(同205条、60条)となる。したがって、甲には傷害致死罪の共同正犯が成立する。よって、本記述は正しい。参考大谷(講義総)413頁、464頁。
井田(総)510~511頁。
大塚ほか(基本刑法Ⅰ)379~380頁。
条解刑法160頁。
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憲法摂政は、天皇の法定代理機関であり、天皇の名で国事行為を行い、摂政への就任については、皇室典範が定めるが、皇位の場合と同様、女性が就任することはできない旨規定されている。憲法この問題の模試受験生正解率 83.6%結果正解解説摂政は、天皇の法定代理機関であり、天皇の名で国事行為を行う(憲法5条前段)。摂政は、①天皇が成年に達しないとき、②天皇が精神若しくは身体の重患又は重大な事故により、国事行為を自ら行えないような状態にあるときに(皇室典範16条)、置かれる。摂政への就任は、皇位の場合(同2条)とは異なり、皇后や皇太后といった女性も資格を有する(同17条)。よって、本記述は誤りである。
なお、憲法2条は、「皇位は、世襲のものであつて、国会の議決した皇室典範の定めるところにより、これを継承する。」と規定し、皇室典範1条は、「皇位は、皇統に属する男系の男子が、これを継承する。」と規定している。参考佐藤幸(日本国憲法論)568頁。
渡辺ほか(憲法Ⅱ)83頁、102~103頁。
青井・山本(憲法Ⅱ)41頁、44頁。 -
民法判例の趣旨に照らした場合、人格的利益を侵害する不法行為に基づく慰謝料請求権は、被害者がその行使の意思を表示すれば、具体的な金額の請求権が当事者間で客観的に確定していなくても、代位行使することができる。民法この問題の模試受験生正解率 78.9%結果正解解説「債務者の一身に専属する権利」は、債権者代位権行使の対象とならない(民法423条1項ただし書)。人格的利益を侵害する不法行為に基づく損害賠償請求権について、判例は、被害者がその行使の意思を表示しただけでなく、具体的な金額の請求権が当事者間で客観的に確定した場合には代位行使することができるが、その前の段階では、代位行使の対象とはならないとしている(最判昭58.10.6 倒産百選〔第6版〕23事件)。したがって、具体的な金額の請求権が当事者間で客観的に確定していなければ、代位行使することはできない。よって、本記述は誤りである。参考内田Ⅲ341頁。
潮見(プラクティス債総)195~196頁。
中田(債総)251~252頁。 -
刑法判例の立場に従って検討した場合、心神耗弱とは、精神の障害により事物の理非善悪を弁識する能力及びその弁識に従って行動する能力が著しく減退した状態を指す。刑法この問題の模試受験生正解率 41.8%結果正解解説刑法39条1項の心神喪失とは、精神の障害により事物の理非善悪を弁識する能力又はその弁識に従って行動する能力のない状態をいい、同条2項の心神耗弱とは、精神の障害がまだこのような能力を欠如する程度には至っていないが、その能力が著しく減退した状態をいう(大判昭6.12.3 刑法百選Ⅰ〔第4版〕33事件)。したがって、心神耗弱に該当するのは、精神の障害により弁識能力が著しく減退した状態と精神の障害により行動制御能力が著しく減退した状態のいずれかが認められる場合である。よって、本記述は誤りである。参考西田(総)298頁。
大塚ほか(基本刑法Ⅰ)223頁。
条解刑法167頁。
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憲法最高裁判所の判例の趣旨に照らした場合、宗教法人に対する解散命令は、宗教法人の法人格をはく奪するなどの法人としての活動に対する規制を行うにすぎず、信者の宗教上の行為を禁止したり制限したりする法的効果を伴わないとしても、これに何らかの支障を生じさせることがあることからすると、解散命令は、その宗教団体や信者の精神的・宗教的側面をも対象としているといえるので、信教の自由の重要性に鑑み、憲法がそのような規制を許容するものであるかどうかを慎重に吟味しなければならない。憲法この問題の模試受験生正解率 58.0%結果正解解説判例は、裁判所による宗教法人に対する解散命令が、当該法人の構成員たる信者の信教の自由を不当に制約し許されないのではないかが争われた事例において、宗教法人「法による宗教団体の規制は、専ら宗教団体の世俗的側面だけを対象とし、その精神的・宗教的側面を対象外としているのであって、信者が宗教上の行為を行うことなどの信教の自由に介入しようとするものではない……。……宗教法人の解散命令の制度も、……司法手続によって宗教法人を強制的に解散し、その法人格を失わしめることが可能となるようにしたものであ」るとした上で、「解散命令によって宗教法人が解散しても、信者は、法人格を有しない宗教団体を存続させ、あるいは、これを新たに結成することが妨げられるわけではなく、また、宗教上の行為を行い、その用に供する施設や物品を新たに調えることが妨げられるわけでもない。すなわち、解散命令は、信者の宗教上の行為を禁止したり制限したりする法的効果を一切伴わないのである。もっとも、……宗教法人に関する法的規制が、信者の宗教上の行為を法的に制約する効果を伴わないとしても、これに何らかの支障を生じさせることがあるとするならば、憲法の保障する精神的自由の一つとしての信教の自由の重要性に思いを致し、憲法がそのような規制を許容するものであるかどうかを慎重に吟味しなければならない」としている(最決平8.1.30 宗教法人オウム真理教解散命令事件 憲法百選Ⅰ〔第7版〕39事件)。さらに、同決定は、当該事例における解散命令の合憲性の判断において、宗教法人「法81条に規定する宗教法人の解散命令の制度は、前記のように、専ら宗教法人の世俗的側面を対象とし、かつ、専ら世俗的目的によるものであって、宗教団体や信者の精神的・宗教的側面に容かいする意図によるものではな」いとしている。したがって、同決定によれば、宗教法人に対する解散命令は、その宗教団体や信者の精神的・宗教的側面を対象とするものではない。よって、本記述は誤りである。
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民法債権者Aが債務者Bに対して有する預貯金債権でない金銭債権甲(以下「甲債権」という。)をCとDに二重譲渡した場合に関して、判例の趣旨に照らした場合、Aが第一譲渡について確定日付のある証書による通知をしてこれがBに到達した後に、第二譲渡についても確定日付のある証書による通知をしてこれがBに到達した場合において、甲債権が、第一譲渡及びその通知の時点においては現に発生していなかったが、第二譲渡の時点においては発生していたときは、BがCに対して弁済をしても、甲債権は消滅しない。
なお、本問では、Cに対する債権譲渡を「第一譲渡」といい、Dに対する債権譲渡を「第二譲渡」という。民法この問題の模試受験生正解率 83.9%結果正解解説本記述において、第一譲渡は、将来債権の譲渡であるところ、民法は、債権の譲渡は、その意思表示の時に債権が現に発生していることを要しない(同466条の6第1項)として、将来債権の譲渡が有効であることを認めている。将来債権が譲渡された場合は、将来債権につき具体的な債権の成立後、改めて譲渡の意思表示などを要せず、譲受人は、発生した債権を当然に取得する(同条2項)。そして、債権譲渡の対抗要件を定める同467条1項は、「債権の譲渡(現に発生していない債権の譲渡を含む。)は、譲渡人が債務者に通知をし、又は債務者が承諾をしなければ、債務者その他の第三者に対抗することができない。」として、現に発生していない債権の譲渡についても、債権譲渡の時点で債務者対抗要件及び第三者対抗要件を具備し得る旨明記している。したがって、本記述においては、Cは、発生した甲債権を取得し、第三者対抗要件も具備していることとなる。そして、判例は、債権が二重に譲渡され、いずれの譲渡についても確定日付のある証書による通知がされた場合においては、「譲受人相互の間の優劣は、通知又は承諾に付された確定日附の先後によって定めるべきではなく、確定日附のある通知が債務者に到達した日時又は確定日附のある債務者の承諾の日時の先後によって決すべきであ」るとしている(最判昭49.3.7 民法百選Ⅱ〔第9版〕23事件)。本記述においては、第一譲渡についての通知が第二譲渡についての通知よりも先にBに到達しているので、Cが甲債権の債権者となる。したがって、BがCに対して弁済をすれば、甲債権は消滅する。よって、本記述は誤りである。参考内田Ⅲ254頁、267~268頁。
潮見(プラクティス債総)465~467頁、520頁。
中田(債総)645頁、648頁、667~668頁。 -
刑法判例の立場に従って検討した場合、甲は、Aを恐喝してAから財物の交付を受け、その恐喝の手段として用いられた暴行によりAに傷害を負わせた。この場合、甲には恐喝罪と傷害罪が成立し、これらは観念的競合となる。刑法この問題の模試受験生正解率 64.6%結果正解解説判例は、恐喝の手段として暴行が用いられ、その暴行により、被害者に傷害を負わせた場合には、恐喝罪(刑法249条)と傷害罪(同204条)の観念的競合(同54条1項前段)となるとしている(最判昭23.7.29)。したがって、甲には、恐喝罪と傷害罪が成立し、これらは観念的競合となる。よって、本記述は正しい。
なお、恐喝の手段として用いられた暴行により傷害が生じていない場合は、その暴行は恐喝罪において評価し尽くされているから、恐喝罪とは別に暴行罪は成立しない。参考大塚ほか(基本刑法Ⅱ)263頁。
大コメ(刑法・第3版)⒀529頁。
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憲法裁判官が法律を事案に適用して判決を下す場合には、当該法律の合憲性が前提となることから、理論的には当該法律の違憲審査が先行すべきであり、訴訟において違憲の争点が適法に提起されている場合には、裁判官は憲法審査義務を負っているとする見解に対しては、我が国が採用している付随的違憲審査制においては、裁判所は必要以上に政治部門の判断に介入すべきではないと批判することができる。憲法この問題の模試受験生正解率 75.0%結果正解解説訴訟において違憲の争点が適法に提起されている場合、裁判官が当該法律を適用して判決を下す場合には当該法律の合憲性が前提となることからすれば、理論的には当該法律の違憲審査が先行すべきであり、裁判官は憲法審査義務を負っているとする見解がある。これに対しては、付随的違憲審査制においては、当該事件の解決に必要な限りで憲法判断が行われるのが建前であり、裁判所は必要以上に政治部門の判断に介入すべきではないというのを主たる論拠として、訴訟において違憲の争点が適法に提起されている場合でも、裁判所はその争点に触れずに事件を解決することができるならば、あえて憲法判断をする必要はないし、すべきでもないという憲法判断回避原則が一般に主張されている。よって、本記述は正しい。参考野中ほか(憲法Ⅱ)310~311頁。
渡辺ほか(憲法Ⅱ)363~364頁。
憲法百選Ⅱ〔第7版〕359頁。 -
民法判例の趣旨に照らした場合、Aが甲土地をBに譲渡した後に死亡し、Aを単独相続したCが限定承認をした場合、Bは、その後に甲土地について所有権移転登記をしても、甲土地の所有権の取得を相続債権者に対抗することができない。民法この問題の模試受験生正解率 58.3%結果正解解説判例は、被相続人が不動産を第三者に譲渡したが、所有権移転登記をすることなく相続が開始し、限定承認がされた場合、限定承認によって所有権移転登記がされていない財産が相続財産及び受遺者に対する弁済のための引当財産であるという性質が確立することを理由に、第三者は、後日登記を具備したとしても相続債権者及び受遺者に対抗することができないとしている(大判昭9.1.30)。したがって、本記述においても、Bは、Cが限定承認をした後に、甲土地について所有権移転登記をしても、甲土地の所有権の取得を相続債権者に対抗することができない。よって、本記述は正しい。
なお、判例は、「不動産の死因贈与の受贈者が贈与者の相続人である場合において、限定承認がされたときは、死因贈与に基づく限定承認者への所有権移転登記が相続債権者による差押登記よりも先にされたとしても、信義則に照らし、限定承認者は相続債権者に対して不動産の所有権取得を対抗することができない」としている(最判平10.2.13 民法百選Ⅲ〔第3版〕83事件)。参考吉田(物権Ⅱ)887頁。
新注釈民法(19)639頁。 -
刑法判例の立場に従って検討した場合、単純遺棄罪(刑法第217条)が成立するには、老年、幼年、身体障害等のために扶助を必要とする者を故意に遺棄した結果、現実に生命・身体に対する危険が発生したことが必要である。
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憲法最高裁判所の判例の趣旨に照らした場合、職業の許可制は、職業の自由に対する強力な制限であるから、原則として、重要な公共の利益のために必要かつ合理的な措置であることを要し、また、それが社会政策ないしは経済政策上の積極的な目的のための措置である場合であっても、許可制と比べてより緩やかな規制によってはその目的を十分に達することができない場合でなければ、合憲性を肯定し得ない。憲法この問題の模試受験生正解率 47.5%結果正解解説判例は、スーパーマーケット等を経営する原告が、店舗内での医薬品の一般販売業の許可を申請したところ、許可の条件である旧薬事法の適正配置規制に抵触するとして不許可とされたため、当該規制が憲法22条1項に違反すると主張し、その不許可処分の取消しを求めた事例において、「一般に許可制は、単なる職業活動の内容及び態様に対する規制を超えて、狭義における職業の選択の自由そのものに制約を課するもので、職業の自由に対する強力な制限であるから、その合憲性を肯定しうるためには、原則として、重要な公共の利益のために必要かつ合理的な措置であることを要し、また、それが社会政策ないしは経済政策上の積極的な目的のための措置ではなく、自由な職業活動が社会公共に対してもたらす弊害を防止するための消極的、警察的措置である場合には、許可制に比べて職業の自由に対するよりゆるやかな制限である職業活動の内容及び態様に対する規制によっては右の目的を十分に達成することができないと認められることを要する」としている(最大判昭50.4.30 薬事法距離制限違憲判決 憲法百選Ⅰ〔第7版〕92事件)。したがって、同判決は、職業の許可制は、原則として、重要な公共の利益のために必要かつ合理的な措置であることを要するとしつつも、職業の許可制が社会政策ないしは経済政策上の積極的な目的のための措置である場合、許可制と比べてより緩やかな規制によってはその目的を十分に達することができない場合でなければ、その合憲性を肯定し得ないとはしていない。よって、本記述は誤りである。
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民法判例の趣旨に照らした場合、買戻しの特約のある不動産の買主が、買い受けた不動産を第三者に譲渡し、所有権移転登記をした場合、売主が買戻しの意思表示をすべき相手方は、転得者ではなく、買主である。民法この問題の模試受験生正解率 74.2%結果正解解説判例は、買戻しの特約付きの売買契約により不動産を買い受けた者が、特約所定の買戻期間中に、更にその不動産を第三者に売り渡し、かつ所有権移転登記を経由した場合は、その不動産の売主が買戻権を行使するには、転得者に対してすべきであるとしている(最判昭36.5.30 不動産取引百選〔第3版〕82事件)。よって、本記述は誤りである。参考潮見(新契各Ⅰ)227頁。
平野(債各Ⅰ)204頁。 -
刑法判例の立場に従って検討した場合、甲は、乙に対して、Xに傷害を負わせることを唆したところ、乙はその旨決意し、深夜、帰宅するXを襲撃するために、Xの自宅付近で待ち伏せしていたが、Xと同居する双子の弟Yがこちらに向かってくるのを見て、YをXと誤認し、Yに傷害を負わせた。この場合、甲には、Yに対する傷害罪の教唆犯が成立する。刑法この問題の模試受験生正解率 78.0%結果正解解説判例によれば、教唆者の認識内容と、被教唆者の実行行為及び結果との間に食い違いがあっても、それが同一構成要件の範囲内にとどまる限り、教唆者の故意は阻却されない。判例は、A方に侵入して金銭を窃取することを教唆したところ、被教唆者が誤って隣家のB方に侵入して衣類を窃取した事例において、窃盗罪の教唆犯が成立するとしている(大判大9.3.16)。本記述において、甲は、乙に対して、Xに傷害を負わせるように教唆し、その旨決意した乙が、YをXと誤認して、Yに傷害を負わせている。これは、乙にとっては客体の錯誤であるが(Yに対する傷害罪の故意犯が成立する。)、甲にとっては方法の錯誤であると考えられる。そのため、法定的符合説によると、構成要件的に符合する限りで認識していなかった客体に対する故意が認められるため、甲のYに対する傷害の故意が認められる。したがって、甲にはYに対する傷害罪の教唆犯が成立する。よって、本記述は正しい。参考大谷(講義総)464~465頁。
大塚ほか(基本刑法Ⅰ)374~375頁。
大コメ(刑法・第3版)(5)18頁、614~615頁。
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憲法憲法第73条第6号本文は、「この憲法及び法律の規定を実施するために、政令を制定すること。」を内閣の事務として規定しているところ、この「憲法及び法律」について一体として読む必要があるとの見解によれば、法律に定めのない事項を定める独立命令は許されないことになる。憲法この問題の模試受験生正解率 62.8%結果正解解説憲法73条6号本文は、「この憲法及び法律の規定を実施するために、政令を制定すること。」を内閣の事務として規定している。「憲法及び法律の規定を実施」するためという文言から、内閣は憲法を直接実施するための政令を制定し得ると解する余地もあるとする見解もある。このような見解からは、法律に定めのない事項を定める独立命令は許されることになる。しかし、憲法を直接実施する権限を持つのは、唯一の立法機関(同41条後段)である国会のみであるから、政令は直接的には法律を実施するものであり、同73条6号本文の「憲法及び法律」は一体として読む必要があると解されている。したがって、このように解した場合、内閣は憲法を直接実施するための政令を制定し得ず、法律の存在を前提としない独立命令は許されないことになる。よって、本記述は正しい。参考野中ほか(憲法Ⅱ)210~211頁。
高橋(立憲主義と日本国憲法)408頁。
毛利ほか(憲法Ⅰ)233頁。 -
民法判例の趣旨に照らした場合、地役権者は、承役地を不法に占有する者がいる場合であっても、地役権に基づき承役地の自己への明渡しを請求することはできない。民法この問題の模試受験生正解率 92.0%結果正解解説地役権は物権であるから、地役権者は、その侵害に対して直接に物権的請求権を行使することができる。もっとも、地役権は承役地を占有すべき権能を当然には含まないため、返還請求は認められない。したがって、地役権者は、承役地を不法に占有する者に対し、地役権に基づき承役地の自己への明渡しを請求することはできない。よって、本記述は正しい。参考佐久間(物権)271頁。
石田剛ほか(民法Ⅱ)215~216頁。 -
刑法判例の立場に従って検討した場合、業務上過失致死傷罪の「業務」とは、人が社会生活上の地位に基づき反復継続して行う行為であれば足り、必ずしもその行為が他人の生命身体等に危害を加えるおそれのあるものであることを要しない。刑法この問題の模試受験生正解率 77.7%結果正解解説判例は、業務上過失致死傷罪(刑法211条1項前段)にいう「業務」について、「人が社会生活上の地位に基き反覆継続して行う行為」であって、「他人の生命身体等に危害を加える虞あるもの」としている(最判昭33.4.18 刑法百選Ⅰ〔第2版〕62事件)。よって、本記述は誤りである。参考山口(各)68頁。
大塚ほか(基本刑法Ⅱ)39頁。
条解刑法636頁。
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憲法最高裁判所の判例の趣旨に照らした場合、日本国籍は重要な法的地位であり、父母の婚姻による嫡出子たる身分の取得は子自身の意思や努力によっては変えられない事柄であるため、こうした事柄により国籍取得に関して区別することが憲法第14条第1項に違反しないというためには、立法目的が重要であり、立法目的と手段との間に実質的関連性が存することを要する。憲法この問題の模試受験生正解率 68.3%結果正解解説判例は、日本人の父が生後認知した婚外子について、父母がその後婚姻していることを国籍取得の要件としていた国籍法(平成20年法律88号による改正前のもの)3条1項の規定の合憲性が争われた事例において、国籍取得に関する要件をどのように定めるかについては、立法府の裁量判断に委ねられるとした上で、かかる「裁量権を考慮しても、なおそのような区別をすることの立法目的に合理的な根拠が認められない場合」、又はその具体的な区別と「立法目的との間に合理的関連性が認められない場合」には、当該区別は、合理的な理由のない差別として、憲法14条1項に違反するとしている。そして、同判決は、「日本国籍は、……我が国において……重要な法的地位でもある。一方、父母の婚姻……は、子にとっては自らの意思や努力によっては変えることのできない父母の身分行為に係る事柄である」から、「このような事柄をもって日本国籍取得の要件に関して区別を生じさせることに合理的な理由があるか否かについては、慎重に検討することが必要である」としている(最大判平20.6.4 国籍法違憲判決 憲法百選Ⅰ〔第7版〕26事件)。よって、本記述は誤りである。
なお、同判決の泉徳治裁判官の補足意見は、差別の対象となる権益が日本国籍という基本的な法的地位であり、差別の理由が憲法14条1項に差別禁止事由として掲げられている社会的身分及び性別であるから、それが同項に違反しないというためには強度の正当化事由が必要であって、国籍法3条1項の立法目的が国にとって重要であり、この立法目的と手段との間に事実上の実質的関連性が存することが必要であるとしている。 -
民法申込者の意思表示又は取引上の慣習により承諾の通知を必要としない場合には、契約は、承諾の意思表示と認めるべき事実があった時に成立する。民法この問題の模試受験生正解率 79.8%結果正解解説契約は、契約の内容を示してその締結を申し入れる意思表示(申込み)に対して相手方が承諾をしたときに成立するが(民法522条1項)、申込者の意思表示又は取引上の慣習により承諾の通知を必要としない場合には、承諾の意思表示と認めるべき事実があった時に成立する(同527条)。例えば、申込みを受けた者が、指定された第三者に商品を発送したときや、目的物の製造に着手したとき等に、それぞれの時点で契約が成立したことになる。よって、本記述は正しい。参考潮見(基本講義・債各Ⅰ)18頁。
中田(契約)92~93頁。 -
刑法判例の立場に従って検討した場合、医師甲は、乙の同意を得ずに堕胎手術を行った。この場合、甲に業務上堕胎罪が成立する。刑法この問題の模試受験生正解率 44.9%結果正解解説業務上堕胎罪(刑法214条)は、医師等が「女子の嘱託を受け、又はその承諾を得て堕胎させたとき」に成立するものであり、女子の嘱託又は承諾は構成要件要素である。そして、不同意堕胎罪(同215条1項)は、女子の嘱託又は承諾がないのに堕胎を行う行為を処罰するものであり、身体に対する一方的な攻撃として違法性が高い類型の行為であるといえることから、堕胎罪中最も法定刑が重い。同罪は、その主体には制限がなく、業務上堕胎罪の主体である医師等も不同意堕胎罪の主体となり得る。そのため、医師等が、女子の嘱託又は承諾がないのに堕胎を行えば、不同意堕胎罪が成立し、女子の嘱託又は承諾を得て堕胎を行えば、軽い業務上堕胎罪が成立することとなる。したがって、甲に不同意堕胎罪が成立する。よって、本記述は誤りである。参考条解刑法653~654頁。
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憲法予算の議決方法は、原則として、法律案に関する憲法第59条第1項で示されており、憲法第60条は、その例外的な方法のみを示したものであると解しているのは、予算の法的性格について、予算を法律であるとする見解(予算法律説)である。憲法この問題の模試受験生正解率 84.5%結果正解解説予算の法的性格について、予算を法律であるとする予算法律説によれば、憲法60条が予算に関する原則的な議決要件を示さずに、予算先議権及び議決における衆議院の優越のみを定めているのは、「法律案」である予算案の原則的な議決方法が同59条1項で示されていることを前提に、同項にいう「憲法に特別の定のある場合」として、例外的な方法のみを示したものという説明がなされる。よって、本記述は正しい。参考佐藤幸(日本国憲法論)581頁。
野中ほか(憲法Ⅱ)350頁。
大石(憲法概論Ⅰ)456頁。 -
民法判例の趣旨に照らした場合、連帯債務者の一人について時効が完成した場合においても、当事者が別段の意思表示をしていないときは、他の連帯債務者は、その一人の負担部分を含めて履行する義務を負い、これを履行したときにも、時効の完成した連帯債務者に対して求償権を行使することはできない。民法この問題の模試受験生正解率 40.2%結果正解解説連帯債務者の一人について消滅時効が完成しても、消滅時効の効力は他の連帯債務者に及ばない(民法441条本文参照)。これは、消滅時効の完成を絶対的効力事由としたのでは、債権者が全ての連帯債務者に対して時効の進行を止める措置を執っておかないと債務が縮減することになり、債権の効力を強化するという連帯債務の性質に反するからである。したがって、本記述前段は正しい。もっとも、この場合であっても、弁済した連帯債務者は、消滅時効が完成した連帯債務者に対し、その負担部分について求償することが認められている(同445条、442条1項)。したがって、本記述後段は誤っている。よって、本記述は誤りである。参考内田Ⅲ462~463頁、469頁。
潮見(プラクティス債総)580~581頁。
中田(債総)534頁、539~540頁。 -
刑法判例の立場に従って検討した場合、過失犯の成立には、構成要件的結果を回避する義務に違反したことが必要であるところ、たとえ行為者が結果回避義務を尽くしても結果を回避することができなかった場合には、行為者が結果回避義務に従った行動をとらなかったとしても、過失犯は成立しない。刑法この問題の模試受験生正解率 77.7%結果正解解説判例は、行為者が結果回避義務に従った行動をとらなかった場合において、仮に行為者が結果回避義務を尽くしても結果が発生したといえる場合(結果回避義務を尽くしていれば結果が発生しなかったと立証できなかった場合)には、過失犯の成立を否定している(最判平15.1.24 刑法百選Ⅰ〔第8版〕7事件)。よって、本記述は正しい。参考山口(総)248~249頁。
大塚ほか(基本刑法Ⅰ)140頁。
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解答
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憲法最高裁判所の判例の趣旨に照らすと、憲法第14条第1項後段所定の事由に基づいて差別が行われるときには、合憲性の推定は排除され、裁判所は厳格な基準によってその差別が合理的であるかどうかを審査すべきである。憲法この問題の模試受験生正解率 49.2%結果正解解説判例は、憲法14条1項後段列挙事由(人種、信条、性別、社会的身分又は門地)は例示的なものと解しており、当該事由に本記述のような意味における特段の効果を認めていない(最大判昭25.10.11、最大判昭39.5.27等)。よって、本記述は誤りである。
なお、本記述は、最大判昭60.3.27(サラリーマン税金訴訟 憲法百選Ⅰ〔第7版〕31事件)の伊藤正己裁判官の補足意見である。参考佐藤幸(日本国憲法論)225~226頁。
野中ほか(憲法Ⅰ)286~287頁。
渋谷(憲法)202~203頁。 -
民法判例の趣旨に照らした場合、抵当不動産の一部が、抵当不動産の所有者の過失によって損傷した場合、その損傷による抵当権者の損害賠償請求権は、抵当権を実行する前においては行使することができない。民法この問題の模試受験生正解率 76.0%結果正解解説抵当不動産の所有者が、抵当不動産を損傷し、その価値を下落させた場合、抵当権者は、損害の賠償を請求することができる。この点に関し、判例は、抵当不動産の価値が下落したため、被担保債権の満足が得られなくなったときに限り損害があるといえるとし(大判昭3.8.1)、損害の有無及びその額については、抵当権実行時又は被担保債権の弁済期到来後で抵当権実行前における損害賠償請求権行使時を基準に判断されるとしており(大判昭7.5.27 民法百選Ⅰ〔初版〕92事件)、抵当権の実行前における損害賠償請求権の行使を認めている。よって、本記述は誤りである。参考内田Ⅲ540~541頁。
道垣内(担物)190頁。
松井(担物)61~62頁。 -
刑法判例の立場に従って検討した場合、相手方の加害行為に対し、憤激又は逆上して反撃を加えた場合、直ちに防衛の意思の要件を欠き、正当防衛は成立しない。刑法この問題の模試受験生正解率 84.2%結果正解解説判例は、「刑法36条の防衛行為は、防衛の意思をもってなされることが必要であるが、相手の加害行為に対し憤激または逆上して反撃を加えたからといって、ただちに防衛の意思を欠くものと解すべきではない」としている(最判昭46.11.16 刑法百選Ⅰ〔初版〕36事件)。よって、本記述は誤りである。参考山口(総)128~129頁。
西田(総)182~183頁。
大塚ほか(基本刑法Ⅰ)189頁。
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憲法憲法第3章の人権規定は、法人についても性質上可能な限り適用されるが、信教の自由や学問の自由は、自然人である個人の精神的活動の自由であるから、法人には適用されない。憲法この問題の模試受験生正解率 71.8%結果正解解説憲法第3章の人権規定は、法人についても性質上可能な限り適用される(最大判昭45.6.24 八幡製鉄事件 憲法百選Ⅰ〔第7版〕8事件参照)。つまり、自然人に固有なものは法人には保障されないが、その他の人権規定は、法人固有の性格と矛盾しない範囲内で適用される。精神的活動の自由については、争いがあるが、宗教法人には信教の自由(同20条)が、学校法人には学問の自由(同23条)が保障されると考えられている。よって、本記述は誤りである。参考芦部(憲法)90~91頁。
渡辺ほか(憲法Ⅰ)42~44頁。
毛利ほか(憲法Ⅱ)33~35頁。 -
民法判例の趣旨に照らした場合、債権者代位権を行使するためには、債務者が無資力であることが必要でない場合があるが、詐害行為取消権を行使するためには、債務者が無資力であることが必要である。民法この問題の模試受験生正解率 56.6%結果正解解説債権者は、自己の債権を保全するため必要があるときは、債務者に属する権利を行使することができる(民法423条1項本文)。そして、判例は、「債権者は、債務者の資力が当該債権を弁済するについて十分でない場合にかぎり、自己の金銭債権を保全するため、民法423条1項本文の規定により当該債務者に属する権利を行使しうる」としているが(最判昭40.10.12)、特定債権の履行が債務者の有する権利を代位行使することによって確保される場合には、当該特定債権の保全のために債権者代位権の行使を認めており(債権者代位権の転用)、この場合には無資力要件を不要としている(大判明43.7.6 民法百選Ⅱ〔第7版〕14事件、大判昭4.12.16 民法百選Ⅱ〔第5版新法対応補正版〕12事件等)。一方、債権者は、債務者が債権者を害することを知ってした行為の取消しを裁判所に請求することができるところ(同424条1項本文)、ここにいう「債権者を害する」とは、債務者の行為によって債務者の資産総額が債権額を弁済するのに不十分(無資力)となることをいうから、債務者が無資力でない場合には、債務者の処分行為は「債権者を害する」ものではなく、詐害行為にはならない。よって、本記述は正しい。
なお、同423条の7は、登記又は登録の請求権を保全するための債権者代位権を認めているが、これは、平成29年民法改正により、判例によって認められた債権者代位権の転用の具体例の一つを明文化したものである。参考内田Ⅲ339~340頁、351~352頁、366頁。
潮見(プラクティス債総)211頁、213頁、230~231頁。
中田(債総)248頁、264~267頁、293頁。 -
刑法判例の立場に従って検討した場合、緊急避難は、避難行為により避けようとした害が避難行為から生じた害の程度を超える場合に成立するから、前者と後者が同等の場合には成立し得ない。刑法この問題の模試受験生正解率 73.0%結果正解解説緊急避難が成立するためには、避難行為から生じた害が、避けようとした害の程度を超えないことが必要である(法益の均衡)。したがって、侵害法益と保全法益が等しい場合にも、緊急避難は成立し得る。よって、本記述は誤りである。参考井田(総)334頁。
大塚ほか(基本刑法Ⅰ)211頁。
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憲法「主権」について、国の政治の在り方を最終的に決定する権力又は権威の意味で使われることがあるが、その例として、ポツダム宣言8項の「日本国ノ主権ハ本州、北海道、九州及四国並ニ吾等ノ決定スル諸小島ニ局限セラルベシ」というときの「主権」が挙げられる。憲法この問題の模試受験生正解率 79.7%結果正解解説「主権」の概念は多義的であり、①国家権力(統治権)そのもの、②国家権力の属性としての最高独立性(対外的独立性と対内的最高性)、③国政についての最高決定権という三つの異なる意味で使われることがある。このうち、③国政についての最高決定権としての主権とは、国の政治の在り方を最終的に決定する権力又は権威という意味である。例えば、「日本国民は、(中略)ここに主権が国民に存することを宣言し」(憲法前文第1項)というときの「主権」がこれに当たる。他方、ポツダム宣言8項の「日本国ノ主権ハ本州、北海道、九州及四国並ニ吾等ノ決定スル諸小島ニ局限セラルベシ」というときの「主権」は、上記①から③のうち、①国家権力(統治権)そのものを表すものとして使われている。よって、本記述は誤りである。参考芦部(憲法)39~40頁。
芦部(憲法学Ⅰ)220~223頁。 -
民法判例の趣旨に照らした場合、協議上の離婚は、戸籍法の定めるところにより届け出ることによって効力を生じ、判決による離婚は、離婚請求を認容する判決が確定した時に効力を生じる。民法この問題の模試受験生正解率 53.8%結果正解解説協議上の離婚は、戸籍法の定めるところにより届け出ることによって、その効力を生じる(民法764条・739条1項)。これは、協議上の離婚成立の形式的要件であり、創設的届出となる。また、判決による離婚は、離婚判決が確定した時にその効力を生じる。よって、本記述は正しい。参考親族相続講義案72~73頁、81頁。
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刑法判例の立場に従って検討した場合、甲は、乙とAが殴り合いのけんかをしているのを見掛け、一方的に乙に肩入れして、「いっそのことAを叩きのめしてしまえ。」などと申し向けたところ、これにより乙は、犯罪意思を強固にして、Aの腹部を強く蹴るなどして傷害を負わせた。この場合、甲には現場助勢罪は成立しない。刑法この問題の模試受験生正解率 44.9%結果正解解説現場助勢罪(刑法206条)は、傷害又は傷害致死の行為が行われる際、その現場において勢いを助ける行為を処罰対象としている。勢いを助けるとは、本犯の気勢を高め、又は刺激すべき性質の行為をいい、例えば、「やれやれ。」、「もっとやれ。」などの声援がこれに当たる。もっとも、同条が、傷害の現場でなされた助勢行為を処罰する規定である以上、特定の正犯者の犯行を容易にする従犯とは異なる(大判昭2.3.28参照)。すなわち、傷害現場での声援であっても、双方がけんか状態になっている現場で、一方を加勢するために助勢した場合は、正犯者を幇助するものといえる。本記述では、甲は、傷害の現場において、一方的に乙に肩入れして、「いっそのことAを叩きのめしてしまえ。」などと申し向け、既に暴行ないし傷害の故意があった乙の犯意を強固にしている。したがって、甲には現場助勢罪は成立せず、傷害罪の従犯(同204条、62条1項)が成立する。よって、本記述は正しい。参考西田(各)47頁。
井田(各)65~66頁。
大塚ほか(基本刑法Ⅱ)32頁。
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憲法最高裁判所の判例の趣旨に照らした場合、司法書士会が大震災で被災した他県の司法書士会に復興支援拠出金を寄付するために、会員から負担金を徴収することは、強制加入団体であることを考慮しても、会員の政治的又は宗教的立場や思想、信条の自由を害するものではない。憲法この問題の模試受験生正解率 79.3%結果正解解説判例は、司法書士会が大震災により被災した他県の司法書士会に対する復興支援拠出金(以下「本件拠出金」という。)を寄付することが司法書士会の定める会の目的の範囲内といえるか、また、強制加入団体である司法書士会がその寄付のために負担金(以下「本件負担金」という。)を会員から徴収することができるかが争われた事例において、司法書士会が本件拠出金を寄付することは、司法書士会の権利能力の範囲内にあるとした上で、司法書士会は「本件拠出金の調達方法についても、それが公序良俗に反するなど会員の協力義務を否定すべき特段の事情がある場合を除き、多数決原理に基づき自ら決定することができる」から、司法書士会が「いわゆる強制加入団体であること……を考慮しても、本件負担金の徴収は、会員の政治的又は宗教的立場や思想信条の自由を害するものではな」いとしている(最判平14.4.25 平14重判憲法2事件)。よって、本記述は正しい。参考芦部(憲法)93頁。
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民法AがBに対して動産甲を売却した場合における民法上の留置権と同時履行の抗弁権に関して、判例の趣旨に照らした場合、BがCに対して甲を譲渡したが、Aが甲を占有し続けている場合、Cからの所有権に基づく甲の引渡請求に対し、Aは、留置権を行使することはできるが、同時履行の抗弁権は行使することができない。なお、Aの代金債権に関して留置権と同時履行の抗弁権が競合的に成立するものとする。民法この問題の模試受験生正解率 53.8%結果正解解説留置権は、物権であるから誰に対しても主張することができる。本記述においても、Aは、Cからの所有権に基づく甲の引渡請求に対し、留置権を行使することができる。これに対し、同時履行の抗弁権は、双務契約の牽連性から認められる抗弁権であるから、契約の当事者間でのみ主張することができ、第三者に対しては主張することはできない。本記述においても、Aは、Cからの所有権に基づく甲の引渡請求に対し、同時履行の抗弁権は行使することができない。よって、本記述は正しい。参考平野(担物)253頁。
松井(担物)144頁。
中田(契約)161頁。 -
刑法判例の立場に従って検討した場合、偽造有価証券を行使して相手方から金品をだまし取った場合、偽造有価証券行使罪が成立し、詐欺罪は偽造有価証券行使罪に吸収される。刑法この問題の模試受験生正解率 61.8%結果正解解説判例は、偽造有価証券を行使して相手方から金品をだまし取った場合、偽造有価証券行使罪(刑法163条1項)と詐欺罪(同246条1項)が成立し、両罪は牽連犯となるとしている(大判大3.10.19)。よって、本記述は誤りである。参考高橋(各)572頁。
新基本法コメ(刑法)347頁。
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憲法憲法第81条は、「一切の法律、命令、規則又は処分」と規定しているところ、憲法第58条第2項に規定されている議院規則は、議院の自律権を尊重するという観点から、憲法第81条の「規則」には含まれないと解されている。憲法この問題の模試受験生正解率 53.9%結果正解解説憲法81条は、「最高裁判所は、一切の法律、命令、規則又は処分が憲法に適合するかしないかを決定する権限を有する終審裁判所である。」と規定しており、このうちの「規則」には、憲法の定める議院規則(同58条2項)や裁判所規則(同77条)が含まれる。よって、本記述は誤りである。参考新基本法コメ(憲法)430頁。
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民法判例の趣旨に照らした場合、被相続人の占有により取得時効が完成した場合、その共同相続人の一人は、自己の相続分の限度においてのみ、取得時効を援用することができる。民法この問題の模試受験生正解率 45.2%結果正解解説判例は、「時効の完成により利益を受ける者は自己が直接に受けるべき利益の存する限度で時効を援用することができるものと解すべきであって、被相続人の占有により取得時効が完成した場合において、その共同相続人の一人は、自己の相続分の限度においてのみ取得時効を援用することができるにすぎない」としている(最判平13.7.10)。よって、本記述は正しい。参考平野(総則)383~384頁。
論点体系判例民法⑴459頁。 -
刑法判例の立場に従って検討した場合、前に禁錮以上の刑に処せられたことがない者が、懲役5年の刑の言渡しを受けた場合において、犯情の軽重及び犯人の境遇その他の情状を考慮して、再び犯罪をすることを防ぐために必要であり、かつ、相当であると認められるときは、その刑の一部の執行を猶予することができる。刑法この問題の模試受験生正解率 51.3%結果正解解説刑法27条の2第1項柱書は、「次に掲げる者が3年以下の懲役又は禁錮の言渡しを受けた場合において……その刑の一部の執行を猶予することができる。」としており、懲役5年の刑の言渡しを受けた場合は、これに当たらない。よって、本記述は誤りである。参考大塚ほか(基本刑法Ⅰ)450頁。
新基本法コメ(刑法)62頁。
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解答
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憲法最高裁判所の判例の趣旨に照らした場合、親は、子どもに対する自然的関係により、子どもの将来に対して最も深い関心を持ち、かつ、配慮をすべき立場にある者として、子どもの教育に対する一定の支配権、すなわち子女の教育の自由を有すると認められるところ、このような親の教育の自由は、主として家庭教育等学校外における教育や学校選択の自由にあらわれる。憲法この問題の模試受験生正解率 90.5%結果正解解説最大判昭51.5.21(旭川学テ事件 憲法百選Ⅱ〔第7版〕136事件)は、教育内容決定権の所在につき、「親は、子どもに対する自然的関係により、子どもの将来に対して最も深い関心をもち、かつ、配慮をすべき立場にある者として、子どもの教育に対する一定の支配権、すなわち子女の教育の自由を有すると認められるが、このような親の教育の自由は、主として家庭教育等学校外における教育や学校選択の自由にあらわれるものと考えられる」としている。よって、本記述は正しい。
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民法判例の趣旨に照らした場合、雇用契約上の安全配慮義務に違反したことによって死亡した者の遺族は、雇用契約ないしこれに準ずる法律関係の当事者として、使用者に対して遺族固有の慰謝料請求権を有する。民法この問題の模試受験生正解率 69.9%結果正解解説判例は、被用者の遺族が使用者に対して、雇用契約上の安全保証義務(安全配慮義務と同義)違反を理由とする損害賠償等を請求した事例において、亡被用者と使用者との間の雇用契約ないしこれに準ずる法律関係の当事者でない被用者の遺族が雇用契約ないしこれに準ずる法律関係上の債務不履行により固有の慰謝料請求権を取得するものとは解し難いとしている(最判昭55.12.18 労働百選〔第10版〕50事件、昭55重判民法9事件)。よって、本記述は誤りである。参考内田Ⅲ154頁。
中田(債総)140頁。
平野(債総)112頁。 -
刑法判例の立場に従って検討した場合、資力が乏しく回収を見込めない債務者に対して、金銭の貸付けをした場合、その後に債務者の宝くじが当たり、債務者が当該貸付金について弁済できた場合であっても、「財産上の損害」が認められる。刑法この問題の模試受験生正解率 78.5%結果正解解説判例は、「財産上の損害」について、「経済的見地において本人の財産状態を評価し、被告人の行為によって、本人の財産の価値が減少したとき又は増加すべかりし価値が増加しなかったときをいう」としている(最決昭58.5.24 刑法百選Ⅱ〔第8版〕72事件)。そして、資力が乏しいなどの事情から返済が見込まれない債務者に金銭を貸し付けた場合、その債権は、実際に返済時期が到来して回収不能の事態に至らなくても、貸し付けた時点において既に額面どおりに評価をすることはできず、その時点で経済的見地からは損害が生じたということができる。また、宝くじが当たったという事情は、犯罪後の情状にすぎない。したがって、本記述の場合にも、「財産上の損害」が認められる。よって、本記述は正しい。参考西田(各)280~281頁。
大塚ほか(基本刑法Ⅱ)309~310頁。
条解刑法810~811頁。
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解答
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憲法国会議員は、国庫から相当額の歳費を受けるものとされ、その歳費は、その在任中減額されないことが憲法上保障されている。憲法この問題の模試受験生正解率 71.5%結果正解解説憲法49条は、「両議院の議員は、法律の定めるところにより、国庫から相当額の歳費を受ける。」と規定している。しかし、国会議員の歳費について、その在任中減額されないことは憲法上保障されていない(同79条6項、80条2項参照)。よって、本記述は誤りである。
なお、国会法35条は、「議員は、一般職の国家公務員の最高の給与額……より少なくない歳費を受ける。」と定めている。参考佐藤幸(日本国憲法論)516頁、668頁。
野中ほか(憲法Ⅱ)109頁、245頁。 -
民法判例の趣旨に照らした場合、Aの所有する土地をBCDが共同で購入した場合において、BCDが売買契約の解除をするためには、BCD全員がAに対して解除の意思表示をする必要がある。民法この問題の模試受験生正解率 58.1%結果正解解説当事者の一方が数人ある場合には、契約の解除は、その全員から又はその全員に対してのみ、することができる(解除権の不可分性 民法544条1項)。これは、当事者が知らないうちに契約が終了することを防ぐとともに、一部の当事者についてのみ解除の効果を認めることで法律関係が複雑化するのを防止する趣旨である。したがって、本記述の場合、売買契約の買主が数人いるから、買主が売買契約の解除をするためには、BCD全員がAに対して解除の意思表示をする必要がある。よって、本記述は正しい。参考潮見(基本講義・債各Ⅰ)55~56頁。
中田(契約)219~220頁。 -
刑法判例の立場に従って検討した場合、信書開封罪及び秘密漏示罪は、いずれも告訴がなければ公訴を提起することができない親告罪である。刑法この問題の模試受験生正解率 85.5%結果正解解説信書開封罪及び秘密漏示罪は、ともに親告罪である(刑法135条)。両罪の保護法益は個人の秘密であり、両罪は、比較的軽微な法益侵害行為であることから、あえて被害者の意思に反してまで訴追する必要はないとして、親告罪となっている。よって、本記述は正しい。参考大塚ほか(基本刑法Ⅱ)88~89頁。
条解刑法418頁。
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解答
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憲法最高裁判所の判例の趣旨に照らした場合、個々の事件において法律の誤解又は事実の誤認等により、被告人にとって不利益な裁判が行われても、それが構成その他において偏ぱのおそれのない裁判所の裁判である以上、憲法第37条第1項にいう「公平な裁判所」の裁判でないとはいえない。憲法この問題の模試受験生正解率 70.5%結果正解解説判例は、虚偽公文書作成罪等で起訴された被告人が、各審級において、繰り返し主張していた弁解事由について、上告審であった高裁段階においても、何ら判断が示されなかったことから、憲法の保障する公平な裁判ではないと主張して、再上告をした事例において、憲法37条の「「公平なる裁判所の裁判」というのは構成其他において偏頗の惧なき裁判所の裁判という意味である。かかる裁判所の裁判である以上個々の事件において法律の誤解又は事実の誤認等により偶被告人に不利益な裁判がなされてもそれが一々同条に触れる違憲の裁判になるというものではない」としている(最大判昭23.5.5 憲法百選〔初版〕44事件)。よって、本記述は正しい。参考野中ほか(憲法Ⅰ)439頁。
渡辺ほか(憲法Ⅰ)320頁。 -
民法物権も債権も、その内容を当事者において自由に定めることができる。民法この問題の模試受験生正解率 82.3%結果正解解説債権においては、契約の内容の自由の原則(民法521条2項)が妥当し、その種類及び内容は、契約により原則として自由に定めることができる。これに対して、物権は、民法その他の法律に定めるもののほかは創設することができない(物権法定主義 同175条)。同条にいう「創設することができない」とは、法律が認めない新しい種類の物権を設定することができないというだけではなく、法律が認める物権であっても、その法律の定める内容又は効力を変更して、これと異なる内容又は効力を持たせることも許されないことを意味する。よって、本記述は誤りである。参考佐久間(物権)4頁。
石田剛ほか(民法Ⅱ)4頁。
我妻・有泉コメ368頁、734頁。 -
刑法判例の立場に従って検討した場合、甲は、知人乙から依頼されて、荷物を預かったが、その荷物の中身は覚醒剤であった。甲は、同荷物の中身が身体に有害で違法な薬物であることは認識していたが、覚醒剤や麻薬ではないと認識していた。この場合、甲には、覚醒剤取締法違反(覚醒罪所持)の罪は成立しない。刑法この問題の模試受験生正解率 71.8%結果正解解説判例は、「化粧品」と称する物を日本に運ぶように頼まれ、これを隠匿して日本国内に持ち込んだが、その中身は覚醒剤であったという事例において、覚醒剤輸入罪(覚醒剤取締法41条1項)、同所持罪(同41条の2第1項)で起訴された被告人が、被告人には当該物が覚醒剤であることの認識がなかったのであるから、覚醒剤輸入罪、同所持罪の故意は認められないと主張したのに対し、対象物が覚醒剤であるとの確定的な認識まではなくとも、「覚せい剤を含む身体に有害で違法な薬物類であるとの認識」が被告人にあったことから、同罪の故意を認めている(最決平2.2.9 刑法百選Ⅰ〔第8版〕40事件)。すなわち、同決定は、覚醒剤輸入罪、同所持罪の故意が認められるためには、認識の対象から覚醒剤が除外されておらず、「覚せい剤かもしれないし、その他の身体に有害で違法な薬物かもしれない」という認識が必要であるとしたものであり、覚醒剤ではないと認識していた場合には、覚醒剤輸入罪、同所持罪の故意は否定される。本記述では、甲は、乙から預かった荷物の中身が身体に有害で違法な薬物であることは認識していたが、覚醒剤や麻薬ではないと認識していたのであるから、覚醒剤取締法違反(覚醒剤所持)の罪の故意は認められない。したがって、甲には、覚醒剤取締法違反(覚醒剤所持)の罪は成立しない。よって、本記述は正しい。参考西田(総)229頁。
山口(総)202頁。
大塚ほか(基本刑法Ⅰ)96頁。
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解答
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憲法最高裁判所の判例の趣旨に照らした場合、憲法第26条の規定の背後には、国民各自が、一個の人間として、また、一市民として、成長、発達し、自己の人格を完成、実現するために必要な学習をする固有の権利を有すること、特に、自ら学習することのできない子どもは、その学習要求を充足するための教育を自己に施すことを大人一般に対して要求する権利を有するとの観念が存在している。憲法この問題の模試受験生正解率 90.5%結果正解解説判例は、全国中学校一斉学力調査に対して実力阻止活動を行った労組役員らが公務執行妨害罪等で起訴された事例において、憲法26条の「規定の背後には、国民各自が、一個の人間として、また、一市民として、成長、発達し、自己の人格を完成、実現するために必要な学習をする固有の権利を有すること、特に、みずから学習することのできない子どもは、その学習要求を充足するための教育を自己に施すことを大人一般に対して要求する権利を有するとの観念が存在している」としている(最大判昭51.5.21 旭川学テ事件 憲法百選Ⅱ〔第7版〕136事件)。よって、本記述は正しい。
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民法判例の趣旨に照らした場合、委任者が受任者に対し、委任事務の履行により得られる成果に対して報酬を支払うことを約した場合において、その成果が引渡しを要するときは、報酬は、その成果の引渡しと同時に支払わなければならない。民法この問題の模試受験生正解率 64.6%結果正解解説民法648条の2第1項は、委任事務の履行により得られる成果に対して報酬を支払うことを約した場合において、その成果が引渡しを要するときは、報酬は、その成果の引渡しと同時に、支払わなければならないとしている。成果完成型の委任において、報酬の支払に関しては請負に類似することを考慮し、請負(同633条本文)に準じた規律が設けられたものである。よって、本記述は正しい。参考潮見(基本講義・債各Ⅰ)276頁。
中田(契約)538頁。
平野(債各Ⅰ)379頁。 -
刑法判例の立場に従って検討した場合、事後強盗罪を犯す目的は、強盗予備罪の「強盗の罪を犯す目的」に含まれない。刑法この問題の模試受験生正解率 76.2%結果正解解説強盗予備罪(刑法237条)が成立するためには、「強盗の罪を犯す目的」でその予備行為をすることが必要である。判例は、同条にいう「強盗の罪を犯す目的」には、事後強盗の目的を含むとしている(最決昭54.11.19 刑法百選Ⅱ〔第7版〕43事件)。よって、本記述は誤りである。参考山口(各)230頁。
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憲法最高裁判所の判例の趣旨に照らした場合、議員の当選の効力を定める手続において、選挙権のない者がした投票について、その投票が何人に対して行われたのかを取り調べることは、投票の秘密を侵害するものとはいえず、認められる。憲法この問題の模試受験生正解率 60.9%結果正解解説判例は、議員の当選の効力を決定する手続において、選挙権のない者の投票及び正当な選挙人でない者が選挙人の名で行ったいわゆる代理投票が何人に対して行われたのかを調べることが、秘密選挙との関係で許されるかが争われた事例において、「選挙権のない者又はいわゆる代理投票をした者の投票についても、その投票が何人に対しなされたかは、議員の当選の効力を定める手続において、取り調べてはならない」としている(最判昭25.11.9 憲法百選Ⅱ〔第7版〕159事件)。よって、本記述は誤りである。
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民法Aは、Bと通謀して自己の所有する甲土地をBに仮装譲渡し、Bへの所有権移転登記をした。この場合に関して判例の趣旨に照らした場合、その後、Bの一般債権者Cが、仮装譲渡の事実を知らずに甲土地を差し押さえた場合、Aは、Cに対し、AB間の譲渡の無効を主張することができる。民法この問題の模試受験生正解率 66.9%結果正解解説判例は、民法94条2項にいう第三者とは、虚偽の意思表示の当事者又はその一般承継人以外の者であって、その表示の目的につき法律上利害関係を有するに至った者をいうとしている(大判大9.7.23、最判昭45.7.24 不動産取引百選〔第2版〕31事件)。そして、判例は、仮装譲渡された不動産を差し押さえた一般債権者は、同項の第三者に該当するとしている(最判昭48.6.28)。これは、差押えにより、目的物の所有権の所在と債権回収の可能性との関係が密接化するためである。したがって、本記述において、AB間で仮装譲渡された甲土地を差し押さえたCは、同項の第三者に該当するため、Aは、Cに対し、AB間の譲渡の無効を主張することができない。よって、本記述は誤りである。参考佐久間(総則)124~126頁。
佐久間ほか(民法Ⅰ)159~160頁。
論点体系判例民法(1)239~240頁。 -
刑法判例の立場に従って検討した場合、真正不作為犯と不真正不作為犯は、刑罰法規そのものが構成要件要素として明文で不作為を規定しているかどうかによって区別される。刑法この問題の模試受験生正解率 90.2%結果正解解説真正不作為犯とは、不作為を明示的に構成要件要素として規定し、それが犯罪となる条件を法文上明定しているものである。不真正不作為犯とは、不作為が明示的に構成要件要素として規定されてはいない犯罪であって、通常は作為により実現される構成要件を不作為で実現する場合である。よって、本記述は正しい。参考山口(総)74~75頁。
大塚ほか(基本刑法Ⅰ)79頁。
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憲法憲法前文第3段は、他国との共存の必要性・国際協調主義を謳い、主権国家として国際協調主義の立場に立つことを定めており、このことは憲法本文で具体化されている。憲法この問題の模試受験生正解率 75.6%結果正解解説憲法前文第3段では、他国との共存の必要性と政治道徳の普遍性を謳い、主権国家として国際協調主義の立場に立つことを定めている。そして、国際協調主義は同98条2項によって具体化されている。よって、本記述は正しい。参考佐藤幸(日本国憲法論)87頁。
新・コンメ憲法25頁。 -
民法判例の趣旨に照らした場合、人の生命又は身体を害する不法行為による損害賠償請求権は、被害者又はその法定代理人が損害又は加害者を知った時から5年間行使しないときには、時効によって消滅する。民法この問題の模試受験生正解率 55.8%結果正解解説人の生命又は身体を害する不法行為による損害賠償請求権は、被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から5年間行使しないときには、時効によって消滅する(民法724条の2、724条1号)。このように、不法行為による損害賠償請求権の短期の消滅時効期間は、被害者又はその法定代理人が、損害及び加害者のいずれをも知った時から進行する。よって、本記述は誤りである。参考窪田(不法行為)500~501頁、507~508頁。
潮見(基本講義・債各Ⅱ)138~140頁。
橋本ほか(民法Ⅴ)243~244頁。 -
刑法判例の立場に従って検討した場合、公務員が、その職務に関し、請託を受けて、第三者に賄賂を供与させた場合には、職務上不正な行為をし、又は相当の行為をしなかったときに限り、第三者供賄罪(刑法第197条の2)が成立する。刑法この問題の模試受験生正解率 55.8%結果正解解説第三者供賄罪(刑法197条の2)は、「公務員が、その職務に関し、請託を受けて、第三者に賄賂を供与させ、又はその供与の要求若しくは約束をしたとき」に成立し、職務上不正な行為をし、又は相当の行為をしなかったことは不要である。よって、本記述は誤りである。
なお、第三者供賄罪を犯し、「よって不正な行為をし、又は相当の行為をしなかった」場合、加重収賄罪(同197条の3第1項)が成立する。参考西田(各)528~529頁。
大塚ほか(基本刑法Ⅱ)458~459頁。
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憲法条約締結後に国会が当該条約を修正して承認することができるかについて、これを肯定する見解によれば、当該条約は、その内容を修正して承認する旨の国会の議決により、当該修正議決に従った内容どおりに改訂されたことになる。憲法この問題の模試受験生正解率 55.5%結果正解解説憲法73条3号ただし書の「承認」をめぐり、国会が条約を修正して承認することができるかについて、肯定説(さらに、事前承認の場合に限って認められるとする説と、事後承認の場合にも認められるとする説とに分かれる。)と否定説に分かれている。肯定説は、同61条・60条2項が両院協議会の手続を要求しているのは、両院の妥協により条約を修正して承認する可能性のあることを想定したものと解されることなどを根拠としている。もっとも、肯定説に立ったとしても、条約は、その内容を修正して承認する旨の国会の議決によって、その修正議決に従った内容どおりに改訂されたことになるのではなく、国会が修正した内容のものを締結するよう内閣に対して交渉を義務付けるという効果が生じるだけである。よって、本記述は誤りである。参考芦部(憲法)325~326頁。
野中ほか(憲法Ⅱ)206~208頁、426~428頁。
新基本法コメ(憲法)388~389頁。 -
民法A、B及びCが甲土地を共有している場合に関して、Aは、甲土地の自己の持分を第三者に対して譲渡する場合、B及びCの同意を得る必要はない。民法この問題の模試受験生正解率 83.4%結果正解解説明文の規定はないが、共有持分権は所有権と同様の性質を有すること及び処分を認めても他の共有者の持分権に影響を与えないことから、各共有者は、自己の持分権を自由に処分することができるとされている。よって、本記述は正しい。参考佐久間(物権)206~207頁。
平野(物権)358頁。
石田剛ほか(民法Ⅱ)158頁。
新基本法コメ(物権)118頁。 -
刑法判例の立場に従って検討した場合、従犯の刑は、正犯の刑を減軽すると規定されているが、従犯に言い渡される具体的宣告刑が、正犯に言い渡される具体的宣告刑より常に軽くなるとは限らない。刑法この問題の模試受験生正解率 75.0%結果正解解説刑法63条は、「従犯の刑は、正犯の刑を減軽する。」と規定しているところ、同条にいう「正犯の刑を減軽する」とは、正犯に対する法定刑に法律上の減軽を施した上で、従犯の処断刑を定めるという趣旨であると解されている。したがって、従犯には、正犯に言い渡される具体的宣告刑より重い刑が言い渡されることもあり得る(大判昭13.7.19)。よって、本記述は正しい。参考大谷(講義総)450頁。
大塚ほか(基本刑法Ⅰ)356~357頁。
条解刑法265頁。
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憲法最高裁判所の判例の趣旨に照らした場合、公職選挙における立候補の自由は、憲法第15条第1項の保障する重要な基本的人権の一つであるから、労働組合が、公職選挙における統一候補を決定し、組合を挙げてその選挙運動を推進している場合であっても、組合の方針に反して立候補をしようとしている組合員に対し、立候補を思いとどまるよう、勧告又は説得することは許されない。憲法この問題の模試受験生正解率 75.6%結果正解解説判例は、労働組合が市議会議員選挙に向けて統一候補を決定したところ、その決定に反して当該選挙に立候補した組合員を、当該労働組合の執行部役員が統制違反者として権利停止処分にしたことなどが公職選挙法違反に当たるとして起訴された事例において、「憲法28条による労働者の団結権保障の効果として、労働組合は、その目的を達成するために必要であり、かつ、合理的な範囲内において、その組合員に対する統制権を有」するが、この「労働組合が行使し得べき組合員に対する統制権には、当然、一定の限界が存するものといわなければならない。殊に、公職選挙における立候補の自由は、憲法15条1項の趣旨に照らし、基本的人権の一つとして、憲法の保障する重要な権利であるから、これに対する制約は、特に慎重でなければならず、組合の団結を維持するための統制権の行使に基づく制約であっても、その必要性と立候補の自由の重要性とを比較衡量して、その許否を決すべきであ」るとした上で、「統一候補以外の組合員で立候補しようとする者に対し、組合が所期の目的を達成するために、立候補を思いとどまるよう、勧告または説得をすることは、組合としても、当然なし得るところである。しかし、当該組合員に対し、勧告または説得の域を超え、立候補を取りやめることを要求し、これに従わないことを理由に当該組合員を統制違反者として処分するがごときは、組合の統制権の限界を超えるものとして、違法といわなければならない」としている(最大判昭43.12.4 三井美唄労組事件 憲法百選Ⅱ〔第7版〕144事件)。したがって、労働組合は、組合の方針に反して立候補をしようとしている組合員に対し、立候補を思いとどまるよう、勧告又は説得することは許される。よって、本記述は誤りである。
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民法判例の趣旨に照らした場合、建物の賃貸借契約が期間の満了によって終了した場合において、賃借人が造作買取請求権を行使し、賃貸人が賃借人に対して建物の引渡しを請求したときは、賃借人は、造作代金の支払と建物引渡しとの同時履行を主張することができる。民法この問題の模試受験生正解率 68.3%結果正解解説判例は、建物と造作代金とは対価関係にないことを理由として、建物の引渡しと造作代金の支払とは同時履行の関係にないとしている(大判昭7.9.30、最判昭29.7.22)。よって、本記述は誤りである。参考潮見(基本講義・債各Ⅰ)220~221頁。
平野(債各Ⅰ)271頁。 -
刑法判例の立場に従って検討した場合、警察官から提示を求められたときに備え、偽造された自動車運転免許証を携帯して自動車を運転した場合、偽造公文書行使罪は成立しない。刑法この問題の模試受験生正解率 33.7%結果正解解説判例は、偽造公文書行使罪の「行使」について、「文書を真正に成立したものとして他人に交付、提示等して、その閲覧に供し、その内容を認識させまたはこれを認識しうる状態におくことを要する」とした上で、「自動車を運転する際に偽造にかかる運転免許証を携帯しているに止まる場合には、未だこれを他人の閲覧に供しその内容を認識しうる状態においたものというには足りず、偽造公文書行使罪にあたらない」としている(最大判昭44.6.18 刑法百選Ⅱ〔第8版〕99事件)。よって、本記述は正しい。参考西田(各)391~392頁。
大塚ほか(基本刑法Ⅱ)391~392頁。
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解答
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憲法最高裁判所の判例の趣旨に照らした場合、集合住宅でのビラの戸別配布のために、一般に人が自由に出入りすることが予定されていない当該集合住宅の共用部分及びその敷地に管理権者の意思に反して立ち入ることは、たとえ表現の自由の行使のためであるとしても、管理権者の管理権及びそこで私的生活を営む者の私生活の平穏を侵害するものであるから、このような立入りについて刑法第130条前段の罪に問うことは、憲法第21条第1項に違反しない。憲法この問題の模試受験生正解率 80.5%結果正解解説判例は、政治的意見を記載したビラを公務員宿舎の共用部分である各室の玄関ドアの新聞受けに投函する目的で管理権者及び居住者の承諾を得ずに当該宿舎内に立ち入り、当該ビラを投函した行為について、刑法130条前段を適用することの合憲性が問題となった事例において、「被告人らが立ち入った場所は、防衛庁(現:防衛省)の職員及びその家族が私的生活を営む場所である集合住宅の共用部分及びその敷地であり、自衛隊・防衛庁当局がそのような場所として管理していたもので、一般に人が自由に出入りすることのできる場所ではない。たとえ表現の自由の行使のためとはいっても、このような場所に管理権者の意思に反して立ち入ることは、管理権者の管理権を侵害するのみならず、そこで私的生活を営む者の私生活の平穏を侵害するものといわざるを得ない。したがって、本件被告人らの行為をもって刑法130条前段の罪に問うことは、憲法21条1項に違反するものではない」としている(最判平20.4.11 憲法百選Ⅰ〔第7版〕58事件)。よって、本記述は正しい。
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民法判例の趣旨に照らした場合、Aは、その所有する甲土地をBに売却し、その旨の所有権移転登記が未了の間に、Bは、甲土地をCに売却した。その後、A及びBがAB間の売買契約を合意解除した場合、Cは、所有権移転登記をしなければ、Aに対し、甲土地の所有権の取得を対抗することができない。民法この問題の模試受験生正解率 70.4%結果正解解説判例は、A名義の登記がなされているA所有の土地が、AからB、BからCへと順次売買され、いずれについても所有権移転登記がなされていない間にAB間の売買が合意解除された事例において、遡及効を有する契約の解除が第三者の権利を害することができないことは民法545条1項ただし書の定めるところであり、合意解除は、同項の解除ではないが、それが契約の時にさかのぼって効力を有する趣旨であるときは法定解除と別に扱う理由もないから、そのような合意解除も第三者の権利を害することはできないが、その第三者を同177条にいう第三者の範囲から除外し別に扱うべき理由もないから、その第三者が不動産の所有権を取得した場合は、その所有権について不動産登記を経由していることを要し、もし登記を経由していないときは第三者として保護されないとしている(最判昭33.6.14)。よって、本記述は正しい。参考佐久間(物権)91~94頁。
平野(物権)116頁。
石田剛ほか(民法Ⅱ)48~49頁。 -
刑法判例の立場に従って検討した場合、甲は、乙の同意を得て、差押えを受けている乙所有の自動車に放火してこれを焼損したが、公共の危険は生じなかった。この場合、甲には、建造物等以外放火罪が成立する。刑法この問題の模試受験生正解率 58.7%結果正解解説他人が所有する自動車を放火する場合は、刑法110条1項の成立が問題となるところ、その者の同意がある場合には、財産権侵害がなく、自己所有物との均衡を考えて、同条2項が適用される。ただし、その物が差押えを受けている場合には、同115条により同110条1項の成立が問題となる。もっとも、建造物等以外放火罪(同条)が成立するためには、その客体が他人所有物(同条1項)、自己所有物(同条2項)のいずれであっても、「公共の危険」の発生が必要である。本記述では、甲は乙所有の自動車に放火してこれを焼損したが、公共の危険が生じていない。したがって、甲には、建造物等以外放火罪は成立しない。よって、本記述は誤りである。参考西田(各)329~330頁。
大塚ほか(基本刑法Ⅱ)362頁。
条解刑法367~369頁。
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設問
設問・解答
解答
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憲法内閣は法律を誠実に執行する義務を負うが、他方、内閣の構成員である国務大臣は、憲法尊重擁護義務を負うため、内閣が違憲と判断する法律が成立した場合には、その執行を免れる。憲法この問題の模試受験生正解率 76.0%結果正解解説憲法73条1号は、内閣が「法律を誠実に執行」する旨定めている。これは、たとえ内閣の賛成できない法律であっても、法律の目的にかなった執行を行うことを義務付ける趣旨である。他方、内閣の構成員である国務大臣は、憲法尊重擁護義務を負う(同99条)。しかし、法律が違憲かどうかについては、国会の判断が内閣のそれに優先するとされている。すなわち、国会で合憲であるものとして制定した以上、内閣はその判断に拘束される。したがって、内閣が違憲と判断する法律が成立した場合でも、その執行を免れることはない。よって、本記述は誤りである。
なお、最高裁判所が法律を違憲と判断した場合には、内閣はその法律の執行を停止することができると解されている。参考佐藤幸(日本国憲法論)541~542頁。
野中ほか(憲法Ⅱ)205頁。 -
民法留置権者及び抵当権者は、いずれもその目的である不動産の競売を申し立てることができる。民法この問題の模試受験生正解率 43.3%結果正解解説留置権は、優先弁済的効力を有しないため、留置権者は、担保権の実行としての競売手続(民事執行法180条1号、190条1項)をとることはできないが、競売手続をとることは認められている(形式的競売 同195条)。また、抵当権は、優先弁済的効力を有することから、抵当権者は、担保権の実行としての競売手続をとることができる。よって、本記述は正しい。参考内田Ⅲ554~555頁、667頁。
道垣内(担物)40頁、200頁。
松井(担物)151~152頁。 -
刑法ある刑罰法規につき、条文の文言を、語義の可能な範囲内で通常の意味よりも広げて解釈することは、許されることがある。刑法この問題の模試受験生正解率 74.8%結果正解解説刑罰法規で規定されていない事項に対し、これと類似する性質を有する事項に関する刑罰法規を適用することは、罪刑法定主義の派生原理である法律主義及び事後法の禁止に反するものであり許されない(類推解釈の禁止)。もっとも、このことは、文理解釈しか許されないことを意味するものではなく、法の予想し得る限度まで、いかにあるべきかを考えて実質的な解釈をすることまで禁止するものではない。そのため、ある刑罰法規につき、条文の文言を、語義の可能な範囲内で通常の意味よりも広げて解釈することが許されることがある(拡張解釈)。よって、本記述は正しい。参考山口(総)13~14頁。
大谷(講義総)64~66頁。
大塚ほか(基本刑法Ⅰ)21~22頁。
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解答
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憲法最高裁判所の判例の趣旨に照らした場合、我が国における宗教事情の下で信教の自由を確実に実現するためには、単に信教の自由を無条件に保障するのみでは足りず、国家といかなる宗教との結び付きをも排除するため、政教分離規定を設ける必要性が大であったことに鑑みると、憲法は、政教分離規定を設けるに当たり、国家と宗教との完全な分離を理想とし、国家の非宗教性ないし宗教的中立性を確保しようとしたものと解すべきである。憲法この問題の模試受験生正解率 55.0%結果正解解説判例は、市が体育館建設に当たり、神式による起工式(地鎮祭)を行い、そのための費用を市の公金から支出したことが、憲法20条3項、89条に違反するか否かが争われた事例において、「憲法は、明治維新以降国家と神道とが密接に結びつき……種々の弊害を生じたことにかんがみ、新たに信教の自由を無条件に保障することとし、更にその保障を一層確実なものとするため、政教分離規定を設けるに至ったのである。元来、わが国においては、キリスト教諸国や回教諸国等と異なり、各種の宗教が多元的、重層的に発達、併存してきているのであって、このような宗教事情のもとで信教の自由を確実に実現するためには、単に信教の自由を無条件に保障するのみでは足りず、国家といかなる宗教との結びつきをも排除するため、政教分離規定を設ける必要性が大であった。これらの諸点にかんがみると、憲法は、政教分離規定を設けるにあたり、国家と宗教との完全な分離を理想とし、国家の非宗教性ないし宗教的中立性を確保しようとしたもの、と解すべきである」としている(最大判昭52.7.13 津地鎮祭事件 憲法百選Ⅰ〔第7版〕42事件)。よって、本記述は正しい。
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民法判例の趣旨に照らした場合、債権の目的が数個の給付の中から選択によって定まる場合において、第三者がその選択権を有するときは、その選択の意思表示は、債権者及び債務者の双方に対してしなければならない。民法この問題の模試受験生正解率 52.9%結果正解解説選択債権とは、2個以上の異なった給付を選択的に目的としている債権であって、選択によってそのうちの1つが債権の目的となるものをいう。そして、民法409条1項は、第三者が選択をすべき場合には、その選択は、債権者又は債務者に対する意思表示によってするとしている。よって、本記述は誤りである。参考内田Ⅲ78~79頁。
潮見(プラクティス債総)50頁、52頁。 -
刑法判例の立場に従って検討した場合、中止犯が成立する場合は、必ずその刑が免除される。刑法この問題の模試受験生正解率 90.9%結果正解解説中止犯とは、犯罪の実行に着手したが「自己の意思」によって中止した場合をいい、その刑は必要的に減軽又は免除される(刑法43条ただし書)。よって、本記述は誤りである。参考大谷(講義総)382頁。
大塚ほか(基本刑法Ⅰ)281~282頁。
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解答
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憲法最高裁判所の判例の趣旨に照らした場合、憲法第34条前段の弁護人依頼権は、単に被疑者が弁護人を選任することを官憲が妨害してはならないというにとどまり、被疑者が弁護人から援助を受ける機会を持つことを実質的に保障するものではない。憲法この問題の模試受験生正解率 82.7%結果正解解説判例は、刑訴法39条3項の規定(接見指定)が憲法34条等に違反するかどうかが争われた事例において、「憲法34条前段は、「何人も、理由を直ちに告げられ、且つ、直ちに弁護人に依頼する権利を与へられなければ、抑留又は拘禁されない。」と定める。この弁護人に依頼する権利は、身体の拘束を受けている被疑者が、拘束の原因となっている嫌疑を晴らしたり、人身の自由を回復するための手段を講じたりするなど自己の自由と権利を守るため弁護人から援助を受けられるようにすることを目的とするものである。したがって、右規定は、単に被疑者が弁護人を選任することを官憲が妨害してはならないというにとどまるものではなく、被疑者に対し、弁護人を選任した上で、弁護人に相談し、その助言を受けるなど弁護人から援助を受ける機会を持つことを実質的に保障している」としている(最大判平11.3.24 憲法百選Ⅱ〔第7版〕120事件)。よって、本記述は誤りである。
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民法判例の趣旨に照らした場合、重婚の場合において、後婚が離婚によって解消されたときは、特段の事情のない限り、後婚が重婚に当たることを理由としてその取消しを請求することができない。民法この問題の模試受験生正解率 55.8%結果正解解説重婚の禁止の違反は婚姻の取消原因である(民法744条1項、732条)。もっとも、判例は、「重婚の場合において、後婚が離婚によって解消されたときは、特段の事情のない限り、後婚が重婚にあたることを理由としてその取消を請求することは許されないものと解するのが相当である」としている(最判昭57.9.28 民法百選Ⅲ〔第3版〕4事件)。その理由として、同判決は、「婚姻取消の効果は離婚の効果に準ずるのであるから(民法748条、749条)、離婚後、なお婚姻の取消を請求することは、特段の事情がある場合のほか、法律上その利益がない」ことを挙げている。よって、本記述は正しい。参考窪田(家族法)35~36頁。
前田陽ほか(民法Ⅵ)56頁。 -
刑法判例の立場に従って検討した場合、わいせつの目的をもって未成年者を誘拐した場合、わいせつ目的誘拐罪のみが成立し、未成年者誘拐罪は成立しない。刑法この問題の模試受験生正解率 59.9%結果正解解説判例は、刑法225条所定の目的をもって未成年者を誘拐したときは、同条の罪のみが成立するとしている(大判明44.12.8)。よって、本記述は正しい。参考山口(各)94頁。
大塚ほか(基本刑法Ⅱ)58頁。
大コメ(刑法・第3版)(11)539頁。
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憲法最高裁判所の判例の趣旨に照らした場合、学生は、大学における不可欠の構成員として、学問を学び、教育を受けるものとして、その学園の環境や条件の保持及びその改変に重大な利害関係を有する以上、大学自治の運営について要望し、批判し、あるいは反対する当然の権利を有する。憲法この問題の模試受験生正解率 59.6%結果正解解説最大判昭38.5.22(ポポロ事件 憲法百選Ⅰ〔第7版〕86事件)は、「大学の学問の自由と自治は、大学が学術の中心として深く真理を探求し、専門の学芸を教授研究することを本質とすることに基づくから、直接には教授その他の研究者の研究、その結果の発表、研究結果の教授の自由とこれらを保障するための自治とを意味すると解される。大学の施設と学生は、これらの自由と自治の効果として、施設が大学当局によって自治的に管理され、学生も学問の自由と施設の利用を認められるのである。もとより、憲法23条の学問の自由は、学生も一般の国民と同じように享有する。しかし、大学の学生としてそれ以上に学問の自由を享有し、また大学当局の自治的管理による施設を利用できるのは、大学の本質に基づき、大学の教授その他の研究者の有する特別な学問の自由と自治の効果としてである」としている。したがって、同判決は、学生を単なる施設の利用者として捉えているにすぎない。よって、本記述は誤りである。
なお、仙台高判昭46.5.28(東北大学事件 教育百選〔第2版〕4事件)は、「学生は、大学における不可欠の構成員として、学問を学び、教育を受けるものとして、その学園の環境や条件の保持およびその改変に重大な利害関係を有する以上、大学自治の運営について要望し、批判し、あるいは反対する当然の権利を有し、教員団においても、十分これに耳を傾けるべき責務を負う」としている。参考芦部(憲法)177~178頁。 -
民法判例の趣旨に照らした場合、Aが、Bからその所有する甲土地を譲り受け、引渡しを受けて占有を開始した後、BがCにも甲土地を譲渡し、Cへの所有権移転登記をした場合において、Aは、その後も甲土地の占有を継続し、甲土地の占有を開始した時から民法所定の時効期間を経過したときは、甲土地の所有権を時効取得することができる。民法この問題の模試受験生正解率 75.0%結果正解解説判例は、不動産が売主から第一の買主に譲渡され、その登記がされない間に、その不動産が売主から「第二の買主に二重に売却され、第二の買主に対し所有権移転登記がなされたときは、……登記の時に第二の買主において完全に所有権を取得するわけであるが、その所有権は、売主から第二の買主に直接移転するのであり、売主から一旦第一の買主に移転し、第一の買主から第二の買主に移転するものではなく、第一の買主は当初から全く所有権を取得しなかったことになる」とし、「したがって、第一の買主がその買受後不動産の占有を取得し、その時から民法162条に定める時効期間を経過したときは、同法条により当該不動産を時効によって取得しうる」としている(最判昭46.11.5 民法百選Ⅰ〔第9版〕53事件)。よって、本記述は正しい。参考佐久間(総則)405頁。
我妻・有泉コメ328頁。 -
刑法判例の立場に従って検討した場合、名誉毀損罪は、公知の事実を摘示した場合でも、成立し得る。刑法この問題の模試受験生正解率 55.3%
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憲法最高裁判所の判例の趣旨に照らした場合、企業者は、雇用の自由を有し、労働者の思想、信条を理由として雇入れを拒んでも当然に違法ということはできないため、労働者の採否決定に当たり、その思想、信条を調査し、労働者にその思想、信条に関連する事項の申告を求めることも許される。憲法この問題の模試受験生正解率 77.8%結果正解解説最大判昭48.12.12(三菱樹脂事件 憲法百選Ⅰ〔第7版〕9事件)は、企業者が労働者の雇入れに当たりその思想、信条に関連する事項を調査することは許されるかにつき、「企業者が雇傭の自由を有し、思想、信条を理由として雇入れを拒んでもこれを目して違法とすることができない以上、企業者が、労働者の採否決定にあたり、労働者の思想、信条を調査し、そのためその者からこれに関連する事項についての申告を求めることも、これを法律上禁止された違法行為とすべき理由はない」としている。よって、本記述は正しい。
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民法判例の趣旨に照らした場合、家屋の所有者である賃貸人の地位と転借人の地位が同一人に帰属した場合、転貸借契約の当事者間に転貸借契約を存続させる特別の合意が成立しない限り、転借権は混同により消滅する。民法この問題の模試受験生正解率 61.1%結果正解解説判例は、「家屋の所有権者たる賃貸人の地位と転借人たる地位とが同一人に帰した場合は民法613条1項の規定による転借人の賃貸人に対する直接の義務が混同により消滅するは別論として、当事者間に転貸借関係を消滅させる特別の合意が成立しない限りは転貸借関係は当然には消滅しない」としている(最判昭35.6.23)。よって、本記述は誤りである。参考潮見(プラクティス債総)452~453頁。
中田(債総)496頁。 -
刑法判例の立場に従って検討した場合、甲は、Vの後頸部に割れたビール瓶を突き刺し、Vに重篤な頸部の血管損傷の傷害を負わせたところ、Vは、直ちに病院で手術を受け、一旦は容体が安定したが、医師の指示に従わず、安静に努めなかったため、容体が悪化し、上記傷害による脳機能障害により死亡した。この場合、甲がVの後頸部に割れたビール瓶を突き刺した行為とVの死亡の結果との間には、因果関係はない。刑法この問題の模試受験生正解率 86.8%結果正解解説判例は、本記述と同様の事例において、「被害者の受けた……傷害は、それ自体死亡の結果をもたらし得る身体の損傷であって、仮に被害者の死亡の結果発生までの間に、……被害者が医師の指示に従わず安静に努めなかったために治療の効果が上がらなかったという事情が介在していたとしても、被告人らの暴行による傷害と被害者の死亡との間には因果関係がある」としている(最決平16.2.17 平16重判刑法1事件)。したがって、本記述において、甲がVの後頸部に割れたビール瓶を突き刺した行為とVの死亡の結果との間には、因果関係がある。よって、本記述は誤りである。参考山口(総)64頁。
大塚ほか(基本刑法Ⅰ)76~77頁。
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憲法憲法第9条第1項の「国際紛争を解決する手段」としての戦争について、国際法上の用例を尊重し、「国家の政策としての戦争」、すなわち侵略戦争を意味するならば、同条全体により自衛戦争を含めた全ての戦争が放棄されているという結論を導くことはできない。憲法この問題の模試受験生正解率 50.5%結果正解解説憲法9条1項の「国際紛争を解決する手段」としての戦争について、国際法上の用例を尊重し、「国家の政策としての戦争」、すなわち侵略戦争を意味するならば、同項で放棄されているのは侵略戦争ということになり、自衛戦争は放棄されていないことになる。もっとも、この見解に立っても、同条2項の「前項の目的を達するため」にいう「前項の目的」について、戦争を放棄するに至った動機を一般的に指すものと解釈し、同項で戦力の保持が無条件で禁止され、また、交戦権まで否認されていると解釈するならば、同条1項で留保された自衛戦争も事実上不可能となり、同条全体で自衛戦争を含めた全ての戦争が放棄されているという結論を導くことができる。よって、本記述は誤りである。参考芦部(憲法)57~58頁。
佐藤幸(日本国憲法論)106~107頁。
野中ほか(憲法Ⅰ)164~168頁。
芦部(憲法学Ⅰ)255~259頁。 -
民法Aが家出をして行方不明になり、その生死が10年間明らかでなかったため、Aについて失踪宣告がされた場合に関して、判例の趣旨に照らした場合、Aが失踪宣告により死亡したものとみなされた時と異なる時に死亡していたことが判明した場合、家庭裁判所は、利害関係人の請求により、Aの失踪宣告を取り消さなければならない。民法この問題の模試受験生正解率 68.3%結果正解解説失踪宣告を受けた者が生存していること又は失踪宣告により死亡したものとみなされる時と異なる時に死亡したことの証明があったときは、家庭裁判所は、本人又は利害関係人の請求により、失踪宣告を取り消さなければならない(民法32条1項前段)。本記述においては、Aは、生死不明となってから7年の期間が経過した時に死亡したものとみなされるところ、これと異なる時に死亡していたことが判明しているから、家庭裁判所は、利害関係人の請求により、Aの失踪宣告を取り消さなければならないこととなる。よって、本記述は正しい。参考佐久間(総則)26頁。
佐久間ほか(民法Ⅰ)53頁。 -
刑法判例の立場に従って検討した場合、公務員になろうとする者が、その担当すべき職務に関し、請託を受けて、賄賂を要求した後、公務員になったが、結局、賄賂を収受しなかった場合、事前収賄罪(刑法第197条第2項)は成立しない。刑法この問題の模試受験生正解率 55.8%結果正解解説事前収賄罪(刑法197条2項)は、「公務員になろうとする者が、その担当すべき職務に関し、請託を受けて、賄賂を収受し、又はその要求若しくは約束をした」場合、公務員になったときに成立する。したがって、公務員になろうとする者が、その担当すべき職務に関し、請託を受けて、賄賂を要求している以上、公務員になった後、結局、賄賂を収受しなかったとしても事前収賄罪が成立する。よって、本記述は誤りである。参考西田(各)527頁。
大塚ほか(基本刑法Ⅱ)457~458頁。
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憲法最高裁判所の判例の趣旨に照らすと、不起訴となった事実に基づく抑留又は拘禁であっても、そのうちに実質上は、無罪となった事実についての抑留又は拘禁であると認められるものがある場合には、その部分の抑留又は拘禁は憲法第40条の適用対象となり得る。憲法この問題の模試受験生正解率 52.4%結果正解解説判例は、覚醒剤取締法違反の事実につき無罪判決を得た者が、当該被疑事実の取調べが、不起訴となった別の事実に基づく勾留中に不法に行われたとして、その身柄拘束期間についての刑事補償を請求した事例において、「憲法40条は「……抑留又は拘禁された後、無罪の裁判を受けたとき……」と規定しているから、抑留または拘禁された被疑事実が不起訴となった場合は同条の補償の問題を生じないことは明らかである」としているが、しかし、「憲法40条にいう「抑留又は拘禁」中には、……たとえ不起訴となった事実に基く抑留または拘禁であっても、そのうちに実質上は、無罪となった事実についての抑留または拘禁であると認められるものがあるときは、その部分の抑留及び拘禁もまたこれを包含する」としている(最大決昭31.12.24 憲法百選Ⅱ〔第7版〕129事件)。したがって、抑留又は拘禁の理由となった被疑事実が不起訴となった場合であっても、そのうちに実質上は、無罪となった事実についての抑留又は拘禁であると認められるものがあるときは、その部分の抑留又は拘禁は、同条の適用対象となり得る。よって、本記述は正しい。
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民法判例の趣旨に照らした場合、自筆証書遺言が数葉にわたる場合でも、一通の遺言書として作成されているときは、その日付、署名、捺印は一葉にされることで足りる。民法この問題の模試受験生正解率 60.1%結果正解解説自筆証書遺言をするには、遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押さなければならない(民法968条1項)。本記述のように、自筆証書遺言が数葉にわたる場合、毎葉ごとに日付、署名及び捺印をしなければならないのかが問題となる。この点につき、判例は、「遺言書が数葉にわたるときであっても、その数葉が一通の遺言書として作成されたものであることが確認されれば、その一部に日附、署名、捺印が適法になされている限り、右遺言書を有効と認めて差支えないと解するを相当とする」としている(最判昭36.6.22 家族法百選〔第2版〕113事件)。よって、本記述は正しい。参考窪田(家族法)465頁。
新基本法コメ(相続)184頁。 -
刑法判例の立場に従って検討した場合、甲は、乙が覚醒剤を密輸することを知りながら、同人に対して覚醒剤購入資金を交付したところ、乙は、これを用いて2回の密輸を行った。この場合、甲には、2個の覚醒剤取締法違反幇助の罪が成立し、これらは併合罪となる。刑法この問題の模試受験生正解率 57.5%結果正解解説判例は、本記述と同様の事例において、「幇助罪は正犯の犯行を幇助することによって成立するものであるから、成立すべき幇助罪の個数については、正犯の罪のそれに従って決定される」ところ、「幇助罪が数個成立する場合において、それらが刑法54条1項にいう1個の行為によるものであるか否かについては、幇助犯における行為は幇助犯のした幇助行為そのものにほかならないと解するのが相当であるから、幇助行為それ自体についてこれをみるべきである」としている(最決昭57.2.17 刑法百選Ⅰ〔第8版〕107事件)。したがって、本記述において、甲には2個の覚醒剤取締法違反幇助の罪が成立するが、覚醒剤購入資金を交付する幇助行為は1個であるから、観念的競合(刑法54条1項前段)として科刑上一罪となる。よって、本記述は誤りである。参考西田(総)453~454頁。
大塚ほか(基本刑法Ⅰ)415頁。
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憲法最高裁判所の判例の趣旨に照らすと、最高裁判所裁判官の国民審査は、一種の国民解職制度であるが、裁判官の任命を完成させる事後審査の意味をも含んでいる。憲法この問題の模試受験生正解率 58.9%結果正解解説判例は、最高裁判所裁判官の「国民審査の制度はその実質において所謂解職の制度と見ることが出来る」とした上で、憲法79条2項と同条3項の字句を照らし合わせてみると、「国民が罷免すべきか否かを決定する趣旨であって、……任命そのものを完成させるか否かを審査するものでない」としている(最大判昭27.2.20 憲法百選Ⅱ〔第7版〕178事件)。したがって、国民審査は、裁判官の任命を完成させる事後審査の意味を含まない。よって、本記述は誤りである。
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民法売買の目的物の引渡しについて期限があるときは、代金の支払についても同一の期限を付したものと推定される。民法この問題の模試受験生正解率 38.6%結果正解解説売買の目的物の引渡しについて期限があるときは、代金の支払についても同一の期限を付したものと推定される(民法573条)。売買契約は双務契約であり、両当事者は、同時履行の抗弁権(同533条本文)を有し、目的物の引渡しについて期限がある場合には、買主の代金支払についても同一の期限を定めるのが通常であると考えられることから、推定規定を設けたものである。よって、本記述は正しい。参考潮見(基本講義・債各Ⅰ)87頁。
中田(契約)336頁。
我妻・有泉コメ1242頁。 -
刑法判例の立場に従って検討した場合、甲は、Vの頭部を多数回殴打した結果、恐怖心による心理的圧迫によりVの血圧を上昇させ、Vに脳出血を発生させてVを意識消失状態に陥らせた。甲は、意識を消失したままのVを建材会社の資材置場まで自動車で運搬し、同所に放置して立ち去ったところ、Vは、甲とは無関係な何者かから角材で頭頂部を殴打され、死亡するに至ったが、Vの死因は甲の殴打行為により形成された脳出血であり、資材置場で受けた殴打行為は、既に発生していた脳出血を拡大させ、幾分か死期を早める影響を与えるものであった。この場合、甲の上記殴打行為とVの死亡の結果との間には、因果関係はない。刑法この問題の模試受験生正解率 95.3%結果正解解説判例は、本記述と同様の事例において、「犯人の暴行により被害者の死因となった傷害が形成された場合には、仮にその後第三者により加えられた暴行によって死期が早められたとしても、犯人の暴行と被害者の死亡との間の因果関係を肯定することができ」るとしている(最決平2.11.20 刑法百選Ⅰ〔第8版〕10事件)。したがって、本記述においても、甲の殴打行為とVの死亡の結果との間には、因果関係がある。よって、本記述は誤りである。参考大塚ほか(基本刑法Ⅰ)71~72頁。
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憲法最高裁判所の判例の趣旨に照らした場合、労働組合の活動が多様化して組合による統制範囲が拡大していることに加え、事実上組合員の脱退の自由が大きな制約を受けていることからすれば、労働組合の目的の範囲内の活動であっても直ちに組合員の協力義務を肯定することができず、具体的な組合活動の内容・性質、これについて組合員に求められる協力の内容・程度・態様等を比較考量し、組合員の協力義務の範囲に合理的な限定を加えることを要する。憲法この問題の模試受験生正解率 73.8%結果正解解説判例は、労働組合が他の労働組合の闘争支援資金、安保反対闘争により不利益処分を受けた組合員の救援費用等のための臨時組合費の納付を組合員に強制できるかどうかが争われた事例において、「労働組合の活動が……多様化するにつれて、組合による統制の範囲も拡大し、組合員が一個の市民又は人間として有する自由や権利と矛盾衝突する場合が増大し、しかも今日の社会的条件のもとでは、組合に加入していることが労働者にとって重要な利益で、組合脱退の自由も事実上大きな制約を受けていることを考えると、労働組合の活動として許されたものであるというだけで、そのことから直ちにこれに対する組合員の協力義務を無条件で肯定することは、相当でないというべきである。それゆえ、この点に関して格別の立法上の規制が加えられていない場合でも、問題とされている具体的な組合活動の内容・性質、これについて組合員に求められる協力の内容・程度・態様等を比較考量し、多数決原理に基づく組合活動の実効性と組合員個人の基本的利益の調和という観点から、組合の統制力とその反面としての組合員の協力義務の範囲に合理的な限定を加えることが必要である」としている(最判昭50.11.28 国労広島地本事件 憲法百選Ⅱ〔第7版〕145事件)。よって、本記述は正しい。
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民法判例の趣旨に照らした場合、内縁の夫婦の一方の死亡により内縁関係が解消した場合に、他の一方の相続権は認められないが、当該他の一方は、特別の寄与の制度により、死亡した一方の財産を取得することができる。民法この問題の模試受験生正解率 60.7%結果正解解説被相続人の配偶者は常に相続人となるが(民法890条前段)、同条の「配偶者」は、戸籍でその存在を確認し得る法律婚の配偶者を指し、内縁配偶者を含まない。また、相続人以外の者であっても、被相続人に対して無償で療養看護その他の労務の提供をしたことにより被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした者に対し、相続財産から分配を受けることを認める制度として、特別の寄与の制度(同1050条)があるが、この制度により相続財産から分配を受けることができるのは、被相続人の親族に限られ(同条1項)、内縁配偶者には認められない。よって、本記述は誤りである。参考窪田(家族法)141頁、444頁。
前田陽ほか(民法Ⅵ)243頁、310頁。
一問一答(新しい相続法)181~182頁。 -
刑法判例の立場に従って検討した場合、ある犯罪が行われた後、その罪の法定刑に懲役刑のほかに禁錮刑を新たに加える法改正が行われて施行された場合、新法が適用される。(参照条文)刑法 第6条(刑の変更)犯罪後の法律によって刑の変更があったときは、その軽いものによる。
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憲法政党が党議拘束に従わない国会議員を懲戒処分に付することは、その効果が政党内にとどまるか否かにかかわらず、国会議員が憲法第43条第1項にいう「全国民を代表する」ことと矛盾抵触することになる。憲法この問題の模試受験生正解率 84.3%結果正解解説国会議員は、全国民の代表であり、支持母体等の具体的指示に法的に拘束されることなく、議会において自己の信念に基づいてのみ発言・表決する(自由委任の原則 憲法43条1項)。他方、政党は国会内で一体として行動するために、その所属議員に対して党議拘束を加えることがある。そこで、同項と党議拘束との関係が問題となるが、国会議員は、所属政党の決定に従って行動することにより国民の代表者としての実質を発揮できるといえるし、また、政党が、党議拘束に従わない国会議員を懲戒処分に付することは、本来その政党により自律的に決せられるべき内部事項である。したがって、懲戒処分の効果が、党からの除名をもって議員資格を喪失させるものであるならともかく、その効果が政党内にとどまるものである限り、党議拘束に従わない国会議員を懲戒処分に付することは、国会議員が同項にいう「全国民を代表する」ことと矛盾抵触しないということができる。よって、本記述は誤りである。参考芦部(憲法)302~304頁。
佐藤幸(日本国憲法論)462~463頁。
野中ほか(憲法Ⅱ)62~63頁、108頁。
市川(憲法)251頁。 -
民法共有物の管理者が、共有者間において決定された共有物の管理に関する事項に反してその職務を行った場合、その行為は共有者に対して効力を有しないが、共有者は、これをもって善意の第三者に対抗することができない。民法この問題の模試受験生正解率 63.9%結果正解解説共有物の管理者は、共有者が共有物の管理に関する事項を決した場合には、これに従ってその職務を行わなければならず(民法252条の2第3項)、同項に違反して行った共有物の管理者の行為は、共有者に対してその効力を生じない(同条4項本文)。ただし、このような内部事項を知り得ない第三者を保護するため、共有者は、これをもって善意の第三者に対抗することができないとされている(同項ただし書)。よって、本記述は正しい。参考平野(物権)364頁。
石田剛ほか(民法Ⅱ)163頁。 -
刑法判例の立場に従って検討した場合、遺棄罪の保護法益には、生命のみならず身体の安全も含まれ、生命及び身体に対する具体的な危険が発生しない限り、遺棄罪は成立しない。刑法この問題の模試受験生正解率 52.3%結果正解解説参考山口(各)30~31頁。
大塚ほか(基本刑法Ⅱ)21~22頁。
新基本法コメ(刑法)468~469頁。
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憲法最高裁判所の判例の趣旨に照らした場合、公務員の地位の特殊性と職務の公共性に鑑みると、これを根拠として公務員の労働基本権に対し必要やむを得ない限度の制限を加えることができるが、当該制限が必要やむを得ない限度か否かを検討するに当たっては、個々の公務員の職務上の地位や職務の内容などの個別的事情を考慮しなければならない。憲法この問題の模試受験生正解率 53.0%結果正解解説判例は、非現業の国家「公務員は、私企業の労働者と異なり、国民の信託に基づいて国政を担当する政府により任命されるものであるが、憲法15条の示すとおり、実質的には、その使用者は国民全体であり、公務員の労務提供義務は国民全体に対して負うものである。もとよりこのことだけの理由から公務員に対して団結権をはじめその他一切の労働基本権を否定することは許されないのであるが、公務員の地位の特殊性と職務の公共性にかんがみるときは、これを根拠として公務員の労働基本権に対し必要やむをえない限度の制限を加えることは、十分合理的な理由があるというべきである」としている(最大判昭48.4.25 全農林警職法事件 憲法百選Ⅱ〔第7版〕141事件)。このように、同判決は、公務員の労働基本権に対する制限が必要やむを得ない限度かどうかを判断するに当たり、個々の公務員の職務上の地位や職務の内容などの個別的事情を考慮しなければならないとはしていない。よって、本記述は誤りである。参考芦部(憲法)288~291頁。
野中ほか(憲法Ⅰ)243~244頁。 -
民法判例の趣旨に照らした場合、債務者が債権者を害することを知ってした行為について、詐害行為取消請求をするためには、債務者は当該行為時に無資力であれば足り、詐害行為取消権を行使した時点において無資力である必要はない。民法この問題の模試受験生正解率 81.0%結果正解解説判例は、債務者は詐害行為時に無資力であることを要するだけでなく、詐害行為取消権を行使する時においても無資力であることを要し、詐害行為取消権行使時に債務者が資力を回復したときには、詐害行為取消権の行使は認められないとしている(大判大15.11.13)。よって、本記述は誤りである。参考内田Ⅲ366頁。
潮見(プラクティス債総)232頁。
中田(債総)296頁。 -
刑法判例の立場に従って検討した場合、甲は、乙所有の動産に質権の設定を受けた丙の委託により同動産を保管していたところ、乙の求めに応じて、丙に無断で、同動産を乙に対して交付した。この場合、甲には、横領罪が成立する。刑法この問題の模試受験生正解率 51.4%結果正解解説横領罪の成立には、他人の所有権に対する侵害が必要であり、質権を侵害しても、横領罪は成立しない。判例も、本記述と同様の事例において、横領罪の成立を否定している(大判明44.10.13)。したがって、甲に横領罪は成立しない。よって、本記述は誤りである。参考山口(各)288頁。
大塚ほか(基本刑法Ⅱ)320頁。
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憲法皇室に財産を譲り渡し、又は皇室が財産を譲り受け、若しくは賜与する場合、一定の場合を除き、国会の議決に基づかなければならないが、ここでの「国会の議決」には、憲法上、衆議院の優越は認められていない。憲法この問題の模試受験生正解率 74.8%結果正解解説憲法8条は、「皇室に財産を譲り渡し、又は皇室が、財産を譲り受け、若しくは賜与することは、国会の議決に基かなければならない。」と規定している。これは、皇室の財産授受を国会のコントロールの下に置くことによって、再び大きな財産が皇室に集中し、皇室が特定の個人ないし団体と経済的に特別な関係を結ぶことを防止することを目的とする。同条の「国会の議決」には、衆参両院の一致した議決を要し、衆議院の優越は認められていない。よって、本記述は正しい。
なお、皇室経済法は、相当の対価による売買等通常の私的経済行為、外国交際のための儀礼上の贈答、公共のためになす遺贈又は遺産の賜与、年間に一定の価額内の財産の賜与又は譲受については、「その度ごとに国会の議決を経なくても」よいとしている(同2条)。参考芦部(憲法)53頁。
リーガルクエスト(憲法Ⅰ)119頁。
新・コンメ(憲法)64~65頁。 -
民法消費寄託契約は、目的物の引渡しがなければ成立しない。民法この問題の模試受験生正解率 50.2%結果正解解説消費寄託とは、受寄者が代替物である寄託物を消費することができ、寄託された物自体ではなく、これと同種・同等・同量の物を返還することを約束する寄託をいう(民法666条1項)。消費寄託は、通常の寄託と同様、当事者の合意のみで成立する諾成契約である(同657条)。よって、本記述は誤りである。参考潮見(基本講義・債各Ⅰ)285頁、293頁。
中田(契約)556頁。 -
刑法判例の立場に従って検討した場合、住居の賃貸人が、賃貸借契約が終了したので、直ちに賃借人を追い出すため、同住居に立ち入った場合、賃貸人には住居侵入罪が成立し得る。刑法この問題の模試受験生正解率 81.0%結果正解解説判例は、「住居侵入罪は故なく人の住居又は人の看守する邸宅、建造物等に侵入し又は要求を受けてその場所より退去しないことによって成立するのであり、その居住者又は看守者が法律上正当の権限を以て居住し又は看守するか否かは犯罪の成立を左右するものではない」とし、住居侵入罪の客体である住居が不適法に占有されている場合であっても、同罪の成立を認めている(最決昭28.5.14)。よって、本記述は正しい。参考山口(各)120頁。
西田(各)111頁。
条解刑法407頁。
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解答
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憲法最高裁判所の判例の趣旨に照らした場合、筆記行為の自由は、様々な意見、知識、情報に接し、これを摂取することを補助するものとしてなされる限りにおいては、憲法第21条第1項の趣旨、目的から、いわばその派生原理として当然に導かれるといえるから、その制限又は禁止には、表現の自由に制約を加える場合に一般に必要とされる厳格な基準が要求される。憲法この問題の模試受験生正解率 75.7%結果正解解説判例は、一般の傍聴者が法廷でメモを取ることを禁止しながら、司法記者クラブ所属の報道記者に対してはこれを許可していた裁判長の措置の合憲性が争われた事例において、「筆記行為は、一般的には人の生活活動の一つであり、生活のさまざまな場面において行われ、極めて広い範囲に及んでいるから、そのすべてが憲法の保障する自由に関係するものということはできないが、さまざまな意見、知識、情報に接し、これを摂取することを補助するものとしてなされる限り、筆記行為の自由は、憲法21条1項の規定の精神に照らして尊重されるべきであるといわなければならない」とした上で、「筆記行為の自由は、憲法21条1項の規定によって直接保障されている表現の自由そのものとは異なるものであるから、その制限又は禁止には、表現の自由に制約を加える場合に一般に必要とされる厳格な基準が要求されるものではない」としている(最大判平元.3.8 レペタ事件 憲法百選Ⅰ〔第7版〕72事件)。よって、本記述は誤りである。
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民法判例の趣旨に照らした場合、保証が付された債権が譲渡され、主たる債務者に対して債権譲渡の通知がされたときは、保証人に対して債権譲渡の通知がされていなくても、債権の譲受人は、保証人に対し、保証債務の履行を求めることができる。
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刑法判例の立場に従って検討した場合、甲は、A及びBが殴り合いのけんかをしているところにたまたま通り掛かり、「A、もっと頑張れ。」などとAに一方的に肩入れするような声援を送ったところ、その声援を聞いたAは、いっそう犯意を強固にし、更に強度の暴行を加え続けたことにより、Bに鼻骨骨折等の傷害を負わせた。この場合、甲に現場助勢罪は成立しない。刑法この問題の模試受験生正解率 49.2%結果正解解説現場助勢罪(刑法206条)は、傷害又は傷害致死の行為が行われる際、その現場において勢いを助ける行為を処罰対象としている。勢いを助けるとは、本犯の気勢を高め、又は刺激すべき性質の行為をいい、例えば、「やれやれ。」、「もっとやれ。」などの声援がこれに当たる。もっとも、同条が、傷害の現場でなされた助勢行為を処罰する規定である以上、特定の正犯者の犯行を容易にする従犯とは異なる(大判昭2.3.28参照)。したがって、傷害罪又は傷害致死罪(同205条)の現場での声援であっても、双方がけんか状態になっている現場で、一方を加勢するために助勢した場合は、幇助行為であって、同206条に該当しない。本記述では、甲の行為は、既に暴行ないし傷害の故意があったAの犯意を強固にしているから、甲には傷害罪の従犯(同204条、62条1項)が成立し、現場助勢罪は成立しない。よって、本記述は正しい。参考西田(各)47頁。
高橋(各)55~56頁。
井田(各)65~66頁。
大塚ほか(基本刑法Ⅱ)34~35頁。
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解答
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憲法国民と議会とを媒介する組織として発達した政党は、国家意思の形成に事実上主導的な役割を演じており、権力分立制の在り方を機能的に変容させる結果をもたらしたといえる。憲法この問題の模試受験生正解率 84.3%結果正解解説政党は、国民と議会とを媒介する組織として発達してきており、国家意思の形成に際して事実上主導的な役割を演じるに至っている。このような現象は、「政党国家」現象と呼ばれ、権力分立制における伝統的な議会と政府との関係は、政党・与党と野党といった対抗関係に機能的に変容している。よって、本記述は正しい。参考芦部(憲法)299頁。
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民法判例の趣旨に照らした場合、法人は、一般社団法人の役員となることができる。民法この問題の模試受験生正解率 57.3%結果正解解説法人の権利能力は、法令による制限を受ける(民法34条)。一般社団法人の役員の資格について定める一般法人法65条1項は、法人は一般社団法人の役員となることはできないとしている(同項1号)。よって、本記述は誤りである。参考佐久間(総則)356頁。
佐久間ほか(民法Ⅰ)77~78頁。 -
刑法判例の立場に従って検討した場合、甲は、元妻Aに対する嫌がらせとして、5階建て市営住宅のA居室の出入口に設置された玄関ドアを金属バットで叩いてへこませたが、同ドアは適切な工具を使用すれば損壊せずに取り外しが可能であった。この場合、甲に建造物損壊罪が成立する余地はない。刑法この問題の模試受験生正解率 57.0%結果正解解説判例は、本記述と同様の事例において、「建造物に取り付けられた物が建造物損壊罪の客体に当たるか否かは、当該物と建造物との接合の程度のほか、当該物の建造物における機能上の重要性をも総合考慮して決すべきものであるところ、……本件ドアは、住居の玄関ドアとして外壁と接続し、外界とのしゃ断、防犯、防風、防音等の重要な役割を果たしているから、建造物損壊罪の客体に当たるものと認められ、適切な工具を使用すれば損壊せずに同ドアの取り外しが可能であるとしても、この結論は左右されない。そうすると、建造物損壊罪の成立を認めた原判断は、結論において正当である」としている(最決平19.3.20 刑法百選Ⅱ〔第8版〕79事件)。つまり、同決定は、建造物に接合する物が当該建造物の一部といえるかについて、当該物と建造物との接合の程度のみならず、当該物の建造物における機能上の重要性をも総合考慮して判断している。したがって、本記述では、甲に建造物損壊罪(刑法260条前段)が成立する余地がある。よって、本記述は誤りである。参考大谷(講義各)367~368頁。
大塚ほか(基本刑法Ⅱ)357頁。
条解刑法360頁、854~855頁。
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憲法最高裁判所の判例の趣旨に照らした場合、法律で一旦定められた財産権の内容を事後の法律で変更した場合には、財産権に対する侵害の程度が強度であることから、かかる財産権の事後的変更が公共の福祉に適合するようにされたものであるかについては、変更の目的が失われる利益を上回るほどに重要であり、また、その目的達成のために必要性があると認められるか否かによって判断すべきである。憲法この問題の模試受験生正解率 55.8%結果正解解説判例は、改正前農地法によって著しい廉価で農地を買い受けられることとなっていた買収農地の旧所有者が、国有農地等の売払いに関する特別措置法及び同法施行令の制定、施行により売払いの対価が時価の7割に増額されたことから、同人が買収の対価相当額での売払いを求めた事例において、「憲法29条1項は、「財産権は、これを侵してはならない。」と規定しているが、同条2項は、「財産権の内容は、公共の福祉に適合するやうに、法律でこれを定める。」と規定している。したがって、法律でいったん定められた財産権の内容を事後の法律で変更しても、それが公共の福祉に適合するようにされたものである限り、これをもって違憲の立法ということができないことは明らかである。そして、右の変更が公共の福祉に適合するようにされたものであるかどうかは、いったん定められた法律に基づく財産権の性質、その内容を変更する程度、及びこれを変更することによって保護される公益の性質などを総合的に勘案し、その変更が当該財産権に対する合理的な制約として容認されるべきものであるかどうかによって、判断すべきである」としている(最大判昭53.7.12 憲法百選Ⅰ〔第7版〕99事件)。よって、本記述は誤りである。
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民法判例の趣旨に照らした場合、遺留分は、相続開始前には放棄することができないが、相続開始後は放棄することができる。民法この問題の模試受験生正解率 49.8%結果正解解説相続開始後の遺留分の放棄は、既に自分に帰属した権利を処分することだから、自由にできると解されている。これに対して、相続の開始前における遺留分の放棄は、家庭裁判所の許可を受けたときに限り、その効力を生じる(民法1049条1項)。これは、無制限の放棄を許すならば、遺留分権利者が被相続人の圧迫によって遺留分を放棄するよう強要されるおそれがあるため、相続開始前の遺留分の放棄を家庭裁判所の許可にかからしめたものである。したがって、相続開始前であっても、家庭裁判所の許可を受ければ、遺留分を放棄することができる。よって、本記述は誤りである。参考窪田(家族法)579頁。
潮見(詳解相続法)642~643頁。
前田陽ほか(民法Ⅵ)428頁。 -
刑法判例の立場に従って検討した場合、甲は、甲の債務者Aに対する債権をBに譲渡したが、その後、Aに対して譲渡通知をする前に、債務の弁済としてAから金銭を受領した。甲は、同金銭を譲受人Bに渡さず自己のために費消した。この場合、甲には、横領罪が成立する。刑法この問題の模試受験生正解率 51.4%結果正解解説横領罪は、「自己の占有する他人の物」を客体として、それを「横領した」場合に成立する。そこで、本記述のように、債権譲渡人が、債務者への譲渡通知前に、債務者から当該債権の弁済として金銭を受け取った場合、弁済が譲受人に対する債務の履行であるとして、同金銭が「他人の物」に当たるかが問題となる。判例は、債権譲渡人が、債務者への譲渡通知前に、同人から債権の弁済として受け取った金銭を費消した場合、債権は既に譲渡行為により譲受人に移転し、通知は債務者に対する対抗要件にすぎないから、同金銭は譲受人に帰属し、譲渡人の行為は横領罪を構成するとした原審の判断を是認している(最決昭33.5.1)。したがって、甲には横領罪が成立する。よって、本記述は正しい。参考西田(各)253頁。
昭33最高裁解説(刑事)296~299頁。
条解刑法831頁。
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解答
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憲法憲法第43条第1項の規定する「選挙」には間接選挙も含まれるとする見解によっても、地方議会の議員など既に選挙されて公職にある者が国会議員を選挙する、いわゆる複選制は、被選挙人と選挙人との関係が間接的にすぎるから、同項の規定する「選挙」に含まれないと解されている。憲法この問題の模試受験生正解率 50.2%結果正解解説間接選挙には、選挙人がまず選挙委員を選び、その選挙委員が国会議員を選挙する制度である狭義の間接選挙制と、地方議会の議員など既に選挙されて公職にある者が国会議員を選挙する制度である複選制とがある。そして、憲法43条1項の規定する「選挙」には間接選挙も含まれるとする見解においても、国会議員の選挙において、狭義の間接選挙制は許容されるが、複選制は、被選挙人(代表)と選挙人との関係が間接的にすぎ、もはや公選とはいえないから、同項の「選挙」に含まれないと解されている。よって、本記述は正しい。参考芦部(憲法)276頁。
佐藤幸(日本国憲法論)443~444頁。
野中ほか(憲法Ⅱ)30~32頁。
渋谷(憲法)474頁。 -
民法判例の趣旨に照らした場合、債務の消滅時効期間が経過する前に、債務者が債権者に対し債務の承認をした場合、その債務のために自己の所有する土地に抵当権を設定した物上保証人が、被担保債権について生じた時効の更新の効力を否定することは許されない。民法この問題の模試受験生正解率 74.1%結果正解解説時効期間が経過する前に、債務者が債権者に対し債務の承認をすることは、民法152条1項の「承認」に該当し、時効の更新事由に当たる。もっとも、同153条3項は、「前条の規定による時効の更新は、更新の事由が生じた当事者及びその承継人の間においてのみ、その効力を有する。」としているため、物上保証人が、債務者の承認による時効の更新の効力を否定することができるか否かについて問題となる。この点について、判例は、他人の債務のために自己の所有物件につき根抵当権等を設定した物上保証人が、債務者の承認により被担保債権について生じた消滅時効更新の効力を否定することは、担保権の付従性に抵触し、同396条の趣旨にも反し、許されないという立場に立っている(最判平7.3.10)。したがって、物上保証人が、被担保債権について生じた債務者の承認による時効の更新の効力を否定することは許されない。よって、本記述は正しい。参考佐久間(総則)427~429頁。
佐久間ほか(民法Ⅰ)312頁、316頁。 -
刑法判例の立場に従って検討した場合、傷害を犯した後、労役場留置の期間を短くする改正法が施行された場合であっても、旧法が適用される。(参照条文)刑法 第6条(刑の変更)犯罪後の法律によって刑の変更があったときは、その軽いものによる。刑法この問題の模試受験生正解率 59.2%結果正解解説刑法6条は、遡及処罰の禁止の趣旨を推し進めて、犯罪後に刑の変更があったときは、最も軽い刑によるべきことを定めたものである。遡及処罰の禁止により遡及適用が排除されるものには、主刑又は付加刑自体の加重のみならず、労役場留置期間の延長等も含まれる。判例も、労役場留置の期間の変更については、同条の趣旨が妥当することを理由に「刑の変更」に当たるとして、期間を短くする改正法が施行された場合には、新法が適用されるとしている(大判昭16.7.17)。よって、本記述は誤りである。参考山口(総)416頁。
条解刑法13頁。
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憲法最高裁判所は、憲法第22条第1項の「移転」とは、短期的な移動一般を意味するため、一時的な海外渡航の自由は、同項により保障されるとした。憲法この問題の模試受験生正解率 60.6%結果正解解説判例は、旅券発給拒否処分の憲法適合性が争われた事例において、「憲法22条2項の「外国に移住する自由」には外国へ一時旅行する自由を含む」としている(最大判昭33.9.10 帆足計事件 憲法百選Ⅰ〔第7版〕105事件)。よって、本記述は誤りである。
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民法AB間の契約の終了に関して、AB間の契約が使用貸借契約である場合、貸主Aが死亡したときであっても、当該使用貸借契約は終了しない。民法この問題の模試受験生正解率 61.4%結果正解解説使用貸借は、借主の死亡によって終了する(民法597条3項)。これは、使用貸借が当事者の信頼関係に基づいて行われるものであるためである。これに対し、貸主の死亡の場合、使用貸借はその効力を失わない。したがって、本記述の場合、貸主Aが死亡したときであっても、使用貸借契約は終了しない。よって、本記述は正しい。参考潮見(基本講義・債各Ⅰ)145~146頁。
中田(契約)384頁。 -
刑法判例の立場に従って検討した場合、甲は、自己が所有する高額な自転車Aに保険を掛けていたことを思い出し、保険金を詐取して新車を購入しようと考え、Aをハンマーで叩いて修理不能な状態にした。この場合、甲に器物損壊罪が成立する余地はない。刑法この問題の模試受験生正解率 57.0%結果正解解説器物損壊等罪(刑法261条)の客体は、「他人の物」であるから、自己の所有物は同罪の客体にはならない。また、自己の物に保険を掛けていた場合に、その物を損壊したときは他人の物を損壊したとする旨の規定もない(同262条参照)。したがって、本記述では、甲に器物損壊罪(同261条前段)が成立する余地はない。よって、本記述は正しい。参考大谷(講義各)370~371頁。
大塚ほか(基本刑法Ⅱ)357~358頁。
条解刑法857頁。
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憲法憲法の規範内容が踏みにじられたり不当に変質させられたりしないようにする様々な国法上の工夫は、広く「憲法の保障」といわれるが、その代表的な方法や考え方に関して、憲法第99条で規定される憲法尊重擁護義務の主体として、国民が挙げられていないのは、国民に憲法に対する忠誠を要求することにより、国民の権利自由が侵害されることを恐れた結果であると考えることができる。憲法この問題の模試受験生正解率 44.9%結果正解解説憲法99条は、「天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ。」と規定しており、憲法尊重擁護義務の主体として国民を挙げていない。そして、同条の主体として国民を挙げていない点について、国民に憲法に対する忠誠を要求することにより、国民の権利自由が侵害されることを恐れた結果であるとする見解などがある。よって、本記述は正しい。参考芦部(憲法)386頁。
佐藤幸(日本国憲法論)57~59頁。
野中ほか(憲法Ⅱ)400頁。 -
民法判例の趣旨に照らした場合、親権を行う父又は母は、やむを得ない事由があるときは、家庭裁判所の許可を得て、親権を辞することができるほか、身上監護権又は管理権の一方のみを辞することもできる。民法この問題の模試受験生正解率 55.1%結果正解解説親権を行う父又は母は、やむを得ない事由があるときは、家庭裁判所の許可を得て、親権又は管理権を辞することができる(民法837条1項)。辞任の対象は、親権全部又は財産管理権に限られ、身上監護権のみの辞任は認められない。よって、本記述は誤りである。参考新基本法コメ(親族)269頁。
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刑法判例の立場に従って検討した場合、証人等威迫罪における「威迫」とは、勢力を示す言葉や動作を用いて相手を困惑させ不安感を生じさせることをいうが、それは直接相手と相対する場合に限られず、不安の念を生じさせる文言を記載した文書を送付して相手にその内容を了知させる方法による場合も含まれる。刑法この問題の模試受験生正解率 95.6%結果正解解説証人等威迫罪(刑法105条の2)における「威迫」とは、他人に対し言語挙動によって気勢を示し、不安の念を生じさせる行為をいう。そして、判例は、「威迫」には、「不安、困惑の念を生じさせる文言を記載した文書を送付して相手にその内容を了知させる方法による場合が含まれ、直接相手と相対する場合に限られるものではない」としている(最決平19.11.13 平20重判刑法12事件)。よって、本記述は正しい。参考山口(各)593頁。
条解刑法345頁。
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憲法国政調査権は議院に強制的権限を付与するものではないため、議院は、国政調査のため、刑罰による制裁をもって証人の出頭を強制することはできない。憲法この問題の模試受験生正解率 55.1%結果正解解説憲法62条は、「両議院は、各々国政に関する調査を行ひ、これに関して、証人の出頭及び証言並びに記録の提出を要求することができる。」と規定し、同条後段は、議院に証人の出頭・証言、記録の提出を求める権限があることを明示している。これを受けて、現行法は、刑事司法手続を通じた処罰によってこの権限に強制力を与えている。すなわち、「各議院から、議案その他の審査又は国政に関する調査のため、証人として出頭及び証言又は書類の提出……を求められたときは、この法律に別段の定めのある場合を除いて、何人でも、これに応じなければならない。」(議院における証人の宣誓及び証言等に関する法律1条)と定め、さらに、「正当の理由がなくて、証人が出頭せず、現在場所において証言すべきことの要求を拒み、若しくは要求された書類を提出しないとき、又は証人が宣誓若しくは証言を拒んだときは、1年以下の禁錮又は10万円以下の罰金に処する。」と定めている(同7条1項)。したがって、議院は、国政調査のため、刑罰による制裁をもって証人の出頭を強制することができる。よって、本記述は誤りである。参考野中ほか(憲法Ⅱ)143~144頁、152頁。
毛利ほか(憲法Ⅰ)199~200頁。
新基本法コメ(憲法)355頁。 -
民法判例の趣旨に照らした場合、代理人が本人の名において権限外の行為をした場合であっても、相手方がその行為を本人自身の行為と信じたときは、本人自身の行為であると信じたことについて正当な理由がある場合に限り、権限外の行為についての表見代理の規定が類推適用され、本人がその責任を負う。民法この問題の模試受験生正解率 85.4%結果正解解説民法110条は、代理人がその権限の範囲外の行為をした場合において、第三者が代理人の権限があると信ずべき正当な理由があるときは、本人は、当該行為について責任を負うとし、権限の範囲外の行為の表見代理について規定している。そして、同条をはじめとする表見代理は、代理権が存在することへの信頼を保護する制度であり、行為を行う者が本人であることへの信頼を保護する制度ではない。したがって、本記述のように、代理人が本人になりすまして本人の名で権限外の行為をしたことにより、取引の相手方が代理人のした行為が本人自身の行為であると信じた場合には、同条の規定を適用することができないとする見解もある。もっとも、判例は、「代理人が本人の名において権限外の行為をした場合において、相手方がその行為を本人自身の行為と信じたときは、代理人の代理権を信じたものではないが、その信頼が取引上保護に値する点においては、代理人の代理権限を信頼した場合と異なるところはないから、本人自身の行為であると信じたことについて正当な理由がある場合にかぎり、民法110条の規定を類推適用して、本人がその責に任ずる」としている(最判昭44.12.19)。よって、本記述は正しい。参考平野(総則)341~342頁。
新・コンメ民法(財産法)170頁。
昭44最高裁解説(民事)630~631頁。 -
刑法判例の立場に従って検討した場合、単純遺棄罪の客体は、「老年、幼年、身体障害又は疾病のために扶助を必要とする者」と規定されているが、扶助を必要とする原因として挙げられている「老年、幼年、身体障害又は疾病」は、例示列挙であるから、老年、幼年、身体障害又は疾病の者以外で扶助を必要とする者も、単純遺棄罪の客体となり得る。刑法この問題の模試受験生正解率 52.3%結果正解解説単純遺棄罪(刑法217条)の客体は、「老年、幼年、身体障害又は疾病のために扶助を必要とする者」であり、これらの扶助を要する原因は制限列挙であると解されている。したがって、老年、幼年、身体障害又は疾病の者以外で扶助を必要とする者は、単純遺棄罪の客体となり得ない。よって、本記述は誤りである。
なお、この点については、保護責任者遺棄等罪(同218条)の客体についても同様に解されている。参考山口(各)32頁。
大塚ほか(基本刑法Ⅱ)19~20頁。
新基本法コメ(刑法)468頁。
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憲法最高裁判所の判例の趣旨に照らした場合、普通殺人罪と別個に尊属殺人罪という刑罰を加重する特別な罪を設けるその目的自体は、尊属に対する尊重報恩という社会生活上の基本的道義の維持として、合理性が認められるが、刑罰加重の程度が極端であって、立法目的達成の手段として甚だしく均衡を失し、これを正当化し得べき根拠を見いだし得ないときは、その差別は著しく不合理なものとして違憲である。憲法この問題の模試受験生正解率 90.2%結果正解解説判例は、実父を殺害し、削除前の刑法200条の尊属殺人罪で起訴された者に関する刑事事件につき、同条が憲法14条1項に反しないかが問題となった事例において、刑法200条の立法目的は、尊属殺を特に禁圧するためであり、「尊属に対する尊重報恩は、社会生活上の基本的道義」であるから、「このような自然的情愛ないし普遍的倫理」を維持しようとするために、尊属殺という特別の罪を設け、刑罰を加重すること自体は直ちに合理的な根拠を欠くものとはいえず違憲ではないが、「加重の程度が極端であって、……立法目的達成の手段として甚だしく均衡を失し、これを正当化しうべき根拠を見出しえないときは、その差別は著しく不合理なものといわなければならず、かかる規定は憲法14条1項に違反して無効である」としている(最大判昭48.4.4 尊属殺重罰規定判決 憲法百選Ⅰ〔第7版〕25事件)。よって、本記述は正しい。
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民法判例の趣旨に照らした場合、建物建築工事請負契約において、注文者と元請負人との間に、契約が中途で解除された際の出来形部分の所有権は注文者に帰属する旨の約定があり、当該契約が中途で解除された場合であっても、元請負人から一括して当該工事を請け負った下請負人が自ら材料を提供して出来形部分を築造したときは、当該出来形部分の所有権は下請負人に帰属する。民法この問題の模試受験生正解率 76.1%結果正解解説判例は、「建物建築工事請負契約において、注文者と元請負人との間に、契約が中途で解除された際の出来形部分の所有権は注文者に帰属する旨の約定がある場合に、当該契約が中途で解除されたときは、元請負人から一括して当該工事を請け負った下請負人が自ら材料を提供して出来形部分を築造したとしても、注文者と下請負人との間に格別の合意があるなど特段の事情のない限り、当該出来形部分の所有権は注文者に帰属すると解するのが相当である」としている(最判平5.10.19 民法百選Ⅱ〔第8版〕69事件)。よって、本記述は誤りである。参考潮見(基本講義・債各Ⅰ)257頁。
中田(契約)518頁。 -
刑法判例の立場に従って検討した場合、甲は、飲食店Aにおいて飲食後、同店従業員乙から飲食代金の請求を受けたところ、乙を脅迫して当該請求を断念させようと考え、乙に対し反抗を抑圧するに至らない程度の脅迫を加え、同脅迫に畏怖した乙は、飲食代金の請求を一時断念した。この場合、甲に恐喝罪が成立することはない。刑法この問題の模試受験生正解率 69.9%結果正解解説判例は、本記述と同様の事例において、「原裁判所が、被告人が一審判決判示の脅迫文言を申し向けて被害者等を畏怖させ、よって被害者側の請求を断念せしめた以上、そこに被害者側の黙示的な少くとも支払猶予の処分行為が存在するものと認め、恐喝罪の成立を肯定したのは相当である」として、恐喝罪(刑法249条2項)の成立を認めている(最決昭43.12.11 刑法百選Ⅱ〔第8版〕62事件)。同決定は、恐喝罪における処分行為の内容として、必ずしも積極的な処分行為は必要なく黙示的な処分行為で足りるとしている。本記述では、乙は少なくとも黙示的な支払猶予の処分行為を行っているといえる。したがって、甲には恐喝罪が成立し得る。よって、本記述は誤りである。参考西田(各)244~245頁。
大塚ほか(基本刑法Ⅱ)271~272頁。
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憲法最高裁判所の判例の趣旨に照らした場合、国民が最高裁判所の法解釈を踏まえて自己の行動を定めることは当然であるから、憲法第39条前段の遡及処罰の禁止の規定は、行為当時の最高裁判所の判例が示す法解釈に従えば無罪となるべき行為をした者を、判例変更後の法令解釈に基づき処罰してはならないことを要求している。憲法この問題の模試受験生正解率 64.3%結果正解解説判例は、行為当時は最高裁判所の判例上適法とされた行為について、判例変更をして処罰をすることが憲法39条前段に違反するかが争われた事例において、「行為当時の最高裁判所の判例の示す法解釈に従えば無罪となるべき行為を処罰することが憲法39条に違反する旨をいう点は、そのような行為であっても、これを処罰することが憲法の右規定に違反しない」としている(最判平8.11.18 平8重判刑法2事件)。したがって、同条前段の遡及処罰の禁止の規定は、行為当時の最高裁判所の判例の示す法解釈に従えば無罪となるべき行為をした者を、判例変更後の法令解釈に基づき処罰してはならないことまでを要求しているわけではない。よって、本記述は誤りである。参考長谷部(憲法)279頁。
市川(憲法)197頁。 -
民法委任による代理人が適法に選任した復代理人が、代理行為をするに当たり金銭その他の物を受け取ったときは、本人に対し直接これを引き渡す義務を負う。民法この問題の模試受験生正解率 45.9%結果正解解説復代理人は、本人及び第三者に対して、その権限の範囲内において、代理人と同一の権利を有し義務を負う(民法106条2項)。したがって、委任による代理人が適法に選任した復代理人は、代理行為を行うに当たって受け取った金銭その他の物を直接本人に引き渡す義務を負う。よって、本記述は正しい。参考佐久間(総則)244~245頁。
佐久間ほか(民法Ⅰ)200~202頁。 -
刑法判例の立場に従って検討した場合、電子計算機損壊等業務妨害罪における「人の業務に使用する電子計算機」には、全ての公務に使用される電子計算機を含む。刑法この問題の模試受験生正解率 88.8%結果正解解説電子計算機損壊等業務妨害罪(刑法234条の2第1項)にいう「人の業務に使用する電子計算機」とは、全ての公務に使用される電子計算機を含むと解されている。電子計算機による情報処理の業務が強制力を行使する権力的公務であることを想定し難いからである。よって、本記述は正しい。参考西田(各)143~144頁。
高橋(各)212頁。
条解刑法724頁。
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解答
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憲法憲法は、地方公共団体の長、その議会の議員につき、当該地域の住民による直接選挙を要請しているが、地方公共団体にその議事機関としての議会を設けることは要請していないため、町村については、条例で、議会を置かず、選挙権を有する者の総会、いわゆる町村総会を設けることができる旨を法律で規定することは、憲法に反しないといえる。憲法この問題の模試受験生正解率 21.6%結果正解解説憲法93条は、地方公共団体に議事機関として議会を設置すること、議会が住民の直接選挙する議員によって構成されるべきことを要請している。したがって、同条は、議事機関として議会を設置することも要請している。よって、本記述は誤りである。
なお、地方自治法は、町村は、条例で、住民の選挙による議員からなる議会(同89条)を置かず、選挙権を有する者の総会(町村総会)を設けることができるとしている(同94条)。町村総会は、より住民自治の原則に適合するものであるから、憲法93条1項にいう議事機関としての「議会」に当たると解されている。参考市川(憲法)375~376頁。
渡辺ほか(憲法Ⅱ)426頁。 -
民法債務者Aは債権者BのためにAの所有する不動産甲に抵当権を設定し、その旨の登記がされた後、Aは甲をCに譲渡し、Cへの所有権移転登記がされた。この場合に判例の趣旨に照らした場合、その後、AはBに被担保債務を弁済し、甲に対するBの抵当権が消滅したが、設定登記はそのままになっていたところ、これをA及びBの合意で、BのAに対する新たな貸付債権の担保として流用することとした場合であっても、Cは、甲に対するBの抵当権設定登記の抹消登記手続を請求することができる。民法この問題の模試受験生正解率 70.3%結果正解解説弁済によっていったん消滅した抵当権の登記を他の同額の債権の担保のために流用することの可否について、流用までに現れた正当な利害関係のある第三者(第三取得者、後順位抵当権者等)に対しては流用による抵当権の対抗力を否定するというのが判例の立場である(大判昭8.11.7、最判昭49.12.24参照)。したがって、本記述において、登記の流用の前に甲を買い受け、所有権移転登記をしているCは、正当な利害関係のある第三者に当たるので、Bの抵当権設定登記の抹消登記手続を請求することができる。よって、本記述は正しい。参考内田Ⅲ480頁。
道垣内(担物)137~139頁。
松井(担物)21~23頁。 -
刑法判例の立場に従って検討した場合、外国人Aは、外国において日本人Bに対し、外国人Xを殺害するよう唆し、その旨決意したBが、日本国内においてXを殺害した。この場合、Aには日本の刑法は適用されないから、Aは殺人罪の教唆犯として処罰されない。刑法この問題の模試受験生正解率 76.6%結果正解解説教唆犯の犯罪地については、正犯行為及びその結果発生場所、教唆行為の場所が含まれると解されている。判例も、幇助の事例であるが、幇助行為が国外、正犯行為が国内で行われた覚醒剤輸入罪の事例において、幇助行為をした者を国内犯としている(最決平6.12.9 平6重判刑法1事件)。したがって、日本国内においてBがXを殺害しているから、Bを教唆したAにも日本の刑法が適用され(同1条)、Aは殺人罪の教唆犯として処罰される。よって、本記述は誤りである。参考高橋(総)51頁。
大塚ほか(基本刑法Ⅰ)462頁。
大コメ(刑法・第3版)⑸563頁。
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憲法最高裁判所は、裁判所法第3条第1項にいう「法律において特に定める権限」である客観訴訟の裁判をするに当たって違憲審査権を行使したことがあるが、非訟事件の裁判をするに当たって違憲審査権を行使したことはない。憲法この問題の模試受験生正解率 69.0%結果正解解説最高裁判所は、主観訴訟以外の「法律において特に定める権限」(裁判所法3条1項)である客観訴訟の裁判をするに当たって違憲審査権(憲法81条)を行使している。例えば、公職選挙法における選挙無効訴訟(同204条、205条)において、議員定数の不均衡が争われた場合(最大判昭51.4.14 憲法百選Ⅱ〔第7版〕148事件等)や、地方公共団体の住民が提起する住民訴訟(地方自治法242条の2)において、地方公共団体の公金支出等の政教分離原則違反が争われた場合(最大判昭52.7.13 津地鎮祭事件 憲法百選Ⅰ〔第7版〕42事件等)において、最高裁判所は違憲審査権を行使している。また、近年では、最高裁判所は、非訟事件の裁判をするに当たり、違憲審査権を行使している。例えば、最高裁判所は、家事審判手続における特別抗告を受けて、婚外子法定相続分差別規定を違憲としている(最大決平25.9.4 憲法百選Ⅰ〔第7版〕27事件等)。したがって、最高裁判所は、客観訴訟の裁判のほか、非訟事件の裁判をするに当たっても違憲審査権を行使したことがある。よって、本記述は誤りである。参考市川(憲法)332頁。
渡辺ほか(憲法Ⅱ)349頁。 -
民法判例の趣旨に照らした場合、Aからその所有する建物を賃借しているBが増築をした場合、当該増築部分が取引上の独立性を有しないときは、Bは、増築についてAの承諾を得ていたとしても、当該増築部分の所有権を取得しない。民法この問題の模試受験生正解率 85.5%結果正解解説所有権の対象となるには、その物が独立性を有していることが必要である。判例は、本記述と同様の事例において、当該増築部分に独立性がないため、賃借人は当該増築部分の所有権を取得しないとしている(最判昭44.7.25 民法百選Ⅰ〔第8版〕73事件)。よって、本記述は正しい。参考松井(物権)185~186頁。
石田剛ほか(民法Ⅱ)149~150頁。 -
刑法判例の立場に従って検討した場合、けんか闘争は、ある瞬間においては、正当防衛を行っているように見えることがあっても、全般的に見れば、闘争者双方が攻撃及び防御を繰り返す一団の連続的闘争行為であり、法律秩序に反する行為であるから、正当防衛が成立する余地はない。刑法この問題の模試受験生正解率 66.8%結果正解解説判例は、当初、けんか闘争について、いわゆる「喧嘩両成敗」の考え方によって正当防衛の成立を否定していたが(大判昭7.1.25など)、その後、正当防衛が成立する余地を認めている(最判昭32.1.22 刑法百選Ⅰ〔初版〕39事件)。例えば、手拳で殴り合っていたところ、突然一方がナイフを持って切り掛かってきた場合のように、闘争を全体的に観察し、局面が変わったような場合には、正当防衛の要件を満たし得ると解されている。したがって、いわゆるけんか闘争における相手方に対してした暴行行為について、事態を全体的に観察した場合、正当防衛が成立する余地がある。よって、本記述は誤りである。参考西田(総)172頁。
高橋(総)314~315頁。
大塚ほか(基本刑法Ⅰ)199~200頁。
大コメ(刑法・第3版)(2)590~591頁、593~594頁。
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憲法最高裁判所の判例の趣旨に照らした場合、憲法は、第94条によって各地方公共団体に条例制定権を認めているものの、地域によって差別が生じることまでも認めているものではないから、当該条例によって生じる地域差の故をもって、憲法第14条に反し違憲であると主張することができる。憲法この問題の模試受験生正解率 90.2%結果正解解説判例は、条例による地域的取扱いの差異が、憲法14条1項に反しないかが争われた事例において、「憲法が各地方公共団体の条例制定権を認める以上、地域によって差別を生ずることは当然に予期されることであるから、かかる差別は憲法みずから容認するところであると解すべきである。それ故、地方公共団体が売春の取締について各別に条例を制定する結果、その取扱に差別を生ずることがあっても、……地域差の故をもって違憲ということはできない」としている(最大判昭33.10.15 憲法百選Ⅰ〔第7版〕32事件)。よって、本記述は誤りである。
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民法判例の趣旨に照らした場合、解除条件付売買契約における買主の占有は、所有の意思をもってする占有であるが、現に解除条件が成就して当該売買契約が失効すれば、その占有は所有の意思をもってする占有ではなくなる。民法この問題の模試受験生正解率 66.7%結果正解解説判例は、「売買契約に基づいて開始される占有は、当該売買契約に、残代金を約定期限までに支払わないときは契約は当然に解除されたものとする旨の解除条件が附されている場合であっても、民法162条にいう所有の意思をもってする占有であるというを妨げず、かつ、現に右の解除条件が成就して当該売買契約が失効しても、それだけでは、右の占有が同条にいう所有の意思をもってする占有でなくなるというものではないと解するのが相当である」としている(最判昭60.3.28 昭60重判民法2事件)。よって、本記述は誤りである。参考論点体系判例民法(1)506頁。
新版注釈民法(7)50頁。
新・コンメ民法(財産法)373頁。 -
刑法判例の立場に従って検討した場合、甲は、支払督促制度を悪用して乙の財産を不正に差し押さえるなどして金銭を得ようと考え、乙を債務者とする内容虚偽の支払督促を簡易裁判所に申し立て、乙宛ての支払督促正本、仮執行宣言付支払督促正本を送達してきた郵便配達員に対し、乙を装い、甲を乙と誤信した同郵便配達員から支払督促正本等の交付を受け廃棄した。甲は、当初から乙宛ての支払督促正本等を何らかの用途に利用するつもりはなく速やかに廃棄する意図であった。この場合、甲に詐欺罪が成立することはない。刑法この問題の模試受験生正解率 69.9%結果正解解説判例は、本記述と同様の事例において、詐欺罪の成立のためには、故意のほか不法領得の意思が必要であるとする見解に立つことを前提に、「郵便配達員を欺いて交付を受けた支払督促正本等について、廃棄するだけで外に何らかの用途に利用、処分する意思がなかった場合には、支払督促正本等に対する不法領得の意思を認めることはできないというべきであり、このことは、郵便配達員からの受領行為を財産的利得を得るための手段の一つとして行ったときであっても異ならない」としている(最決平16.11.30 刑法百選Ⅱ〔第8版〕31事件)。したがって、乙宛てに送達された支払督促正本等を廃棄するために、乙に成り済まして郵便配達員から同正本等を受け取った甲には不法領得の意思が認められず、詐欺罪は成立しない。よって、本記述は正しい。参考山口(各)202頁。
高橋(各)243~244頁。
大塚ほか(基本刑法Ⅱ)149頁。
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憲法議員の資格争訟の裁判について規定している憲法第55条本文は、議員の資格に関する判断を議院の自律的な審査に委ねる趣旨のものであるが、議員の資格争訟も法律上の争訟である以上、この裁判について、不服のある議員は、裁判所に出訴することが認められる。憲法この問題の模試受験生正解率 75.5%結果正解解説憲法44条本文は、「両議院の議員……の資格は、法律でこれを定める。」とし、同55条本文は、「その議員の資格に関する争訟」が生じたときは、各議院がその「争訟を裁判する」とする。この趣旨は、議院自身の自律性・独自性に配慮したものである。そして、この議員の資格に関する裁判権は、同76条の定める司法権独占という原則の例外として規定されており、議院の判断に不服があっても、裁判所に救済を求めることはできない。よって、本記述は誤りである。参考渡辺ほか(憲法Ⅱ)264頁。
毛利ほか(憲法Ⅰ)213頁。
新・コンメ憲法516~517頁。 -
民法判例の趣旨に照らした場合、AB間で、Aが所有する宝石甲を目的とする売買契約が締結されたが、引渡しも代金の支払もされない間に、BがCに甲を譲渡し、指図による占有移転をもって引き渡した。Aは、Cからの甲の引渡請求に対し、同時履行の抗弁を主張することができる。民法この問題の模試受験生正解率 63.5%結果正解解説同時履行の抗弁は、双務契約の当事者間において先履行の不公平を避けるためのものであるから、第三者に対しては主張することができない。したがって、本記述において、Aは、宝石甲を譲り受けたCに対し、同時履行の抗弁を主張することはできない。よって、本記述は誤りである。
なお、Aは、Cに対し、Bに対する代金債権を被担保債権とする留置権(民法295条1項本文)を行使することはできる。参考中田(契約)161頁。 -
刑法判例の立場に従って検討した場合、犯行当時の行為者が、心神喪失状態にあった場合は処罰されないが、心神耗弱状態にあった場合は必ずその刑が減軽又は免除される。刑法この問題の模試受験生正解率 66.5%結果正解解説心神耗弱者の行為は、その刑を減軽する(刑法39条2項)。したがって、犯行当時の行為者が、心神耗弱状態にあった場合、その刑は免除されない。よって、本記述は誤りである。参考西田(総)298~299頁。
松原(総)235~236頁。
大塚ほか(基本刑法Ⅰ)222頁。
条解刑法184頁。
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憲法最高裁判所の判例の趣旨に照らした場合、憲法第37条第2項後段は、被告人に公費で証人を召喚できる権利を規定しているため、有罪判決を受けた被告人に証人喚問に要した費用を負担させることはできない。憲法この問題の模試受験生正解率 64.3%結果正解解説憲法37条2項後段は、被告人に「公費で自己のために強制的手続により証人を求める権利」(証人喚問権)を保障している。ここにいう「公費」について、判例は、「被告人は、裁判所に対して証人の喚問を請求するには、何等財産上の出捐を必要としない、証人訊問に要する費用、すなわち、証人の旅費、日当等は、すべて国家がこれを支給するのであって、訴訟進行の過程において、被告人にこれを支弁せしむることはしない」としている(最大判昭23.12.27)。これは、被告人が有罪判決を受けた場合、その被告人に証人喚問の旅費、日当等の証人喚問に要した費用の負担を命ずることを禁止する趣旨ではない。したがって、有罪判決を受けた被告人に証人喚問に要した費用を負担させても同項に違反しない。よって、本記述は誤りである。参考市川(憲法)196~197頁。
新・コンメ憲法411~412頁。 -
民法判例の趣旨に照らした場合、甲土地を所有するAがBと通謀して甲土地をBに仮装譲渡して、AからBへの所有権移転登記がされた後に、BがCとの間で甲土地についてCを予約者とする売買予約を締結した。予約完結権行使の時にCが仮装譲渡について悪意であったときは、予約成立の時に善意であったとしても、Cは、Aに対し、甲土地の所有権を主張することができない。民法この問題の模試受験生正解率 92.2%結果正解解説判例は、「民法94条2項所定の第三者の善意・悪意は、同条項の適用の対象となるべき法律関係ごとに当該法律関係につき第三者が利害関係を有するに至った時期を基準として決すべき」であるとしており(最判昭55.9.11 昭55重判民法5事件)、通謀虚偽表示の売買契約における買主が、当該契約の目的物について第三者と売買予約を締結した場合については、「その目的物の物権取得の法律関係につき、予約権利者が民法第94条第2項にいう善意であるかどうかは、その売買予約成立の時ではなく、当該予約完結権の行使により売買契約が成立する時を基準として定めるべきである」としている(最判昭38.6.7)。したがって、本記述において、Cは、予約完結権行使の時に悪意である以上、Aに対し、甲土地の所有権を主張することができない。よって、本記述は正しい。参考平野(総則)160頁。
論点体系判例民法(1)239~240頁。 -
刑法判例の立場に従って検討した場合,偽造文書行使罪の「行使」とは、偽造文書を真正な文書として使用することをいうから、行使の相手方は、当該文書が偽造されたものであることを知らないことが必要である。刑法この問題の模試受験生正解率 69.8%結果正解解説偽造文書行使罪(刑法158条1項、161条1項)の「行使」とは、偽造文書を真正な文書として使用することをいう。したがって、相手方は、当該文書が偽造されたものであることを知らない者でなければならない。よって、本記述は正しい。参考西田(各)392頁。
大塚ほか(基本刑法Ⅱ)401頁。
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憲法最高裁判所の判例の趣旨に照らした場合,国籍法(平成20年法律第88号による改正前のもの)第3条第1項が、日本国民を父に持つ非嫡出子についてのみ、父母の婚姻という、子にはどうすることもできない身分行為が行われない限り、生来的にも届出によっても日本国籍の取得を認めないとしている点は、今日においては、立法府に与えられた裁量権を考慮しても、我が国との密接な結び付きを有する者に限り日本国籍を付与するという立法目的との合理的関連性の認められる範囲を著しく超える手段であり、不合理な差別を生じさせている。憲法この問題の模試受験生正解率 90.2%結果正解解説判例は、日本人の父が生後認知した婚外子について、父母がその後婚姻していることを国籍取得の要件としていた国籍法(平成20年法律88号による改正前のもの)3条1項の規定の合憲性が争われた事例において、「国籍法3条1項は、同法の基本的な原則である血統主義を基調としつつ、日本国民との法律上の親子関係の存在に加え我が国との密接な結び付きの指標となる一定の要件を設けて、これらを満たす場合に限り出生後における日本国籍の取得を認めることとしたものと解される。このような目的を達成するため準正その他の要件が設けられ、これにより本件区別が生じたのであるが、本件区別を生じさせた上記の立法目的自体には、合理的な根拠があるというべきであ」り、「国籍法制の傾向にかんがみても、同項の規定が認知に加えて準正を日本国籍取得の要件としたことには、上記の立法目的との間に一定の合理的関連性があった」ものの、「非嫡出子についてのみ、父母の婚姻という、子にはどうすることもできない父母の身分行為が行われない限り、生来的にも届出によっても日本国籍の取得を認めないとしている点は、今日においては、立法府に与えられた裁量権を考慮しても、我が国との密接な結び付きを有する者に限り日本国籍を付与するという立法目的との合理的関連性の認められる範囲を著しく超える手段を採用しているものというほかなく、その結果、不合理な差別を生じさせているもの」として、同項の規定がかかる区別を生じさせていることは、憲法14条1項に違反しているとしている(最大判平20.6.4 国籍法違憲判決 憲法百選Ⅰ〔第7版〕26事件)。よって、本記述は正しい。
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民法判例の趣旨に照らした場合,AB間でAが所有する自動車甲の売買契約が締結され、Bはその代金をCに支払うこととされ、Cがこれを承諾した場合、その後、A及びBの合意により当該売買契約の目的物を自動車乙に変更することはできない。民法この問題の模試受験生正解率 59.0%結果正解解説契約により当事者の一方が第三者に対してある給付をすることを約した場合、その第三者は、債務者に対して直接にその給付を請求する権利を有する(第三者のためにする契約 民法537条1項)。この場合における第三者の権利は、その第三者が債務者に対して同項の契約の利益を享受する意思を表示した時に発生し(同条3項)、第三者の利益を享受する意思表示により第三者の権利が発生した後は、当事者は、これを変更し、又は消滅させることができない(同538条1項)。したがって、本記述において、第三者Cが取得した権利はBに対する代金債権であり、A及びBの合意により、売買の目的物を自動車乙に変更することは、Cの取得した権利を変更するものではないから許される。よって、本記述は誤りである。参考潮見(基本講義・債各Ⅰ)46~47頁。
中田(契約)176~177頁。 -
刑法判例の立場に従って検討した場合,14歳未満の少年は、事物の理非善悪を弁識する能力及びその弁識に従って行動する能力が備わっていたとしても、責任能力が認められることはない。刑法この問題の模試受験生正解率 66.5%結果正解解説14歳に満たない者の行為は、不可罰とされている(刑法41条)。これは、年少者の可塑性及び少年保護の理念に鑑みて、画一的に14歳未満の者を責任無能力者とするものである。よって、本記述は正しい。参考西田(総)299~300頁。
松原(総)241~242頁。
大塚ほか(基本刑法Ⅰ)222頁。
条解刑法189頁。
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解答
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憲法最高裁判所の判例の趣旨に照らした場合,裁判所が命ずる謝罪広告について、その内容によってはこれを強制することが債務者の人格を無視し著しくその名誉を毀損し意思決定の自由ないし良心の自由を不当に制限することとなり、強制執行に適さない場合もあるが、その広告の内容が単に事態の真相を告白し、陳謝の意を表明するにとどまる程度のものは、強制執行によることが可能である。憲法この問題の模試受験生正解率 63.6%結果正解解説判例は、名誉毀損の加害者に対しその意思に反して謝罪広告の掲載を裁判所が命じることが、加害者の良心の自由の侵害に当たらないかが争われた事例において、「謝罪広告を命ずる判決にもその内容上、これを新聞紙に掲載することが謝罪者の意思決定に委ねるを相当とし、これを命ずる場合の執行も債務者の意思のみに係る不代替作為として民訴734条(現:民事執行法172条)に基き間接強制によるを相当とするものもあるべく、時にはこれを強制することが債務者の人格を無視し著しくその名誉を毀損し意思決定の自由乃至良心の自由を不当に制限することとなり、いわゆる強制執行に適さない場合に該当することもありうるであろうけれど、単に事態の真相を告白し陳謝の意を表明するに止まる程度のものにあっては、これが強制執行も代替作為として民訴733条(現:民事執行法171条)の手続によることを得るものといわなければならない」としている(最大判昭31.7.4 憲法百選Ⅰ〔第7版〕33事件)。よって、本記述は正しい。
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民法Aには死亡した妻との間に子B、Cがおり、Bには妻子がおらず、Cには死亡した妻との間に実子であるD、Eがいる場合における相続に関して,判例の趣旨に照らした場合,Aが死亡する前にCが死亡していた場合において、Cが生前、Dを相続人から廃除していたときは、Dは、Cを代襲してAの相続人とならない。民法この問題の模試受験生正解率 51.5%結果正解解説代襲相続人となるためには、代襲者自身も、被相続人との関係で欠格事由がなく、かつ、被相続人から廃除されていないことが必要である。もっとも、代襲者に被代襲者との関係で欠格事由が存在することや、代襲者が被代襲者から廃除されていたとしても、被相続人の代襲相続人となる資格には影響がない。したがって、本記述において、代襲者Dが、被代襲者Cから廃除されていても、Aとの関係で代襲相続人となる資格を失わない。よって、本記述は誤りである。参考潮見(詳解相続法)33頁。
前田陽ほか(民法Ⅵ)247頁。 -
刑法判例の立場に従って検討した場合,甲は、住宅街の中にある駐車場に駐車されていた乙所有の自動車にガソリンをまいて放火したところ、同自動車が勢いよく炎上し、同自動車の両隣りに駐車されていた所有者の異なる自動車2台に火が燃え移りかねない状態となったが、同駐車場の付近の建造物に燃え移る危険は生じなかった。この場合、甲には、他人所有建造物等以外放火罪が成立する。刑法この問題の模試受験生正解率 66.1%結果正解解説判例は、本記述と同様の事例において、他人所有建造物等以外放火罪(刑法110条1項)の「公共の危険」について「必ずしも同法108条及び109条1項に規定する建造物等に対する延焼の危険のみに限られるものではなく、不特定または多数の人の生命、身体又は……建造物等以外の財産に対する危険も含まれると解するのが相当である」としている(最決平15.4.14 刑法百選Ⅱ〔第8版〕85事件)。本記述において、甲の放火行為により第三者が所有する自動車2台に燃え移る危険が生じているから、「公共の危険」が生じたといえる。したがって、甲には、他人所有建造物等以外放火罪が成立する。よって、本記述は正しい。参考今井ほか(各)306~309頁。
大塚ほか(基本刑法Ⅱ)381~384頁。
条解刑法365~367頁。
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解答
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憲法最高裁判所の判例の趣旨に照らした場合,憲法第84条が直接適用されるのは、国又は地方公共団体が、課税権に基づき、その経費に充てるための資金を調達する目的をもって、特別の給付に対する反対給付としてではなく、一定の要件に該当する全ての者に対して課する金銭給付の場合である。憲法この問題の模試受験生正解率 73.7%結果正解解説判例は、市の実施する国民健康保険事業の経費を保険税方式ではなく保険料形式で徴収する旨を規定した条例が、具体的な保険料を定めず、告示に委任していたことから、当該条例が憲法84条に違反しないか等が争われた事例において、国民健康保険の保険料が同条の「租税」に当たるかにつき、「国又は地方公共団体が、課税権に基づき、その経費に充てるための資金を調達する目的をもって、特別の給付に対する反対給付としてでなく、一定の要件に該当するすべての者に対して課する金銭給付は、その形式のいかんにかかわらず、憲法84条に規定する租税に当たるというべきである」としている(最大判平18.3.1 旭川市国民健康保険条例事件 憲法百選Ⅱ〔第7版〕196事件)。よって、本記述は正しい。
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民法判例の趣旨に照らした場合,相続開始の時から10年を経過した後にする遺産分割においては、原則として特別受益及び寄与分は考慮されない。民法この問題の模試受験生正解率 52.1%結果正解解説相続開始の時から10年を経過した後にする遺産の分割については、原則として、具体的相続分の算定に関する民法903条から同904条の2までの規定は適用されない(同904条の3本文)。したがって、この場合の遺産分割は、法定相続分又は指定相続分によって行われ、特別受益及び寄与分は考慮されない。所有者不明土地の発生予防の観点から、遺産分割をできる限り早期に実施し、遺産共有関係を円滑に解消するため、令和3年民法改正により、具体的相続分による遺産分割に時的限界を設けたものである。よって、本記述は正しい。参考潮見(詳解相続法)300頁。
前田陽ほか(民法Ⅵ)298頁。
Q&A令和3年改正民法245~247頁。 -
刑法判例の立場に従って検討した場合,業務妨害罪における「業務」は、職業その他社会生活上の地位に基づくものであることを要し、個人的な活動や家庭生活上の活動は、たとえそれが反復継続されるものであっても「業務」に当たらない。刑法この問題の模試受験生正解率 88.8%結果正解解説業務妨害罪(刑法233条、234条、234条の2)における「業務」とは、職業その他社会生活上の地位に基づき継続して行う事務又は事業をいうと解されている(大判大10.10.24など)。職業としての経済活動をその典型とする社会生活上の活動であることが必要であり、学生の学習活動や、レジャーでの自動車の運転といった個人的活動や、料理、掃除、洗濯などの家庭生活上の活動は、たとえそれが継続して行われるものであったとしても、除外される。よって、本記述は正しい。参考西田(各)138頁。
山口(各)155~156頁。
大塚ほか(基本刑法Ⅱ)110頁。
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憲法最高裁判所の判例の趣旨に照らした場合,国民年金法(平成元年法律第86号による改正前のもの)が、20歳以上の学生を国民年金の強制加入被保険者として一律に保険料納付義務を課すのではなく、任意加入を認めて国民年金に加入するかどうかを20歳以上の学生の意思に委ねることとした措置について、著しく合理性を欠くものであるかどうかは、あくまで保険方式を基本とする国民年金制度の趣旨に照らして判断すべきであって、生活保護法に基づく生活保護制度のような別の社会保障制度が存在しているという事情を考慮することはできない。憲法この問題の模試受験生正解率 52.6%結果正解解説大学在学中に障害を負った学生らが障害基礎年金の支給裁定を申請したところ、国民年金未加入(当時は、強制加入ではなかった。)を理由に不支給処分を受けたため、憲法25条等の違反を主張して、当該処分の取消訴訟等を提起した事例において、「国民年金制度は、憲法25条の趣旨を実現するために設けられた社会保障上の制度であるところ、同条の趣旨にこたえて具体的にどのような立法措置を講じるかの選択決定は、立法府の広い裁量にゆだねられており、それが著しく合理性を欠き明らかに裁量の逸脱、濫用とみざるを得ないような場合を除き、裁判所が審査判断するのに適しない事柄であるといわなければならない」とした上で、「世帯主が学生の学費、生活費等の負担に加えて保険料納付」を行い、「他方、障害者については障害者基本法等による諸施策が講じられており、生活保護法に基づく生活保護制度も存在している」など「の事情からすれば、平成元年改正前の法が、20歳以上の学生の保険料負担能力、国民年金に加入する必要性ないし実益の程度、加入に伴い学生及び学生の属する世帯の世帯主等が負うこととなる経済的な負担等を考慮し、保険方式を基本とする国民年金制度の趣旨を踏まえて、20歳以上の学生を国民年金の強制加入被保険者として一律に保険料納付義務を課すのではなく、任意加入を認めて国民年金に加入するかどうかを20歳以上の学生の意思にゆだねることとした措置は、著しく合理性を欠くということはでき」ないから、同法が「20歳以上の学生について国民年金の強制加入被保険者とするなどの……措置を講じなかったことは」、憲法25条に反しないとしている(最判平19.9.28 学生無年金障害者訴訟 憲法百選Ⅱ〔第7版〕134事件)。したがって、同判決は、平成元年改正前の国民年金法の措置が著しく合理性を欠くものかどうかについて、生活保護法に基づく生活保護制度の存在等の事情を考慮している。よって、本記述は誤りである。
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民法判例の趣旨に照らした場合,Aが運転する自動車と、Bが運転する自動車とが衝突する交通事故により、Aの自動車に同乗していたCが負傷した場合において、AがCの被用者であり、Cの業務中に自動車を運転していたときは、CのBに対する不法行為に基づく損害賠償請求において、その損害額を定めるにつきAの過失を被害者側の過失として斟酌することができる。民法この問題の模試受験生正解率 60.4%結果正解解説不法行為の被害者に過失があったときは、裁判所は、これを考慮して、損害賠償の額を定めることができる(民法722条2項)。同項の文言上は、被害者本人の過失に限定されているようにみえるが、判例は、被害者本人と一定の関係にある者の過失(被害者側の過失)をも考慮することを認めており、本記述のように、被害者の被用者の過失も、同項の「過失」に含まれるとして、損害額の算定につき、被害者の被用者の過失を考慮することを認めている(大判大9.6.15、大判昭12.11.30)。よって、本記述は正しい。参考潮見(基本講義・債各Ⅱ)130頁。
橋本ほか(民法Ⅴ)233頁。
新注釈民法(16)482~483頁。 -
刑法判例の立場に従って検討した場合,甲は、実弟とその配偶者乙と同居していたが、乙が親族関係のない丙から窃取した高級腕時計を、盗品であると知りつつ、乙から有償で譲り受けた。この場合、甲には盗品等有償譲受け罪が成立し、その刑は免除されない。刑法この問題の模試受験生正解率 32.4%結果正解解説甲は、盗品である高級腕時計を、盗品であると知りつつ、乙から有償で譲り受けているため、甲には盗品等有償譲受け罪(刑法256条2項)が成立する。もっとも、配偶者との間又は直系血族、同居の親族若しくはこれらの者の配偶者との間で盗品等に関する罪を犯した場合、その刑が免除される(同257条1項)。そして、同条が適用されるためには、親族関係は、本犯と盗品等関与罪の犯人との間に存在することが必要である(最決昭38.11.8)。本記述では、窃盗犯人乙は、甲の実弟の配偶者であり、いずれも甲と同居しており、同条にいう親族関係が認められるため、同条1項が適用される。したがって、甲は盗品等有償譲受け罪の刑が免除される。よって、本記述は誤りである。参考山口(各)350~351頁。
大塚ほか(基本刑法Ⅱ)352~353頁。
条解刑法849頁。
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憲法最高裁判所は、下級裁判所が、天皇の国事行為に対する内閣の「助言と承認」について、助言と承認の両者が必要であるという見解に立ちつつ、衆議院の解散の効力について判示した事例において、「助言と承認」について、同様の見解に立ちつつ、解散は有効であるとして、上告を棄却した。憲法この問題の模試受験生正解率 39.6%結果正解解説天皇の全ての国事行為には、内閣による「助言と承認」が必要とされる(憲法3条)。この助言と承認の両者が必要であるかについては見解が分かれている。この点、解散の効力が争われた苫米地事件においてこれが一つの争点とされたが、第一審(助言を欠くから解散は無効とした。)、控訴審(助言も存在したとした上で、解散を有効とした。)ともに、助言と承認の両者が必要であるとした。これに対し、最高裁判所は、解散を統治行為と捉え、助言と承認の論点について立ち入ることを回避して、上告を棄却している(最大判昭35.6.8 苫米地事件 憲法百選Ⅱ〔第7版〕190事件)。したがって、最高裁判所は、「助言と承認」について、両者が必要であるとする見解に立つかについて判示していない。よって、本記述は誤りである。参考佐藤幸(日本国憲法論)540~541頁、561~562頁。
野中ほか(憲法Ⅰ)120~121頁。
毛利ほか(憲法Ⅰ)111頁。 -
民法A、B及びCが甲土地を各3分の1の割合で共有している場合に関して,A及びBの合意により、甲土地について、第三者のために建物所有目的の賃借権を設定することができる。民法この問題の模試受験生正解率 54.0%結果正解解説共有物である土地に対する賃借権の設定は、その賃借権が樹木の栽植又は伐採を目的とする山林の賃借権である場合には10年、それ以外の土地の賃借権である場合には5年を超えない期間であれば、各共有者の持分の価格に従い、その過半数の賛成によりすることができる(民法252条4項1号、2号、1項前段)。建物の所有を目的とする賃借権は、その存続期間は30年以上とされるので(借地借家法3条)、持分の価格の過半数により設定することはできない。令和3年民法改正前において、共有物に賃借権を設定することは、基本的には共有物の管理に関する事項に当たり、管理行為として持分の価格の過半数で決することができるが(最判昭39.1.23)、長期間の賃借権の設定は、共有者に与える影響が大きいため、共有者全員の同意が必要であると解されていた。しかし、その区別の基準が明確でないため、実際の運用の場面においては、慎重を期して共有者全員の同意を求めざるを得ず、共有物の利用が阻害されているとの指摘がされていたことから、同改正により、共有物に一定の期間を超えない短期の賃借権を設定するには、持分の価格の過半数で決することができることを明らかにしたものである。よって、本記述は誤りである。参考平野(物権)363~364頁。
石田剛ほか(民法Ⅱ)162頁。
Q&A令和3年改正民法59~60頁。 -
刑法判例の立場に従って検討した場合,Aが、Bに対し、「刑務所に入ると箔がつくから、何かやってこい。」と唆したところ、その気になったBは、この機会にかねてから折り合いの悪かった隣人Xに対する恨みを晴らしてやろうと思い、誰でも閲覧できるインターネット上の掲示板に、Xを誹謗中傷する書き込みをして、Xを侮辱した。この場合、Aは、漠然と犯罪を唆したにすぎないから、Aに侮辱罪の教唆犯は成立しない。刑法この問題の模試受験生正解率 76.6%結果正解解説教唆とは、他人に特定の犯罪を実行する決意を生じさせることをいう。正犯者に対し、特定の犯罪を実行する決意を生じさせることを要し、「何か悪いことをやれ。」というように、漠然と犯罪を唆すことだけでは足りない(最判昭26.12.6 刑法百選Ⅰ〔第2版〕78事件)。したがって、Bに対し、「刑務所に入ると箔がつくから、何かやってこい。」と漠然と犯罪を唆したにすぎないAには、侮辱罪の教唆犯(刑法231条、61条1項)は成立しない。よって、本記述は正しい。
なお、刑法等の一部を改正する法律(令和4年法律第67号)により、侮辱罪の法定刑が「拘留又は科料」から、「1年以下の懲役若しくは禁錮若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料」に引き上げられたことから、侮辱罪についても教唆犯及び幇助犯が成立し得ることとなった(刑法64条参照)。参考高橋(総)523頁。
大塚ほか(基本刑法Ⅰ)346頁。
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憲法最高裁判所の判例の趣旨に照らした場合,信教の自由の保障は、何人も他者の信仰に基づく行為に対して、それが強制や不利益の付与を伴うことにより自己の信教の自由を妨害するものでない限り寛容であることを要請しているものであり、静謐な宗教的環境の下で信仰生活を送るべき利益は法的利益として認められない。憲法この問題の模試受験生正解率 63.0%結果正解解説判例は、社団法人隊友会A県支部連合会と自衛隊A地方連絡部が共同して亡夫をA県護国神社に合祀申請したことは、宗教上の人格権の侵害であるなどとして、亡夫の妻が、合祀手続の取消しなどを求めた事例において、「人が自己の信仰生活の静謐を他者の宗教上の行為によって害されたとし、そのことに不快の感情を持ち、そのようなことがないよう望むことのあるのは、その心情として当然であるとしても、かかる宗教上の感情を被侵害利益として、直ちに損害賠償を請求し、又は差止めを請求するなどの法的救済を求めることができるとするならば、かえって相手方の信教の自由を妨げる結果となるに至ることは、見易いところである」とした上で、「信教の自由の保障は、何人も自己の信仰と相容れない信仰をもつ者の信仰に基づく行為に対して、それが強制や不利益の付与を伴うことにより自己の信教の自由を妨害するものでない限り寛容であることを要請しているものというべきである」とし、「原審が宗教上の人格権であるとする静謐な宗教的環境の下で信仰生活を送るべき利益なるものは、これを直ちに法的利益として認めることができない性質のものである」としている(最大判昭63.6.1 憲法百選Ⅰ〔第7版〕43事件)。よって、本記述は正しい。
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民法判例の趣旨に照らした場合,A及びBが甲土地を共有している場合において、Bからその持分を譲り受けたCは、登記を備えていなければ、Aに対し、甲土地の持分の取得を主張することができない。民法この問題の模試受験生正解率 65.2%結果正解解説判例は、「不動産の共有者の一員が自己の持分を譲渡した場合における譲受人以外の他の共有者は民法177条にいう「第三者」に該当するから、右譲渡につき登記が存しないときには、譲受人は、右持分の取得をもって他の共有者に対抗することができない」としている(最判昭46.6.18)。したがって、本記述において、Cは、登記を備えていなければ、Aに甲土地の持分の取得を主張することができない。よって、本記述は正しい。参考我妻・有泉コメ391頁。
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刑法判例の立場に従って検討した場合,公文書偽造罪は、公文書に対する公共的信用を保護法益とし、公文書が証明手段として持つ社会的機能を保護するものであるから、公文書偽造罪の客体である「文書」は、公務員による意識内容を直接保有伝達し証明するものとして、公務員がその権限に基づいて作成する文書たる原本に限られる。刑法この問題の模試受験生正解率 69.8%結果正解解説判例は、「公文書偽造罪は、公文書に対する公共的信用を保護法益とし、公文書が証明手段としてもつ社会的機能を保護し、社会生活の安定を図ろうとするものであるから、公文書偽造罪の客体となる文書は、これを原本たる公文書そのものに限る根拠はなく、たとえ原本の写であっても、原本と同一の意識内容を保有し、証明文書としてこれと同様の社会的機能と信用性を有するものと認められる限り、これに含まれるものと解するのが相当である」としている(最判昭51.4.30 刑法百選Ⅱ〔第8版〕88事件)。よって、本記述は誤りである。参考高橋(各)526~527頁。
大塚ほか(基本刑法Ⅱ)412~413頁。
条解刑法454~455頁。
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憲法嫡出でない子の相続分に関する削除前の民法第900条第4号ただし書前段の規定(以下「本件規定」という。)について、憲法第14条第1項に違反するとした最高裁判所の決定(最高裁判所平成25年9月4日大法廷決定、民集67巻6号1320頁)に関して,前記決定は、本件規定で問題となる区別の合理性の判断は、単なる合理性の存否によってなされるべきではなく、立法目的自体の合理性及びその手段との実質的関連性についてより強い合理性の存否が検討されるべきであるとした。憲法この問題の模試受験生正解率 60.5%結果正解解説本問の最高裁判所決定(最大決平25.9.4 憲法百選Ⅰ〔第7版〕27事件)は、被相続人の嫡出である子が、嫡出でない子に対し、当該被相続人の遺産について、遺産の分割の審判を申し立てた事例において、「憲法14条1項は、……事柄の性質に応じた合理的な根拠に基づくものでない限り、法的な差別的取扱いを禁止する趣旨のものである」ところ、相続制度をどのように定めるかは、種々の事柄を総合的に考慮した上で、「立法府の合理的な裁量判断に委ねられている……。この事件で問われているのは、……相続制度全体のうち、本件規定により嫡出子と嫡出でない子との間で生ずる法定相続分に関する区別が、合理的理由のない差別的取扱いに当たるか否かということであり、立法府に与えられた……裁量権を考慮しても、そのような区別をすることに合理的な根拠が認められない場合には、当該区別は、憲法14条1項に違反する」としている。したがって、同決定は、本件規定の憲法適合性を判断するに際し、立法目的自体の合理性及びその手段との実質的関連性についてより強い合理性の存否が検討されるべきであるとはしていない。よって、本記述は誤りである。
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民法判例の趣旨に照らした場合,Aが所有する甲土地上に、権原なく乙建物を建築して所有することにより甲土地を不法占拠するBが、第三者Cとの合意により、乙建物の所有権をCに移転していないにもかかわらず、乙建物につきC名義で所有権保存登記をした場合、Aは、Cに対して建物収去土地明渡請求をすることができない。民法この問題の模試受験生正解率 64.9%結果正解解説判例は、「建物の所有権を有しない者は、たとえ、所有者との合意により、建物につき自己のための所有権保存登記をしていたとしても、建物を収去する権能を有しないから、建物の敷地所有者の所有権に基づく請求に対し、建物収去義務を負うものではない」としている(最判昭47.12.7)。したがって、本記述において、甲土地所有者Aは、乙建物の所有権を有しないCに対して建物収去土地明渡請求をすることはできない。よって、本記述は正しい。参考佐久間(物権)310頁。
松井(物権)34頁。 -
刑法判例の立場に従って検討した場合、甲は、公道を歩いているAに対し殺意をもって拳銃を発射したところ、銃弾はAの身体に命中せず、予期しなかったAが散歩中に連れていたAの犬に命中し、これを死なせた。この場合、甲には、器物損壊罪は成立しない。刑法この問題の模試受験生正解率 57.2%結果正解解説判例は、異なった構成要件間における錯誤があった場合、構成要件が実質的に重なり合う限度において軽い罪の成立を認めている(最決昭61.6.9 刑法百選Ⅰ〔第8版〕43事件等)。そして、保護法益の共通性は構成要件の重なり合いが認められるための最低限度の要件であると解されるところ、殺人罪は個人の生命を保護法益とするのに対し、器物損壊罪(刑法261条)は個人の財産としての物ないし物の効用を保護法益とするものであり、両罪間に保護法益の共通性は認められない。したがって、甲に器物損壊罪は成立しない。よって、本記述は正しい。参考山口(総)236~241頁。
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憲法憲法改正についての国民の承認は、ことのついでに行う性質のものではないから、「特別の国民投票」によって行わなければならない旨憲法上規定されている。憲法この問題の模試受験生正解率 56.5%結果正解解説憲法改正は国会が発議し、国民に提案してその承認を経なければならない(憲法96条1項前段)。そして、この承認は、「特別の国民投票又は国会の定める選挙の際行はれる投票」によって行われる(同項後段)。したがって、憲法改正についての国民の承認は、特別の国民投票のほか、国会の定める選挙(衆議院議員総選挙及び参議院議員通常選挙)の際行われる投票によっても行われる。よって、本記述は誤りである。参考芦部(憲法)407頁。
野中ほか(憲法Ⅱ)409頁。 -
民法買主は、売買の目的物の引渡しを受けていても、代金の支払をしていない限り、その目的物から生ずる果実を収取することができない。民法この問題の模試受験生正解率 84.4%結果正解解説売買の目的物が売主の所有する特定物である場合、目的物の所有権は、売買契約成立と同時に買主に移転すると解されているところ(最判昭33.6.20 民法百選Ⅰ〔第8版〕52事件)、いまだ引き渡されていない売買の目的物から果実が生じたときは、本来、売主は生じた果実を所有者である買主に引き渡さなければならず、他方、買主は、売買目的物の所有者として、管理費用を売主に支払わなければならないはずである。しかし、このような事態は複雑であるから、民法は、まだ引き渡されていない売買の目的物が果実を生じたときは、その果実は、売主に帰属するものとし(同575条1項)、他方、買主は、引渡しの日から、代金の利息を支払う義務を負うものとして(同条2項本文)、このような関係を画一的に解決することとしている。このように、同条1項が適用されるのは、売買目的物が引き渡される前に限られるから、売買目的物が引き渡されれば、代金の支払を受けているか否かを問わず、売主は果実収取権を失う。したがって、本記述において、目的物の引渡しを受けた買主は、代金の支払の有無を問わず、目的物から生じる果実を収取することができる。よって、本記述は誤りである。参考潮見(基本講義・債各Ⅰ)87~88頁。
中田(契約)297~298頁。
新・コンメ民法(財産法)982~983頁。
新基本法コメ(債権2)145頁。 -
刑法判例の立場に従って検討した場合、甲は、民事事件の当事者として、口頭弁論期日において、乙の刑事事件の証拠として使用されることを認識しながら、虚偽の請求を認諾し、情を知らない裁判所書記官をして、内容虚偽の口頭弁論調書を作成させた。この場合、甲に証拠偽造罪が成立しない。
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憲法憲法第30条の定める納税の義務は、国家の存立と国政の運営に必要となる国家の財政を支えるため、国民が税金を納めるのは当然であるという考えに基づくものであり、この義務は、租税法律主義の観点から、法律の規定により内容が具体化される。憲法この問題の模試受験生正解率 89.5%結果正解解説憲法30条は、国民の納税の義務を定めているが、この規定は、国家の存立には国民が能力に応じてその財政を支えなければならないのは当然の義務であることを明示すると同時に、国民の納税の義務は「法律の定めるところにより」具体化されるとしたものである。よって、本記述は正しい。参考佐藤幸(日本国憲法論)191~192頁。
野中ほか(憲法Ⅰ)565頁。 -
民法判例の趣旨に照らした場合,夫婦の一方が知らない間に、他方が離婚の届出をしこれが受理された場合であっても、協議上の離婚の効力を生じない。
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刑法判例の立場に従って検討した場合、信書開封罪は、告訴がなければ公訴を提起することができない親告罪であるが、秘密漏示罪は非親告罪である。刑法この問題の模試受験生正解率 65.7%結果正解解説信書開封罪及び秘密漏示罪(刑法134条)は、ともに親告罪である(同135条)。両罪の保護法益は個人の秘密であり、両罪は、比較的軽微な法益侵害行為であることから、あえて被害者の意思に反してまで訴追する必要はないとして、親告罪となっている。よって、本記述は誤りである。参考大塚ほか(基本刑法Ⅱ)96~97頁。
条解刑法418頁。
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憲法最高裁判所の判例の趣旨に照らした場合,裁判所による出版物の頒布等の事前差止めは、事前抑制に該当するものであって、とりわけ出版物が公職選挙の候補者に対する評価、批判等の表現行為に関するものである場合には、その表現が私人の名誉権に優先する社会的価値を含み憲法上特に保護されるべきであることに鑑みると、当該表現行為に対する事前差止めは、原則として許されない。憲法この問題の模試受験生正解率 75.9%結果正解解説判例は、知事選挙への立候補を予定していた者が、その名誉を毀損する内容の記事が掲載された雑誌の販売等を差し止める仮処分を申請し、無審尋でこれを認める仮処分決定がなされたことについて、憲法21条に違反するかが争われた事例において、「表現行為に対する事前抑制は、新聞、雑誌その他の出版物や放送等の表現物がその自由市場に出る前に抑止してその内容を読者ないし聴視者の側に到達させる途を閉ざし又はその到達を遅らせてその意義を失わせ、公の批判の機会を減少させるものであり、また、事前抑制たることの性質上、予測に基づくものとならざるをえないこと等から事後制裁の場合よりも広汎にわたり易く、濫用の虞があるうえ、実際上の抑止的効果が事後制裁の場合より大きいと考えられるのであって、表現行為に対する事前抑制は、表現の自由を保障し検閲を禁止する憲法21条の趣旨に照らし、厳格かつ明確な要件のもとにおいてのみ許容されうるものといわなければならない」とした上で、「出版物の頒布等の事前差止めは、このような事前抑制に該当するものであって、とりわけ、その対象が公務員又は公職選挙の候補者に対する評価、批判等の表現行為に関するものである場合には、そのこと自体から、一般にそれが公共の利害に関する事項であるということができ、……憲法21条1項の趣旨……に照らし、その表現が私人の名誉権に優先する社会的価値を含み憲法上特に保護されるべきであることにかんがみると、当該表現行為に対する事前差止めは、原則として許されないものといわなければならない」としている(最大判昭61.6.11 「北方ジャーナル」事件 憲法百選Ⅰ〔第7版〕68事件 )。よって、本記述は正しい。
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民法判例の趣旨に照らした場合,虚偽表示の目的物である土地を差し押さえた仮装譲受人の一般債権者は、民法第94条第2項にいう「第三者」に当たらない。民法この問題の模試受験生正解率 76.8%結果正解解説判例は、仮装譲渡された不動産を差し押さえた仮装譲受人の一般債権者は、民法94条2項の「第三者」に当たるとしている(最判昭48.6.28)。よって、本記述は誤りである。参考佐久間(総則)126頁。
佐久間ほか(民法Ⅰ)160頁。 -
刑法判例の立場に従って検討した場合、公務執行妨害罪にいう「職務を執行するに当たり」とは、公務員が職務の遂行に直接必要な行為を現に行っている場合に限られない。刑法この問題の模試受験生正解率 88.3%結果正解解説判例は、公務執行妨害罪における「職務を執行するに当たり」について、「具体的・個別的に特定された職務の執行を開始してからこれを終了するまでの時間的範囲及びまさに当該職務の執行を開始しようとしている場合のように当該職務の執行と時間的に接着しこれと切り離しえない一体的関係にあるとみることができる範囲内の職務行為をいう」とした上で、「職務の性質によっては、その内容、職務執行の過程を個別的に分断して部分的にそれぞれの開始、終了を論ずることが不自然かつ不可能であって、ある程度継続した一連の職務として把握することが相当と考えられるものがあ」るとして、一時中断中の職務に対する公務執行妨害罪の成立を認めている(最判昭53.6.29)。したがって、「職務を執行するに当たり」とは、公務員が職務の遂行に直接必要な行為を現に行っている場合だけを指すのではなく、公務員が職務執行のため勤務に就いている状態にある場合も含まれる。よって、本記述は正しい。参考西田(各)446~447頁。
大塚ほか(基本刑法Ⅱ)493~495頁。
大コメ(刑法・第3版)(6)138頁。
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憲法憲法上の人権規定には、未成年者に対して成年者とは異なった特別な保護を与えているものがある。憲法この問題の模試受験生正解率 53.6%結果正解解説未成年者は、心身ともに発達途上であることから、憲法は、同26条2項前段で、「子女」に「普通教育」を受ける権利を保障し、同27条3項で、「児童は、これを酷使してはならない。」と規定して特別な保護を与えている。よって、本記述は正しい。参考芦部(憲法)88頁。
佐藤幸(日本国憲法論)155~157頁。
渋谷(憲法)110頁。
新基本法コメ(憲法)81頁。 -
民法弁済期が到来した利息債権は、元本債権に対して独立性を有するから、元本債権から分離して譲渡することができる。民法この問題の模試受験生正解率 49.9%結果正解解説利息債権は、「基本権としての利息債権」と「支分権としての利息債権」とに分けられ、元本に対して、一定の利息を生じさせることを内容とする債権である「基本権としての利息債権」の効果として、一定期間の経過により一定の率による利息を支払うことを内容とする「支分権としての利息債権」が生じるという関係にある。「基本権としての利息債権」は、元本債権が消滅すれば消滅し、元本債権が譲渡されればこれに随伴するなど、元本債権に対して付従性が強いのに対し、「支分権としての利息債権」は、元本債権に対する付従性が弱く、一度発生すれば元本債権から独立して存在するから、これのみを処分することができる。弁済期が到来した利息債権は、「支分権としての利息債権」であるから、元本債権と分離して処分することが可能である。よって、本記述は正しい。参考内田Ⅲ68頁。
中田(債総)61頁。 -
刑法刑法が定める刑の種類の中には、懲役、禁錮、拘留及び労役場留置があるが、そのいずれもが自由刑である。刑法この問題の模試受験生正解率 55.5%結果正解解説刑の種類については、刑法9条は「死刑、懲役、禁錮、罰金、拘留及び科料を主刑とし、没収を付加刑とする。」と規定している。このうち、懲役、禁錮、拘留は、対象者を刑事施設に拘置することにより、その身体の自由をはく奪する刑罰であり(同12条2項、13条2項、16条)、これを自由刑という。これに対して、労役場留置は、罰金又は科料を言い渡されたが、これらを完納できない者について、一定の期間刑事施設に付設された労役場に留置するものである(同18条)。その性格については、これを罰金又は科料に換えて自由刑を科する換刑処分とみるか、罰金又は科料の特別な執行方法とみるか争いがあるが、いずれと解するにしても、労役場留置は、同9条に挙げられておらず、刑法が定める刑の種類に含まれない。よって、本記述は誤りである。参考条解刑法23頁、31~32頁。
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憲法憲法第40条は、刑事手続において身体を拘束された者が後に無罪判決を受けた場合における刑事補償請求権を定めている。同様の規定は、大日本帝国憲法にもあったが、現実になされる補償は極めて不十分という問題があった。憲法この問題の模試受験生正解率 25.7%結果正解解説憲法40条は、刑事手続において身体を拘束された者が後に無罪判決を受けた場合の損失を塡補するために、刑事補償請求権を定めている。しかし、大日本帝国憲法には、この種の規定はなく、国の恩恵的施策としての性格を有する刑事補償法が制定されていたにすぎず、現実になされる補償も極めて不十分という問題があった。よって、本記述は誤りである。参考芦部(憲法)269頁。
野中ほか(憲法Ⅰ)557頁。 -
民法判例の趣旨に照らした場合,賃貸人が賃借人の意思に反して保存行為をしようとする場合において、そのために賃借人が賃借をした目的を達することができなくなるときは、賃借人は、賃貸借契約を解除することができる。民法この問題の模試受験生正解率 57.1%結果正解解説賃貸人が賃貸物の保存に必要な行為をしようとするときは、賃借人は、これを拒むことができない(民法606条2項)。そして、賃貸人が賃借人の意思に反して保存行為をしようとする場合において、そのために賃借人が賃借した目的を達することができなくなるときは、賃借人は、契約を解除することができる(同607条)。よって、本記述は正しい。参考潮見(基本講義・債各Ⅰ)161頁。
中田(契約)401頁。 -
刑法判例の立場に従って検討した場合、公務員が、その在職中に請託を受けて職務上不正な行為をしたことに関し、公務員の身分を失った後に賄賂を収受した場合には、事後収賄罪(刑法第197条の3第3項)が成立する。刑法この問題の模試受験生正解率 60.0%結果正解解説事後収賄罪(刑法197条の3第3項)は、「公務員であった者が、その在職中に請託を受けて職務上不正な行為をしたこと又は相当の行為をしなかったことに関し、賄賂を収受し、又はその要求若しくは約束をしたとき」に成立する。よって、本記述は正しい。参考山口(各)626~627頁。
大塚ほか(刑法Ⅱ)472~473頁。
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憲法国会議員には当然に憲法改正原案を国会に提出する権利が認められるが、国会議員が当該原案を国会に提出するには、各議院においてそれぞれ一定数の賛成を要するものとする旨を法律で定めても、直ちに違憲とはいえないと解されている。憲法この問題の模試受験生正解率 56.5%結果正解解説憲法96条は、憲法改正手続について、国会の発議と国民の承認という二段階の要件を定め、天皇による公布を予定している。国会による発議の前提として、憲法改正原案の提出(発案)がなされなければならないが、両議院の議員には発案権が当然に認められている。もっとも、国会法68条の2は、議員が憲法改正原案を国会に提出するためには「衆議院においては議員100人以上、参議院においては議員50人以上の賛成を要する」として、一定数の国会議員の賛成を要する旨を定めており、このような要件を課すことも憲法改正の重要性から直ちに違憲とはいえないと解されている。よって、本記述は正しい。参考芦部(憲法)405頁。
佐藤幸(日本国憲法論)48頁。
野中ほか(憲法Ⅱ)408頁。
新基本法コメ(憲法)502頁。 -
民法判例の趣旨に照らした場合,将来の一定期間内に発生すべき債権を目的とする債権譲渡契約について、当該期間の長さ等の契約内容が譲渡人の営業活動等に対して社会通念に照らし相当とされる範囲を著しく逸脱する制限を加えるものであるなどの特段の事情の認められる場合には、当該将来債権譲渡契約は公序良俗に反するなどとして、その効力の全部又は一部が否定される場合がある。民法この問題の模試受験生正解率 76.8%結果正解解説将来債権譲渡契約の締結時において譲渡の目的債権の発生の可能性が低かったことは、当該契約の効力を当然に左右するものではない。しかし、最判平11.1.29 民法百選Ⅱ〔第8版〕26事件 は、契約締結時における譲渡人の資産状況や、契約当時における譲渡人の営業等の推移に関する見込み、契約内容、契約が締結された経緯等を総合的に考慮し、将来の一定期間内に発生すべき債権を目的とする債権譲渡契約について、当該期間の長さ等の契約内容が譲渡人の営業活動等に対して社会通念に照らし相当とされる範囲を著しく逸脱する制限を加え、又は他の債権者に不当な不利益を与えるものであるとみられるなどの特段の事情の認められる場合には、当該将来債権譲渡契約は公序良俗に反するなどとして、その効力の全部又は一部が否定されることがあることを認めている。よって、本記述は正しい。参考内田Ⅲ253~254頁。
潮見(プラクティス債総)467頁。
中田(債総)642~644頁。 -
刑法判例の立場に従って検討した場合、誰かが怪我をすればいいと思って歩道橋から石を投げ落としたところ、下を歩いていた小学生の頭部に当たったため、同人は脳内出血を起こし、早期に治療を受けなければ死亡する危険のある状態となった。行為者が、悔悟の念を生じて同人を病院に運んだところ、手当てが早かったため死亡するに至らなかった場合、行為者には中止犯が成立する。刑法この問題の模試受験生正解率 42.8%結果正解解説中止犯は、自己の意思により犯罪を「中止した」場合であって、犯罪の完成に至っていないことが必要である。本記述においては、行為者が誰かに怪我を負わせようと思って、現実に小学生に死亡の危険のある傷害を負わせており、既に傷害罪(刑法204条)が成立している。したがって、中止犯は成立しない。よって、本記述は誤りである。参考大コメ(刑法・第3版)(4)119~120頁。
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憲法最高裁判所の判例の趣旨に照らした場合,農業災害補償法が一定の稲作農業者を農業共済組合に当然に加入させる仕組みを採用したことの合憲性は、当該仕組みが国民の主食である米の生産の確保と稲作を行う自作農の経営の保護を目的とすることから、当該仕組みより緩やかな規制によってはその目的を達成することができないか否かによって判断されるべきである。憲法この問題の模試受験生正解率 74.5%結果正解解説判例は、農業災害補償法(平成11年法律第69号による改正前のもの。以下「法」という。)が一定の稲作農業者を農業共済組合に当然に加入させる仕組み(以下「当然加入制」という。)を採用したことの合憲性が問題となった事例において、「法が、水稲等の耕作の業務を営む者でその耕作面積が一定の規模以上のものは農業共済組合の組合員となり当該組合との間で農作物共済の共済関係が当然に成立するという仕組み……を採用した趣旨は、国民の主食である米の生産を確保するとともに、水稲等の耕作をする自作農の経営を保護することを目的」とするものであるとした上で、「当然加入制の採用は、公共の福祉に合致する目的のために必要かつ合理的な範囲にとどまる措置ということができ、立法府の政策的、技術的な裁量の範囲を逸脱するもので著しく不合理であることが明白であるとは認め難い」から、「上記の当然加入制を定める法の規定は、職業の自由を侵害するものとして憲法22条1項に違反するということはできない」としている(最判平17.4.26 平17重判憲法8事件)。このように、同判決は、農業災害補償法が当然加入制を採用したことの合憲性について、最大判昭47.11.22(小売市場事件 憲法百選Ⅰ〔第7版〕91事件)を引用し、明白の原則を適用して合憲の判断を下している。よって、本記述は誤りである。参考芦部(憲法)245頁。
毛利ほか(憲法Ⅱ)296頁。 -
民法16歳の未成年者Aの法定代理人が、Aが法定代理人の同意を得ずに自己が所有する不動産の売買契約を締結したのを知ってから5年間、取消権を行使しなかった場合であっても、Aは、固有の取消権を行使することができる。民法この問題の模試受験生正解率 68.4%結果正解解説未成年者の法定代理人は、未成年者の行為を知った時から、追認をなし得るようになり(民法124条1項、2項1号参照)、その時から5年で取消権が時効によって消滅する(同126条前段)。そして、未成年者の法定代理人の取消権が時効によって消滅すれば、本人の取消権も消滅すると解されている。これは、どちらの取消権も発生原因が同一である上、法律関係を可及的速やかに安定させるという同条の趣旨に沿うからである。したがって、本記述において、未成年者Aの法定代理人が、Aが売買契約を締結したのを知ってから5年間、取消権を行使しなかった場合、法定代理人の取消権が消滅するのに伴い、Aの固有の取消権も消滅する。よって、本記述は誤りである。参考佐久間(総則)228~229頁。
佐久間ほか(民法Ⅰ)257~258頁。
平野(総則)228頁、230~231頁。 -
刑法判例の立場に従って検討した場合、甲は、乙の財物を強取しようと考え、乙に対して客観的に反抗を抑圧するに足りる程度の暴行を加えたところ、乙は、畏怖したものの反抗抑圧状態にはならず、下手に抵抗して怪我でもしたらつまらないと思い、甲に財布を手渡した。この場合、甲には、強盗罪が成立する。刑法この問題の模試受験生正解率 70.5%結果正解解説判例は、強盗罪(刑法236条)と恐喝罪(同249条)の区別は、財物奪取の手段たる暴行・脅迫が、社会通念上一般に被害者の反抗を抑圧するに足りる程度かという客観的基準によるとしている(最判昭24.2.8)。そして、同判決は、被害者に対し反抗抑圧に足りる程度の暴行を加えれば、実際には被害者の反抗抑圧に至らなくても、強盗既遂罪が成立するとしている。したがって、本記述において、甲が客観的に反抗を抑圧するに足りる程度の暴行を加え、その結果財物が交付された以上、甲には、強盗既遂罪が成立する。よって、本記述は正しい。参考山口(各)217頁。
大塚ほか(基本刑法Ⅱ)161頁。
条解刑法756頁。
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憲法国務大臣の任命は天皇により認証されるが、認証は効力要件ではないから、内閣総理大臣が国務大臣を任命した時点で、合議体としての内閣が成立する。憲法この問題の模試受験生正解率 69.3%結果正解解説内閣は、内閣総理大臣及びその他の国務大臣により構成される合議体である(憲法66条1項)。そして、国務大臣の任命(同68条1項本文)は、天皇により認証されるが(同7条5号)、認証は効力要件ではないから、内閣総理大臣による国務大臣の任命によって、合議体としての内閣は成立する。よって、本記述は正しい。参考佐藤幸(日本国憲法論)531頁。
野中ほか(憲法Ⅱ)192頁。 -
民法判例の趣旨に照らした場合,Aの単独親権に服するBが、Aから代理権を与えられていないにもかかわらず、Aに無断でAの代理人と称して、A所有の甲土地につき、Bの代理権の不存在について善意無過失のCと売買契約を締結した場合において、その後、Aの追認を得られなかったときは、Bは、Cに対し、無権代理人の責任を負う。民法この問題の模試受験生正解率 41.7%結果正解解説無権代理人は、本人の追認がなければ、無権代理であることにつき善意無過失の相手方に対し履行又は損害賠償の責任を負うが(民法117条1項、2項1号、2号本文)、無権代理人が制限行為能力者である場合は、その責任を負わない(同項3号)。したがって、本記述において、Aの単独親権に服するBは、未成年者であり(同818条1項参照)、制限行為能力者であるから(同5条1項参照)、Cに対し、無権代理人の責任を負わない。よって、本記述は誤りである。
なお、制限行為能力者が法定代理人の同意を得て無権代理行為をした場合には、無権代理人の責任を負うと解されている。参考佐久間(総則)298~299頁。
佐久間ほか(民法Ⅰ)224~225頁。
我妻・有泉コメ256頁。 -
刑法判例の立場に従って検討した場合、犯罪行為の重さと法定刑が著しく均衡を失する刑罰法規は、罪刑法定主義に反する。刑法この問題の模試受験生正解率 58.9%結果正解解説罪刑法定主義には、刑罰法規の適正性が含まれる。そして、その具体的内容の1つとして、罪刑の均衡が要請される。判例も、「刑罰規定が罪刑の均衡その他種々の観点からして、著しく不合理なものであって、とうてい許容し難いものであるときは、違憲の判断を受けなければならない」として、罪刑均衡の原則を認めている(最大判昭49.11.6 猿払事件上告審 憲法百選Ⅰ〔第7版〕12事件)。よって、本記述は正しい。参考大谷(講義総)63頁。
高橋(総)41頁。
今井ほか(刑法総論)24~25頁。
大塚ほか(基本刑法Ⅰ)18頁。
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憲法最高裁判所の判例の趣旨に照らした場合,集会の用に供される公の施設において、当該公の施設の管理者が、主催者が集会を平穏に行おうとしているのに、その集会の目的や主催者の思想、信条等に反対する者らが、これを実力で阻止し、妨害しようとして紛争を起こすおそれがあることを理由に当該公の施設の利用を拒むことができるのは、警察の警備等によってもなお混乱を防止することができないなど特別な事情がある場合に限られる。憲法この問題の模試受験生正解率 84.8%結果正解解説判例は、死亡した労働組合連合体の幹部について、合同葬を行うために、当該組合連合体が市の福祉会館(以下「本件会館」という。)の使用許可申請をしたところ、内ゲバ殺人である可能性がある旨の報道に照らして、当該組合連合体と対立する者らの妨害による混乱のおそれがあることなどを理由に不許可処分となったことから、当該組合連合体が市に対して国家賠償請求訴訟を提起した事例において、地方自治法「244条に定める普通地方公共団体の公の施設として、本件会館のような集会の用に供する施設が設けられている場合、住民等は、その施設の設置目的に反しない限りその利用を原則的に認められることになるので、管理者が正当な理由もないのにその利用を拒否するときは、憲法の保障する集会の自由の不当な制限につながるおそれがある」とした上で、「主催者が集会を平穏に行おうとしているのに、その集会の目的や主催者の思想、信条等に反対する者らが、これを実力で阻止し、妨害しようとして紛争を起こすおそれがあることを理由に公の施設の利用を拒むことができるのは、……公の施設の利用関係の性質に照らせば、警察の警備等によってもなお混乱を防止することができないなど特別な事情がある場合に限られる」としている (最判平8.3.15 上尾市福祉会館事件 地方自治百選〔第4版〕57事件、平8重判憲法6事件)。よって、本記述は正しい。参考佐藤幸(日本国憲法論)322~323頁。
野中ほか(憲法Ⅰ)368頁。 -
民法判例の趣旨に照らした場合,夫婦の一方は、他方の兄弟姉妹の子に対して扶養義務を負うことはあるが、他方の兄弟姉妹の配偶者に対して扶養義務を負うことはない。民法この問題の模試受験生正解率 57.8%結果正解解説直系血族及び兄弟姉妹は、相互に扶養義務を負う(民法877条1項)。また、3親等内の親族間においては、家庭裁判所の審判により扶養義務が生じることがある(同条2項)。夫婦の一方からみて、他方の兄弟姉妹の子は、他方の兄弟姉妹の血族であり3親等の姻族に当たるので、3親等内の親族である(同725条3号)。そのため、他方の兄弟姉妹の子に対しては、家庭裁判所の審判によって扶養義務を負うことがある。これに対して、夫婦の一方からみて、他方の兄弟姉妹の配偶者は、他方の配偶者の血族ではなく、また、本人の血族の配偶者でもないため、姻族に当たらない。そのため、他方の兄弟姉妹の配偶者に対しては扶養義務を負うことはない。よって、本記述は正しい。参考窪田(家族法)42~43頁、341頁。
前田陽ほか(民法Ⅵ)24~26頁、216~217頁。
新基本法コメ(親族)17頁、351~352頁。 -
刑法判例の立場に従って検討した場合、公務員になろうとする者が、その担当すべき職務に関し、請託を受けて、賄賂の収受を約束した後に公務員となったが、結局、賄賂を収受しなかった場合、事前収賄罪(刑法第197条第2項)は成立しない。刑法この問題の模試受験生正解率 60.0%結果正解解説事前収賄罪(刑法197条2項)は、「公務員になろうとする者が、その担当すべき職務に関し、請託を受けて、賄賂を収受し、又はその要求若しくは約束をしたときは、公務員となった場合」に成立する。したがって、公務員になった後、賄賂を収受しなかったとしても、賄賂の収受を約束している以上、事前収賄罪が成立する。よって、本記述は誤りである。参考山口(各)624頁。
大塚ほか(基本刑法Ⅱ)472頁。
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憲法形式的意味の憲法とは、憲法としての法形式に着目した憲法概念であるが、最低限度、その内容が国家の統治の基本を定めたものでなければならない。憲法この問題の模試受験生正解率 53.3%結果正解解説形式的意味の憲法とは、憲法制定権者が制定した法には「憲法」という形式が与えられるという、法形式に着目した憲法概念であり、その内容がどのようなものであるかには関わらない。したがって、その内容が国家の統治の基本を定めたものでなければならないわけではない。よって、本記述は誤りである。参考芦部(憲法)4頁。
野中ほか(憲法Ⅰ)7~8頁。 -
民法判例の趣旨に照らした場合,権利能力なき社団の代表者が社団の名においてした取引上の債務については、社団の財産が第一次的な責任財産となり、構成員各自は、第二次的な責任を負う。民法この問題の模試受験生正解率 57.5%結果正解解説判例は、「権利能力なき社団の代表者が社団の名においてした取引上の債務は、その社団の構成員全員に、1個の義務として総有的に帰属するとともに、社団の総有財産だけがその責任財産となり、構成員各自は、取引の相手方に対し、直接には個人的債務ないし責任を負わない」としている(最判昭48.10.9 民法百選Ⅰ〔第8版〕9事件)。したがって、構成員は、第二次的な責任も負わない。よって、本記述は誤りである。参考佐久間(総則)385頁。
佐久間ほか(民法Ⅰ)99頁。 -
刑法判例の立場に従って検討した場合、強盗殺人被告事件の被告人の弁護人が、上告審係属中に、「真犯人は、被告人ではなく被害者の兄である。」旨の上告趣意書を提出した上、記者会見でそれを発表し、さらに、同内容の本を執筆して出版する行為は、正当な弁護活動であり、正当業務行為として違法性が阻却される。刑法この問題の模試受験生正解率 90.0%結果正解解説判例は、刑事事件の弁護人による真犯人の指摘や公表は訴訟外救援活動であって弁護目的との関連も著しく間接的であり、正当な弁護活動の範囲を超えるものというほかはないとして、名誉毀損罪(刑法230条1項)の成立を認めている(最決昭51.3.23 刑法百選Ⅰ〔第2版〕27事件)。よって、本記述は誤りである。参考山口(総)113頁。
大塚ほか(基本刑法Ⅰ)157~158頁。
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憲法最高裁判所が具体的事件についてある法律を違憲無効と判断した場合の違憲判決の効力について、一般的効力説によると、法的安定性が害され、憲法第14条の平等原則に反する事態も生じるおそれがあり、他方、個別的効力説によると、一種の消極的立法を認めることになるので、国会のみが立法権を行使するという憲法第41条の原則に反するおそれがある。憲法この問題の模試受験生正解率 72.1%結果正解解説最高裁判所が具体的事件において、ある法律を違憲無効と判断した場合の違憲判決の効力について、①違憲無効とされた法律は、客観的無効となるとする一般的効力説と、②違憲無効とされた法律は、当該事件に限って適用が排除されるとする個別的効力説、③違憲無効とされた法律の効力については、法律の定めるところによるとする法律委任説がある。そして、①説に対しては、裁判所が一種の消極的立法を行うことになり、憲法41条に違反するおそれがあるとの批判が、②説に対しては、法的安定性ないし予見可能性が害され、同14条の平等原則に反するおそれがあるとの批判がある。よって、本記述は誤りである。参考芦部(憲法)401~402頁。
佐藤幸(日本国憲法論)719~721頁。
野中ほか(憲法Ⅱ)319~323頁。 -
民法判例の趣旨に照らした場合,債務の不履行について当事者が損害賠償の額を予定している場合であっても、裁判所は、過失相殺により賠償額を減額することができる。民法この問題の模試受験生正解率 72.1%結果正解解説当事者は、債務の不履行について損害賠償の額を予定することができ(民法420条1項)、当事者が損害賠償の額を予定している場合、裁判所は、実際の損害が予定賠償額より過大であったり、過小であったりしても、予定賠償額を増減することは認められない。もっとも、判例は、「当事者が民法420条1項により損害賠償額を予定した場合においても、債務不履行に関し債権者に過失があったときは、特段の事情のない限り、裁判所は、損害賠償の責任及びその金額を定めるにつき、これを斟酌すべきものと解するのが相当である」としている(最判平6.4.21)。よって、本記述は正しい。参考内田Ⅲ201頁。
潮見(プラクティス債総)164頁。
中田(債総)223頁。 -
刑法判例の立場に従って検討した場合、甲は、バスの中で乗客の手提げかばんから財布を窃取した直後、その犯行状況を目撃して甲を逮捕しようとした警察官乙に対し、逮捕を免れる目的で、反抗を抑圧するに足りる程度の暴行を加えたが、乙に逮捕された。この場合、甲には、事後強盗未遂罪が成立する。刑法この問題の模試受験生正解率 70.5%結果正解解説事後強盗罪(刑法238条)の既遂・未遂は、先行する窃盗の既遂・未遂によって決定される(最判昭24.7.9)。また、暴行・脅迫の対象は、窃盗の被害者に限られず、追跡・逮捕しようとした第三者や警察官も含まれる。本記述において、甲は、バスの乗客の財布を窃取し、窃盗が既遂に達した後、甲を逮捕しようとした警察官乙に対して反抗抑圧に足りる程度の暴行を加えているから、事後強盗既遂罪が成立する。したがって、甲には、事後強盗未遂罪(同243条、238条)は成立しない。よって、本記述は誤りである。参考西田(各)192~193頁、195頁。
大塚ほか(基本刑法Ⅱ)189頁、191~192頁。
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憲法最高裁判所の判例の趣旨に照らした場合,尊属殺という特別の罪を設け、刑罰を加重すること自体、一種の身分制道徳の見地に立つものというべきであって、個人の尊厳と人格価値の平等を基本的立脚点とする民主主義の理念と抵触するものであるから、憲法第14条第1項に違反する。憲法この問題の模試受験生正解率 74.0%結果正解解説判例は、削除前の刑法200条所定の尊属殺人罪で起訴された被告人が、同条は憲法14条1項に違反すると主張した事例において、「尊属に対する尊重報恩は、社会生活上の基本的道義というべく、このような自然的情愛ないし普遍的倫理の維持は、刑法上の保護に値する」とし、「尊属の殺害は通常の殺人に比して一般に高度の社会的道義的非難を受けて然るべきであるとして、このことをその処罰に反映させても、あながち不合理であるとはいえない」としながらも、「刑法200条は、尊属殺の法定刑を死刑または無期懲役刑のみに限っている点において、その立法目的達成のため必要な限度を遥かに超え、普通殺に関する刑法199条の法定刑に比し著しく不合理な差別的取扱いをするものと認められ、憲法14条1項に違反して無効である」としている(最大判昭48.4.4 尊属殺重罰規定判決 憲法百選Ⅰ〔第7版〕25事件)。したがって、同判決は、尊属殺という特別の罪を設けること自体、個人の尊厳と人格価値の平等を基本的な立脚点とする民主主義の理念と抵触するとはしていない。よって、本記述は誤りである。
なお、同判決の田中二郎裁判官の意見は、「尊属殺人に関する特別の規定を設けることは、一種の身分制道徳の見地に立つもの」であって、「個人の尊厳と人格価値の平等を基本的な立脚点とする民主主義の理念と牴触するものとの疑いが極めて濃厚である」とし、「尊属殺人に関し、普通殺人と区別して特別の規定を設けること自体が憲法14条1項に抵触する」としている。 -
民法判例の趣旨に照らした場合,抵当権設定者Aは、抵当権の被担保債権に係る債務を弁済した場合、抵当権設定登記の抹消登記をしなければ、第三者に対し、その抵当権の消滅を主張することができない。民法この問題の模試受験生正解率 68.3%結果正解解説参考道垣内(担物)233~234頁。
新基本法コメ(物権)309頁。
我妻・有泉コメ649頁。
新版注釈民法(6)646~647頁。 -
刑法判例の立場に従って検討した場合、公証人である甲は、乙の承諾を得て、業務上取り扱ったことによって知った乙の秘密を、これを知らなかった丙に告知した。この場合、甲には、秘密漏示罪は成立しない。刑法この問題の模試受験生正解率 70.3%結果正解解説秘密漏示罪(刑法134条1項)は、医師、薬剤師、医薬品販売業者、助産師、弁護士、弁護人、公証人又はこれらの職にあった者が、正当な理由がないのに、その業務上取り扱ったことについて知り得た人の秘密を漏らした場合に成立するところ、秘密を他人に知らせることにつき、秘密の主体たる本人の承諾を得ていた場合には、正当な理由が存するといえる。したがって、本記述において、甲には、秘密漏示罪は成立しない。よって、本記述は正しい。参考大谷(講義各)165頁。
大塚ほか(基本刑法Ⅱ)96~97頁。
条解刑法417頁。
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解答
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憲法最高裁判所の判例の趣旨に照らした場合,公立図書館は、そこで閲覧に供された図書の著作者にとっては、その思想、意見等を公衆に伝達する公的な場でもあるということができるから、公立図書館の職員が著作者の思想・信条を理由とする不公正な取扱いによって既に閲覧に供された図書を廃棄することは、当該著作者が著作物によってその思想、意見等を公衆に伝達する利益を不当に損なうものといわなければならない。憲法この問題の模試受験生正解率 80.7%結果正解解説判例は、公立図書館の職員が、当該図書館における図書館資料の除籍基準に該当しないにもかかわらず、独断で、蔵書の一部を廃棄したことが、著作者の人格的利益等を侵害しないかが問題となった事例において、「公立図書館は、住民に対して思想、意見その他の種々の情報を含む図書館資料を提供してその教養を高めること等を目的とする公的な場」であり、「他方、公立図書館が、……住民に図書館資料を提供するための公的な場であるということは、そこで閲覧に供された図書の著作者にとって、その思想、意見等を公衆に伝達する公的な場でもあるということができる」から、「公立図書館の図書館職員が閲覧に供されている図書を著作者の思想や信条を理由とするなど不公正な取扱いによって廃棄することは、当該著作者が著作物によってその思想、意見等を公衆に伝達する利益を不当に損なうものといわなければならない」としている(最判平17.7.14 憲法百選Ⅰ〔第7版〕70事件)。よって、本記述は正しい。
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民法A、B及びCが甲土地を共有している場合,判例の趣旨に照らすと,Aは、その持分割合にかかわらず、単独で甲土地の分割を請求することができる。民法この問題の模試受験生正解率 48.0%結果正解解説各共有者は、いつでも共有物の分割を請求することができる(共有物分割請求自由の原則 民法256条1項本文)。持分割合は、共有物分割請求の要件となっていない。よって、本記述は正しい。参考佐久間(物権)214~215頁。
松井(物権)203頁。
石田剛ほか(民法Ⅱ)172頁。 -
刑法判例の立場に従って検討した場合、重過失とは、重大な結果を惹起する危険のある不注意な行為をすることをいう。刑法この問題の模試受験生正解率 75.0%結果正解解説重過失とは、注意義務違反の程度が著しい場合、すなわち、通常の過失に比べ、わずかな注意で結果を予見でき、かつ容易に結果の発生を回避し得るのに、その注意義務を怠った場合をいう。よって、本記述は誤りである。参考西田(総)294頁。
大塚ほか(基本刑法Ⅰ)131~132頁。
条解刑法153頁。
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設問・解答
解答
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憲法「主権」の概念は多義的であり、①国家権力(統治権)そのもの、②国家権力の属性としての最高独立性(対外的独立性と対内的最高性)、③国政についての最高決定権という三つの異なる意味で用いられる。「主権」に関して,ポツダム宣言8項にある「日本国ノ主権ハ本州、北海道、九州及四国並ニ吾等ノ決定スル諸小島ニ局限セラルベシ」との部分における「主権」は、②の意味であるとされている。憲法この問題の模試受験生正解率 61.4%結果正解解説「主権」の概念は多義的であり、①国家権力(統治権)そのもの、②国家権力の属性としての最高独立性(対外的独立性と対内的最高性)、③国政についての最高決定権という三つの異なる意味に分類されている。①の「国家権力そのもの」とは、立法権・司法権・行政権等の複数の「国家の権利」ないし「統治活動をなす権力」を総称する観念であり、伝統的に統治権と呼ばれる。②の「国家権力の属性としての最高独立性」とは、国家権力が、対外的には他のいかなる権力主体からも意思形成において制限されず独立であり、対内的には他のいかなる権力主体にも優越して最高であることを意味している。③の「国政についての最高決定権」とは、国内における最高権力、あるいは「国の政治の在り方を最終的に決定する力又は権威」を意味する。ポツダム宣言8項の「日本国ノ主権ハ本州、北海道、九州及四国並ニ吾等ノ決定スル諸小島ニ局限セラルベシ」との部分における「主権」は、①国家権力(統治権)そのものを意味するとされている。よって、本記述は誤りである。参考芦部(憲法)39~40頁。
芦部(憲法学Ⅰ)220~223頁。 -
民法判例の趣旨に照らした場合,民法第724条第1号にいう被害者が損害を知った時とは、被害者が損害の発生を現実に認識した時をいう。民法この問題の模試受験生正解率 56.2%結果正解解説判例は、民法724条は、不法行為に基づく法律関係が、未知の当事者間に、予期しない事情に基づいて発生することがあることに鑑み、被害者による損害賠償請求権の行使を念頭に置いて、消滅時効の起算点に関して特則を設けたのであるから、同条1号にいう「損害及び加害者を知った時」とは、被害者において、加害者に対する損害賠償請求が事実上可能な状況の下に、その可能な程度にこれらを知った時を意味するとした上で、同号にいう被害者が損害を知った時とは、被害者が損害の発生を現実に認識した時をいうとしている(最判平14.1.29 平14重判民法9事件)。よって、本記述は正しい。参考窪田(不法行為)501頁。
潮見(基本講義・債各Ⅱ)138~139頁。
橋本ほか(民法Ⅴ)244頁。 -
刑法判例の立場に従って検討した場合、甲は、乙との間でVを殺害することを共謀し、その後、乙がVを殺害した。甲と乙の共謀の内容が、仮にVとけんかになる等の事態になればVの殺害もやむを得ないというものであった場合でも、甲には、殺人罪の共同正犯が成立し得る。刑法この問題の模試受験生正解率 82.8%結果正解解説判例は、本記述と同様の事例において、「謀議された計画の内容においては被害者の殺害を一定の事態の発生にかからせていたとしても、そのような殺害計画を遂行しようとする被告人の意思そのものは確定的であったのであり、被告人は被害者の殺害の結果を認容していたのであるから、被告人の故意の成立に欠けるところはない」として、殺人罪の共同正犯の成立を認めている(最決昭56.12.21 刑法百選Ⅰ〔第2版〕46事件)。したがって、甲には、殺人罪の共同正犯が成立し得る。よって、本記述は正しい。参考高橋(総)188頁。
新基本法コメ(刑法)118頁。
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憲法最高裁判所の判例の趣旨に照らした場合,憲法第38条第1項は、自己が刑事上の責任を問われるおそれのある事項について供述を強要されないことを保障するとともに、その実効性を担保するため、供述拒否権の告知を義務付けている。憲法この問題の模試受験生正解率 56.9%結果正解解説判例は、国税犯則取締法(国税通則法に編入されることにより、平成30年廃止)に基づく質問調査に憲法38条1項の供述拒否権の保障が及ぶかどうかが問題となった事例において、「国税犯則取締法上の質問調査の手続は、犯則嫌疑者については、自己の刑事上の責任を問われるおそれのある事項についても供述を認めることになる」ので、「憲法38条1項の規定による供述拒否権の保障が及ぶ」とするものの、同「項は供述拒否権の告知を義務づけるものではなく、右規定による保障の及ぶ手続について供述拒否権の告知を要するものとすべきかどうかは、その手続の趣旨・目的等により決められるべき立法政策の問題と解される」としている(最判昭59.3.27 憲法百選Ⅱ〔第7版〕119事件)。したがって、同項は、供述拒否権の告知を義務付けていない。よって、本記述は誤りである。
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民法判例の趣旨に照らした場合,相手方に対する意思表示について第三者が詐欺を行った場合において、相手方がその事実を知ることができたときは、その意思表示を取り消すことができる。民法この問題の模試受験生正解率 64.3%結果正解解説ある者に対する意思表示につき、第三者が詐欺を行った場合においては、相手方がその事実を知り、又は知ることができたときに限り、その意思表示を取り消すことができる(民法96条2項)。詐欺を行っていない意思表示の相手方の信頼を保護するため、取消しの範囲を限定したものである。よって、本記述は正しい。参考佐久間(総則)170~171頁。
佐久間ほか(民法Ⅰ)184頁。 -
刑法判例の立場に従って検討した場合、身の代金目的略取誘拐罪を犯した者が、公訴が提起される前に被拐取者を安全な場所に解放した場合、その刑は必要的に減軽される。刑法この問題の模試受験生正解率 24.1%結果正解解説身の代金目的略取誘拐罪を犯した者が、公訴提起される前に、被拐取者を安全な場所に解放した場合、その刑は必要的に減軽される(刑法228条の2)。同条は、同罪においては、被拐取者の生命、身体の危険が大きいことから、その安全を図るために政策的に必要的減軽を定めたものである。よって、本記述は正しい。参考西田(各)95頁。
大塚ほか(基本刑法Ⅱ)68頁。
条解刑法692頁。
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憲法愛媛県玉串料訴訟判決(最高裁判所平成9年4月2日大法廷判決、民集51巻4号1673頁)に関して,この判決は、一般に、神社自体がその境内において挙行する恒例の重要な祭祀に際し、県が公金を支出して玉串料等を奉納することは、時代の推移によって既にその宗教的意義が希薄化し、慣習化した社会的儀礼にすぎないものになっているとはいえないとした。憲法この問題の模試受験生正解率 80.9%結果正解解説本問の判決は、問題となった県の公金支出行為について、「県が特定の宗教団体の挙行する重要な宗教上の祭祀にかかわり合いを持ったということが明らかである」とした上で、「一般に、神社自体がその境内において挙行する恒例の重要な祭祀に際して右のような玉串料等を奉納することは、建築主が主催して建築現場において土地の平安堅固、工事の無事安全等を祈願するために行う儀式である起工式の場合とは異なり、時代の推移によって既にその宗教的意義が希薄化し、慣習化した社会的儀礼にすぎないものになっているとまでは到底いうことができず、一般人が本件の玉串料等の奉納を社会的儀礼の一つにすぎないと評価しているとは考え難い」としている。よって、本記述は正しい。
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民法判例の趣旨に照らした場合,債務者が弁済の準備ができない経済状態にあり、口頭の提供ができない場合であっても、債権者が契約の存在を否定するなど、弁済を受領しない意思が明確と認められるときは、債務者は、口頭の提供をしなくても債務不履行の責任を免れる。民法この問題の模試受験生正解率 47.4%結果正解解説判例は、債務者が口頭の提供をしても、債権者が契約の存在を否定するなど弁済を受領しない意思を明確にしている場合には、口頭の提供をしなくても債務不履行責任を負わないが(最大判昭32.6.5)、「弁済の準備ができない経済状態にあるため言語上の提供もできない債務者は、債権者が弁済を受領しない意思が明確と認められるときでも、弁済の提供をしないことによって債務不履行の責を免かれない」としている(最判昭44.5.1 民法百選Ⅱ〔初版〕37事件)。よって、本記述は誤りである。参考内田Ⅲ106~107頁。
潮見(プラクティス債総)291~292頁。
中田(債総)368頁。 -
刑法判例の立場に従って検討した場合、現行刑法上、過失犯の未遂を処罰する規定は存在しない。刑法この問題の模試受験生正解率 75.0%結果正解解説刑法典上、過失犯については、未遂を処罰する規定は存在しない。過失犯についてその未遂犯を処罰することは著しい処罰の拡張となり妥当でないからである。よって、本記述は正しい。参考山口(総)280頁。
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憲法最高裁判所の判例の趣旨に照らした場合,裁判所によるテレビフィルムの提出命令が許されるか否かを判断するに当たり、当該フィルムを証拠として提出させられることによる報道機関の不利益が考慮されるが、既に放映されたものを含む放映のために準備されたフィルムが証拠として使用されることで報道機関が受ける不利益は、報道の自由そのものではなく、将来の取材の自由が妨げられるおそれがあるというにとどまる。憲法この問題の模試受験生正解率 78.3%結果正解解説判例は、テレビ放送会社が学生と機動隊との衝突事件の現場を撮影したテレビフィルム(以下「本件フィルム」という。)に対して裁判所が発した提出命令が表現の自由を保障した憲法21条に違反するか否かが争われた事例において、同条の精神に照らし十分尊重に値する取材の自由も「公正な裁判の実現というような憲法上の要請があるときは、ある程度の制約を受けることのあることも否定することができない」とした上で、公正な刑事裁判の実現のために報道機関が取材活動によって得たものに対して提出命令を発することにより取材の自由を制限することが許されるか否かは、「審判の対象とされている犯罪の性質、態様、軽重および取材したものの証拠としての価値、ひいては、公正な刑事裁判を実現するにあたっての必要性の有無を考慮するとともに、他面において取材したものを証拠として提出させられることによって報道機関の取材の自由が妨げられる程度およびこれが報道の自由に及ぼす影響の度合その他諸般の事情を比較衡量して決せられるべき」であるとし、本件フィルムは、「すでに放映されたものを含む放映のために準備されたものであり、それが証拠として使用されることによって報道機関が蒙る不利益は、報道の自由そのものではなく、将来の取材の自由が妨げられるおそれがあるというにとどまる」としている(最大決昭44.11.26 博多駅事件 憲法百選Ⅰ〔第7版〕73事件)。よって、本記述は正しい。
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民法判例の趣旨に照らした場合,留置権者が留置権を主張して目的物の返還を拒むとともに、被担保債権について履行を求めた場合、被担保債権の消滅時効の完成が猶予される。民法この問題の模試受験生正解率 62.3%結果正解解説留置権の行使は、債権の消滅時効の進行を妨げない(民法300条)。留置権を行使して、目的物の留置を継続していても、被担保債権を行使していることにはならないからである。しかし、留置権を主張して、目的物の返還を拒むと同時に、被担保債権の履行を求めれば、「催告」として時効の完成が猶予される(同150条1項)。よって、本記述は正しい。参考内田Ⅲ672~673頁。
道垣内(担物)35頁。
松井(担物)152頁。
新・コンメ民法(財産法)463頁。 -
刑法判例の立場に従って検討した場合、不作為犯は、結果発生を防止しなければならない義務が法律上の規定に基づくものでなければ、成立する余地はない。刑法この問題の模試受験生正解率 64.0%結果正解解説判例は、「シャクティ治療」と称する独自治療を唱導していた被告人が、その信奉者から重篤な患者である親族に対する「シャクティ治療」を依頼され、同患者を入院中の病院から運び出させた上、必要な医療措置を受けさせないまま放置した事例において、「被告人は、自己の責めに帰すべき事由により患者の生命に具体的な危険を生じさせた上、患者が運び込まれたホテルにおいて、被告人を信奉する患者の親族から、重篤な患者に対する手当てを全面的にゆだねられた立場にあったものと認められる。その際、被告人は、患者の重篤な状態を認識し、これを自らが救命できるとする根拠はなかったのであるから、直ちに患者の生命を維持するために必要な医療措置を受けさせる義務を負っていたものというべきである」とし(最決平17.7.4 刑法百選Ⅰ〔第8版〕6事件)、先行行為、保護の引受け、排他的支配を根拠に、作為義務(直ちに患者の生命を維持するために必要な医療措置を受けさせる義務)があったとしており、法律上の規定から作為義務を導いてはいない。したがって、不作為犯は、結果発生を防止しなければならない義務が法律上の規定に基づくものでない場合であっても、成立する余地がある。よって、本記述は誤りである。参考西田(総)126~129頁。
大塚ほか(基本刑法Ⅰ)85~86頁。
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憲法最高裁判所の判例の趣旨に照らした場合,憲法第8章の地方自治に関する規定の趣旨に鑑みれば、憲法第93条第2項にいう「住民」とは、地方公共団体の区域内に住所を有する日本国民のみを意味するものとは解されないことから、法律をもって、その居住する地域の地方公共団体と特段に緊密な関係を持つに至った外国人に地方公共団体の長、その議会の議員等に対する選挙権を付与する措置を講ずることは、憲法上禁止されているものではない。憲法この問題の模試受験生正解率 53.0%結果正解解説判例は、定住外国人に地方公共団体の選挙権を認めない地方自治法の規定が、憲法前文、14条、15条、93条2項に反するかが問題となった事例において、同15条1項の「規定は、国民主権の原理に基づき、公務員の終局的任免権が国民に存することを表明したものにほかならないところ、主権が「日本国民」に存するものとする憲法前文及び1条の規定に照らせば、憲法の国民主権の原理における国民とは、日本国民すなわち我が国の国籍を有する者を意味することは明らかである」とした上で、「前記の国民主権の原理及びこれに基づく憲法15条1項の規定の趣旨に鑑み、地方公共団体が我が国の統治機構の不可欠の要素を成すものであることをも併せ考えると、憲法93条2項にいう「住民」とは、地方公共団体の区域内に住所を有する日本国民を意味するものと解するのが相当であり、右規定は、我が国に在留する外国人に対して、地方公共団体の長、その議会の議員等の選挙の権利を保障したものということはできない」としている(最判平7.2.28 憲法百選Ⅰ〔第7版〕3事件)。よって、本記述は誤りである。
なお、同判決は、「憲法第8章の地方自治に関する規定は、民主主義社会における地方自治の重要性に鑑み、住民の日常生活に密接な関連を有する公共的事務は、その地方の住民の意思に基づきその区域の地方公共団体が処理するという政治形態を憲法上の制度として保障しようとする趣旨に出たものと解されるから、我が国に在留する外国人のうちでも永住者等であってその居住する区域の地方公共団体と特段に緊密な関係を持つに至ったと認められるものについて、その意思を日常生活に密接な関連を有する地方公共団体の公共的事務の処理に反映させるべく、法律をもって、地方公共団体の長、その議会の議員等に対する選挙権を付与する措置を講ずることは、憲法上禁止されているものではない」としている。 -
民法本人が後見開始の審判を受けた場合、委任による代理権は消滅する。民法この問題の模試受験生正解率 68.1%結果正解解説本人に生じた事由により代理権が消滅するのは、本人が死亡した場合のみであり(民法111条1項1号)、本人が後見開始の審判(同7条)を受けても代理権は消滅しない。また、委任による代理権は、委任の終了によって消滅するところ(同111条2項)、委任者(本人)が後見開始の審判を受けたことは、委任の終了事由とはされていない(同653条参照)。よって、本記述は誤りである。参考佐久間(総則)256頁。
佐久間ほか(民法Ⅰ)198頁。 -
刑法判例の立場に従って検討した場合、緊急避難の要件である「生じた害が避けようとした害の程度を超えなかった場合」には、避難行為によって生じた害が、避けようとした害と同程度の場合も含まれる。刑法この問題の模試受験生正解率 80.5%結果正解解説緊急避難の要件である「生じた害が避けようとした害の程度を超えなかった場合」(刑法37条1項本文)とは、避けようとした害が避難行為によって生じた害と同程度であるか、又は、優越する場合をいう。よって、本記述は正しい。参考山口(総)154~155頁。
大塚ほか(基本刑法Ⅰ)211頁。
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憲法判例は、政党がその所属党員に対してした除名その他の処分の当否について、裁判所は、原則として適正な手続にのっとってされたか否かを審査して判断すべきであり、一般市民としての権利利益を侵害する場合に限り処分内容の当否を審査することができるとしている。憲法この問題の模試受験生正解率 42.4%結果正解解説判例は、政党が除名処分を受けた元党役員に対し、当該党役員に利用させてきた家屋の明渡しを求めた事例において、「政党の結社としての自主性にかんがみると、政党の内部的自律権に属する行為は、法律に特別の定めのない限り尊重すべきであるから、政党が組織内の自律的運営として党員に対してした除名その他の処分の当否については、原則として自律的な解決に委ねるのを相当とし、したがって、政党が党員に対してした処分が一般市民法秩序と直接の関係を有しない内部的な問題にとどまる限り、裁判所の審判権は及ばない」とした上で、「右処分が一般市民としての権利利益を侵害する場合であっても、右処分の当否は、当該政党の自律的に定めた規範が公序良俗に反するなどの特段の事情のない限り右規範に照らし、右規範を有しないときは条理に基づき、適正な手続に則ってされたか否かによって決すべきであり、その審理も右の点に限られる」としている(最判昭63.12.20 憲法百選Ⅱ〔第7版〕183事件)。したがって、政党がその所属党員に対してした除名その他の処分の当否については、一般市民法秩序と直接の関係を有しない限り、裁判所の審判権は及ばず、当該処分が一般市民としての権利利益を侵害する場合でも、処分内容の当否を審査することはできない。よって、本記述は誤りである。
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民法判例の趣旨に照らした場合,国が国家公務員に対して負担する安全配慮義務に違反したことを理由として損害賠償を請求する訴訟においては、原告が、その義務内容を特定し、かつ、義務違反に該当する事実を主張立証する責任を負う。民法この問題の模試受験生正解率 52.3%結果正解解説判例は、「国が国家公務員に対して負担する安全配慮義務に違反し、右公務員の生命、健康等を侵害し、同人に損害を与えたことを理由として損害賠償を請求する訴訟において、右義務の内容を特定し、かつ、義務違反に該当する事実を主張・立証する責任は、国の義務違反を主張する原告にある、と解するのが相当である」としている(最判昭56.2.16 民法百選Ⅱ〔第2版〕3事件)。よって、本記述は正しい。参考内田Ⅲ154頁。
中田(債総)139頁。 -
刑法判例の立場に従って検討した場合、甲は、日本国外で販売しようと考え、日本国内において、わいせつな写真を保管し、所持した。この場合、甲には、わいせつ図画有償頒布目的所持罪が成立する。刑法この問題の模試受験生正解率 74.7%結果正解解説判例は、刑法175条2項にいう「有償で頒布する目的」とは、国内における有償頒布目的を意味するとした上で、わいせつ図画等を国内で所持していた場合でも、国外での有償頒布目的があったにすぎないときには、同項の罪は成立しないとしている(最判昭52.12.22 刑法百選Ⅱ〔第5版〕100事件)。したがって、本記述において、甲にわいせつ図画有償頒布目的所持罪(同項)は成立しない。よって、本記述は誤りである。参考山口(各)514頁。
大塚ほか(基本刑法Ⅱ)456頁。
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憲法憲法第89条後段の「公の支配」の意義に関し、国又は地方公共団体が当該事業の予算を定め、その執行を監督し、更にその人事に関与するなど、その事業の根本的方向に重大な影響を及ぼすことのできる権力を有することを要すると解する見解は、同条後段の趣旨を私的事業の自主性を確保するために公権力による干渉の危険を除こうとするところに求める立場と結び付く。憲法この問題の模試受験生正解率 60.2%結果正解解説憲法89条後段の趣旨については、必ずしも明確ではなく、学説上も見解が分かれている。本記述の見解は、同条後段の趣旨について、私的事業の自主性を確保するために公権力による干渉の危険を除こうとするところに求める立場(自主性確保説)である。この見解は、同条後段の「公の支配」の意義について、国又は地方公共団体が当該事業の予算を定め、その執行を監督し、更にその人事に関与するなど、その事業の根本的方向に重大な影響を及ぼすことのできる権力を有することを要すると解する見解(厳格説)に立つとされる。これにより、国が財政的援助をする以上は事業の自主性を認めず、事業の自主性を認める以上は援助しないと憲法が割り切っていると解することになる。よって、本記述は正しい。参考芦部(憲法)375~376頁。
佐藤幸(日本国憲法論)573~574頁。
野中ほか(憲法Ⅱ)343~346頁。 -
民法判例の趣旨に照らした場合,Bは、Aから甲動産を詐取してCに売却し、Cは、甲動産がBの所有物であると過失なく信じて、現実の引渡しを受けた。この場合、Aは、甲動産を詐取された時から2年以内であれば、Cに対し、甲動産の返還を求めることができる。民法この問題の模試受験生正解率 53.9%結果正解解説民法193条は、同192条が定める要件を満たした場合であっても、占有物が「盗品又は遺失物」である場合、被害者又は遺失者は、盗難又は遺失の時から2年間、その物の回復請求をすることができるとしている。これは、「盗品又は遺失物」のように、被害者又は遺失者の意思によらないで占有を離れた物について、特に同人の権利を保護するためのものである。詐欺により物の占有を失った場合には、あくまで占有者がその意思に基づいて物の占有を移転していることから、同193条の適用又は類推適用は認められないと解されており、判例も、同条の適用を否定している(大判明35.11.1)。したがって、本記述において、Aは、甲動産を詐取された時から2年以内であっても、Cに対し、同条に基づく回復請求として甲動産の返還を求めることはできない。よって、本記述は誤りである。参考佐久間(物権)156頁。
松井(物権)143頁。
石田剛ほか(民法Ⅱ)103~104頁。
新注釈民法(5)187頁。 -
刑法判例の立場に従って検討した場合、精神に障害のない場合、心神喪失とは認められない。
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設問
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解答
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憲法最高裁判所の判例の趣旨に照らした場合,現在、学校教育法に規定する小学校、中学校などの義務教育諸学校においては、法律により、教科書は無償で配布されているが、当該法律を改正して教科書を有償としても、義務教育の無償を規定する憲法第26条第2項後段に違反しない。憲法この問題の模試受験生正解率 61.1%結果正解解説判例は、公立小学校に子を在学させている親が、義務教育期間中の教科書代金の徴収行為の取消し等を求めた事例において、「憲法26条2項後段の「義務教育は、これを無償とする。」という意義は、国が義務教育を提供するにつき有償としないこと、換言すれば、子女の保護者に対しその子女に普通教育を受けさせるにつき、その対価を徴収しないことを定めたものであり、教育提供に対する対価とは授業料を意味するものと認められるから、同条項の無償とは授業料不徴収の意味と解するのが相当である」としつつ、「国が保護者の教科書等の費用の負担についても、これをできるだけ軽減するよう配慮、努力することは望ましいところであるが、それは、国の財政等の事情を考慮して立法政策の問題として解決すべき事柄であって、憲法の前記法条の規定するところではない」としている(最大判昭39.2.26 教科書費国庫負担請求事件 憲法百選Ⅱ〔第7版〕A11事件)。現在、義務教育諸学校の教科用図書の無償措置に関する法律等によって、義務教育に係る教科書も無償で配布されているが、同判決によれば、これは憲法上の要請ではないから、当該法律を改正して有償としても、義務教育の無償を規定する憲法26条2項後段に違反しない。よって、本記述は正しい。参考渡辺ほか(憲法Ⅰ)393~394頁。
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民法判例の趣旨に照らした場合,袋地を買い受けた者は、所有権移転登記を経由していなくても、袋地を囲んでいる土地(以下「囲繞地」という。)の所有者ないし利用権者に対し、公道に至るため、その囲繞地の通行権を主張することができる。民法この問題の模試受験生正解率 74.2%結果正解解説判例は、「袋地の所有権を取得した者は、所有権取得登記を経由していなくても、囲繞地の所有者ないしこれにつき利用権を有する者に対して、囲繞地通行権を主張することができる」としている(最判昭47.4.14 民法百選Ⅰ〔第5版新法対応補正版〕56事件)。その理由として、同判決は、民法の相隣関係の規定(同209条~238条)は、いずれも、相隣接する不動産相互間の利用の調整を目的とする規定であって、同210条の囲繞地通行権も、相隣関係にある所有権共存の一態様として、囲繞地の所有者に一定の範囲の通行受忍義務を課し、袋地の効用を高めようとするもので、「このような趣旨に照らすと、袋地の所有者が囲繞地の所有者らに対して囲繞地通行権を主張する場合は、不動産取引の安全保護をはかるための公示制度とは関係がない」ことを挙げている。よって、本記述は正しい。参考佐久間(物権)168頁。
松井(物権)167頁。
石田剛ほか(民法Ⅱ)137頁。 -
刑法判例の立場に従って検討した場合、甲は、乙が覚醒剤の密輸入を企てていることを知りながら、その資金として、同人に対し金員を供与した。その後、乙は、当該金員を用いて、2度にわたり覚醒剤を密輸入した。この場合、甲には、2個の覚醒剤輸入罪の幇助犯が成立し、両罪は併合罪となる。刑法この問題の模試受験生正解率 60.6%結果正解解説判例は、「幇助罪は正犯の犯行を幇助することによって成立するものであるから、成立すべき幇助罪の個数については、正犯の罪のそれに従って決定される」とした上で、「幇助罪が数個成立する場合において、それらが刑法54条1項にいう1個の行為によるものであるか否かについては、……幇助行為それ自体についてこれをみるべき」としている(最決昭57.2.17 刑法百選Ⅰ〔第8版〕107事件)。したがって、本記述において、甲には2個の覚醒剤輸入罪の幇助犯(覚醒剤取締法13条、41条1項、刑法62条1項)が成立し、幇助行為は金員供与1個であるから、両罪は観念的競合(同54条1項前段)となる。よって、本記述は誤りである。参考山口(総)409~410頁。
大塚ほか(基本刑法Ⅰ)415頁。
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解答
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憲法最高裁判所の判例の趣旨に照らした場合,インターネットには、利用者の対等性と反論の容易性という特徴があるということに加え、個人利用者がインターネット上で発信した情報の信頼性は一般に低いものと受け止められていることにも鑑みると、個人利用者がインターネットを使って名誉毀損的表現に及んだ場合には、当該個人利用者が、摘示した事実が真実でないことを知りながら発信したか、あるいは、インターネットの個人利用者に対して要求される水準を満たす調査を行わず真実かどうか確かめないで発信したといえるときに初めて名誉毀損罪が成立する。憲法この問題の模試受験生正解率 80.7%結果正解解説判例は、個人が、インターネット上に自己が開設したホームページにおいて、ある会社につきその名誉を毀損する記載をしたとして起訴された事例において、「所論は、被告人は、一市民として、インターネットの個人利用者に対して要求される水準を満たす調査を行った上で、本件表現行為を行っており、インターネットの発達に伴って表現行為を取り巻く環境が変化していることを考慮すれば、被告人が摘示した事実を真実と信じたことについては相当の理由があると解すべきであって、被告人には名誉毀損罪は成立しない」と主張するが、「個人利用者がインターネット上に掲載したものであるからといって、おしなべて、閲覧者において信頼性の低い情報として受け取るとは限らないのであって、相当の理由の存否を判断するに際し、これを一律に、個人が他の表現手段を利用した場合と区別して考えるべき根拠はない。そして、インターネット上に載せた情報は、不特定多数のインターネット利用者が瞬時に閲覧可能であり、これによる名誉毀損の被害は時として深刻なものとなり得ること、一度損なわれた名誉の回復は容易ではなく、インターネット上での反論によって十分にその回復が図られる保証があるわけでもないことなどを考慮すると、インターネットの個人利用者による表現行為の場合においても、他の場合と同様に、行為者が摘示した事実を真実であると誤信したことについて、確実な資料、根拠に照らして相当の理由があると認められるときに限り、名誉毀損罪は成立しないものと解するのが相当であって、より緩やかな要件で同罪の成立を否定すべきものとは解されない」としている(最決平22.3.15 ラーメンフランチャイズ事件 メディア百選〔第2版〕111事件)。したがって、同決定は、インターネットの個人利用者による表現行為についても、他の場合と同様の名誉毀損法理(相当性の理論)が妥当するとしている。よって、本記述は誤りである。参考芦部(憲法)194~195頁。
野中ほか(憲法Ⅰ)401頁。 -
民法判例の趣旨に照らした場合,建物の賃借人が、造作引渡債務との同時履行の抗弁権の付いた賃貸人に対する造作代金支払債権を自働債権とし、賃料債権を受働債権として相殺をすることは、許されない。民法この問題の模試受験生正解率 54.3%結果正解解説自働債権に抗弁権が付着している場合には、相殺を認めると自働債権の債務者が有する抗弁権を一方的に奪うことになるから、相殺は許されない。判例は、建物の賃借人が造作買取請求権(借地借家法33条1項)を行使することによって発生する造作代金支払債務は、造作引渡債務と対価的関係に立つとして、賃貸人は賃借人に対して、造作の引渡しがあるまで造作代金の支払を拒むことができる同時履行の抗弁権を有するとした上で、賃借人が賃貸人に対し、造作代金支払債権を自働債権、賃料その他の債権を受働債権として相殺することは許されないとしている(大判昭13.3.1)。よって、本記述は正しい。参考中田(債総)473~474頁。
潮見(新債総Ⅱ)283頁。
論点体系判例民法(5)302~303頁。 -
刑法判例の立場に従って検討した場合、甲は、妻乙が殺人罪を犯したことを知り、逮捕を免れさせるため、同人を自己の所有する別荘にかくまった。この場合、甲には、犯人蔵匿罪が成立するが、親族による犯罪に関する特例の適用により、甲は、必ずその刑を免除される。刑法この問題の模試受験生正解率 48.8%結果正解解説犯人蔵匿罪(刑法103条前段)の行為は、犯人等を蔵匿することであるが、「蔵匿」とは場所を提供してかくまうことをいう。本記述では、甲は殺人罪(同199条)を犯した乙を自己が所有する別荘にかくまっており、蔵匿したといえる。そのため、甲には犯人蔵匿罪が成立する。もっとも、乙は甲の妻であるから、親族による犯罪に関する特例(同105条)が適用され、その刑を免除することができる(裁量的免除)。したがって、甲は必ずその刑を免除されるわけではない。よって、本記述は誤りである。参考西田(各)483頁、490頁。
大塚ほか(基本刑法Ⅱ)515~516頁、530頁。
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憲法内閣は、憲法第73条第1号により法律を誠実に執行する義務を負うから、たとえ内閣が違憲と判断する法律であっても、その法律を執行しなければならない。憲法この問題の模試受験生正解率 65.2%結果正解解説憲法73条1号は、内閣が「法律を誠実に執行」する旨を規定している。「誠実に執行」とは、たとえ内閣の賛成できない法律であっても、法律の目的にかなった執行を行うことを義務付ける趣旨である。つまり、法律が違憲かどうかについては、国会の判断が内閣のそれに優先し、国会で合憲であるものとして制定した以上、内閣はその判断に拘束されるということである。したがって、内閣は、自らが違憲と判断する法律であっても、その法律を執行しなければならない。よって、本記述は正しい。参考佐藤幸(日本国憲法論)541~542頁。
渡辺ほか(憲法Ⅱ)285~286頁。 -
民法判例の趣旨に照らした場合,建物の賃借人は、当該建物の賃貸人による敷地所有権の取得時効を援用することができる。民法この問題の模試受験生正解率 68.1%結果正解解説判例は、係争地の所有権を時効取得すべき者又はその承継人から、その土地上に同人らが所有する建物を賃借しているにすぎない者は、当該土地の取得時効の完成によって直接利益を受ける者ではないから、当該土地の所有権の取得時効を援用することはできないとしている(最判昭44.7.15)。よって、本記述は誤りである。参考佐久間(総則)434頁。
佐久間ほか(民法Ⅰ)322~323頁。 -
刑法判例の立場に従って検討した場合、「自己若しくは第三者の利益を図る目的」は、本人の利益を図る目的が併存する場合であっても認められ得る。刑法この問題の模試受験生正解率 80.6%結果正解解説背任罪が成立するためには、他人のためにその事務を処理する者が、「自己若しくは第三者の利益を図り又は本人に損害を加える目的」(図利・加害目的)をもって、その任務に背く行為をすることが必要である。図利・加害目的と本人図利目的とが併存する場合には、両目的の主従によって背任罪の成否が決定されると解されており、判例も、両者が併存する事例において、本人の利益を図る目的が「決定的な動機」ではなかったとして、図利・加害目的を認めている(最決平10.11.25 刑法百選Ⅱ〔第8版〕73事件)。したがって、「自己若しくは第三者の利益を図る目的」は、本人の利益を図る目的が併存する場合であっても認められ得る。よって、本記述は正しい。参考西田(各)278~279頁。
大塚ほか(基本刑法Ⅱ)326~329頁。
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憲法会計年度開始前までに予算が成立しない場合,内閣は,前年度の予算を施行することができるし,暫定予算を作成し,国会に提出することもできる。憲法この問題の模試受験生正解率 45.3%結果正解解説憲法86条は,国の収入及び支出が,毎年,予算という形式で国会に提出され審議・議決されなければならないという近代国家に通ずる大原則を定めたものである。もっとも,国会での審議が遅れ議決されないなどの事情により,会計年度開始前までに本予算が成立しない場合があり得る。大日本帝国憲法は,予算が会計年度開始前までに成立しない場合に備えて,前年度の予算の施行を認めていたが(同71条),これでは財政における国会中心主義に反する。そこで,日本国憲法の下では,内閣は,必要に応じて,一会計年度のうちの一定期間を対象とする暫定予算を作成し,国会に提出することができるとする,暫定予算制を採用している(財政法30条1項)。よって,本記述は誤りである。参考芦部(憲法)373~375頁。
佐藤幸(日本国憲法論)581頁,585頁。
渡辺ほか(憲法Ⅱ)413~414頁。 -
民法判例の趣旨に照らした場合,代位弁済者が弁済による代位によって取得した担保権を実行する場合において,その被担保債権は,代位弁済者の債務者に対する求償権である。民法この問題の模試受験生正解率 56.4%結果正解解説判例は,「弁済による代位の制度は,代位弁済者が債務者に対して取得する求償権を確保するために,法の規定により弁済によって消滅すべきはずの債権者の債務者に対する債権(以下「原債権」という。)及びその担保権を代位弁済者に移転させ,代位弁済者がその求償権の範囲内で原債権及びその担保権を行使することを認める制度であり,したがって,代位弁済者が弁済による代位によって取得した担保権を実行する場合において,その被担保債権として扱うべきものは,原債権であって,保証人の債務者に対する求償権でないことはいうまでもない」としている(最判昭59.5.29 民法百選Ⅱ〔第8版〕36事件)。よって,本記述は誤りである。参考潮見(プラクティス債総)360~361頁。
中田(債総)417~418頁。 -
刑法判例の立場に従って検討した場合,盗品等有償譲受け罪の犯人が本犯である窃盗犯人の配偶者である場合,当該盗品等有償譲受け罪の犯人について,その刑は免除される。刑法この問題の模試受験生正解率 53.4%結果正解解説配偶者との間又は直系血族,同居の親族若しくはこれらの者の配偶者との間で盗品等に関する罪を犯した者は,その刑が免除されるところ(刑法257条1項),判例は,同項の適用について,当該親族関係は,本犯の犯人と盗品等関与罪の犯人との間に存在することが必要であるとしている(最決昭38.11.8)。したがって,盗品等有償譲受け罪の犯人が本犯である窃盗犯人の配偶者である場合,その刑は免除される。よって,本記述は正しい。参考西田(各)299頁。
大塚ほか(基本刑法Ⅱ)353頁。
条解刑法849頁。
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憲法両議院は,各々国政に関する調査を行うことができるが,この国政調査権は,各議院を構成する個々の国会議員についても認められている権能であるので,個々の国会議員も行使することができる。憲法この問題の模試受験生正解率 59.7%結果正解解説両議院は,「各々国政に関する調査を行」うことができる(憲法62条前段)。これが議院の国政調査権と呼ばれるものである。この国政調査権は,あくまで議院に認められる権能であって,議院を構成する個々の議員の権能ではない。よって,本記述は誤りである。参考芦部(憲法)328頁。
佐藤幸(日本国憲法論)508頁。
野中ほか(憲法Ⅱ)143頁。
新基本法コメ(憲法)355頁。 -
民法Aは,Bとの間で,自己が所有する別荘用の木造建物(以下「甲」という。)を,1か月後に引渡し及び所有権移転登記,その5日後に代金支払の約定でBに売却する旨の契約(以下「本件契約」という。)を締結した。この事例に関して,本件契約が締結された1か月後に,Aは,Bに甲を引き渡すとともに,Bへの所有権移転登記をしたが,その3日後に,甲は落雷によって滅失した。この場合,Bは,Aからの代金支払請求を拒むことができない。民法この問題の模試受験生正解率 90.6%結果正解解説売主が買主に目的物を引き渡した場合において,その引渡しがあった時以後にその目的物が当事者双方の責めに帰することができない事由によって滅失し,又は損傷したときは,買主は,代金の支払を拒むことができない(民法567条1項後段)。同項は,公平の観点から,売主から買主への目的物滅失の危険の移転の基準時を,目的物の引渡しの時点としたものである。よって,本記述は正しい。参考一問一答(民法(債権関係)改正)287頁。
平野(新債権法の論点と解釈)349頁。 -
刑法判例の立場に従って検討した場合,甲は,乙が居住する家屋に隣接する乙所有の無人の倉庫に灯油をまいて放火したところ,予想に反して乙居住の家屋に延焼した。この場合,甲には延焼罪(刑法第111条第1項)が成立する。刑法この問題の模試受験生正解率 74.1%結果正解解説刑法111条1項の延焼罪は,自己所有非現住建造物等放火罪(同109条2項)又は自己所有建造物等以外放火罪(同110条2項)を犯したときにのみ成立する。本記述において,甲が放火したのは乙所有の無人の倉庫であり,他人所有の非現住建造物である。したがって,甲には延焼罪は成立せず,他人所有非現住建造物等放火罪が成立する。よって,本記述は誤りである。参考西田(各)331頁。
大塚ほか(基本刑法Ⅱ)387~388頁。
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憲法最高裁判所の判例の趣旨に照らすと,無拠出制の年金給付の実現が国民年金事業の財政及び国の財政事情に左右されるところが大きいこと等に鑑みると,無拠出制の年金を設けるかどうか,その受給権者の範囲,支給要件等をどうするかの決定についての立法府の裁量は,拠出制の年金の場合に比べて更に広範である。憲法この問題の模試受験生正解率 59.0%結果正解解説判例は,大学在学中に障害を負った者が障害基礎年金の支給裁定を申請したが,国民年金に任意加入しておらず被保険者資格がないことを理由に不支給処分を受けたため,当該処分の取消訴訟と国家賠償請求訴訟を提起した事例において,20歳以上の学生に対し無拠出制の年金を支給する旨の規定を設けるなどの措置を講じなかった立法不作為が憲法14条及び25条に違反するという原告の主張に対して,「無拠出制の年金給付の実現は,国民年金事業の財政及び国の財政事情に左右されるところが大きいこと等にかんがみると,立法府は,保険方式を基本とする国民年金制度において補完的に無拠出制の年金を設けるかどうか,その受給権者の範囲,支給要件等をどうするかの決定について,拠出制の年金の場合に比べて更に広範な裁量を有している」とした上で,上記の立法措置を講じなかったことは同条,14条1項に違反しないとしている(最判平19.9.28 学生無年金障害者訴訟 憲法百選Ⅱ〔第7版〕134事件)。よって,本記述は正しい。参考安西ほか(読本)234頁。
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民法判例の趣旨に照らした場合,A及びBが甲土地を共有している場合において,AB間の合意により甲土地をAが単独で使用する旨を定めた場合,Aは,甲土地を単独で使用することができるが,その使用による利益についてBに対し不当利得返還債務を負う。民法この問題の模試受験生正解率 55.6%結果正解解説判例は,「共有者は,共有物につき持分に応じた使用をすることができるにとどまり,他の共有者との協議を経ずに当然に共有物を単独で使用する権原を有するものではない。しかし,共有者間の合意により共有者の一人が共有物を単独で使用する旨を定めた場合には,右合意により単独使用を認められた共有者は,右合意が変更され,又は共有関係が解消されるまでの間は,共有物を単独で使用することができ,右使用による利益について他の共有者に対して不当利得返還義務を負わない」としている(最判平10.2.26 平10重判民法13事件)。よって,本記述は誤りである。参考平野(物権)323~324頁。
松井(物権)198頁。 -
刑法判例の立場に従って検討した場合,法人事業主は,その従業者が法人の業務に関して行った犯罪行為について,両罰規定が定められている場合には,選任監督上の過失がなかったとの証明がなされない限り,刑事責任を免れることができない。刑法この問題の模試受験生正解率 58.1%結果正解解説両罰規定とは,従業者が業務に関して違法行為をした場合に,その従業者と共に事業主をも罰する旨の規定をいう。そして,判例は,「事業主が人である場合の両罰規定については,その代理人,使用人その他の従業者の違反行為に対し,事業主に右行為者らの選任,監督その他違反行為を防止するために必要な注意を尽さなかった過失の存在を推定したものであって,事業主において右に関する注意を尽したことの証明がなされない限り,事業主もまた刑責を免れ得ないとする法意と解するを相当とする」とした上で,「右法意は,……事業主が法人(株式会社)で,行為者が,その代表者でない,従業者である場合にも,当然推及されるべきである」としている(最判昭40.3.26 刑法百選Ⅰ〔第8版〕3事件)。このように,判例は,両罰規定は,選任監督上の過失を推定した規定であり,無過失の証明がなされない限り,事業主は処罰されるとして責任主義との調和を図っている。よって,本記述は正しい。参考西田(総)82~83頁。
大塚ほか(基本刑法Ⅰ)53~54頁。
条解刑法20~21頁。
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設問・解答
解答
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憲法最高裁判所の規則制定権は,司法部内における最高裁判所の統制権と監督権を強化するために,国会が国の唯一の立法機関であるとする憲法第41条の例外として憲法上認められたものであるから,最高裁判所は,下級裁判所に関する規則を定める権限であっても,当該権限を下級裁判所に委任することはできない。憲法この問題の模試受験生正解率 68.9%結果正解解説最高裁判所の規則制定権(憲法77条1項)は,①権力分立の見地から裁判所の自主性を確保し,司法部内における最高裁判所の統制権と監督権を強化すること,さらに,②裁判実務に通じた裁判所の専門的知見を尊重するために認められている。そして,同条3項は,最高裁判所が下級裁判所に関する規則制定権を下級裁判所に委任することを認めている。同項は,②の趣旨からすれば,当然の規定である。よって,本記述は誤りである。参考芦部(憲法)363頁。
佐藤幸(日本国憲法論)661頁。
野中ほか(憲法Ⅱ)252~254頁。
新基本法コメ(憲法)409頁。 -
民法判例の趣旨に照らした場合,AがB所有の甲土地を占有し,取得時効が完成した場合において,その取得時効が完成する前に,Cが甲土地をBから譲り受け,その取得時効の完成後にCが甲土地の所有権移転登記をしたときは,Aは,Cに対し,甲土地の所有権を時効取得したことを対抗することができない。民法この問題の模試受験生正解率 55.6%結果正解解説判例は,不動産の取得時効完成前に,原所有者から当該不動産の所有権を譲り受けた者(以下「譲受人」という。)が,取得時効完成後に所有権移転登記を経由した事例において,取得時効完成当時の当該不動産の所有者は譲受人であり,時効取得者と譲受人は,当該不動産の所有権の得喪のいわば当事者の立場に立つから,時効取得者は,その時効取得を登記なくして譲受人に対抗することができ,このことは,その後譲受人が当該不動産につき所有権移転登記をしたとしても変わりはないとしている(最判昭42.7.21)。したがって,Cは「第三者」に当たらず,AはCに対し,甲土地の所有権を時効取得したことを対抗することができる。よって,本記述は誤りである。参考松井(物権)85頁。
論点体系判例民法(2)77頁。 -
刑法判例の立場に従って検討した場合,甲は,窃盗事件を犯して逃走中のAを,その事実を知りながら自宅にかくまった。甲は,Aが窃盗事件を犯したことは知っていたが,窃盗罪が罰金以上の刑に当たる罪であるとの認識はなかった。この場合,甲には犯人蔵匿罪が成立しない。刑法この問題の模試受験生正解率 88.9%結果正解解説判例は,密入国者をかくまった事例において,犯人蔵匿罪の故意について,密入国者であることを認識すれば足り,密入国罪の刑が罰金以上であることまで認識する必要はないとしている(最決昭29.9.30)。したがって,窃盗罪の刑が罰金以上である限り,その刑が罰金以上であることの認識がなくても,窃盗犯人であると認識してAをかくまった甲には犯人蔵匿罪が成立する。よって,本記述は誤りである。参考山口(各)581頁。
大塚ほか(基本刑法Ⅱ)516~517頁。
条解刑法337頁。
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設問
設問・解答
解答
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憲法憲法前文第3段は,他国との共存の必要性・政治道徳の普遍性を謳い,主権国家として国際協調主義の立場に立つことを定めており,このことは憲法本文で具体化されている。憲法この問題の模試受験生正解率 75.8%結果正解解説憲法前文第3段では,他国との共存の必要性と政治道徳の普遍性を謳い,主権国家として国際協調主義の立場に立つことを定めている。そして,国際協調主義は同98条2項によって具体化されている。よって,本記述は正しい。参考佐藤幸(日本国憲法論)87頁。
新・コンメ憲法25頁。 -
民法判例の趣旨に照らした場合,債権者代位権を行使するためには,保存行為の場合を除き,債権者代位権を行使する時点で被保全債権の弁済期が到来している必要があるが,詐害行為取消権を行使するためには,詐害行為の時点で被保全債権の弁済期が到来している必要はない。民法この問題の模試受験生正解率 45.7%結果正解解説債権者は,保存行為を除き,自己の債権(被保全債権)の期限が到来しない間は,債務者に属する権利を行使することができない(民法423条2項)。すなわち,原則として,債権者代位権を行使する時点で,被保全債権の弁済期が到来している必要がある。一方,判例は,債務者の財産が一般債権者の共同担保であり,詐害行為取消権は債権者が債務者の財産に対して有するその担保の利益が害されるのを防止することを目的とするから,被保全債権の弁済期がいまだ到来していない場合においても,弁済の資力に乏しい債務者がその所有する財産を処分するときは,被保全債権の弁済期が既に到来している場合と同様に債権者に不利益が及ぶことを理由に,詐害行為当時に被保全債権の弁済期が到来していなくても,債権者は,詐害行為取消権を行使することができるとしている(大判大9.12.27)。よって,本記述は正しい。参考内田Ⅲ338頁,364頁。
潮見(プラクティス債総)182~183頁,226頁。
中田(債総)249頁,285~286頁。 -
刑法判例の立場に従って検討した場合,外国人甲は,某外国において日本人Vから財物を窃取した。この場合,甲の行為について刑法(窃盗罪)が適用される。刑法この問題の模試受験生正解率 64.1%結果正解解説日本国外において日本国民を被害者とする一定の重大な罪を犯した者には,その者が日本国民でなくても,刑法が適用される(刑法3条の2)。もっとも,これらの罪には,窃盗罪(同235条)は含まれていない(同3条の2各号参照)。したがって,甲の行為について刑法は適用されない。よって,本記述は誤りである。参考大塚ほか(基本刑法Ⅰ)465頁。
条解刑法8~9頁。
科目名
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解答日・解答結果
設問
設問・解答
解答
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憲法最高裁判所の判例の趣旨に照らすと,憲法第39条前段にいう「実行の時に適法であつた行為」には,行為当時の最高裁判所の判例の示す法解釈に従えば無罪となるべき行為が含まれるから,当該行為をした被告人を処罰することは,同条に違反する。憲法この問題の模試受験生正解率 82.9%結果正解解説判例は,行為当時は最高裁判所の判例上適法とされた行為について,判例変更をして処罰をすることが憲法39条前段に違反するかが争われた事例において,「行為当時の最高裁判所の判例の示す法解釈に従えば無罪となるべき行為を処罰することが憲法39条に違反する旨をいう点は,そのような行為であっても,これを処罰することが憲法の右規定に違反しない」としている(最判平8.11.18 平8重判刑法2事件)。よって,本記述は誤りである。参考長谷部(憲法)275頁。
市川(憲法)207~208頁。
新基本法コメ(憲法)287頁。 -
民法甲土地の所有者Aが隣接するB所有の乙土地を通行する権利(以下「本件通行権」という。)を有している場合に関して,本件通行権が通行地役権に当たる場合,Aは,乙土地に通路を開設することができるが,本件通行権が囲繞地通行権に当たる場合,Aは,乙土地に通路を開設することはできない。
なお,袋地とは,他人の土地に囲まれて公道に通じない土地を,囲繞地とは,袋地を囲んでいる土地をいい,囲繞地通行権とは,公道に至るための他の土地の通行権をいう。民法この問題の模試受験生正解率 64.1%結果正解解説地役権は,承役地を要役地の便益に供する目的で設定されるものであるから,地役権者は,地役権の内容を実現するのに必要な付随行為をすることができる。この付随行為は,地役権の内容によって異なるが,通行地役権の場合,通行に必要な通路を開設することが挙げられる。また,囲繞地通行権者も,必要な場合には通路を開設することができる。したがって,本件通行権が囲繞地通行権に当たる場合,Aは,乙土地に通路を開設することはできないとする点において,本記述は誤っている。よって,本記述は誤りである。参考新版注釈民法(7)338頁,947頁。 -
刑法判例の立場に従って検討した場合,甲は,所持金を全く有していなかったため,当初から運賃を支払うことなくタクシーで目的地へ行こうと考え,乙の運転するタクシーに乗車するやいなや,乙の反抗を抑圧するに足りる程度の暴行を加えた上で,行き先を告げ,乙の意に反してタクシーを目的地まで走行させた後,運賃を支払うことなく逃走した。この場合,甲には強盗利得罪が成立する。刑法この問題の模試受験生正解率 63.7%結果正解解説刑法236条2項の強盗利得罪の客体である「財産上……の利益」とは,同条1項の財物以外の全ての財産上の利益をいい,そこには財産的価値のある役務(輸送サービス等)の提供が含まれる。そして,相手の反抗を抑圧するに足りる程度の暴行・脅迫を加えた結果,相手方が事実上債務の弁済請求ができない状態に陥った場合には,強盗利得罪が成立する(最判昭32.9.13等)。本記述において,甲はタクシーの運転手である乙に対し,反抗を抑圧するに足りる程度の暴行を加えて,目的地まで走行させた後,運賃を支払うことなく逃走している。したがって,甲には強盗利得罪が成立する。よって,本記述は正しい。参考アクチュアル刑法(各)188頁。
条解刑法759~760頁。
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設問
設問・解答
解答
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憲法天皇は,内閣の助言と承認により,国民のために,大赦・特赦・減刑・刑の執行の免除及び復権を決定する。憲法この問題の模試受験生正解率 50.0%結果正解解説天皇は,内閣の助言と承認により,国民のために,「大赦,特赦,減刑,刑の執行の免除及び復権を認証する」(憲法7条6号)。これら恩赦の決定は,内閣の権能である(同73条7号)。よって,本記述は誤りである。参考佐藤幸(日本国憲法論)545頁,566頁。
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民法判例の趣旨に照らした場合,Aが所有する甲土地にBのための第一順位の抵当権が設定され,その後,甲土地上にA所有の乙建物が建てられ,さらに,甲土地にCのための第二順位の抵当権が設定された後,Cの申立てに基づいて抵当権が実行された結果,Dが甲土地の所有者になった場合,甲土地に乙建物のための法定地上権は成立しない。民法この問題の模試受験生正解率 58.5%結果正解解説民法388条前段は,「土地及びその上に存する建物が同一の所有者に属する場合において,その土地又は建物につき抵当権が設定され,その実行により所有者を異にするに至ったときは,その建物について,地上権が設定されたものとみなす。」と規定する(法定地上権)。そこで,同条から,法定地上権の成立要件としては,①抵当権設定時に土地の上に建物が存在すること,②その土地と建物とが同一の所有者に属すること(以下「同一所有者要件」という。),③土地又は建物に抵当権が設定されたこと,及び,④競売の結果,土地と建物とが異なる所有者に属するに至ったことが必要である。
判例は,「土地について一番抵当権が設定された当時土地と地上建物の所有者が異なり,法定地上権成立の要件が充足されていなかった場合には,土地と地上建物を同一人が所有するに至った後に後順位抵当権が設定されたとしても,その後に抵当権が実行され,土地が競落されたことにより一番抵当権が消滅するときには,地上建物のための法定地上権は成立しないものと解するのが相当である」としている(最判平2.1.22 民法百選Ⅰ〔第5版新法対応補正版〕89事件)。したがって,抵当権が実行された結果,第一順位のBの抵当権が消滅している本記述においても,甲土地に乙建物のための法定地上権は成立しない。よって,本記述は正しい。参考道垣内Ⅲ215~216頁。
内田Ⅲ521~522頁。
道垣内Ⅲ224頁。
松井(担物)79~80頁。 -
刑法判例の立場に従って検討した場合,甲は,深夜,市街地にある幅員の狭い道路上に無灯火のまま駐車していた普通乗用自動車の後部トランク内にVを監禁したところ,数分後,たまたま普通乗用自動車で通り掛かった乙が居眠り運転をして同車を甲の自動車の後方に衝突させ,Ⅴは全身打撲の傷害を負い死亡した。この場合,甲の監禁行為とⅤの死亡の結果との間に,因果関係がある。刑法この問題の模試受験生正解率 91.9%結果正解解説判例は,本記述と同様の事例において,「被害者の死亡原因が直接的には追突事故を起こした第三者の甚だしい過失行為にあるとしても,道路上で停車中の普通乗用自動車後部のトランク内に被害者を監禁した本件監禁行為と被害者の死亡との間の因果関係を肯定することができる」としている(最決平18.3.27 刑法百選Ⅰ〔第8版〕11事件)。したがって,甲がVをトランクに監禁した行為とVの死亡の結果との間に,因果関係がある。よって,本記述は正しい。参考山口(総)66頁。
大塚ほか(基本刑法Ⅰ)77頁。
条解刑法100頁。
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解答
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憲法憲法第99条が公務員の憲法尊重擁護義務を規定していることに鑑み,公務員に対して憲法尊重擁護の宣誓を課すことは許されるが,公務員に対して特定の憲法解釈を内容とする宣誓を課すことは,憲法第19条に反し,許されない。憲法この問題の模試受験生正解率 72.4%結果正解解説公務員は,憲法尊重擁護義務を負う(憲法99条)から,公務員に憲法尊重擁護の宣誓を課すこと自体は違憲とはいえない。ただし,公務員に対して特定の憲法解釈を内容とする宣誓や,人の政治的関係や信条を推知し,又は許容される政治的信条を枠付けた上でそれに従った行動を強要するような内容の宣誓をさせることは,同19条に違反すると解されている。よって,本記述は正しい。参考佐藤幸(日本国憲法論)247頁。
野中ほか(憲法Ⅰ)310~311頁。 -
民法判例の趣旨に照らした場合,債権者代位権を行使するためには,債務者が無資力であることが必要でない場合があるが,詐害行為取消権を行使するためには,債務者が無資力であることが必要である。民法この問題の模試受験生正解率 45.7%結果正解解説債権者は,自己の債権を保全するため,債務者に属する権利を行使することができる(民法423条1項本文)。そして,判例は,「債権者は,債務者の資力が当該債権を弁済するについて十分でない場合にかぎり,自己の金銭債権を保全するため,民法423条1項本文の規定により当該債務者に属する権利を行使しうる」としているが(最判昭40.10.12),特定債権の履行が債務者の有する権利を代位行使することによって確保される場合には,当該特定債権の保全のために債権者代位権の行使を認めており(債権者代位権の転用),この場合には無資力要件を不要としている(大判明43.7.6 民法百選Ⅱ〔第7版〕14事件,大判昭4.12.16 民法百選Ⅱ〔第5版新法対応補正版〕12事件等)。一方,債権者は,債務者が債権者を害することを知ってした法律行為の取消しを裁判所に請求することができるところ(同424条1項本文),ここにいう「債権者を害する」とは,債務者の行為によって債務者の資産総額が債権額を弁済するのに不十分(無資力)となることをいうから,債務者が無資力でない場合には,債務者の処分行為は「債権者を害する」ものではなく,詐害行為にはならない。よって,本記述は正しい。
なお,同423条の7は,登記又は登録の請求権を保全するための債権者代位権を認めているが,これは,平成29年民法改正により,判例によって認められた債権者代位権の転用の具体例の一つを明文化したものである。参考内田Ⅲ339~340頁,351~352頁,366頁。
潮見(プラクティス債総)211頁,213頁,230~231頁。
中田(債総)248頁,264~267頁,293頁。 -
刑法判例の立場に従って検討した場合,法律を知らなかったとしても,そのことによって,罪を犯す意思がなかったとすることはできないが,情状により,その刑を減軽し,又は免除することができる。刑法この問題の模試受験生正解率 58.1%結果正解解説刑法38条3項本文は,「法律を知らなかったとしても,そのことによって,罪を犯す意思がなかったとすることはできない」と規定している。したがって,前段は正しい。一方,同項ただし書は,「情状により,その刑を減軽することができる」と規定しており,刑の免除をすることはできない。したがって,後段は誤りである。よって,本記述は誤りである。参考条解刑法143頁。
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憲法最高裁判所の判例の趣旨に照らすと,選挙区割り及び議員定数の配分は,議員総数と関連させながら決定されるのであって,その決定内容は,相互に有機的に関連し,一つの部分における変動は他の部分にも波動的に影響を及ぼすべき性質を有し,その意味において不可分一体をなすので,議員定数配分規定の一部について投票価値の不平等が認められ,違憲と評価される場合,当該議員定数配分規定は,単に憲法に違反する不平等を招来している部分のみでなく,全体として違憲の瑕疵を帯びる。憲法この問題の模試受験生正解率 65.2%結果正解解説判例は,昭和47年12月10日施行の衆議院議員選挙について,投票価値の較差が憲法に違反するかどうかが争われた事例において,「選挙区割及び議員定数の配分は,議員総数と関連させながら,……複雑,微妙な考慮の下で決定されるのであって,一旦このようにして決定されたものは,一定の議員総数の各選挙区への配分として,相互に有機的に関連し,一の部分における変動は他の部分にも波動的に影響を及ぼすべき性質を有するものと認められ,その意味において不可分の一体をなすと考えられるから,……配分規定は,単に憲法に違反する不平等を招来している部分のみでなく,全体として違憲の瑕疵を帯びるものと解すべきである」としている(最大判昭51.4.14 憲法百選Ⅱ〔第7版〕148事件)。よって,本記述は正しい。参考長谷部(憲法)176頁,180頁。
新・コンメ憲法474~475頁。 -
民法判例の趣旨に照らした場合,抵当権の被担保債権の一部を弁済した第三者は,抵当権者の同意を得ることなく単独でその抵当権を行使することができるが,その抵当権が実行された場合には,競売代金の配当については,当該抵当権者が当該第三者に優先する。民法この問題の模試受験生正解率 56.4%結果正解解説債権の一部について代位弁済があったときは,代位者は,債権者の同意を得て,その弁済をした価額に応じて,債権者とともにその権利を行使することができる(民法502条1項)。したがって,抵当権の被担保債権の一部を弁済した第三者は,抵当権者の同意を得ることなく単独でその抵当権を行使することができるわけではない。よって,本記述は誤りである。
なお,代位者が権利行使したことによって得られる金銭については,同条3項は,債権者が行使する権利が,代位者が行使する権利に優先するとしており,この点については,本記述は正しい。参考内田Ⅲ89~90頁。
潮見(プラクティス債総)371~373頁。
中田(債総)431~433頁。
平野(債総)391頁。 -
刑法判例の立場に従って検討した場合,盗品等無償譲受け罪が成立するためには,無償譲受けについて契約を締結しただけでは足りず,盗品等が現実に移転されることが必要であるが,盗品等有償譲受け罪は,有償譲受けについて契約を締結しただけで成立する。刑法この問題の模試受験生正解率 53.4%結果正解解説盗品等無償譲受け罪(刑法256条1項)が成立するためには,無償で盗品等の交付を受け,事実上の処分権を取得することが必要であると解されている。したがって,前段は正しい。また,判例は,盗品等有償譲受け罪(同条2項)が成立するためには,単に契約が成立しただけでは足りず,盗品等の現実の受領が必要であるとしている(大判大12.1.25)。したがって,後段は誤りである。よって,本記述は誤りである。参考山口(各)345頁,347頁。
大塚ほか(基本刑法Ⅱ)346頁。
条解刑法845~846頁。
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憲法最高裁判所の判例の趣旨に照らすと,現行の法制度の下における氏の性質等に鑑みると,婚姻の際に「氏の変更を強制されない自由」が憲法上の権利として保障される人格権の一内容であるとはいえない。憲法この問題の模試受験生正解率 69.7%結果正解解説判例は,夫婦が夫又は妻の氏を称すると定める民法750条が,憲法13条,14条1項,24条に反するかが争われた事例において,「氏は,個人の呼称としての意義があり,名とあいまって社会的に個人を他人から識別し特定する機能を有するものであることからすれば,自らの意思のみによって自由に定めたり,又は改めたりすることを認めることは本来の性質に沿わないもの」であり,また,「氏に,名とは切り離された存在として社会の構成要素である家族の呼称としての意義があることからすれば,氏が,親子関係など一定の身分関係を反映し,婚姻を含めた身分関係の変動に伴って改められることがあり得ることは,その性質上予定されている」とした上で,「現行の法制度の下における氏の性質等に鑑みると,婚姻の際に「氏の変更を強制されない自由」が憲法上の権利として保障される人格権の一内容であるとはいえ」ず,民法750条の規定は,「憲法13条に違反するものではない」としている(最大判平27.12.16 憲法百選Ⅰ〔第7版〕29事件)。よって,本記述は正しい。参考渡辺ほか(憲法Ⅰ)119頁。
安西ほか(読本)99頁。 -
民法判例の趣旨に照らした場合,甲土地を所有するAが,遺言を残さないで死亡し,Bが唯一の相続人として甲土地を相続したが,Aは生前に甲土地をCに譲渡していた場合において,Cは,所有権移転登記をしなければ,Bに対し,甲土地の所有権の取得を対抗することができない。民法この問題の模試受験生正解率 55.6%結果正解解説判例は,民法177条にいう第三者とは,当事者及びその包括承継人以外の者で,登記の欠缺を主張する正当な利益を有する者をいうとしている(大連判明41.12.15 不動産取引百選〔第3版〕46事件)。本記述において,Bは唯一の相続人として,Aの権利義務の一切を承継するのであるから(同896条本文),Aの包括承継人に当たり,同177条にいう第三者に当たらない。したがって,Cは登記がなくても,Bに甲土地の所有権の取得を対抗することができる。よって,本記述は誤りである。参考佐久間(物権)62頁。
松井(物権)101頁。 -
刑法判例の立場に従って検討した場合,外国人(日本の国籍を有しない者をいう。以下同じ。)甲は,某外国において,行使の目的で,通用する日本銀行券を偽造した。この場合,甲の行為について刑法(通貨偽造罪)が適用される。刑法この問題の模試受験生正解率 64.1%結果正解解説日本国外において我が国の国家的・社会的法益を害する一定の重大な罪を犯した者には,その者が日本国民であるか否かを問わず,刑法が適用される(刑法2条)。そして,これらの罪には,通貨偽造罪(同148条1項)が含まれる(同2条4号)。したがって,甲の行為について刑法が適用される。よって,本記述は正しい。参考大塚ほか(基本刑法Ⅰ)464頁。
条解刑法5~6頁。
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憲法最高裁判所の判例の趣旨に照らすと,インターネット上の利用者は相互に情報の発受信に関して対等の地位に立ち言論を応酬し合える点に加え,個人利用者がインターネット上で発信した情報の信頼性は一般的に低いものと受け止められていることからすると,インターネットの個人利用者による表現行為に名誉毀損罪が成立するかどうかを判断するに当たっては,個人が他の表現手段を利用した場合とは異なった特別の配慮を要する。憲法この問題の模試受験生正解率 86.9%結果正解解説判例は,被告人自らが開設したホームページにおいて,同人がある株式会社の名誉を毀損する内容の文章を掲載したなどとして起訴された事例において,「個人利用者がインターネット上に掲載したものであるからといって,おしなべて,閲覧者において信頼性の低い情報として受け取るとは限らないのであって,相当の理由の存否を判断するに際し,これを一律に,個人が他の表現手段を利用した場合と区別して考えるべき根拠はない。そして,インターネット上に載せた情報は,不特定多数のインターネット利用者が瞬時に閲覧可能であり,これによる名誉毀損の被害は時として深刻なものとなり得ること,一度損なわれた名誉の回復は容易ではなく,インターネット上での反論によって十分にその回復が図られる保証があるわけでもないことなどを考慮すると,インターネットの個人利用者による表現行為の場合においても,他の場合と同様に,行為者が摘示した事実を真実であると誤信したことについて,確実な資料,根拠に照らして相当の理由があると認められるときに限り,名誉毀損罪は成立しないものと解するのが相当であって,より緩やかな要件で同罪の成立を否定すべきものとは解されない」とし,インターネットの個人利用者による表現行為について特別な配慮をしない姿勢を示している(最決平22.3.15 平22重判憲法8事件)。よって,本記述は誤りである。参考芦部(憲法)194~195頁。
渡辺ほか(憲法Ⅰ)257~258頁。 -
民法判例の趣旨に照らした場合,契約により,承役地の所有者が,自己の費用で地役権者の地役権行使のために承役地に工作物を設ける義務を負担した場合であっても,承役地の所有者は,いつでも,地役権に必要な土地の部分の所有権を放棄して地役権者に移転することで,当該義務を免れることができる。民法この問題の模試受験生正解率 56.0%結果正解解説契約によって承役地の所有者が負担した地役権行使のために工作物を設ける義務は,いつでも,地役権に必要な土地の部分の所有権を放棄して地役権者に移転することで,免れることができる(民法287条,286条)。これは,本来義務は放棄することができないが,地役権行使のために工作物を設ける義務は,いわば土地の所有者が負担するものであるから,土地の所有権を放棄して地役権者に移転することで,その義務を免れると考えられるためである。よって,本記述は正しい。参考佐久間(物権)250頁。
松井(物権)238頁。
我妻・有泉コメ515頁。 -
刑法判例の立場に従って検討した場合,甲は,窃盗の目的で,深夜,乙宅に侵入しようと乙宅玄関のガラスを割ったところで乙に発見されたため,逮捕を免れる目的で,同人に対し,反抗を抑圧するに足りる程度の暴行を加え,その反抗を抑圧し,逃走した。甲には事後強盗未遂罪が成立する。刑法この問題の模試受験生正解率 63.7%結果正解解説事後強盗罪(刑法238条)の「窃盗」とは,窃盗罪(同235条)の実行に着手した者をいう。住居侵入窃盗の場合,住居に侵入しただけでは窃盗罪の実行の着手は認められないと解されており,判例も,窃盗の目的で人の家屋に侵入し,財物を物色した時に窃盗罪の実行の着手が認められるとしている(最判昭23.4.17)。本記述において,甲は,乙宅への侵入すら遂げていないから,窃盗罪の実行の着手は認められず,事後強盗罪の「窃盗」には当たらない。したがって,甲には事後強盗未遂罪(同243条,238条)は成立しない。よって,本記述は誤りである。参考西田(各)162頁,195頁。
条解刑法746頁,767頁。
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憲法合憲限定解釈には,立法者の意思を超えて法文の意味を書き換えてしまう可能性があり,立法権の簒奪につながりかねないという問題や,当該解釈が不明確であると,犯罪構成要件の保障的機能を失わせ,憲法第31条違反の疑いを生じさせるという問題があるとされる。憲法この問題の模試受験生正解率 72.2%結果正解解説合憲限定解釈とは,違憲性が争われている法文について,広い意味で解釈すれば違憲となり,狭い意味で解釈すれば合憲となる場合に,狭い意味の解釈を採用することにより違憲判断を回避する手法をいう。合憲限定解釈には,無理な解釈によって合憲限定解釈をした場合,かかる合憲限定解釈によって立法者の意思に反して事実上法文の意味を書き換えてしまう可能性があり,裁判所が司法の権限を逸脱して立法権を簒奪してしまう可能性がある,また,法文について不明確な合憲限定解釈をしてしまうと,犯罪構成要件の保障的機能を失わせてしまい,憲法31条違反の疑いを生じさせるという問題点があるとされる。後者について,判例も,公務員が争議行為のあおり行為を行ったため逮捕・起訴された事例において,「不明確な限定解釈は,かえって犯罪構成要件の保障的機能を失わせることとなり,その明確性を要請する憲法31条に違反する疑いすら存する」としている(最大判昭48.4.25 全農林警職法事件 憲法百選Ⅱ〔第7版〕141事件)。よって,本記述は正しい。参考芦部(憲法)394頁。
佐藤幸(日本国憲法論)702~705頁。
野中ほか(憲法Ⅱ)315頁。
渡辺ほか(憲法Ⅱ)367~370頁。 -
民法判例の趣旨に照らした場合,AのBに対する甲債権を担保する目的で,BがCに対して有する乙債権の代理受領をAに委任し,Cが,Aに対しその担保の事実を知りつつ代理受領権限を承認したにもかかわらず,Bに対して弁済したため,AがCからの弁済を受領することにより甲債権の満足を得る利益を失った場合,Aは,Cに対し,不法行為に基づく損害賠償請求をすることができる。民法この問題の模試受験生正解率 59.8%結果正解解説本記述のように,甲債権を担保する目的で,債務者Bが債権者Aに対し,乙債権の弁済をBに代わって受領する権限を与えてこれを委任し,CがAに対し,それを承認することを「代理受領」という。本記述において,代理受領の承認がされれば,Aは,CのBに対する債務の弁済を受領する権限を取得するが,CがBに弁済してしまった場合におけるAの救済について,判例は,代理受領の「承認」は,単に代理受領を承認するというにとどまらず,代理受領によって甲債権の満足を得るというAの利益を承認し,正当の理由がなくその利益を侵害しないという趣旨をも当然包含するから,Cとしては,承認の趣旨に反し,Aの利益を害することのないようにすべき義務があるとした上で,Cが承認の際担保の事実を知っていたなどの事情がある場合には,Aは,Cに対し不法行為に基づく損害賠償請求をすることができるとしている(最判昭44.3.4 民法百選Ⅰ〔第5版新法対応補正版〕100事件)。よって,本記述は正しい。
なお,Cの承認によって,ABC間の三面契約が成立したと構成することができる場合には,Aは,Cに対し,不法行為責任以外に債務不履行責任を追及することもできると解されている。参考内田Ⅲ662~663頁。
道垣内Ⅲ350頁。
松井(担物)232頁。 -
刑法判例の立場に従って検討した場合,甲は,Aから金銭を喝取しようと考え,Aの店の前で連日怒声を上げるなどして客足を遠のかせてAの業務を妨害し,金銭を支払わなければ引き続き妨害行為を続ける旨の態度を示しAを畏怖させ,金銭を交付させた。この場合,甲には,威力業務妨害罪と恐喝罪が成立し,これらは牽連犯となる。
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憲法最高裁判所の判例の趣旨に照らすと,職業の許可制が,自由な職業活動が社会公共に対してもたらす弊害を防止するための消極的, 警察的措置である場合には,許可制に比べて職業の自由に対するより緩やかな制限である職業活動の内容及び態様に対する規制によってはその目的を十分に達成することができないと認められれば,当該措置を導入したことの合憲性が肯定される。憲法この問題の模試受験生正解率 34.6%結果正解解説最大判昭50.4.30(薬事法距離制限違憲判決 憲法百選I 〔第7版〕92事件)は,職業の自由に対する規制の合憲性判断枠組みにつき,「一般に許可制は,単なる職業活動の内容及び態様に対する規制を超えて,狭義における職業の選択の自由そのものに制約を課するもので,職業の自由に対する強力な制限であるから,その合憲性を肯定しうるためには,原則として,重要な公共の利益のために必要かつ合理的な措置であることを要し,また,それが社会政策ないしは経済政策上の積極的な目的のための措置ではなく,自由な職業活動が社会公共に対してもたらす弊害を防止するための消極的,警察的措置である場合には,許可制に比べて職業の自由に対するよりゆるやかな制限である職業活動の内容及び態様に対する規制によっては右の目的を十分に達成することができないと認められることを要するもの, というべきである」としている。同判決は,職業の自由に対する規制の合憲性は,重要な公共の利益のために必要かつ合理的な措置であるかという判断に加えて,許可制が消極目的から導入される場合には,許可制に比べて職業の自由に対するより緩やかな制限である職業活動の内容及び態様に対する規制によってはその目的を十分に達成することができないと認められることを要するとしている。よって,本記述は誤りである。
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民法判例の趣旨に照らした場合,Aに代理権を与えたBは,Aが自己の利益を図る目的で,Cとの間でその代理権の範囲内の行為をした場合において,CがAの目的を過失なく知らなかったときは,その行為についての責任を負う。民法この問題の模試受験生正解率 87.8%結果正解解説代理人が自己又は第三者の利益を図る目的で代理権の範囲内の行為をした場合,その行為は,原則として本人にその効力を生ずるが,相手方がその目的を知り,又は知ることができたときは,その行為は,無権代理行為とみなされる(民法107条)。したがって,CがAの目的を過失なく知らない本記述においては,Bは,原則どおりAがした行為についての責任を負う。よって,本記述は正しい。参考佐久間(総則)250~251頁。
リーガルクエスト(総則)204~205頁。 -
刑法判例の立場に従って検討した場合,強盗致傷罪において必要とされる反抗を抑圧するに足りる程度の暴行からは多少の傷害が生じるのが通常であって,軽微な傷害は強盗の手段としての暴行に評価し尽くされているから,強盗致傷罪における傷害は,傷害罪における傷害よりも重大なものでなければならない。
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憲法日本国憲法の改正手続に関する法律は,公職選挙法が18歳未満の者の選挙運動を禁止しているのとは異なり,18歳未満の者の国民投票運動(憲法改正案に対し賛成又は反対の投票をし又はしないように勧誘する行為)を禁止していない。憲法この問題の模試受験生正解率 64.5%結果正解解説日本国憲法の改正手続に関する法律は,憲法改正案に対する国民投票運動(憲法改正案に対し賛成又は反対の投票をし又はしないように勧誘する行為同100条の2)について規定するが,選挙運動と比較すると規制が緩和されている。例えば,選挙では,18歳未満の者の選挙運動は禁止されているが(公職選挙法137条の2第1項),国民投票運動には年齢制限はない。その理由としては,選挙と比べて不当な利益誘導のなされる危険が少ないといった説明がなされている。したがって,日本国憲法の改正手続に関する法律は,18歳未満の者の国民投票運動を禁止していない。よって,本記述は正しい。参考芦部(憲法)407~408頁。
渡辺ほか(憲法I)429頁。
渡辺ほか(憲法Ⅱ)158頁。
リーガルクエスト(憲法I)36頁。 -
民法A男(17歳)とB女(18歳)との間に子Cが生まれた場合,Aは,成年に達すれば,Cを養子とする普通養子縁組をすることができる。民法この問題の模試受験生正解率 61.0%結果正解解説普通養子縁組の養親となることができる者の年齢は,20歳である(民法792条)。したがって,Aは,成年(18歳)に達しただけではCの養親となることはできない。よって,本記述は誤りである。
なお,平成30年民法改正前においては,普通養子縁組の養親となることができる者の年齢について,「成年に達した者」とされていたが,同改正により成年年齢が18歳に引き下げられたことから,養親年齢については,「20歳に達した者」と改められた。成年年齢を引き下げても,養親となる者については,一定の成熟度が求められるという観点から,同改正前の年齢が維持されたものである。参考窪田(家族法)246~247頁。
リーガルクエスト(親族・相続)151頁。
新基本法コメ(親族)164頁。 -
刑法判例の立場に従って検討した場合,甲は,自宅の前の道路を通勤のため毎日通行しているA女に一方的に好意を抱き,Aを自宅の一室に連れ込んで閉じ込めようと考え,甲の自宅前の道路上においてAを待ち伏せた上,歩いてきたAを自宅に連れ込むため,Aの顔面を手拳で殴打し顔面に傷害を負わせたが,Aが逃げたため,自宅に連れ込むことはできなかった。この場合,甲には,監禁致傷罪は成立しない。刑法この問題の模試受験生正解率 75.6%結果正解解説監禁致死傷罪(刑法221条)は,監禁罪を犯し,よって人を死傷させた場合に成立する結果的加重犯であるから,監禁致死傷罪が成立するためには,基本犯としての監禁罪が成立すること,及び監禁行為と人の死傷との間に因果関係が存在することが必要である。本記述においては,Aは,甲宅に連れ込まれる前に逃げているため,甲には基本犯としての監禁罪が成立しない。したがって,甲に監禁致傷罪は成立しない。よって,本記述は正しい。参考西田(各)84頁。
大塚ほか(基本刑法Ⅱ)57頁。
条解刑法667頁。
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解答
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憲法最高裁判所の判例の趣旨に照らすと,国が,難民条約の批准等及びこれに伴う国会審議を契機として,外国人に対する生活保護について一定範囲で国際法及び国内公法上の義務を負うことを認めたことからすると,一定の範囲の外国人は,生活保護法に基づく保護の対象となり得る。憲法この問題の模試受験生正解率 76.5%結果正解解説判例は,永住外国人が,市に対して生活保護法に基づく生活保護の申請をしたところ,当該申請を違法に却下する処分を受けたとして,その取消し等を求めた事例において,「旧生活保護法は,その適用の対象につき「国民」であるか否かを区別していなかったのに対し,現行の生活保護法は,1条及び2条において,その適用の対象につき「国民」と定めたものであり,このように同法の適用の対象につき定めた上記各条にいう「国民」とは日本国民を意味するものであって,外国人はこれに含まれ」ず,「現行の生活保護法が制定された後,現在に至るまでの間,同法の適用を受ける者の範囲を一定の範囲の外国人に拡大するような法改正は行われておらず,同法上の保護に関する規定を一定の範囲の外国人に準用する旨の法令も存在しない」ため,「生活保護法を始めとする現行法令上,生活保護法が一定の範囲の外国人に適用され又は準用されると解すべき根拠は見当たらない」,また,行政庁の通達等に基づく「行政措置として一定範囲の外国人に対して生活保護が事実上実施されてきたとしても,そのことによって,生活保護法1条及び2条の規定の改正等の立法措置を経ることなく,生活保護法が一定の範囲の外国人に適用され又は準用されるものとなると解する余地はなく」,これは,我が国が難民の地位に関する条約等に加入した際の経緯を勘案しても変わらないとし,結論として,「外国人は,行政庁の通達等に基づく行政措置により事実上の保護の対象となり得るにとどまり,生活保護法に基づく保護の対象となるものではなく,同法に基づく受給権を有しない」としている(裁判平26.7.18 平26重判憲法11事件)。よって,本記述は誤りである。
なお,同判決の原審(福岡高判平23.11.25 平23重判国際法3事件)は,「国は,難民条約の批准等及びこれに伴う国会審議を契機として,外国人に対する生活保護について一定範囲で国際法及び国内公法上の義務を負うことを認めたものということができる。すなわち,行政府と立法府が,当時の出入国管理令との関係上支障が生じないとの認定の下で,一定範囲の外国人に対し,日本国民に準じた生活保護法上の待遇を与えることを是認したものということができるのであって,換言すれば一定範囲の外国人において上記待遇を受ける地位が法的に保護されることになったものである」から,生活保護法の文言にかかわらず,一定範囲の外国人も生活保護法の準用による法的保護の対象になるとしている。参考佐藤幸(日本国憲法論)167頁。
リーガルクエスト(憲法Ⅱ)30頁。
新井ほか(憲法Ⅱ)24頁。 -
民法AB夫婦が離婚し,その1か月後にBがCを出産した場合に判例の趣旨に照らすと,Cが嫡出の推定が及ばない子であると認められるときは,Cは,血縁上の父に対して認知の請求をすることができる。民法この問題の模試受験生正解率 44.4%結果正解解説嫡出でない子について,法律上の父子関係を成立させるには,認知による必要がある。認知には,父の側からその子について父子関係があることを認める任意認知(民法779条)と,父が任意に認知しない場合に,子の側が訴えによって認知を求め,判決により父子関係を成立させる強制認知(同787条)がある。そして,婚姻の解消若しくは取消しの日から300日以内に生まれた子は,夫の子と推定されるが(同772条),判例は,形式的に同条の嫡出推定を受ける子であっても,子の懐胎時に夫が不在であったり,事実上の離婚状態があったなど妻と夫の間に同棲や実質的な夫婦生活が存在せず,外観上夫による懐胎でないことが明らかな場合には,同条の推定が及ばないとしている(推定の及ばない子 最判昭44.5.29 家族法百選〔第5版〕30事件,最判平10.8.31など)。したがって,推定の及ばない子Cは,真実の父に対して認知請求をすることができる。よって,本記述は正しい。参考窪田(家族法)176~177頁,193~197頁。
リーガルクエスト(親族・相続)125~126頁,134頁。
新・コンメ民法(家族法)91頁,101頁。 -
刑法判例の立場に従って検討した場合,甲は,実父乙がその友人である丙から借り受け,自室で管理していた丙所有の腕時計を,乙の所有物であると誤信し,それを自分のものにしようと思い,乙の部屋から持ち出した。この場合,甲には,窃盗罪は成立しない。刑法この問題の模試受験生正解率 66.9%結果正解解説刑法244条1項は,配偶者,直系血族又は同居の親族との間で窃盗罪等を犯した者について,刑の免除を認める規定である。判例は,同「244条1項は,親族間の一定の財産犯罪については,国家が刑罰権の行使を差し控え,親族間の自律にゆだねる方が望ましいという政策的な考慮に基づき,その犯人の処罰につき特例を設けたにすぎず,その犯罪の成立を否定したものではない」として(最決平20.2.18 刑法百選Ⅱ〔第8版〕35事件),同項を政策的な理由に基づいて,人的処罰阻却事由を定めた規定であると解している。同項の親族関係の錯誤については,同項について人的処罰阻却事由を定めた規定と解する以上,犯罪事実に関する錯誤とはいえず,故意あるいは犯罪の成否に影響を及ぼさない。したがって,本記述では,甲には,窃盗罪(同235条)が成立する。よって,本記述は誤りである。参考井田(総)183~184頁。
条解刑法778~779頁。
大コメ(刑法・第3版)(12)572~574頁。
大コメ(刑法・第3版)(13)700頁。
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解答
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憲法立法権が議会に,司法権が裁判所に分化帰属して,残ったものが行政権になったという歴史的経緯に適合することなどを理由として,行政権とは,全ての国家作用のうちから立法権と司法権を除いた残余の権力であるとする見解に対しては,弾劾裁判所の設置権も裁判所規則制定権も行政権になってしまいかねないとの批判が妥当する。憲法この問題の模試受験生正解率 32.9%結果正解解説憲法65条は,「行政権は,内閣に属する。」と規定し,行政権は内閣の権限であるとする。そして,本記述の見解は,行政権とは,全ての国家作用のうちから立法権と司法権を除いた残余の権力であるとする(控除説)。控除説を前提にすると,立法権・司法権以外の国家作用は,全て行政権ということになる。そこで,控除説に対しては,国会の権限である弾劾裁判所の設置権(同64条1項),また,最高裁判所の権限である裁判所規則制定権(同77条1項)も行政権ということになりかねないとの批判が妥当する。よって,本記述は正しい。参考芦部(憲法)333~334頁。
佐藤幸(日本国憲法論)523~525頁。
野中ほか(憲法Ⅱ)196~197頁。
安西ほか(憲法学読本)300頁。
渡辺ほか(憲法Ⅱ)282~283頁。 -
民法売買の目的物として買主に引き渡された物が品質に関して契約の内容に適合しない場合において,買主が代金減額請求権を行使したときは,買主は,その後,その不適合を理由とする履行の追完に代わる損害の賠償を請求することはできない。民法この問題の模試受験生正解率 58.5%結果正解解説民法564条は,同562条及び同563条の規定は,同415条の規定による損害賠償の請求並びに同541条及び同542条の規定による解除権の行使を妨げないとしている。同564条は,同562条が買主の追完請求権を規定し,同563条が代金減額請求権を規定していることは,同415条所定の損害賠償請求権の行使及び同541条,542条の解除権の行使を妨げないことを定めたものであり,両立しない請求を認めるものではない。例えば,本記述のように,代金減額請求権が行使されると,契約の内容に適合しなかった部分について,代金債務の減額と引換えに,引渡債務の内容も現実に引き渡された目的物の価値に応じて圧縮され,契約の内容に適合した物が引き渡されたとみなされることになるので,さらに,当該不適合を理由とする履行の追完に代わる損害賠償請求を認めることはできない。よって,本記述は正しい。参考潮見(新契約各論I)150頁。
中田(契約)310~312頁。
一問一答(民法(債権関係)改正)279頁。
新基本法コメ(債権2)130~131頁。 -
刑法判例の立場に従って検討した場合,責任能力の有無・程度について,専門家たる精神医学者の意見が鑑定等として証拠として提出され,裁判所がその証拠を採用する場合には,裁判所は,その意見に従い認定しなければならない。刑法この問題の模試受験生正解率 87.2%結果正解解説判例は,責任能力の判断は専ら裁判所に委ねられるべき法律的判断であることを前提としつつ,「生物学的要素である精神障害の有無及び程度並びにこれが心理学的要素に与えた影響の有無及び程度については,その診断が臨床精神医学の本分であることにかんがみれば,専門家たる精神医学者の意見が鑑定等として証拠となっている場合には,鑑定人の公正さや能力に疑いが生じたり,鑑定の前提条件に問題があったりするなど,これを採用し得ない合理的な事情が認められるのでない限り,その意見を十分に尊重して認定すべきものというべきである」としている(最判平20.4.25 平20重判刑法4事件)。したがって,裁判所は上記のような証拠を採用した場合でも,専門家である鑑定人の意見に従い認定しなければならないわけではない。よって,本記述は誤りである。参考西田(総)301~302頁。
大塚ほか(基本刑法Ⅰ)224頁。
条解刑法168頁。
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憲法最高裁判所の判例の趣旨に照らすと,放送事業者又は放送事業者が制作に協力を依頼した関係業者から素材収集のための取材を受けた取材対象者が,取材担当者の言動等によって,当該取材で得られた素材が一定の内容,方法により放送に使用されるものと期待し,あるいは信頼したとしても,その期待や信頼は原則として法的保護の対象とはならない。憲法この問題の模試受験生正解率 59.6%結果正解解説判例は,テレビ局の番組について,番組制作会社等が当初説明した内容とは異なる趣旨で番組を制作・放送して,期待や信頼を侵害したなどとして,取材対象者が損害賠償を求めた事例において,「放送事業者がどのように番組の編集をするかは,放送事業者の自律的判断にゆだねられており,番組の編集段階における検討により最終的な放送の内容が当初企画されたものとは異なるものになったり,企画された番組自体放送に至らない可能性があることも当然のことと認識されているものと考えられることからすれば,放送事業者又は制作業者(注:放送事業者が制作に協力を依頼した関係業者)から素材収集のための取材を受けた取材対象者が,取材担当者の言動等によって,当該取材で得られた素材が一定の内容,方法により放送に使用されるものと期待し,あるいは信頼したとしても,その期待や信頼は原則として法的保護の対象とはならない」としている(最判平20.6.12 メディア百選〔第2版〕98事件)。よって,本記述は正しい。参考辻村(憲法)212頁。
アルマ(憲法1)182~183頁。 -
民法判例の趣旨に照らした場合,Aがその所有する甲建物をBに賃貸し,BがAの承諾を得てCに甲建物を転貸した場合において,AB間の賃貸借契約がBの債務不履行を理由とする解除により終了したときは,特段の事情のない限り,AB間の賃貸借契約が終了した時点で,BC間の転貸借契約におけるBのCに対する債務は履行不能となる。民法この問題の模試受験生正解率 59.6%結果正解解説賃借物の全部が滅失その他の事由により使用及び収益をすることができなくなった場合は,賃貸借は,これによって終了する(民法616条の2)。そして,適法に転貸借がなされた場合において,原賃貸借契約が債務不履行を理由に終了したときは,転借人は原賃貸人に対して転借権を対抗することはできないから,転貸借契約は消滅することになるが,その終了時期がいつなのかについて争いがある。平成29年民法改正前の事例であるが,判例は,「賃貸借契約が転貸人の債務不履行を理由とする解除により終了した場合,賃貸人の承諾のある転貸借は,原則として,賃貸人が転借人に対して目的物の返還を請求した時に,転貸人の転借人に対する債務の履行不能により終了する」としている(最判平9.2.25 民法百選Ⅱ〔第8版〕64事件)。その理由として,同判決は,「賃貸人が転借人に直接目的物の返還を請求するに至った以上,転貸人が賃貸人との間で再び賃貸借契約を締結するなどして,転借人が賃貸人に転借権を対抗し得る状態を回復することは,もはや期待し得ないものというほかはなく,転貸人の転借人に対する債務は,社会通念及び取引観念に照らして履行不能というべき」ことを挙げている。同判決は,同改正後においても妥当すると解されている。したがって,本記述において,AがCに甲建物の返還を請求した時に,BC間の転貸借契約におけるBのCに対する債務は履行不能となる。よって,本記述は誤りである。参考潮見(新契約各論I)478~482頁。
中田(契約)429頁。
論点体系判例民法(6)110頁。
新債権法の論点と解釈482頁。
新基本法コメ(債権2)221頁。
新・コンメ民法(財産法)1046~1047頁。 -
刑法判例の立場に従って検討した場合,複数名が殴り合いのけんかをしている場所でその暴行をはやし立てた者には,けんかの当事者に傷害の結果が生じなかった場合,現場助勢罪は成立しない。刑法この問題の模試受験生正解率 77.2%結果正解解説現場助勢罪(刑法206条)は,傷害罪,傷害致死罪(同205条)が行われるに当たり,はやし立てたり,無責任な声援を送ったりするなど,現場において勢いを助ける行為を処罰の対象としている。現場助勢罪は,傷害又は傷害致死の犯罪が行われていることを要するから,暴行の段階で助勢したがこれらの結果が生じなかった場合には,現場助勢罪は成立しない。よって,本記述は正しい。参考西田(各)47頁。
大塚ほか(基本刑法Ⅱ)221頁。
条解刑法621頁。
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憲法憲法上,地方政治では,執行権の担い手である長と,議決機関である議会が,それぞれ直接に住民に対し責任を負う体制が採られているため,法律上,議会が長の不信任決議をしたり,長が議会の解散権を持つといった制度は設けられていない。憲法この問題の模試受験生正解率 70.7%結果正解解説憲法93条は,地方公共団体の機関として,公選の長と議会を規定する。それを受けて,地方自治法は,普通地方公共団体の長と地方公共団体の議会の議員との兼職禁止を定める(同141条2項)等,執行権の担い手としての長と,議決機関である議会が,それぞれ直接に住民に対して責任を負う二元的代表制が採られている。もっとも,議院内閣制的仕組みとして,同法は,議会の特別多数決による長に対する不信任決議と,長による議会の解散権について規定している(同178条1項)。よって,本記述は誤りである。参考野中ほか(憲法Ⅱ)372~373頁。
渡辺ほか(憲法Ⅱ)425頁。
リーガルクエスト(憲法I)375頁。 -
民法判例の趣旨に照らした場合,A法人がBに対する金銭債権をCに譲渡し,その債権の譲渡につき債権譲渡登記ファイルに譲渡の登記がなされた場合,その登記の存在のみをもって,Cは,Bに対して自己が債権者であることを主張することができる。民法この問題の模試受験生正解率 54.9%結果正解解説法人が金銭債権を譲渡した場合において,当該債権の譲渡につき債権譲渡登記ファイルに譲渡の登記がされたときは,当該債権の譲受人において民法467条の第三者対抗要件が具備されたものとみなされる(動産及び債権の譲渡の対抗要件に関する民法の特例等に関する法律(以下「特例法」という。)4条1項前段)。すなわち,債権譲渡登記ファイルへの譲渡の登記は,あくまで第三者対抗要件にすぎない。そして,同項における登記(以下「債権譲渡登記」という。)がされた場合において,当該債権の譲渡及びその譲渡につき債権譲渡登記がされたことについて,譲渡人若しくは譲受人が当該債権の債務者に登記事項証明書を交付して通知をし,又は当該債務者が承諾をしたときは,債務者対抗要件が具備されたものとみなされる(同条2項)。したがって,本記述において,CがBに対して自己が債権者であることを主張するためには,債権譲渡登記に加え,債権譲渡及び債権譲渡登記がされたことについて,A若しくはCがBに登記事項証明書を交付して通知をするか,又はBがそのことを承諾する必要がある。よって,本記述は誤りである。参考内田Ⅲ261~262頁。
潮見(プラクティス債総)531~532頁。
中田(債総)681頁。 -
刑法判例の立場に従って検討した場合,甲は,現行犯逮捕され,最寄りの警察署に連行された後,取調べを受けていたが,トイレ休憩の際に,隙を見てトイレの窓から中庭に出て,警察署の敷地外へ逃走しようとしたが,それを果たすことなく警察官に拘束された。この場合,甲には,逃走罪の未遂犯が成立する。刑法この問題の模試受験生正解率 33.8%結果正解解説逃走罪(刑法97条)の主体は,「裁判の執行により拘禁された既決又は未決の者」である。「裁判の執行により拘禁された」という文言は,逮捕された者を除く趣旨を明確にするために入れられたものである。裁判の執行により拘禁された未決の者とは,勾留状によって,刑事施設(刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律3条)又は留置施設(同14条)に拘禁されている被告人又は被疑者をいい,逮捕された者は含まれない(札幌高判昭28.7. 9)。本記述では,甲は現行犯逮捕された者であり,刑法97条の主体にはならない。したがって,甲には,逃走罪の未遂犯(同97条,102条)は成立しない。よって,本記述は誤りである。
なお,同罪が既遂に達するのは,同罪の主体が,刑事施設等の外に脱出するなどして,看守者の実力的支配を脱した時である。参考山口(各)565頁。
大塚ほか(基本刑法Ⅱ)540~541頁。
条解刑法323~324頁。
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憲法最高裁判所の判例の趣旨に照らすと,宗教法人の解散命令が確定したときはその清算手続が行われる結果,宗教法人に帰属する財産で礼拝施設その他の宗教上の行為の用に供していたものも処分されるため,解散命令は,これらを用いて行っていた信者の宗教上の行為を禁止したり制限したりする法的効果を伴うものといえる。憲法この問題の模試受験生正解率 57.8%結果正解解説判例は,宗教法人に対する解散命令が,信者の信教の自由を不当に制約し許されないのではないかが争われた事例において,「解散命令によって宗教法人が解散しても,信者は,法人格を有しない宗教団体を存続させ,あるいは,これを新たに結成することが妨げられるわけではなく,また,宗教上の行為を行い,その用に供する施設や物品を新たに調えることが妨げられるわけでもない。すなわち,解散命令は,信者の宗教上の行為を禁止したり制限したりする法的効果を一切伴わないのである。もっとも,宗教法人の解散命令が確定したときはその清算手続が行われ・・・・・・,その結果,宗教法人に帰属する財産で礼拝施設その他の宗教上の行為の用に供していたものも処分されることになるから・・・・・・,これらの財産を用いて信者らが行っていた宗教上の行為を継続するのに何らかの支障を生ずることがあり得る」としている(最決平8.1.30 憲法百選I〔第7版〕39事件)。同決定によれば,解散命令は,信者の宗教上の行為を禁止したり制限したりする法的効果を一切伴わない。よって,本記述は誤りである。
なお,同決定は,「宗教法人に関する法的規制が,信者の宗教上の行為を法的に制約する効果を伴わないとしても,これに何らかの支障を生じさせることがあるとするならば,憲法の保障する精神的自由の一つとしての信教の自由の重要性に思いを致し,憲法がそのような規制を許容するものであるかどうかを慎重に吟味しなければならない」としている。参考芦部(憲法)164頁。
渡辺ほか(憲法I)176頁。 -
民法判例の趣旨に照らした場合,注文者が破産手続開始の決定を受けたときは,請負人は,仕事の完成前であれば,請負契約を解除することができる。民法この問題の模試受験生正解率 86.4%結果正解解説注文者が破産手続開始の決定を受けたときは,請負人又は破産管財人は,契約の解除をすることができる(民法642条1項本文)。このうち,請負人の解除権の行使については,仕事の完成前に限って認められる(同項ただし書)。仕事の完成前に限って請負人の解除権が認められた趣旨は,注文者が破産手続開始決定を受けた場合,請負人が仕事の完成までに投人する労力に応じた報酬を確保できない危険性があることによるところ,注文者が破産手続開始決定を受けた時点で仕事が完成している場合には,請負人がそれ以上の損害を被る危険性がないことによる。よって,本記述は正しい。参考潮見(基本講義・債各I)254頁。
中田(契約)523~524頁。
新・コンメ民法(財産法)1088~1089頁。 -
刑法判例の立場に従って検討した場合,甲は,製薬会社に勤務し経理部に所属していたが,同社の研究開発部が開発中の薬剤に係る情報を他の製薬会社に売り渡そうと考え,研究開発部に所属し,同薬剤の開発に携わっていた乙のパソコンに保存されていた当該情報を甲が所有するUSBメモリに転送し,当該USBメモリを金銭と引換えに丙社に引き渡した。この場合,甲には,窃盗罪が成立する。刑法この問題の模試受験生正解率 67.7%結果正解解説窃盗罪の客体は,「他人の財物」である。情報は,財物ではないので,情報自体を盗んでも窃盗罪とはならない。裁判例も,情報それ自体を財物とは解しておらず,情報が化体した媒体につき財物性を肯定している(東京地判昭59.6.28 刑法百選Ⅱ〔第8版〕33事件)。本記述では,甲は,自己の所有するUSBメモリに開発中の薬剤に係る情報を転送したにすぎない。したがって,当該USBメモリを引き渡しても,甲には,窃盗罪は成立しない。よって,本記述は誤りである。参考高橋(各)218~219頁。
大塚ほか(基本刑法Ⅱ)122頁。
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憲法最高裁判所の判例の趣旨に照らすと,嫡出でない子の相続分を嫡出子の相続分の2分の1とした民法の法定相続分規定は,遺言によっても侵害し得ない遺留分の計算において明確な法律上の差別というべきであるとともに,当該規定の存在自体がその出生時から嫡出でない子に対する差別意識を生じさせかねないことをも考慮すれば,当該規定が補充的に機能する規定であることは,その合理性判断において重要性を有しない。憲法この問題の模試受験生正解率 16.1%結果正解解説判例は,民法900条(平成25年法律第94号による改正前のもの)は法定相続分について規定し,同条4号は被相続人に子が数人あるときは各自の相続分を相等しいものとした上で,同号ただし書で非嫡出子の相続分を嫡出子の相続分の2分の1と定めていた(以下「本件規定」という。)ところ,これが憲法14条1項に反するかどうかが争われた事例において,最大決平7.7.5(憲法百選I〔第5版〕31事件)においては,「本件規定を含む法定相続分の定めが遺言による相続分の指定等がない場合などにおいて補充的に機能する規定であることをも考慮事情としている。しかし,本件規定の補充性からすれば,嫡出子と嫡出でない子の法定相続分を平等とすることも何ら不合理ではないといえる上,遺言によっても侵害し得ない遺留分については本件規定は明確な法律上の差別というべきであるとともに,本件規定の存在自体がその出生時から嫡出でない子に対する差別意識を生じさせかねないことをも考慮すれば,本件規定が上記のように補充的に機能する規定であることは,その合理性判断において重要性を有しない」としている(最大決平25.9.4 憲法百選I〔第7版〕27事件)。よって,本記述は正しい。参考芦部(憲法)140~142頁。
渡辺ほか(憲法I)150~151頁。 -
民法A男(17歳)とB女(18歳)との間に子Cが生まれた場合,AがCを認知していない場合,Cに対する親権は,Bが行使する。民法この問題の模試受験生正解率 61.0%結果正解解説嫡出でない子に対する親権は,その子を認知した父と母の協議で,父を親権者と定めたときを除き(民法819条4項),母が行う。したがって,本記述において,Cに対する親権は,母であるBが行う。よって,本記述は正しい。
なお,親権を行う者は,その親権に服する子に代わって親権を行うこととされているが(同833条),本問において,Cの親権者であるBは18歳であり,成年に達しているから(同4条),同833条の適用はない。参考窪田(家族法)305頁。
リーガルクエスト(親族・相続)172頁。 -
刑法判例の立場に従って検討した場合,妊娠中の甲は,医者である乙に嘱託し,堕胎を行わせた。この場合,甲には,業務上堕胎罪の教唆犯が成立する。
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設問
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解答
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憲法特別会は,衆議院の解散又は衆議院議員の任期満了による総選挙後に召集される国会であり,その目的は,内閣総理大臣の指名であるから,内閣総理大臣の指名が終われば,直ちに会期は終了する。憲法この問題の模試受験生正解率 58.1%結果正解解説特別会とは,衆議院の解散後,総選挙が行われた後に召集される国会をいう。衆議院議員の任期満了による総選挙後に召集される国会は,特別会ではなく,臨時会である。また,特別会の主たる目的は,内閣総理大臣の指名(憲法67条1項前段)であるが,その審議事項について,特に制約はない。そのため,会期中であれば,内閣総理大臣の指名以外の事項について審議することは可能であって,内閣総理大臣の指名がされたからといって,直ちに特別会の会期が終了するわけではない。よって,本記述は誤りである。参考野中ほか(憲法Ⅱ)116頁。
渡辺ほか(憲法Ⅱ)253頁。
注釈日本国憲法(3)662頁。 -
民法多数当事者の債権及び債務に関して,数人の債権者がいる場合に,可分な債権の目的を当事者の意思表示によって不可分とすることができる。民法この問題の模試受験生正解率 38.7%結果正解解説不可分債権とは,一個の不可分な給付について多数の債権者がいる場合に,同一の不可分給付を目的とする債権が債権者の数だけ生じる債権関係をいう。平成29年民法改正前は,債権の目的が性質上不可分であるもののほか,意思表示により不可分とされるものも,不可分債権に含まれていた。しかし,連帯債権との区別が不明瞭であり,また,同改正によりあえて性質上可分な場合を不可分債権とする実益がなくなったため,意思表示による不可分債権は廃止し,同改正前の意思表示による不可分債権に相当するものは,連帯債権として扱うこととされた(民法428条・432条参照)。よって,本記述は誤りである。参考内田Ⅲ473頁,475頁。
潮見(プラクティス債総)596頁。
中田(債総)515~516頁。 -
刑法判例の立場に従って検討した場合,甲と乙は,裁判所に提出する目的で,市立病院の医師丙を教唆して内容虚偽の診断書を作成させる共謀をし,乙は,丙にこれを依頼したが,丙に断られたため,甲と相談することなく,当初と同一の目的で,医師でない丁を教唆して市立病院医師丙名義の診断書を作成させた。この場合,甲には,有印公文書偽造教唆罪の共同正犯が成立する。刑法この問題の模試受験生正解率 52.5%結果正解解説判例は,保釈の請求に使用するため,刑務所医師をして虚偽内容の診断書を作成せしめることを共謀した者のうちの一人が,他の共犯者に謀ることなく同一の目的のため他人をして刑務所医師名義の診断書を作成せしめたという事例において,本件の故意の内容は虚偽公文書作成罪(刑法156条)の教唆であり,結果は公文書偽造罪(同155条)の教唆であるところ,「この両者は犯罪の構成要件を異にするもその罪質を同じくするものであり且法定刑も同じである。而して右両者の動機目的は全く同一である」から,他の共謀者について,「法律上本件公文書偽造教唆につき故意を阻却しない」として有印公文書偽造教唆罪の共同正犯(同条1項,61条1項,60条)の成立を認めている(最判昭23.10.23 刑法百選I〔初版〕53事件)。したがって,本記述において,甲には,有印公文書偽造教唆罪の共同正犯が成立する。よって,本記述は正しい。参考大谷(講義総)465~466頁。
井田(総)556~557頁。
大塚ほか(基本刑法I)347頁。
条解刑法160頁。
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憲法法律で,「町村は,条例で,議会を置かず,選挙権を有する住民の総会を設けることができる。」と定めることは,違憲ではないと解されているが,これまでにこのような町村総会が設置された例はない。憲法この問題の模試受験生正解率 70.7%結果正解解説直接選挙で選ばれる議員によって構成される議決機関としての議会の設置は,憲法93条の要求するところである。そして, 地方自治法も「普通地方公共団体に議会を置く。」と規定する(同89条)。この規定にかかわらず,町村は,条例で,議会を置かず,選挙権を有する者の総会を設けることができる(同94条)。そして,このような町村総会も憲法上の「議会」に当たると解されている。地方自治法下において,町村総会を設置した例としては,東京都八丈支庁管内宇津木村がある。よって,本記述は誤りである。参考野中ほか(憲法Ⅱ)373頁。
渡辺ほか(憲法Ⅱ)426頁。
リーガルクエスト(憲法I)374頁。 -
民法Aが所有する甲土地とBが所有する乙土地が隣接している場合,判例の趣旨に照らすと,乙土地上に生えている樹木の枝が,境界線を越えて甲土地上に伸びてきたときは,Aは,Bの承諾なくその枝を切り取ることができる。民法この問題の模試受験生正解率 73.7%結果正解解説隣地の竹木の枝が境界線を越えるときは,その竹木の所有者に,その枝を切除させることができる(民法233条1項)。したがって,本記述において,Aは,Bの承諾なく自ら乙土地上の樹木の枝を切り取ることはできない。よって,本記述は誤りである。参考松井(物権)175頁。
新注釈民法(5)445頁。 -
刑法判例の立場に従って検討した場合,違法な業務も,業務妨害罪の客体になり得る。刑法この問題の模試受験生正解率 66.5%結果正解解説業務妨害罪における「業務」は,職業その他の社会生活上の地位に基づいて継続して従事する事務のことをいう(大判大10.10.24)。同罪は,事実上平穏に行われている人の社会的活動の自由を保護しようとするものであるから,その業務の適法性については,刑法的な保護に値するものであれば足り,違法なものでも同罪の業務に含まれると解されている(東京高判昭27.7.3,東京高判昭24.10.15等参照)。判例も,行政代執行の手続をとるべきであったが,相手方や目的物の特定等の点で困難があるので,そのような手続を踏まずに東京都の職員が路上生活者の段ボール小屋を撤去した事例において,「やむを得ない事情に基づくものであって,業務妨害罪としての要保護性を失わせるような法的瑕疵があったとは認められない」としている(最決平14.9.30 刑法百選Ⅱ〔第8版〕24事件)。よって,本記述は正しい。参考西田(各)138頁。
大塚ほか(基本刑法Ⅱ)110~111頁。
条解刑法715~716頁。
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憲法最高裁判所の判例の趣旨に照らすと,信仰上の理由から剣道実技の履修を拒否した高等専門学校の生徒に対して学校長が行った原級留置処分や退学処分が,当該生徒がそれら各処分による不利益を避けるために剣道実技の履修という自己の信仰上の教義に反する行動を採ることを余儀なくされるという性質を有する場合には,当該生徒の信教の自由を直接的に制約するものであるから,学校長はそれらの処分をするに当たり,当然そのことに相応の考慮を払う必要がある。憲法この問題の模試受験生正解率 57.8%結果正解解説判例は,公立の高等専門学校での剣道実技の履修を信仰上の理由から拒否したため,学校長(注:上告人)から原級留置処分及び退学処分を受けた生徒(注:被上告人)が,当該処分は信教の自由を侵害するものとしてその取消しを求めた事例において,「被上告人は,信仰上の理由による剣道実技の履修拒否の結果として,他の科目では成績優秀であったにもかかわらず,原級留置,退学という事態に追い込まれたものというべきであり,その不利益が極めて大きいことも明らかである。また,本件各処分(注:原級留置処分及び退学処分)は,その内容それ自体において被上告人に信仰上の教義に反する行動を命じたものではなく,その意味では,被上告人の信教の自由を直接的に制約するものとはいえないが,しかし,被上告人がそれらによる重大な不利益を避けるためには剣道実技の履修という自己の信仰上の教義に反する行動を採ることを余儀なくさせられるという性質を有するものであったことは明白である」ところ,「上告人の採った措置が,信仰の自由や宗教的行為に対する制約を特に目的とするものではなく,教育内容の設定及びその履修に関する評価方法についての一般的な定めに従ったものであるとしても,本件各処分が右のとおりの性質を有するものであった以上,上告人は,・・・・・・当然そのことに相応の考慮を払う必要があった」としている(最判平8.3.8 憲法百選I〔第7版〕41事件)。同判決によれば,信仰上の理由から剣道実技の履修を拒否した高等専門学校の生徒に対して学校長が行った原級留置処分及び退学処分は,生徒の信教の自由を直接的に制約するものではない。よって,本記述は誤りである。参考芦部(憲法)163~164頁。
渡辺ほか(憲法I)180~181頁。 -
民法判例の趣旨に照らした場合,Aは,Bとの間で,真実その所有する動産を売却する意思がないのに,Bにその動産を売却し,その代金をBがCに支払う旨の契約を締結したが,BがAの真意を知っていた場合,受益の意思表示をしたCがAの真意につき善意無過失であっても,Bは,Cに対して売買契約の無効を主張することができる。民法この問題の模試受験生正解率 31.3%結果正解解説諾約者は,第三者のためにする契約に基づく「抗弁」をもって,受益者に対抗することができる(民法539条)。この「抗弁」には,同時履行の抗弁権のほか,契約の無効,取消し,解除の効果を主張することも含まれる。また,無効又は取消しを主張する場合,第三者のためにする契約における受益者は善意の第三者(同93条2項,94条2項,95条4項,96条3項)として保護されることはない。本記述の場合,Aの売却の意思表示は,心裡留保(同93条1項本文)に当たるが,BがAの真意を知っているためAB間の売買契約は無効となる(同項ただし書)。そして,この場合,意思表示をした者の真意を知らない第三者は同条2項により保護されるが,受益者であるCについては,同項の適用はない。そのため,Bは,AB間の売買契約の無効をCに対して主張することができる。よって,本記述は正しい。参考新基本法コメ(債権2)41頁。
論点体系判例民法(6)92頁。 -
刑法判例の立場に従って検討した場合,甲は,乙の同意を得て,差押えを受けている乙所有の自動車に放火してこれを燃やしたが, 公共の危険が生じなかった。この場合,甲には,建造物等以外放火罪は成立しない。刑法この問題の模試受験生正解率 80.9%結果正解解説他人が所有する自動車を放火する場合は,刑法110条1項の成立が問題となるところ,その者の同意がある場合には,財産権侵害がなく,自己所有物との均衡を考えて,同条2項が適用される。しかし,その物が差押えを受けている場合には,同115条より同110条1項の成立が再び問題となる。もっとも,建造物等以外放火罪(同条)は,他人所有・自己所有いずれの場合も,「よって公共の危険を生じさせた」場合にのみ処罰される。本記述では,公共の危険が生じなかった以上,同罪は成立しない。よって,本記述は正しい。参考西田(各)329~330頁。
大塚ほか(基本刑法Ⅱ)371~372頁。
条解刑法367~369頁。
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憲法天皇の国事行為は,憲法によって限定列挙されているから,法律によって,新たに国事行為を創設することはできない。憲法この問題の模試受験生正解率 74.5%結果正解解説天皇の国事行為は,憲法6条,7条が列挙するもの「のみ」(同4条1項)に限定される。したがって,法律によって新たに国事行為を創設することはできない。よって,本記述は正しい。
なお,国事行為の具体的内容は,同6条,7条に列挙されているが,同4条2項の国事行為の委任も国事行為の一つに数えられることがある。参考野中ほか(憲法I)123頁。
渡辺ほか(憲法Ⅱ)90~91頁。
新井ほか(憲法I)66頁。 -
民法判例の趣旨に照らした場合,.Aに代理権を与えたBは,AがCとの間でしたその代理権の範囲内の行為が,Aの詐欺を理由としてCにより取り消された場合であっても,Aの詐欺について善意無過失であるときは,Cに対し,その行為の効果が自己に帰属することを主張することができる。民法この問題の模試受験生正解率 87.8%結果正解解説判例は,代理人の詐欺によって相手方が意思表示をした場合,民法101条1項の適用を認めている(大判明39.3.31,大判昭7.3.5)。すなわち,代理人の詐欺は本人の詐欺と同視され,相手方は,本人が代理人の詐欺を知っているか否かにかかわらず,本人に対して詐欺による意思表示の取消しを対抗することができる。したがって,本記述において,Bは,代理人であるAの詐欺について善意無過失であっても,Cに対し,その行為の効果が自己に帰属することを主張することはできない。よって,本記述は誤りである。
なお,学説は,代理人は,本人が契約締結のために用いた者であり,同96条2項の「第三者」に含まれないとして同項の適用を排除することで,同条1項の原則どおり詐欺による取消しを可能として,判例と同じ結論を導いている。参考平野(総則)293~294頁。
リーガルクエスト(総則)196~197頁。 -
刑法判例の立場に従って検討した場合,甲は,Aが所有する絵画を手に入れたいと思い,乙に対し,Aから絵画を盗んでくれは高値で買ってやると申し向け,乙がAから盗んできた絵画を買い受けた。甲には,窃盗教唆罪及び盗品等有償譲受け罪が成立し,これらは牽連犯となる。刑法この問題の模試受験生正解率 72.1%結果正解解説判例は,盗品等有償譲受け罪(刑法256条2項)と窃盗教唆罪(同61条1項,235条)とは,各別個独立の犯罪であるから,同一人が盗品を買い受ける目的をもって他人に対して窃盗を教唆し,その窃取してきた物を有償で譲り受けたときでも,窃盗教唆罪とは別に盗品等有償譲受け罪が成立するとしている(大判大5.6.15)。そして,この両罪の関係について,判例は,牽連犯(同54条1項後段)が成立するためには,「ある犯罪と他の犯罪との間に通常手段又は結果の関係があることが必要であって,被告人が主観的にある犯罪を他の犯罪の手段として行ったということだけでは足りない」とした上で,窃盗教唆と盗品有償譲受けとの間には通常手段又は結果の関係はないのであるから,被告人が盗品有償譲受けの手段として窃盗教唆を行ったものであっても,牽連犯に当たるものではなく,両者は併合罪の関係に立つとしている(最判昭25.11.10)。したがって,本記述において,甲には,窃盗教唆罪及び盗品等有償譲受け罪が成立し,これらは併合罪となる。よって,本記述は誤りである。参考西田(各)298頁。
大塚ほか(基本刑法Ⅱ)348頁。
大コメ(刑法・第3版)(13)751~752頁。
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憲法憲法第13条後段の保障する幸福追求権は,それ自体一つの権利としての性格を持つ個別的基本権を包括する基本権であるが,個別の権利条項が妥当しない場合に限り,補充的に同条後段が適用される。憲法この問題の模試受験生正解率 69.3%結果正解解説憲法13条後段は,幸福追求権について規定しており,かかる権利は,具体的権利性を有すると考えられている。そして,他の人権規定と同条後段との関係については,幸福追求権が個人の尊重にとって必要な権利を包括的に保障したものであることから,個別の権利条項と幸福追求権の保障とは,特別法と一般法の関係に立ち,前者の保障の及ばない範囲を同条後段がカバーするものとされている。よって,本記述は正しい。参考野中ほか(憲法I)271頁。
渋谷(憲法)179頁。
新・コンメ(憲法)151頁。 -
民法売買の目的物として買主に引き渡された物が品質に関して契約の内容に適合しない場合において,その不適合が売主の責めに帰することができない事由によるものであれば,買主は,売主に対して,代金の減額を請求することはできない。民法この問題の模試受験生正解率 58.5%結果正解解説売買の目的物の種類,品質,数量に関する契約不適合における代金減額請求権(民法563条)の要件として,契約不適合が売主の責めに帰すべき事由によるものであることは要求されない。したがって,同条の要件を備える限り,売主の帰責事由の有無にかかわらず,代金減額請求をすることができる。よって,本記述は誤りである。参考潮見(新契約各論I)146頁。
新基本法コメ(債権2)126頁。
新・コンメ民法(財産法)963頁。 -
刑法判例の立場に従って検討した場合,甲は,乙が運転する自動車との接触事故により,全治3日間の軽傷を負ったが,乙から多額の賠償金を得ようと考え,行使の目的で,真正な市立病院丙医師作成名義の診断書から切り取った丙医師の署名及び押なつ部分を,甲が当該事故により全治1か月の傷害を負った旨の虚偽の事実を記入した診断書と題する書面の下方に接続させた上で,複写機を使用してこれをコピーし,あたかも真正な丙医師作成の診断書の写しであるかのような外観を呈する文書を作成した。この場合,甲には,有印公文書偽造罪が成立する。刑法この問題の模試受験生正解率 45.0%結果正解解説判例は,真正な供託金受領証から切り取った供託官の記名印及び公印押なつ部分を,虚偽の供託事実を記入した供託所用紙の下方に接続させてこれを電子複写機で複写する方法により作成された写真コピーの文書性が争われた事例において,「公文書偽造罪の客体となる文書は,これを原本たる公文書そのものに限る根拠はなく,たとえ原本の写であっても,原本と同一の意識内容を保有し,証明文書としてこれと同様の社会的機能と信用性を有するものと認められる限り,これに含まれる」とした上で,写真コピーは,原本と同様の機能と信用性を有し得ない場合を除き,公文書偽造罪の客体たり得るとしている(最判昭51.4.30 刑法百選Ⅱ〔第8版〕88事件)。また,同判決は,「原本の作成名義を不正に使用し,原本と異なる意識内容を作出して写真コピーを作成するがごときことは,もとより原本作成名義人の許容するところではなく,また,そもそも公文書の原本のない場合に,公務所または公務員作成名義を一定の意識内容とともに写真コピーの上に現出させ,あたかもその作成名義人が作成した公文書の原本の写真コピーであるかのような文書を作成することについては,右写真コピーに作成名義人と表示された者の許諾のあり得ないことは当然であって,行使の目的をもってするこのような写真コピーの作成は,その意味において,公務所または公務員の作成名義を冒用して,本来公務所または公務員の作るべき公文書を偽造したものにあたる」とし,さらに,写真コピーが有印であるか無印であるかについて,「作成名義人の印章,署名の有無についても,写真コピーの上に印章,署名が複写されている以上,これを写真コピーの保有する意識内容の場合と別異に解する理由はないから,原本作成名義人の印章,署名のある文書として公文書偽造罪の客体たりうるものと認めるのが相当である」としている。したがって,本記述では,甲には,有印公文書偽造罪が成立する。よって,本記述は正しい。参考西田(各)378頁。
大塚ほか(基本刑法Ⅱ)412~413頁。
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憲法最高裁判所の判例の趣旨に照らすと,議員の当選の効力を定める手続において,選挙権のない者がした投票について,その投票が何人に対して行われたのかを取り調べることは,投票の秘密を侵害するものとはいえず,認められる。憲法この問題の模試受験生正解率 42.2%結果正解解説判例は,議員の当選の効力を決定する手続において,選挙権のない者の投票及び正当な選挙人でない者が選挙人の名で行ったいわゆる代理投票が何人に対して行われたのかを調べることが秘密選挙との関係で許されるかが争われた事例において,「選挙権のない者又はいわゆる代理投票をした者の投票についても,その投票が何人に対しなされたかは,議員の当選の効力を定める手続において,取り調べてはならない」としている(最判昭25.11.9 憲法百選Ⅱ〔第7版〕159事件)。よって,本記述は誤りである。
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民法判例の趣旨に照らした場合,AがBに300万円を貸すが,Aの気が向いたらBに請求し,請求を受けるとBは返済しなければならないという契約は無効である。民法この問題の模試受験生正解率 74.7%結果正解解説停止条件付法律行為は,その条件が単に債務者の意思のみに係るときは,無効とされる(民法134条)。同条は,債権者の意思のみに係る条件には適用はない。本記述の契約は,条件が債権者たるAの意思のみに係るので,同条の適用はなく,有効である。よって,本記述は誤りである。
なお,解除条件付法律行為においては,条件が債権者の意思のみに係る場合はもちろん,債務者の意思のみに係る場合も,当該法律行為は有効であると解されている。参考四宮・能見(総則)401~402頁。
リーガルクエスト(総則)267頁。 -
刑法判例の立場に従って検討した場合,わいせつの目的をもって未成年者を誘拐した場合,未成年者誘拐罪は成立せず,わいせつ目的誘拐罪のみが成立する。刑法この問題の模試受験生正解率 56.7%結果正解解説判例は,刑法225条所定の目的をもって未成年者を誘拐したときは,同条の罪のみが成立するとしている(大判明44.12.8)。よって,本記述は正しい。参考山口(各)94頁。
条解刑法208頁,680頁。
大コメ(刑法・第3版)⑾539頁。
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憲法最高裁判所の判例の趣旨に照らすと,喫煙の自由が憲法第13条の保障する基本的人権の一つに含まれるとしても,未決拘禁者は,刑事施設という営造物を利用する関係において,特別の法律上の原因に基づく,一般の統治関係とは異なる特別権力関係に属し,国家は未決拘禁者を包括的に支配することができるため,未決拘禁者について喫煙の自由を一般に認めないのはやむを得ない措置というべきである。憲法この問題の模試受験生正解率 55.5%結果正解解説判例は,刑事施設の被収容者の喫煙を禁止した旧監獄法施行規則の合憲性が争われた事例において,「未決勾留は,刑事訴訟法に基づき,逃走または罪証隠滅の防止を目的として,被疑者または被告人の居住を監獄内に限定するものであるところ,監獄内においては,多数の被拘禁者を収容し,これを集団として管理するにあたり,その秩序を維持し,正常な状態を保持するよう配慮する必要がある。このためには,被拘禁者の身体の自由を拘束するだけでなく,右の目的に照らし,必要な限度において,被拘禁者のその他の自由に対し,合理的制限を加えることもやむをえないところである」とした上で,未決拘禁者の喫煙の自由を認めることは,通謀とそれに伴う罪証隠滅のおそれ及び火災発生による被拘禁者の逃走のおそれを生じさせること,煙草が嗜好品にすぎず,喫煙の禁止が人体に直接障害を与えるものではないことからすれば,喫煙の自由は憲法13条の保障する基本的人権の一に含まれるとしても,あらゆる時,所において保障されなければならないものではないこと等を総合考察すると,「喫煙禁止という程度の自由の制限は,必要かつ合理的なものであると解するのが相当であり,(旧)監獄法施行規則96条中未決勾留により拘禁された者に対し喫煙を禁止する規定が憲法13条に違反するものといえない」としている(最大判昭45.9.16 憲法百選Ⅰ〔第7版〕A4事件)。したがって,同判決は,在監関係には特別権力関係が成立し,特別権力関係の下では,国家が未決拘禁者を包括的に支配することができるため,未決拘禁者の喫煙を禁止することも許されると判断しているわけではない。よって,本記述は誤りである。
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民法債務者の交替による更改は,債権者と更改後に債務者となる者との契約によってすることができるが,更改前の債務者が承諾をしなければその効力を生じない。民法この問題の模試受験生正解率 35.0%結果正解解説債務者の交替による更改は,債権者と更改後に債務者となる者との契約によってすることができ,この場合において,更改は,債権者が更改前の債務者に対してその契約をした旨を通知した時に,その効力を生ずる(民法514条1項)。したがって,債権者と更改後に債務者となる者は,更改前の債務者の意思に反しても,債務者の交替による更改をすることができるのであって,その承諾は要しない。よって,本記述は誤りである。参考内田Ⅲ119~120頁。
潮見(新債権総論Ⅱ)334~335頁。
中田(債総)493頁。 -
刑法判例の立場に従って検討した場合,秘密漏示罪の「秘密」にいわゆる公知の事実は含まれない。刑法この問題の模試受験生正解率 90.3%結果正解解説秘密漏示罪(刑法134条)における「秘密」は,少数者にしか知られていない事実で,他人に知られることが本人の不利益となるものである。いわゆる公知の事実は秘密たり得ない。よって,本記述は正しい。参考西田(各)119頁。
大塚ほか(基本刑法Ⅱ)97頁。
条解刑法417頁。
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憲法判例によれば,憲法第81条の規定は,最高裁判所が違憲審査権を有する終審裁判所であることを明らかにした規定であって,下級裁判所が違憲審査権を有することを否定する趣旨ではなく,下級裁判所も違憲審査権を行使し得る。憲法この問題の模試受験生正解率 91.4%結果正解解説判例は,「憲法は国の最高法規であってその条規に反する法律命令等はその効力を有せず,裁判官は憲法及び法律に拘束せられ,また憲法を尊重し擁護する義務を負うことは憲法の明定するところである」から,「裁判官が,具体的訴訟事件に法令を適用して裁判するに当り,その法令が憲法に適合するか否かを判断することは,憲法によって裁判官に課せられた職務と職権であって,このことは最高裁判所の裁判官であると下級裁判所の裁判官であることを問わない。憲法81条は,最高裁判所が違憲審査権を有する終審裁判所であることを明らかにした規定であって,下級裁判所が違憲審査権を有することを否定する趣旨をもっているものではない」としている(最大判昭25.2.1 憲法百選Ⅱ〔第4版〕200事件)。よって,本記述は正しい。参考芦部(憲法)396頁。
佐藤幸(日本国憲法論)675頁。
野中ほか(憲法Ⅱ)277頁。 -
民法判例の趣旨に照らした場合,Aの所有する甲土地にAのBに対する債務を担保するために抵当権が設定され,その旨の登記がされていたが,Cの申請によりその登記が不法に抹消された場合であっても,抵当権の対抗力は失われない。民法この問題の模試受験生正解率 50.0%結果正解解説判例は,有効になされた抵当権設定登記が第三者の申請によって不法に抹消された事例において,「登記は物権の対抗力発生の要件であって,この対抗力は法律上消滅事由の発生しないかぎり消滅するものではないと解すべきである」から,「抵当権設定登記が抵当権者不知の間に不法に抹消された場合には,抵当権者は対抗力を喪失するものでない」としている(最判昭36.6.16)。よって,本記述は正しい。参考佐久間(物権)122頁。
リーガルクエスト(物権)85頁。
論点体系判例民法(2)60~61頁。 -
刑法判例の立場に従って検討した場合,甲は,客を集めて有料でわいせつな映画を観覧させて利益を得る目的で,自宅付近の人通りの多い路上で,通行人に声を掛け,これに応じた5名の客に対し,外部との交通を厳重に遮断した自宅の一室においてわいせつな映画を観覧させて利益を得た。この場合,甲には,わいせつ物公然陳列罪は成立しない。刑法この問題の模試受験生正解率 54.7%結果正解解説わいせつ物公然陳列罪(刑法175条1項前段)の「公然と」とは,不特定又は多数の者が認識することができる状態をいう。判例は,わいせつな映画を上映した部屋が,外部との交通が遮断されていて,観客も5名程度に限られていても,その5名が不特定多数人を勧誘して集められた者であれば,結果としてわいせつな映画を不特定の者に観覧可能な状態にしたといえるとした原審の判断を是認している(最決昭33.9.5)。したがって,甲には,わいせつ物公然陳列罪が成立する。よって,本記述は誤りである。参考山口(各)512頁。
大塚ほか(基本刑法Ⅱ)455頁。
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憲法判例によれば,憲法第32条は,国民が憲法又は法律によって定められた裁判所以外の機関によって裁判をされることはないことを保障するのみならず,訴訟法で定める管轄権を有する具体的裁判所において裁判を受ける権利についても保障するものである。憲法この問題の模試受験生正解率 50.5%結果正解解説判例は,管轄違いの裁判所によって言い渡された判決が原審によって是認されたため,被告人等が憲法32条の保障する正当な裁判所で裁判を受ける権利を侵害されたと主張した事例において,「憲法第32条は,何人も裁判所において裁判を受ける権利を奪はれないと規定しているが,同条の趣旨は凡て国民は憲法又は法律に定められた裁判所においてのみ裁判を受ける権利を有し,裁判所以外の機関によって裁判をされることはないことを保障したものであって,訴訟法で定める管轄権を有する具体的裁判所において裁判を受ける権利を保障したものではない」としている(最大判昭24.3.23 憲法百選Ⅱ〔第4版〕131事件)。よって,本記述は誤りである。参考野中ほか(憲法Ⅰ)550頁。
新基本法コメ(憲法)262頁。 -
民法判例の趣旨に照らした場合,法人は,受遺者となることができる。民法この問題の模試受験生正解率 84.2%結果正解解説夫婦,親子,兄弟姉妹といった身分を前提とする相続については,法人に認めることはできないが,法人が遺贈を受けることは可能であると解されている。よって,本記述は正しい。参考平野(総則)79頁。
新注釈民法(1)729頁。 -
刑法判例の立場に従って検討した場合,甲は,自己が所有する不動産について,Aを権利者とする抵当権を設定したが,その抵当権設定登記が完了する前に,同不動産について,Bを権利者とする抵当権を設定し,その抵当権設定登記を完了した。この場合,甲には,横領罪が成立する。刑法この問題の模試受験生正解率 35.2%結果正解解説横領罪(刑法252条1項)は,「自己の占有する他人の物」を客体として,それを「横領した」場合に成立する。本記述において,甲は,当該不動産の所有者であって,他人の物の占有者ではないから,同罪が成立することはない。したがって,甲には,横領罪は成立しない。よって,本記述は誤りである。
なお,判例は,本記述と同様の事例において,本来2番抵当権者となるべき者に1番抵当権を設定してその登記をした行為は,本来1番抵当権者となるべき者に対する背任罪(同247条)を構成するとしている(最判昭31.12.7 刑法百選Ⅱ〔第8版〕70事件)。参考西田(各)219頁,256頁。
大塚ほか(基本刑法Ⅱ)280頁,324頁。
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憲法判例によれば,公職選挙における立候補の自由は,憲法第15条第1項の保障する重要な基本的人権の一つであるから,労働組合が,公職選挙における統一候補を決定し,組合を挙げて,その選挙運動を推進している場合であっても,組合の方針に反して立候補をしようとしている組合員に対し,立候補を思いとどまるよう,勧告又は説得することは許されない。憲法この問題の模試受験生正解率 58.1%結果正解解説判例は,労働組合が市議会議員選挙に向けて統一候補を決定したところ,その決定に反して当該選挙に立候補した組合員を,当該労働組合の執行部役員が統制違反者として権利停止処分にしたことなどが公職選挙法違反に当たるとして起訴された事例において,「憲法28条による労働者の団結権保障の効果として,労働組合は,その目的を達成するために必要であり,かつ,合理的な範囲内において,その組合員に対する統制権を有」するが,この「労働組合が行使し得べき組合員に対する統制権には,当然,一定の限界が存するものといわなければならない。殊に,公職選挙における立候補の自由は,憲法15条1項の趣旨に照らし,基本的人権の一つとして,憲法の保障する重要な権利であるから,これに対する制約は,特に慎重でなければならず,組合の団結を維持するための統制権の行使に基づく制約であっても,その必要性と立候補の自由の重要性とを比較衡量して,その許否を決すべきであ」るとした上で,「統一候補以外の組合員で立候補しようとする者に対し,組合が所期の目的を達成するために,立候補を思いとどまるよう,勧告または説得をすることは,組合としても,当然なし得るところである。しかし,当該組合員に対し,勧告または説得の域を超え,立候補を取りやめることを要求し,これに従わないことを理由に当該組合員を統制違反者として処分するがごときは,組合の統制権の限界を超えるものとして,違法といわなければならない」としている(最大判昭43.12.4 三井美唄労組事件 憲法百選Ⅱ〔第7版〕144事件)。したがって,労働組合は,組合の方針に反して立候補をしようとしている組合員に対し,立候補を思いとどまるよう,勧告又は説得することは許される。よって,本記述は誤りである。
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民法判例の趣旨に照らした場合,下請会社の労働者が,元請会社の作業現場で事故に遭った場合,元請会社と下請会社の労働者との間には直接の契約関係がない以上,元請会社が当該事故について,債務不履行責任を負うことはない。民法この問題の模試受験生正解率 60.8%結果正解解説元請会社の労働者が,事故に遭った場合,元請会社が安全配慮義務違反による債務不履行責任を負う。これに対して,下請会社の労働者が,元請会社の作業現場で事故に遭った場合には,元請会社と下請会社の労働者との間には契約関係がないため,契約の効果として給付義務たる安全配慮義務が導かれるのであれば,債務不履行責任は認められないことになる。しかし,判例は,下請企業に雇用された社外工として元請企業の経営する造船所において勤務してきた者に対する元請企業の安全配慮義務の有無が争われた事例において,下請企業の労働者が元請企業の造船所で労務の提供をするに当たっては,元請企業の管理する設備,工具等を用い,事実上元請企業の指揮,監督を受けて稼働し,その作業内容も元請企業の従業員であるいわゆる本工とほとんど同じであったというのであり,このような事実関係の下においては,元請企業は,「下請企業の労働者との間に特別な社会的接触の関係に入ったもので,信義則上,右労働者に対し安全配慮義務を負う」としている(最判平3.4.11 民法百選Ⅱ〔第4版〕4事件)。したがって,元請会社と下請会社の労働者との間には直接の契約関係がない場合であっても,元請会社が事故について,債務不履行責任を負うことがある。よって,本記述は誤りである。参考内田Ⅲ152頁。
中田(債総)138~139頁。
平野(債総)105頁。 -
刑法判例の立場に従って検討した場合,甲は,Vを眠らせてVの財布から現金を抜き取るつもりで,コーヒ-の入ったコップに一時的に意識喪失を生じさせるのに十分な量の睡眠薬を入れて,Vに飲むようすすめたが,Vは,これを飲まなかった。この場合,甲には昏酔強盗罪の実行の着手が認められる。刑法この問題の模試受験生正解率 64.6%結果正解解説昏酔強盗罪(刑法239条)における「昏酔させる」とは,一時的又は継続的に相手方に意識喪失その他意識又は運動機能の障害を生じさせて,財物に対する有効な支配を及ぼし得ない状態に陥らせることをいう。そして,財物を盗取する目的で相手方を昏酔させる行為を開始した時点で実行の着手が認められる。本記述では,甲は,Vを眠らせてVの財布から現金を抜き取るつもりで,コーヒ-の入ったコップに一時的に意識喪失を生じさせるのに十分な量の睡眠薬を入れて,Vに飲むようすすめており,その時点で昏酔強盗罪の実行の着手が認められる。よって,本記述は正しい。参考条解刑法768~769頁。
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憲法大日本帝国憲法には,平等原則に関する一般的な定めはなく,ただ公務就任資格に関する平等の規定が置かれているにすぎなかった。憲法この問題の模試受験生正解率 32.9%結果正解解説大日本帝国憲法は,平等原則に関する一般的な規定は置かず,公務就任資格に関する個別の規定しか置いていなかった(同19条)。他方,日本国憲法では,同14条1項により,平等原則に関する一般的な規定を置いている。よって,本記述は正しい。参考芦部(憲法)130~131頁。
野中ほか(憲法Ⅰ)281頁。 -
民法判例の趣旨に照らした場合,賭博によって生じた債務の履行のために振り出された小切手の支払に関する和解は,無効である。民法この問題の模試受験生正解率 86.3%結果正解解説判例は,賭博によって生じた債務の履行のために交付された小切手の支払について和解がされた事例において,賭博に勝った者が賭博に負けた者に対して小切手金の支払を求めることは,公序良俗に違反するものとして許されないというべきであり,その支払についてされた和解上の金銭支払の約束も,実質上,その金額の限度で賭博に勝った者をして賭博による金銭給付を得させることを目的とするものであることが明らかであるから,同じく,公序良俗に違反するものとして,無効とされなければならないとしている(最判昭46.4.9 手形小切手百選〔第7版〕88事件)。よって,本記述は正しい。参考潮見(新契約各論Ⅱ)478頁。
中田(契約)601頁。 -
刑法判例の立場に従って検討した場合,他人の事務処理の用に供する権利義務に関する電磁的記録を不正に作った場合,目的のいかんにかかわらず,電磁的記録不正作出罪が成立する。刑法この問題の模試受験生正解率 69.1%結果正解解説人の事務処理を誤らせる目的で,その事務処理の用に供する権利,義務又は事実証明に関する電磁的記録を不正に作った場合,電磁的記録不正作出罪(刑法161条の2第1項)が成立する。したがって,上記の目的がない場合には同罪は成立しない。よって,本記述は誤りである。参考西田(各)404頁。
大塚ほか(基本刑法Ⅱ)411頁。
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憲法内閣は,行政権の行使について国会に対して連帯して責任を負うが,この連帯責任は,個々の国務大臣の責任を否定するものではないから,衆議院において,国務大臣に対する不信任決議が可決された場合には,当該国務大臣は辞職すべき法的義務を負う。憲法この問題の模試受験生正解率 70.2%結果正解解説内閣は行政権の行使について国会に対し連帯して責任を負う(憲法66条3項)。内閣が内閣総理大臣の下に一体となって政治を行う原則から,内閣が負う責任も一体として負うこととされているが,国務大臣の単独責任を否定する趣旨ではないとされている。そのため,個々の国務大臣が,その所管事項に関して違法又は不当な行為をした場合などに,国会が当該国務大臣の責任を問うことは,憲法上否定されない。もっとも,国務大臣に対する衆議院の不信任決議については憲法に規定がないため,衆議院において当該国務大臣に対する不信任決議が可決されたとしても,法的効果は生じない。したがって,衆議院において不信任決議が可決されても,当該国務大臣は辞職すべき法的義務を負わない。よって,本記述は誤りである。参考芦部(憲法)339~340頁。
佐藤幸(日本国憲法論)549~550頁。
渡辺ほか(憲法Ⅱ)280頁。 -
民法判例の趣旨に照らした場合,養子が尊属又は年長者であることを理由とする養子縁組の取消しは,縁組の当事者又はその親族から,いつでも家庭裁判所に請求することができる。民法この問題の模試受験生正解率 43.9%結果正解解説養子が尊属又は年長者であることを理由とする養子縁組の取消しについては,取消権の行使期間に制限がないと解されている(民法805条参照,大連判大12.7.7 家族法百選〔初版〕50事件)。これは,同条による取消しが公益的見地から規定されているためである。よって,本記述は正しい。参考新基本法コメ(親族)181頁。
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刑法判例の立場に従って検討した場合,緊急避難は,避難行為により避けようとした害が避難行為から生じた害の程度を超える場合に限り成立し,前者と後者が同等の場合には成立し得ない。刑法この問題の模試受験生正解率 63.3%結果正解解説緊急避難の要件である「生じた害が避けようとした害の程度を超えなかった場合」(刑法37条1項本文)とは,避難行為により避けようとした害,すなわち保全法益が,避難行為から生じた害,すなわち侵害法益と同等か,又は侵害法益よりも大きい場合をいう。緊急避難の本質が,自己に降り掛かった危難を避けるため,その危難の発生とは無関係の他人の犠牲の下に避難行為を行う点にあるためである。したがって,保全法益と侵害法益とが同等の場合にも緊急避難は成立する。よって,本記述は誤りである。参考西田(総)155~156頁。
大塚ほか(基本刑法Ⅰ)211頁。
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憲法付随的違憲審査制は,伝統的な司法の観念に立脚するものであり,個人の権利保護を第一の目的とする私権保障型の憲法保障制度であるから,事件・争訟として適切に裁判所に提起されている場合,その当事者は,特定の第三者の憲法上の権利を主張することは一切許されない。憲法この問題の模試受験生正解率 91.4%結果正解解説付随的違憲審査制は,伝統的な司法の観念に立脚するものであり,個人の権利保護を第一の目的とする(私権保障型の憲法保障制度)。そのため,事件・争訟の当事者が特定の第三者の憲法上の権利を主張することは,原則として許されない。もっとも,違憲の主張をする者の利益の程度,援用される憲法上の権利の性格,違憲の主張をする者と第三者の関係,第三者が別の訴訟で自己の権利侵害につき違憲の主張をすることの可能性等の要素を考慮した上で,その主張を当事者にさせることが適切な状況があり,またそのことが第三者に実質的な不利益を与えない限り,その主張を認めてもよいとする等,これを認める見解が一般的である。判例も,憲法81条はこの付随的違憲審査制を規定するものであり(最大判昭27.10.8 警察予備隊違憲訴訟 憲法百選Ⅱ〔第7版〕187事件),当初,「他人の権利に容喙干渉」(最大判昭35.10.19)することは許されないとして,事件・争訟の当事者が特定の第三者の憲法上の権利を主張することを認めなかったが,その後,これを認めている(最大判昭37.11.28 第三者所有物没収事件 憲法百選Ⅱ〔第7版〕107事件)。したがって,付随的違憲審査制から直ちに,事件・争訟の当事者が,特定の第三者の憲法上の権利を主張することが一切許されないということにはならない。よって,本記述は誤りである。参考芦部(憲法)392~393頁。
佐藤幸(日本国憲法論)682~684頁。
野中ほか(憲法Ⅱ)298~301頁。
リーガルクエスト(憲法Ⅰ)322~326頁。 -
民法判例の趣旨に照らした場合,建物が滅失した後,その跡地に同様の建物が新築された場合において,旧建物の既存の登記について表示の変更登記をすることにより,登記記録の表題部が新築建物の構造・坪数と合致するように変更されたときは,旧建物の既存の登記は,新建物の登記として有効となる。民法この問題の模試受験生正解率 50.0%結果正解解説判例は,「建物が滅失した後,その跡地に同様の建物が新築された場合には,旧建物の登記簿は滅失登記により閉鎖され,新建物についてその所有者から新たな所有権保存登記がなさるべきものであって,旧建物の既存の登記を新建物の右保存登記に流用することは許されず,かかる流用された登記は,新建物の登記としては無効」であり,流用時に本記述のように変更がなされても,登記としての効力は認められないとしている(最判昭40.5.4 民法百選Ⅰ〔第4版〕84事件)。その理由として,同判決は,「旧建物が滅失した以上,その後の登記は真実に符合しないだけでなく,新建物についてその後新たな保存登記がなされて,1個の不動産に二重の登記が存在するに至るとか,その他登記簿上の権利関係の錯雑・不明確をきたす等不動産登記の公示性をみだすおそれがあり,制度の本質に反する」ことを挙げている。よって,本記述は誤りである。参考佐久間(物権)124頁。
松井(物権)121頁。
リーガルクエスト(物権)86頁。 -
刑法判例の立場に従って検討した場合,甲は,Aからパソコンを借りて保管していたが,同パソコンを売却してその代金を自己の借金の返済に充てるつもりで,無断で,同パソコンの買取りをBに持ち掛けたが,Bはいまだ買受けの意思表示をしていなかった。この場合,甲には,横領罪は成立する。
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憲法判例によれば,条例中に罰則を設けるには法律の授権が必要であるが,条例は,行政府の命令と異なり,地方公共団体の議会によって制定される民主的立法であり実質的に法律に準ずるもので,条例への罰則の委任は一般的・包括的委任で足りる。憲法この問題の模試受験生正解率 56.3%結果正解解説判例は,罰則を定める条例によって処罰された者が,当該条例は憲法31条に違反するとして争った事例において,「条例は,法律以下の法令といっても,……公選の議員をもって組織する地方公共団体の議会の議決を経て制定される自治立法であって,行政府の制定する命令等とは性質を異にし,むしろ国民の公選した議員をもって組織する国会の議決を経て制定される法律に類するものであるから,条例によって刑罰を定める場合には,法律の授権が相当な程度に具体的であり,限定されておればたりると解するのが正当である」としている(最大判昭37.5.30 憲法百選Ⅱ〔第7版〕208事件)。したがって,条例への罰則の委任は,一般的・包括的なものでは足りない。よって,本記述は誤りである。
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民法債権者の交替による更改は,更改前の債権者,更改後に債権者となる者との二者間の契約によってすることができる。民法この問題の模試受験生正解率 35.0%結果正解解説債権者の交替による更改は,債権の譲渡人と譲受人間の契約によってする債権譲渡と異なり,更改前の債権者,更改後に債権者となる者及び債務者の三面契約によってする(民法515条1項)。いずれの者の意思をも無視することができないことによる。よって,本記述は誤りである。参考内田Ⅲ120頁。
潮見(新債権総論Ⅱ)335頁。
中田(債総)493頁。
新・コンメ民法(財産法)869頁。 -
刑法判例の立場に従って検討した場合,甲は,A社の炭坑内にある同社所有の工業用掘削機械を自己の所有物であるとしてリサイクル業者Bに売却し,Bから転売を受けた情を知らない乙をして同機械を炭坑から搬出させた。この場合,甲には,窃盗罪の間接正犯が成立する。
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憲法判例によれば,憲法第29条の規定に照らせば,法律で一旦定められた財産権の内容を事後の法律で変更し,特段の補償を行わないものとしても,それが公共の福祉に適合するようにされたものである限り,これをもって違憲ということはできない。憲法この問題の模試受験生正解率 69.6%結果正解解説判例は,国有農地等の売払に関する特別措置法によって,その制定前に農地の売払の申込みをしていた旧所有者に対する売却の価格を買収対価相当額から時価の7割に変更したことが,憲法29条に反しないかが争われた事例において,「法律でいったん定められた財産権の内容を事後の法律で変更しても,それが公共の福祉に適合するようにされたものである限り,これをもって違憲の立法ということができないことは明らかである。そして,右の変更が公共の福祉に適合するようにされたものであるかどうかは,いったん定められた法律に基づく財産権の性質,その内容を変更する程度,及びこれを変更することによって保護される公益の性質などを総合的に勘案し,その変更が当該財産権に対する合理的な制約として容認されるべきものであるかどうかによって,判断すべきである」としている(最大判昭53.7.12 憲法百選Ⅰ〔第7版〕99事件)。よって,本記述は正しい。
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民法甲土地を所有していたAが死亡し,Aには法定相続人として妻B,子C及びDがいるが,いまだ遺産分割はされていない。この場合に関して判例の趣旨に照らした場合,Aが遺産分割の方法の指定として甲土地をDに相続させる旨の遺言をしていた場合において,DがAの死亡以前に死亡したときであっても,AがそのときにはDの代襲者Eに甲土地を相続させる旨の意思を有していたとみるべき特段の事情があると認められるときには,その遺言は効力を生じる。民法この問題の模試受験生正解率 52.1%結果正解解説判例は,「遺産を特定の推定相続人に単独で相続させる旨の遺産分割の方法を指定し,当該遺産が遺言者の死亡の時に直ちに相続により当該推定相続人に承継される効力を有する「相続させる」旨の遺言」は,「当該遺言により遺産を相続させるものとされた推定相続人が遺言者の死亡以前に死亡した場合には,当該「相続させる」旨の遺言に係る条項と遺言書の他の記載との関係,遺言書作成当時の事情及び遺言者の置かれていた状況などから,遺言者が,上記の場合には,当該推定相続人の代襲者その他の者に遺産を相続させる旨の意思を有していたとみるべき特段の事情のない限り,その効力を生ずることはない」としている(最判平23.2.22 平23重判民法14事件)。したがって,本記述においては,DがAの死亡以前に死亡したときにはDの代襲者Eに相続させる旨の意思をAが有していたと認められるから,その遺言は効力を生じる。よって,本記述は正しい。参考窪田(家族法)469頁。
潮見(詳解相続法)478~479頁。
リーガルクエスト(親族・相続)407~408頁。 -
刑法判例の立場に従って検討した場合,裁判所より,医師としての知識,経験に基づく診断を含む医学的判断を内容とする鑑定を命じられた医師が,その過程で知り得た人の秘密を漏示しても,その秘密は,医師の業務上知った秘密ではなく,鑑定人の業務上知った秘密であるから,秘密漏示罪は成立しない。刑法この問題の模試受験生正解率 90.3%結果正解解説判例は,「医師が,医師としての知識,経験に基づく,診断を含む医学的判断を内容とする鑑定を命じられた場合には,その鑑定の実施は,医師がその業務として行うものといえるから,医師が当該鑑定を行う過程で知り得た人の秘密を正当な理由なく漏らす行為は,医師がその業務上取り扱ったことについて知り得た人の秘密を漏示するものとして刑法134条1項の秘密漏示罪に該当すると解するのが相当である」としている(最決平24.2.13 平24重判刑法6事件)。よって,本記述は誤りである。参考西田(各)118~119頁。
大塚ほか(基本刑法Ⅱ)96~97頁。
条解刑法418頁。
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憲法判例によれば,憲法第14条第1項後段所定の事由に基づいて差別が行われるときには,合憲性の推定は排除され,裁判所は厳格な基準によってその差別が合理的であるかどうかを審理すべきである。憲法この問題の模試受験生正解率 32.9%結果正解解説判例は,憲法14条1項後段列挙事由(人種,信条,性別,社会的身分又は門地)は例示的なものと解しており,当該事由に本記述のような特段の効果を認めていない(最大判昭25.10.11,最大判昭39.5.27等)。よって,本記述は誤りである。
なお,本記述は,最大判昭60.3.27(サラリーマン税金訴訟 憲法百選Ⅰ〔第7版〕31事件)の伊藤正己裁判官の補足意見である。参考芦部(憲法)135頁。
佐藤幸(日本国憲法論)225~226頁。
野中ほか(憲法Ⅰ)286~287頁。
渋谷(憲法)202~203頁。 -
民法判例の趣旨に照らした場合,A及びBは,Aを養親,Bを養子とする養子縁組の届出をしたが,Aは養子縁組を他の目的のために利用する意思であって,真にBと養親子関係の設定を欲する意思を有していなかった場合,BがAの真意を過失なく知らなかったとしても,AB間の養子縁組は無効である。民法この問題の模試受験生正解率 65.4%結果正解解説「当事者間に縁組をする意思がないとき」は,養子縁組は無効である(民法802条1号)。判例は,同号の「当事者間に縁組をする意思がないとき」とは,当事者間に真に養親子関係の設定を欲する効果意思を有しない場合を指すものであるから,たとえ養子縁組の届出自体については当事者間に意思の一致があったとしても,それが単に他の目的を達するための便法として仮託されたにすぎず,真に養親子関係の設定を欲する効果意思がなかった場合においては,養子縁組は効力を生じないとした上で,この無効は絶対的なものであって,同93条1項ただし書の適用を待って初めて無効となるものではないとしている(最判昭23.12.23 家族法百選〔第2版〕59事件)。よって,本記述は正しい。参考四宮・能見(民法総則)229頁。
論点体系判例民法⑴235頁。 -
刑法判例の立場に従って検討した場合,甲は,警察官乙から現行犯逮捕の現場で覚せい剤入りの注射器を差し押さえられた際,乙の面前で同注射器を足で踏み付けて壊した。この場合,甲には,公務執行妨害罪は成立しない。刑法この問題の模試受験生正解率 75.0%結果正解解説公務執行妨害罪(刑法95条1項)における「暴行」とは,不法な有形力の行使をいい,直接に公務員の身体に向けられたものである必要はなく,職務執行を妨害するに足りる程度の暴行といえる限り,間接的に公務員に向けられたもの(間接暴行)で足りる(最判昭37.1.23 続刑法百選23事件)。判例は,司法巡査が現行犯逮捕の現場で差し押さえて整理のために同所に置いた覚せい剤入りのアンプルを,被告人が足で踏んで損壊した事例において,司法巡査の職務の執行中にその執行を妨害するに足りる暴行を加えたものであり,その暴行は間接的に司法巡査に対するものというべきであるとして本罪の成立を認めている(最決昭34.8.27)。したがって,甲には公務執行妨害罪が成立する。よって,本記述は誤りである。参考西田(各)451頁。
大塚ほか(基本刑法Ⅱ)490~491頁。
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憲法最高裁判所の判例の趣旨に照らすと,受刑者が国会議員あての請願書の内容についての取材・調査・報道を求める旨を記載した手紙を新聞社に送付しようとする場合,刑事施設の長がこれを制限し得るのは,具体的事情の下でそれを許可することにより刑事施設内の規律及び秩序の維持が害される明らかな差し迫った危険の発生が具体的に予見される場合に限られる。憲法この問題の模試受験生正解率 55.5%結果正解解説判例は,受刑者が国会議員あての請願書の内容についての取材・調査・報道を求める旨を記載した新聞社あての手紙の発信許可を刑事施設の長に求めたところ,当該刑事施設の長がこれを不許可としたことから,当該受刑者がそれにより精神的苦痛を被ったとして,国に対し国賠法1条1項に基づき慰謝料を請求した事例において,「表現の自由を保障した憲法21条の規定の趣旨,目的にかんがみると,受刑者のその親族でない者との間の信書の発受は,受刑者の性向,行状,監獄内の管理,保安の状況,当該信書の内容その他の具体的事情の下で,これを許すことにより,監獄内の規律及び秩序の維持,受刑者の身柄の確保,受刑者の改善,更生の点において放置することのできない程度の障害が生ずる相当のがい然性があると認められる場合に限って,これを制限することが許される」としている(最判平18.3.23)。よって,本記述は誤りである。参考芦部(憲法)110頁。
佐藤幸(日本国憲法論)179頁。
渡辺ほか(憲法Ⅰ)49頁。 -
民法判例の趣旨に照らした場合,和解契約は当事者が互いに譲歩することを成立要件とするから,当事者ではなく第三者が対価を給付することを和解契約の内容とすることはできない。
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刑法判例の立場に従って検討した場合,甲は,乙から,Vの殺害に用いるための猛毒の青酸ソーダを入手するよう依頼されてこれを承諾し,致死量の青酸ソーダを入手してこれを乙に渡した。しかし,乙は,この青酸ソーダを使用せず,別途調達した睡眠薬をVに服用させた上,Vを絞殺した。この場合,甲には,殺人予備罪の共同正犯が成立する。刑法この問題の模試受験生正解率 61.0%結果正解解説判例は,本記述と同様の事例において,甲に殺人予備罪の共同正犯(刑法201条,60条)の成立を認めた原審の判断を是認している(最決昭37.11.8 刑法百選Ⅰ〔第8版〕80事件)。よって,本記述は正しい。参考西田(総)423頁。
大塚ほか(基本刑法Ⅰ)337頁。
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憲法憲法第9条第1項の「国際紛争を解決する手段」としての戦争について,国際法上の用例を尊重し,国家の政策としての戦争,すなわち侵略戦争を意味すると解するとしても,同条全体により自衛戦争を含めた全ての戦争が放棄されているという結論を導くことはできる。憲法この問題の模試受験生正解率 80.5%結果正解解説憲法9条1項の「国際紛争を解決する手段」としての戦争について,国際法上の用例を尊重し,「国家の政策としての戦争」,すなわち侵略戦争を意味するならば,同項で放棄されているのは侵略戦争ということになり,自衛戦争は放棄されていないことになる。もっとも,この見解に立っても,同条2項前段の「前項の目的を達するため」にいう「前項の目的」について,戦争を放棄するに至った動機を一般的に指すものと解釈し,同項で戦力の保持が無条件で禁止され,また,交戦権まで否認されていると解釈するならば,同条1項で留保された自衛戦争も事実上不可能となり,同条全体で自衛戦争を含めた全ての戦争が放棄されているという結論を導くことができる。よって,本記述は正しい。参考芦部(憲法)57~58頁。
野中ほか(憲法Ⅰ)164~168頁。
芦部(憲法学Ⅰ)255~259頁。
辻村(憲法)68~70頁。 -
民法判例の趣旨に照らした場合,占有者から動産を買い受けることによりその占有を取得した者は,即時取得を主張するために,当該動産について,取引の相手方が権利者であると信じたことについて自己に過失がなかったことを立証する必要がある。民法この問題の模試受験生正解率 72.0%結果正解解説判例は,民法192条にいう「過失がないとき」とは,「物の譲渡人である占有者が権利者たる外観を有しているため,その譲受人が譲渡人にこの外観に対応する権利があるものと誤信し,かつこのように信ずるについて過失のないことを意味するものであるが,およそ占有者が占有物の上に行使する権利はこれを適法に有するものと推定される以上(民法188条),譲受人たる占有取得者が右のように信ずるについては過失のないものと推定され,占有取得者自身において過失のないことを立証することを要しない」としている(最判昭41.6.9 昭41重判民法3事件)。したがって,本記述において,即時取得を主張する占有者は,自己の無過失について立証する必要はない。よって,本記述は誤りである。参考佐久間(物権)147頁。
松井(物権)142頁。
リーガルクエスト(物権)100頁。 -
刑法判例の立場に従って検討した場合,幇助行為が日本国外でなされた場合には,正犯が日本国内で実行行為をしたときでも,従犯として処罰することはできない。刑法この問題の模試受験生正解率 78.1%結果正解解説判例は,日本国外で幇助行為をした者であっても,正犯が日本国内で実行行為をした場合には,刑法1条1項の「日本国内において罪を犯した」者に当たるとしている(最決平6.12.9 平6重判刑法1事件)。したがって,幇助行為が日本国外でなされた場合であっても,正犯が日本国内で実行行為をしたときは,従犯として処罰することができる。よって,本記述は誤りである。参考山口(総)417頁。
大塚ほか(基本刑法Ⅰ)462頁。
条解刑法259~260頁。
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解答
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憲法判例は,内閣総理大臣は,閣議にかけて決定された方針が存在しない場合には,内閣の明示の意思に反しないとしても,行政各部に対し指導,助言等の指示を与える権限を有しないとしている。憲法この問題の模試受験生正解率 74.1%結果正解解説判例は,内閣総理大臣が当時の運輸大臣(現:国土交通大臣)に対して航空会社に特定の航空機の選定購入を勧奨するよう働きかけた行為が内閣総理大臣の職務権限に属するかが争われた事例において,「内閣総理大臣は,憲法上,行政権を行使する内閣の首長として(66条),国務大臣の任免権(68条),内閣を代表して行政各部を指揮監督する職務権限(72条)を有するなど,内閣を統率し,行政各部を統轄調整する地位にあるものである。そして,内閣法は,閣議は内閣総理大臣が主宰するものと定め(4条),内閣総理大臣は,閣議にかけて決定した方針に基づいて行政各部を指揮監督し(6条),行政各部の処分又は命令を中止させることができるものとしている(8条)。このように,内閣総理大臣が行政各部に対し指揮監督権を行使するためには,閣議にかけて決定した方針が存在することを要するが,閣議にかけて決定した方針が存在しない場合においても,内閣総理大臣の右のような地位及び権限に照らすと,流動的で多様な行政需要に遅滞なく対応するため,内閣総理大臣は,少なくとも,内閣の明示の意思に反しない限り,行政各部に対し,随時,その所掌事務について一定の方向で処理するよう指導,助言等の指示を与える権限を有する」としている(最大判平7.2.22 ロッキード事件丸紅ルート 憲法百選Ⅱ〔第7版〕174事件)。よって,本記述は誤りである。
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民法Aが所有する甲土地をBが不法に占有している場合に関して,判例の趣旨に照らすと,Aが第三者に甲土地を譲渡し,所有権移転登記をした場合,Aは,Bに対して所有権に基づいて甲土地の返還を請求することはできない。
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刑法判例の立場に従って検討した場合,刑罰法規において,刑の種類も刑の分量も全く定めないことは罪刑法定主義に反するが,刑の種類のみを定めていれば,刑の分量を全く定めなくとも,罪刑法定主義に反しない。刑法この問題の模試受験生正解率 74.7%結果正解解説罪刑法定主義には,刑罰法規の適正性が含まれる。そして,その具体的内容の1つとして,絶対的不確定刑も禁止される。絶対的不確定刑とは,①「……した者は,刑に処する」というように,刑の種類と刑の分量をともに法定しない場合,及び②「……した者は,懲役に処する」というように刑の種類だけを定めて刑の分量を法定しない場合の法定刑をいう。よって,本記述は誤りである。参考井田(総)38~39頁。
大塚ほか(基本刑法Ⅰ)18頁。
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解答
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憲法最高裁判所の判例の趣旨に照らすと,憲法第21条第2項前段の「検閲」の禁止は,表現の自由を保障するために定められているが,この検閲にも公共の福祉を理由とする例外が認められる場合がある。憲法この問題の模試受験生正解率 68.9%結果正解解説判例は,税関検査が憲法21条2項前段の「検閲」に当たるかどうか等が争われた事例において,「憲法21条2項前段は,「検閲は,これをしてはならない。」と規定する。憲法が,表現の自由につき,広くこれを保障する旨の一般的規定を同条1項に置きながら,別に検閲の禁止についてかような特別の規定を設けたのは,検閲がその性質上表現の自由に対する最も厳しい制約となるものであることにかんがみ,これについては,公共の福祉を理由とする例外の許容(憲法12条,13条参照)をも認めない趣旨を明らかにしたものと解すべきである」としている(最大判昭59.12.12 札幌税関検査訴訟 憲法百選Ⅰ〔第7版〕69事件)。したがって,同判決は,同21条2項前段の検閲の禁止は,公共の福祉を理由とする例外を許容しない,絶対的禁止と捉えている。よって,本記述は誤りである。
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民法判例の趣旨に照らした場合,引き渡された売買の目的物の品質が契約の内容に適合しない場合において,履行の追完の方法として目的物の修補と代替物の引渡しとが可能であるときは,買主は,売主に対し,どちらかを任意に選択して履行の追完を請求することができる。民法この問題の模試受験生正解率 58.9%結果正解解説引き渡された目的物が種類,品質又は数量に関して契約の内容に適合しないものであるときは,買主は,売主に対し,目的物の修補,代替物の引渡し又は不足分の引渡しによる履行の追完を請求することができる(民法562条1項本文)。同項は,追完の方法の選択肢が複数存在する場合,そのうちいかなる方法を採るのかの選択権を第一次的に買主に委ねたものである。よって,本記述は正しい。
なお,売主は,買主に不相当な負担を課するものでないときは,買主が請求した方法と異なる方法による履行の追完をすることができる(同項ただし書)。参考潮見(基本講義・債各Ⅰ)94頁。
中田(債総)318頁。
新・コンメ民法(財産法)961頁。 -
刑法判例の立場に従って検討した場合,拘禁中に逃走した者をその事情を知りつつこれを蔵匿した場合,犯人蔵匿罪が成立する。刑法この問題の模試受験生正解率 74.7%結果正解解説犯人蔵匿罪(刑法103条前段)の客体は,「罰金以上の刑に当たる罪を犯した者」又は「拘禁中に逃走した者」である。「拘禁中に逃走した者」とは,法令により拘禁中に逃走した者をいい,その範囲は,同99条の「法令により拘禁された者」と一致するものとされ,裁判の執行により拘禁された既決,未決の者や勾引状の執行を受けた者(同97条,98条)のほか,現行犯逮捕された者,緊急逮捕されて令状が発せられる前の者がこれに当たる。よって,本記述は正しい。参考西田(各)477頁,483頁。
大塚ほか(基本刑法Ⅱ)516頁,543頁。
条解刑法330頁,336頁。
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憲法公の支配に属しない事業への,公金その他の公の財産の支出を禁止する,憲法第89条後段の規定の趣旨を,公費の濫用を防止することにあると解する立場は,「公の支配」の意義について,公権力が当該事業の運営,存立に影響を及ぼすことにより,当該事業が公の利益に沿わない場合にはこれを是正し得る途が確保されていれば足りるという見解と結び付く。憲法この問題の模試受験生正解率 63.9%結果正解解説憲法89条後段は,公金その他の公の財産は「公の支配に属しない慈善,教育若しくは博愛の事業に対し,これを支出し,又はその利用に供してはならない。」と定めている。そして,この規定の趣旨に関しては,大別して①私的事業に対して公金支出を行う場合には,財政民主主義の観点から,公費の濫用を来さないように当該事業を監督すべきことを要求するものであるとする立場(公費濫用防止説)と,②私的事業への不当な公権力の支配が及ぶことを防止し,事業の自主性を確保するための規定と解する立場(自主性確保説)とがある。そのうち,①の立場は,公費が濫用されない程度に,事業についての監督が及んでいればよいと考えるから,「公の支配」に属するという意味を,「国又は地方公共団体の一定の監督が及んでいることをもって足りる」というように,緩やかに解している。具体的には,業務や会計の状況に関し報告を徴したり,予算について必要な変更をすべき旨を勧告する程度の監督権を持っていれば足りるとする。よって,本記述は正しい。参考芦部(憲法)376~377頁。
佐藤幸(日本国憲法論)574~575頁。
野中ほか(憲法Ⅱ)343~347頁。 -
民法判例の趣旨に照らした場合,Aが家出をして行方不明になり,その生死が10年間明らかでなかったため,利害関係人の請求により,Aについて失踪宣告がされたが,その1年後に,Aの生存が明らかとなったので,失踪宣告が取り消された。この場合,失踪宣告によりAを単独相続したDは,Aの生存につき善意であったときは,当該相続によって得た財産を不当利得として返還する義務を負わない。民法この問題の模試受験生正解率 77.1%結果正解解説失踪宣告を受けた者が生存していることの証明があったときは,家庭裁判所は,本人又は利害関係人の請求により,失踪宣告を取り消さなければならない(民法32条1項前段)。取消しの結果,失踪宣告の効果として生じた身分上・財産上の変動はなかったものとされる。したがって,失踪宣告が取り消されると,失踪宣告を受けた者を被相続人とする相続は開始しなかったことになるから,この相続によって財産を得た者は,失踪者の生存について善意であったか悪意であったかにかかわらず,これを不当利得として返還しなければならない(同条2項本文)。よって,本記述は誤りである。
なお,同項ただし書は,返還の範囲について,特に善意・悪意を区別せず「現に利益を受けている限度」としているが,同項ただし書は善意者のみに適用があり,悪意者は,同704条の場合と同様,全部の利益に利息を付して返還しなければならないとする見解がある。参考佐久間(総則)31~33頁。
リーガルクエスト(総則)53~55頁。 -
刑法判例の立場に従って検討した場合,刑法第36条第1項における「自己又は他人の権利」は,個人的法益に限られる。刑法この問題の模試受験生正解率 81.3%結果正解解説刑法36条1項にいう「権利」には,個人的法益にとどまらず,国家的法益ないし社会的法益も含まれると解されている。判例も,「国家的,国民的,公共的法益についても正当防衛の許さるべき場合が存することを認むべきである」としている(最判昭24.8.18 刑法百選〔初版〕11事件)。よって,本記述は誤りである。
なお,同判決は,国家的・公共的法益「のための正当防衛等は,国家公共の機関の有効な公的活動を期待し得ない極めて緊迫した場合においてのみ例外的に許容されるべきもの」としている。参考西田(総)166頁。
大塚ほか(基本刑法Ⅰ)185~186頁。
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憲法判例によれば,法令の合憲性の審査に当たり,当該法令を制定する場合の基礎を形成し,かつその合理性を支える事実,いわゆる立法事実を検討することがあるが,立法事実はあくまで当該法令の制定時の事実が考慮されるのであって,当該法令の制定後の事実の変化は考慮されない。憲法この問題の模試受験生正解率 68.1%結果正解解説判例は,日本人の父と外国人の母との間に生まれた非嫡出子について,父からの認知だけでなく父母の婚姻により嫡出子たる身分を取得した場合のみ届出による日本国籍取得を認めるとする旧国籍法3条1項の合憲性が争われた事例において,日本国民である父の生後認知子が父母の婚姻による準正によって,我が国社会との密接な結び付きが生じ,国籍取得を認めるに足る状況が認められるために,準正を要件としたという立法目的自体には合理的な根拠があることを認めた上で,旧「国籍法3条1項の規定が設けられた当時の社会通念や社会的状況の下においては,日本国民である父と日本国民でない母との間の子について,父母が法律上の婚姻をしたことをもって日本国民である父との家族生活を通じた我が国との密接な結び付きの存在を示すものとみることには相応の理由があったものとみられ,当時の諸外国における……国籍法制の傾向にかんがみても,同項の規定が認知に加えて準正を日本国籍取得の要件としたことには,……立法目的との間に一定の合理的関連性があったものということができる」として,同項の制定時の事実を考慮して,制定当時における立法目的と準正を出生後における届出による日本国籍取得の要件とすることとの間に一定の合理的関連性を認めている(最大判平20.6.4 国籍法違憲判決 憲法百選Ⅰ〔第7版〕26事件)。もっとも,同判決は,「我が国を取り巻く国内的,国際的な社会的環境等の変化に照らしてみると,準正を出生後における届出による日本国籍取得の要件としておくことについて,……立法目的との間に合理的関連性を見いだすことがもはや難しくなっているというべきである」としている。つまり,同判決は,旧国籍法3条1項の制定後の事実の変化をも考慮している。よって,本記述は誤りである。参考野中ほか(憲法Ⅱ)303頁。
渋谷(憲法)710頁。 -
民法判例の趣旨に照らした場合,債務者が契約から生じた債務を履行期に履行しなかったため,債権者が相当の期間を定めて履行の催告をしたが,その期間内に履行がなかったため,解除権が発生した場合であっても,債権者は,契約を解除せずに債務者に対して履行に代わる損害賠償を請求することができる。民法この問題の模試受験生正解率 57.0%結果正解解説債務の履行に代わる損害賠償の請求が認められる場合の一つとして,債務が契約によって生じたものである場合において,債務の不履行による契約の解除権が発生したとき(民法415条2項3号後段)がある。この場合,同541条,542条1項3号から5号までの規定により解除権が発生すれば,債権者は,解除をしなくても債務の履行に代わる損害賠償の請求をすることができる。よって,本記述は正しい。
なお,同542条1項1号,2号によっても解除権が発生するが,これらの場合には,同415条2項3号後段ではなく,同項1号,2号によって債務の履行に代わる損害賠償の請求が認められる。参考内田Ⅲ145~146頁。
潮見(プラクティス債総)131~132頁。
中田(債総)183頁。 -
刑法判例の立場に従って検討した場合,犯人の親族が,犯人を庇護する目的で,犯人との間に親族関係がない者を教唆して犯人を隠避させた場合,犯人隠避教唆罪が成立し,その刑は免除されない。刑法この問題の模試受験生正解率 74.7%結果正解解説罰金以上の刑に当たる罪を犯した者の親族が,犯人のために犯人蔵匿等罪(刑法103条)を犯したときは,適法行為の期待可能性が低く責任が減少することを考慮し,裁量的な刑の免除が認められているところ(同105条),判例は,犯人の親族が犯人を庇護する目的で他人を教唆して犯人を隠避させた場合には,犯人隠避教唆罪(同103条後段,61条1項)が成立するとしており(大判昭8.10.18),同105条の適用を否定している。よって,本記述は正しい。参考西田(各)491頁。
大塚ほか(基本刑法Ⅱ)531頁。
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設問・解答
解答
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憲法1789年のフランス人権宣言第16条は,「権利の保障が確保されず,権力の分立が定められていない社会は,すべて憲法を持つものではない」と規定していたが,これは「立憲的意味の憲法」の観念を典型的に表現したものと受け取られている。憲法この問題の模試受験生正解率 70.9%結果正解解説「立憲的意味の憲法」とは,権力を制限することにより自由を保障しようという考えを基本理念とする憲法をいう。そして,1789年のフランス人権宣言16条は,「権利の保障が確保されず,権力の分立が定められていない社会は,すべて憲法を持つものではない」と規定していたところ,これは「立憲的意味の憲法」の観念を典型的に表現したものと受け取られている。よって,本記述は正しい。参考芦部(憲法)5頁。
野中ほか(憲法Ⅰ)5~6頁。 -
民法Aが所有する甲土地をBが不法に占有している場合に関して,判例の趣旨に照らした場合,Bが,権原のない第三者との間で締結した使用貸借契約に基づいて20年以上にわたり甲土地の使用を継続している場合において,Aが,所有権に基づき,甲土地の返還を求めた場合,Bは,返還請求権の消滅時効を主張して甲土地の返還を拒むことができる。
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刑法判例の立場に従って検討した場合,責任主義の観点から,結果的加重犯の成立には,基本となる犯罪についての故意のほか,重い結果についての過失を要する。刑法この問題の模試受験生正解率 66.7%結果正解解説結果的加重犯とは,基本となる犯罪から生じた結果を重視して,基本となる犯罪に対する刑よりも重い法定刑を規定した犯罪をいう。結果的加重犯の意義に関しては,重い結果について過失が必要か否かが問題となるところ,判例は,夫が妻に暴行を加え,その結果妻をショック死させた事例において,「傷害罪の成立には暴行と死亡との間に因果関係の存在を必要とするが,致死の結果についての予見を必要としない」としており(最判昭32.2.26 刑法百選Ⅰ〔第8版〕50事件),重い結果について過失がない場合にも結果的加重犯が成立するというのが判例の立場である。よって,本記述は誤りである。参考大谷(講義総)196~197頁。
条解刑法145頁,619頁。
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設問
設問・解答
解答
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憲法最高裁判所の判例の趣旨に照らすと,企業内においても,労働者の思想,信条は十分尊重されるべきであるから,企業秩序違反行為の調査をするために行われたことが明らかであったとしても,雇用者が労働者に対し,調査目的との関連性を明らかにしないまま,政党所属の有無を尋ねることや,特定の政党に所属していないことを書面にして交付するよう求めることは,強要にわたるものでなくても許されない。憲法この問題の模試受験生正解率 58.8%結果正解解説判例は,企業の営業所の内部情報が特定政党の機関紙に記載されたことに関連して,当該営業所の所長Yが従業員Xに対し調査をした際,当該政党の党員かどうかを尋ねたこと,そして,これに対してそうではない旨の返答があったため,それを書面にするよう求めたことが,Xの思想・良心の自由を侵害するかどうかが争われた事例において,Yによる「話合いは企業秘密の漏えいという企業秩序違反行為の調査をするために行われたことが明らかであるから……本件話合いを持つに至ったことの必要性,合理性は,これを肯認することができる」とした上で,本件政党の機関紙の記事の取材源ではないかと疑われているXに対し,本件政党「との係わりの有無を尋ねることには,その必要性,合理性を肯認することができないわけではなく,また,本件質問の態様は,返答を強要するものではなかった」から,「本件質問は,社会的に許容し得る限界を超えてXの精神的自由を侵害した違法行為であるとはいえない」としている(最判昭63.2.5 憲法百選Ⅰ〔第7版〕35事件)。また,同判決は,本件政党の党員でないと返答したことについて書面交付を要求した行為についても,その要求が強要にわたるものではなく,「Xが本件書面交付の要求を拒否することによって不利益な取扱いを受ける虞のあることを示唆した」事実がないこと等から,本件書面交付の要求も,「社会的に許容し得る限界を超えてXの精神的自由を侵害した違法行為であるということはできない」としている。よって,本記述は誤りである。
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民法判例の趣旨に照らした場合,利息付きの消費貸借において,貸主は,借主が元本を受け取った日以後の利息を請求することができる。民法この問題の模試受験生正解率 67.6%結果正解解説民法上,利息の支払は消費貸借の成立の要素とはされていないため(同587条,587条の2第1項),貸主は,特約がある場合に限り,借主に対し利息を請求することができる(同589条1項)。そして,利息は,元本使用の対価であるから,貸主は,借主に対し,借主が元本を使用できる状況に置かれた時,すなわち,借主が元本を受け取った日以後の利息を請求することができる(同条2項)。よって,本記述は正しい。参考潮見(基本講義・債各Ⅰ)131頁。
中田(契約)365頁。
新基本法コメ(債権2)176頁。 -
刑法判例の立場に従って検討した場合,不作為犯は,結果発生を防止しなければならない義務が法律上の規定に基づくものでなければ,成立する余地はない。刑法この問題の模試受験生正解率 93.4%結果正解解説判例は,「シャクティ治療」と称する独自治療を唱導していた被告人が,その信奉者から重篤な患者である親族に対する「シャクティ治療」を依頼され,同患者を入院中の病院から運び出させた上,必要な医療措置を受けさせないまま放置した事例において,「被告人は,自己の責めに帰すべき事由により患者の生命に具体的な危険を生じさせた上,患者が運び込まれたホテルにおいて,被告人を信奉する患者の親族から,重篤な患者に対する手当てを全面的にゆだねられた立場にあったものと認められる。その際,被告人は,患者の重篤な状態を認識し,これを自らが救命できるとする根拠はなかったのであるから,直ちに患者の生命を維持するために必要な医療措置を受けさせる義務を負っていたものというべきである」とし(最決平17.7.4 刑法百選Ⅰ〔第8版〕6事件),先行行為,保護の引受け,排他的支配を根拠に,作為義務(直ちに患者の生命を維持するために必要な医療措置を受けさせる義務)があったとしており,法律上の規定から作為義務を導いてはいない。したがって,不作為犯は,結果発生を防止しなければならない義務が法律上の規定に基づくものでない場合であっても,成立する余地がある。よって,本記述は誤りである。参考西田(総)128頁。
大塚ほか(基本刑法Ⅰ)86頁。
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設問
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解答
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憲法憲法第9条第1項で放棄されている戦争とは侵略戦争であって,自衛戦争は放棄されていないとし,同条第2項前段の「前項の目的を達するため」を,侵略戦争放棄という同条第1項の目的を達するためとする見解によると,自衛のための戦力は保持できることになるが,この見解に対しては,自衛のための戦力と侵略のための戦力は実際上区別できないとの批判が当てはまる。憲法この問題の模試受験生正解率 80.5%結果正解解説憲法9条1項で放棄されている戦争とは侵略戦争であって,自衛戦争は放棄されていないとし,同条2項前段の「前項の目的を達するため」の意味を,侵略戦争放棄という同条1項の目的を達するためとする立場に立つと,同条2項は,侵略のための戦力は保持せず(つまり,自衛のための戦力は保持できる。),また,交戦権の否認は交戦国が持つ諸権利は認めないとの意味にとどまることになる。この見解に対しては,憲法自体に内閣構成員の資格としての文民規定(同66条2項)以外に戦争・軍隊を前提とする他の規定がないこと,自衛のための戦力と侵略のための戦力を実際上区別できないことなどの批判がある。よって,本記述は正しい。参考芦部(憲法)56~58頁。
野中ほか(憲法Ⅰ)164~167頁。
渋谷(憲法)72~73頁。 -
民法判例の趣旨に照らすと,未分離の果実は,土地の定着物であり,土地と独立に所有権の対象とすることはできない。民法この問題の模試受験生正解率 59.1%結果正解解説未分離の果実は,本来,土地の定着物として(民法86条1項),土地又は樹木の一部とみるべきであるが,判例は,樹木又は土地とは別個独立して所有権の対象となり,明認方法によりその所有権を第三者に対抗することを認めている(大判大5.9.20 民法百選Ⅰ〔初版〕63事件,大判大9.5.5,大判昭13.9.28など))。よって,本記述は誤りである。参考リーガルクエスト(総則)112~113頁。
新・コンメ民法(財産法)51頁。 -
刑法判例の立場に従って検討した場合,甲は,乙から商品を購入する際,偽造通貨を真正な通貨のように装って乙に代金として同通貨を交付し,商品を得た。この場合,甲には,偽造通貨行使罪が成立し,詐欺罪は偽造通貨行使罪に吸収される。刑法この問題の模試受験生正解率 41.5%結果正解解説判例は,本記述と同様の事例において,詐欺罪(刑法246条1項)は,偽造通貨行使罪(同148条2項)に当然に吸収され,別罪を構成しないとしている(大判明43.6.30)。したがって,甲には,偽造通貨行使罪が成立し,詐欺罪は偽造通貨行使罪に吸収される。よって,本記述は正しい。参考西田(各)353頁。
大塚ほか(基本刑法Ⅱ)440頁。
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憲法判例によれば,政党は,政治上の信条,意見等を共通にする者が任意に結成する政治結社であって,内部的には,通常,自律的規範を有し,その成員である党員に対して政治的忠誠を要求したり,一定の統制を施すなどの自治権能を有するものであり,国民がその政治的意思を国政に反映させ実現させるための最も有効な媒体であって,議会制民主主義を支える上において極めて重要な存在であるということができる。憲法この問題の模試受験生正解率 63.1%結果正解解説判例は,政党が除名処分を受けた元党役員に対し,当該党役員に利用させてきた家屋の明渡しを求めた事例において,「政党は,政治上の信条,意見等を共通にする者が任意に結成する政治結社であって,内部的には,通常,自律的規範を有し,その成員である党員に対して政治的忠誠を要求したり,一定の統制を施すなどの自治権能を有するものであり,国民がその政治的意思を国政に反映させ実現させるための最も有効な媒体であって,議会制民主主義を支える上においてきわめて重要な存在であるということができる」としている(最判昭63.12.20 共産党除名処分事件 憲法百選Ⅱ〔第7版〕183事件)。よって,本記述は正しい。
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民法Aが所有する甲土地をBが不法に占有している場合に関して,判例の趣旨に照らすと,Aが自己の債権者のために甲土地を譲渡担保に供した場合であっても,Aは,特段の事情のない限り,Bに対して甲土地の返還を請求することができる。民法この問題の模試受験生正解率 84.7%結果正解解説判例は,譲渡担保契約による目的物件の所有権移転の効力は,債権担保の目的を達するのに必要な範囲内においてのみ認められるのであって,譲渡担保権設定者は,譲渡担保権者が目的物件の換価処分を完結するまでは,被担保債務を弁済して目的物件についての完全な所有権を回復することができるのであるから,正当な権原なく目的物件を占有する者がある場合には,特段の事情のない限り,当該占有者に対してその返還を請求することができるとしている(最判昭57.9.28)。したがって,本記述において,Aは,特段の事情のない限り,Bに対して甲土地の返還を請求することができる。よって,本記述は正しい。参考松井(担物)191頁。
リーガルクエスト(物権)344頁。 -
刑法判例の立場に従って検討した場合,遺棄罪(刑法第217条)の客体は,「老年,幼年,身体障害又は疾病のために扶助を必要とする者」と規定されているが,扶助を必要とする原因として挙げられている「老年,幼年,身体障害又は疾病」は,例示列挙である。刑法この問題の模試受験生正解率 55.6%結果正解解説遺棄罪(刑法217条)の客体は,「老年,幼年,身体障害又は疾病のために扶助を必要とする者」であるところ,要扶助状態の原因として挙げられている「老年,幼年,身体障害又は疾病」は,制限列挙であるとされる。よって,本記述は誤りである。参考西田(各)29頁。
大塚ほか(基本刑法Ⅱ)19~20頁。
新基本法コメ(刑法)468頁。
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解答
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憲法泉佐野市民会館事件判決(最高裁判所平成7年3月7日第三小法廷判決,民集49巻3号687頁)に関して,この判決は,憲法第21条第1項が保障する集会の自由には,表現活動や集会に必要な場所の提供を公権力に請求し得る権利が当然に含まれるから,集会の用に供される施設が設けられている場合,当該施設の管理者がその利用を拒否し得るのは,利用の希望が競合する場合のほかは,施設をその集会のために利用させることによって,他の基本的人権が侵害され,公共の福祉が損なわれる危険がある場合に限られるとした。憲法この問題の模試受験生正解率 42.8%結果正解解説本問の最高裁判所判決(最判平7.3.7 泉佐野市民会館事件 憲法百選Ⅰ〔第7版〕81事件)は,市民会館の使用許可の申請を,条例の定める「公の秩序をみだすおそれがある場合」に該当するとして不許可にした処分の違憲性が争われた事例において,「地方自治法244条にいう普通地方公共団体の公の施設として,本件会館のように集会の用に供する施設が設けられている場合」,当該施設の管理者が,公共施設の管理の点から「利用を不相当とする事由が認められないにもかかわらずその利用を拒否し得るのは,利用の希望が競合する場合のほかは,施設をその集会のために利用させることによって,他の基本的人権が侵害され,公共の福祉が損なわれる危険がある場合に限られる」としている。したがって,本記述の結論は正しい。もっとも,同判決は,公の施設について,「住民は,その施設の設置目的に反しない限りその利用を原則的に認められることになるので,管理者が正当な理由なくその利用を拒否するときは,憲法の保障する集会の自由の不当な制限につながるおそれが生ずることになる」としているが,同21条1項が保障する集会の自由には,表現活動や集会に必要な場所の提供を公権力に請求し得る権利が当然に含まれるとはしていない。よって,本記述は誤りである。
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民法AのBに対する意思表示に関して,AがBに対し,承諾の期間を定めて契約の申込みをし,Bがその期間内にAに対し承諾の通知を発したが,当該通知が期間経過後にAに到達した場合,Aがした申込みは,その効力を失う。民法この問題の模試受験生正解率 53.3%結果正解解説承諾の期間の定めのある契約の申込みをした者が,その期間内に承諾の通知を受けなかったときは,その申込みは,その効力を失う(民法523条2項)。本記述において,Bの承諾の通知は,承諾の期間経過後にAに到達しているので,Aがした申込みはその効力を失う。よって,本記述は正しい。参考潮見(基本講義・債各Ⅰ)23~24頁。
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刑法判例の立場に従って検討した場合,甲は,右前方を歩行中の乙に自動車で接近し,運転席の窓から手を出して乙がひじに提げていたハンドバッグを奪い取ろうとして,そのさげひもを引っ張ったところ,乙がこれを離さなかったため,そのまま加速して自動車を走行させ,乙を同バッグもろとも引きずって転倒させて,同バッグを奪って逃走した。乙は引きずられたことにより,加療約1か月を要する傷害を負った。この場合,甲には,強盗致傷罪が成立する。刑法この問題の模試受験生正解率 64.3%結果正解解説強盗罪の「暴行又は脅迫」は,被害者の反抗を抑圧するに足りる程度のものであることを要する。そして,いわゆるひったくりのように暴行が専ら財物を奪取する直接の手段として用いられている場合には,暴行が反抗の抑圧に向けられたものとはいえないから,通常は,「暴行」が認められず,窃盗罪が成立するにすぎない。もっとも,判例は,本記述と同様の事例において,「ハンドバックを離そうとしない女性を車もろとも引きずって転倒させたり,車体に接触させたり,また道路脇の電柱に衝突させて女性に暴行を加えてその反抗を抑圧し,その結果ハンドバックを奪取した」として強盗致傷罪(刑法240条前段)の成立を認めている(最決昭45.12.22 刑法百選Ⅱ〔第2版〕34事件)。したがって,甲には,強盗致傷罪が成立する。よって,本記述は正しい。参考西田(各)182~183頁。
大塚ほか(基本刑法Ⅱ)164~165頁。
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解答
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憲法最高裁判所の判例の趣旨に照らすと,憲法第34条前段の弁護人依頼権は,単に被疑者が弁護人を選任することを官憲が妨害してはならないというにとどまるものではなく,被疑者に対し,弁護人を選任した上で,弁護人に相談し,その助言を受けるなど弁護人から援助を受ける機会を持つことを実質的に保障している。憲法この問題の模試受験生正解率 65.4%結果正解解説判例は,刑訴法39条3項の規定(接見指定)が憲法34条等に違反するかどうかが争われた事例において,「憲法34条前段は,「何人も,理由を直ちに告げられ,且つ,直ちに弁護人に依頼する権利を与へられなければ,抑留又は拘禁されない。」と定める。この弁護人に依頼する権利は,身体の拘束を受けている被疑者が,拘束の原因となっている嫌疑を晴らしたり,人身の自由を回復するための手段を講じたりするなど自己の自由と権利を守るため弁護人から援助を受けられるようにすることを目的とするものである。したがって,右規定は,単に被疑者が弁護人を選任することを官憲が妨害してはならないというにとどまるものではなく,被疑者に対し,弁護人を選任した上で,弁護人に相談し,その助言を受けるなど弁護人から援助を受ける機会を持つことを実質的に保障している」としている(最大判平11.3.24 憲法百選Ⅱ〔第7版〕120事件)。よって,本記述は正しい。
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民法判例の趣旨に照らすと,責任能力のない未成年者の行為によって,第三者に傷害結果が生じた場合,当該行為について違法性がないときであっても,その未成年者の監督義務者は,民法第714条第1項に基づく監督義務者の責任を負うことがある。民法この問題の模試受験生正解率 73.6%結果正解解説判例は,責任能力のない未成年者の行為に違法性がない場合には,その未成年者の監督義務者は,監督義務者の責任(民法714条1項本文)を負わないとしている(最判昭37.2.27)。すなわち,同項の監督義務者の責任は,行為者本人が責任無能力であるがゆえに賠償責任を負わない場合に限り問題となるのであって,本人の行為が責任能力がないという理由以外の理由によって不法行為を構成しない場合には,問題となり得ない。よって,本記述は誤りである。参考リーガルクエスト(事務管理・不当利得・不法行為)256頁。
論点体系判例民法(9)391頁。 -
刑法判例の立場に従って検討した場合,第三者供賄罪が成立するためには,賄賂として利益を供与された第三者において,供与された利益が賄賂であることの認識を有している必要はない。刑法この問題の模試受験生正解率 84.5%結果正解解説第三者供賄罪(刑法197条の2)が成立するためには,公務員の意思に基づいて賄賂が第三者に供与されていれば足り,第三者が,供与された利益が賄賂であることの認識を有している必要はない。よって,本記述は正しい。参考西田(各)528頁。
リーガルクエスト(刑法各論)458頁。
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憲法判例によれば,憲法第9条第2項が保持を禁止した戦力とは,我が国がその主体となってこれに指揮権,管理権を行使し得る戦力に限られず,我が国との安全保障条約に基づき我が国に駐留する外国の軍隊も,ここにいう戦力に該当し得る。憲法この問題の模試受験生正解率 80.5%結果正解解説判例は,正当な理由がなく,米軍基地に侵入した者が,旧日米安全保障条約3条に基づく行政協定に伴う刑事特別法2条違反で起訴された事例において,憲法9条2項「において戦力の不保持を規定したのは,わが国がいわゆる戦力を保持し,自らその主体となってこれに指揮権,管理権を行使することにより,同条1項において永久に放棄することを定めたいわゆる侵略戦争を引き起こすがごときことのないようにするためである……。従って……同条項がその保持を禁止した戦力とは,わが国がその主体となってこれに指揮権,管理権を行使し得る戦力をいうものであり,結局わが国自体の戦力を指し,外国の軍隊は,たとえそれがわが国に駐留するとしても,ここにいう戦力には該当しない」としている(最大判昭34.12.16 砂川事件 憲法百選Ⅱ〔第7版〕163事件)。よって,本記述は誤りである。
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民法判例の趣旨に照らすと,動産の所有者であって寄託者であるAが,その受寄者であるBに対して,以後第三者Cのために動産を占有することを命じたが,Bがこれを承諾しなかったときは,Cは,動産の占有権を取得することができない。民法この問題の模試受験生正解率 31.7%結果正解解説代理人によって占有をする場合において,本人がその代理人に対して以後第三者のためにその物を占有することを命じ,その第三者がこれを承諾したときは,その第三者は,占有権を取得する(指図による占有移転 民法184条)。同条において,代理人の承諾は,占有移転の要件とされていない。したがって,本記述において,受寄者Bの承諾がなくても第三者Cは動産の占有権を取得し得る。よって,本記述は誤りである。参考佐久間(物権)132~133頁。
松井(物権)129頁。
リーガルクエスト(物権)93頁。
新基本法コメ(物権)50頁。 -
刑法判例の立場に従って検討した場合,重過失とは,注意義務違反の程度が著しく,かつ,それによって発生した構成要件的結果が重大なものをいう。刑法この問題の模試受験生正解率 66.7%結果正解解説重過失とは,通常の過失に比して,容易に結果の発生を予見することができ,かつ,容易に結果の発生を回避し得るのに,その注意義務を怠って結果を発生させた場合をいう。構成要件的結果が重大であることは,重過失が認められる要件ではない。よって,本記述は誤りである。参考刑法総論講義案159頁。
大塚ほか(基本刑法Ⅰ)131~132頁。
条解刑法153頁。
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憲法最高裁判所の判例の趣旨に照らすと,大学の自治は,大学における学問の自由を保障するために認められるものであるから,大学の教授その他の研究者の人事に関して認められるものであって,大学の施設及び学生の管理について認められるものではない。憲法この問題の模試受験生正解率 51.4%結果正解解説判例は,ある国立大学(現:国立大学法人)の公認学生団体である劇団が,大学の許可を得て一般公演(以下「本件集会」という。)を大学の教室で開催したところ,その観客の中に警察官が公安調査の目的で潜入していたことから,学生がその警察官に暴行を加えたとして,暴力行為等処罰二関スル法律違反で起訴された事例において,「大学における学問の自由を保障するために,伝統的に大学の自治が認められている。この自治は,とくに大学の教授その他の研究者の人事に関して認められ,大学の学長,教授その他の研究者が大学の自主的判断に基づいて選任される。また,大学の施設と学生の管理についてもある程度で認められ」るとしている(最大判昭38.5.22 ポポロ事件 憲法百選Ⅰ〔第7版〕86事件)。よって,本記述は誤りである。
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民法判例の趣旨に照らすと,抵当権者は,抵当不動産の賃借人を所有者と同視することを相当とする場合を除き,当該賃借人が取得すべき転貸賃料債権について物上代位権を行使することができない。民法この問題の模試受験生正解率 59.4%結果正解解説判例は,「民法372条によって抵当権に準用される同法304条1項に規定する「債務者」には,原則として,抵当不動産の賃借人(転貸人)は含まれない」としている(最決平12.4.14 平12重判民法2事件)。その理由として,同決定は,「所有者は被担保債権の履行について抵当不動産をもって物的責任を負担するものであるのに対し,抵当不動産の賃借人は,このような責任を負担するものではなく,自己に属する債権を被担保債権の弁済に供されるべき立場にはない」ことなどを挙げている。もっとも,同決定は,「所有者の取得すべき賃料を減少させ,又は抵当権の行使を妨げるために,法人格を濫用し,又は賃貸借を仮装した上で,転貸借関係を作出したものであるなど,抵当不動産の賃借人を所有者と同視することを相当とする場合には,その賃借人が取得すべき転貸賃料債権に対して抵当権に基づく物上代位権を行使することを許すべき」としている。したがって,抵当権者は,抵当不動産の賃借人を所有者と同視することを相当とする場合を除き,当該賃借人が取得すべき転貸賃料債権について物上代位権を行使することができない。よって,本記述は正しい。参考内田Ⅲ503~504頁。
道垣内Ⅲ152頁。
松井(担物)43~44頁。 -
刑法死刑又は無期の懲役若しくは禁錮を減軽して有期の懲役又は禁錮とする場合,その長期は30年となる。刑法この問題の模試受験生正解率 44.9%結果正解解説懲役と禁錮には無期及び有期があり,有期の懲役及び禁錮はそれぞれ1月以上20年以下とされるが(刑法12条1項,13条1項),死刑又は無期の懲役若しくは禁錮を減軽して有期の懲役又は禁錮とする場合には,その長期は30年となる(同14条1項)。よって,本記述は正しい。参考新基本法コメ(刑法)34頁,36頁。
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憲法憲法前文が具体的な争訟における裁判所の判断につき直接の準拠となる規範としての性格(裁判規範性)を有するか否かについて,これを肯定する見解(肯定説)と否定する見解(否定説)がある。これらの見解に関して,憲法前文の法規範性を認める考え方は,肯定説及び否定説のいずれの見解とも矛盾しない。憲法この問題の模試受験生正解率 83.2%結果正解解説憲法前文の法規範性については,憲法前文が憲法典の内容の一部であることから,憲法本文の各条項と同じく,これを認める見解が一般的である。しかし,憲法前文の法規範性と裁判規範性は別個に考えられるものであり,憲法前文の法規範性から直ちに裁判規範性が認められることにはならない。したがって,憲法前文の法規範性を認める考え方は,裁判規範性についての肯定説はもとより,否定説とも矛盾しない。よって,本記述は正しい。参考芦部(憲法)37~38頁。
野中ほか(憲法Ⅰ)68~70頁。
芦部(憲法学Ⅰ)206~208頁。
新・コンメ憲法17頁。 -
民法判例の趣旨に照らすと,双務契約上の債務が同時履行の関係に立つ場合,当事者の一方が,その他方の債務の履行遅滞を理由として契約を解除するためには,自己の債務の履行の提供をした上で,相当の期間を定めて催告をした日から,解除権を行使する日まで履行の提供を継続する必要がある。民法この問題の模試受験生正解率 53.2%結果正解解説双務契約上の債務が同時履行の関係にある場合,同時履行の抗弁権(民法533条)を有している限り,債務者は履行遅滞にあるとはいえないから,債権者が履行遅滞を理由とする解除権を行使するためには自らの債務につき履行の提供をする必要がある。その際,相当の期間を定めて催告をした日から,解除権を行使する日まで,履行の提供を継続しなければならないのかが問題となるが,催告に当たって一度提供すれば足り,改めて提供しなくても解除することができると解されている。催告中も,履行されない契約からの解放を望む解除権者に履行の提供の継続を要求することは,過大な負担と考えられるからである。判例も,履行の提供の継続を不要としている(大判昭3.5.31)。よって,本記述は誤りである。参考中田(契約)152頁。
平野(債各Ⅰ)61~62頁。
我妻・有泉コメ1121頁。 -
刑法判例の立場に従って検討した場合,第三者供賄罪が成立するためには,賄賂として利益を供与された第三者において,供与された利益が賄賂であることの認識を有していることが必要である。刑法この問題の模試受験生正解率 92.1%結果正解解説第三者供賄罪(刑法197条の2)が成立するためには,公務員の意思に基づいて賄賂が第三者に供与されていれば足り,第三者が,供与される利益が賄賂であることの認識を有している必要はない。よって,本記述は誤りである。参考山口(各)625頁。
西田(各)528頁。
条解刑法588頁。
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憲法最高裁判所の判例の趣旨に照らすと,麻薬の取扱いに関する事実の記帳義務を負う麻薬取扱者は,麻薬を取り扱うことを自ら申請して免許を得た者であり,麻薬取締関係法規による厳重な監査を受け,それによる命令に服することをあらかじめ承認しているものといえるから,正規の手続を経ていない麻薬の取扱いに関する事実についても記帳義務を負う。憲法この問題の模試受験生正解率 65.3%結果正解解説判例は,旧麻薬取締法14条1項(現:麻薬及び向精神薬取締法37条1項,50条の23参照)により記帳義務を負う麻薬取扱者が,正規の手続を経ていない麻薬の取扱いに関する事実の記帳義務まで負うのかが争われた事例において,同法が記帳義務を課しているのは,「麻薬取扱者による麻薬処理の実状を明確にしようとするにあるのであるから,いやしくも麻薬取扱者として麻薬を取扱った以上は,たとえその麻薬が正規の手続を経ていないものであっても,右帳簿記入の義務を免れ」ず,「麻薬取扱者たることを自ら申請して免許された者は,そのことによって当然麻薬取締法規による厳重な監査を受け,その命ずる一切の制限または義務に服することを受諾しているものというべきであ」り,「取締上の要請からいっても,かかる場合記帳の義務がないと解すべき理由は認められない」としている(最判昭29.7.16 憲法百選Ⅱ〔第7版〕118事件)。同判決は,いわば特権を受けるのと引換えに自己負罪拒否特権を事前に放棄したという考え方を採ったものといわれている。よって,本記述は正しい。
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民法判例の趣旨に照らすと,AがBに対して動産甲を売却したが,Bが甲の代金を支払わない場合において,その間に,Bが,甲をCに売却し,占有改定の方法によりこれを引き渡したため,Bが引き続き甲を占有しているときであっても,Aは,甲について動産売買の先取特権を行使することはできない。民法この問題の模試受験生正解率 54.2%結果正解解説民法333条は,先取特権は,債務者がその目的である動産をその第三取得者に引き渡した後は,その動産について行使することはできないとしており,判例は,同条の引渡しには,占有改定も含まれるとしている(大判大6.7.26 民法百選Ⅰ〔初版〕83事件)。よって,本記述は正しい。参考道垣内Ⅲ70~71頁。
内田Ⅲ679~680頁。 -
刑法判例の立場に従って検討した場合,正犯に中止犯が成立する場合には,教唆犯にも当然に中止犯が成立する。刑法この問題の模試受験生正解率 65.8%結果正解解説判例は,正犯者の中止行為の効果は共犯者に及ばないとしている(大判大2.11.18 刑法百選Ⅰ〔初版〕90事件)。すなわち,正犯に中止犯が成立する場合であっても,教唆犯(刑法61条1項)に当然に中止犯が成立するわけではない。よって,本記述は誤りである。参考大谷(講義総)469頁。
大塚ほか(基本刑法Ⅰ)282~283頁。
条解刑法255頁。
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憲法最高裁判所の判例の趣旨に照らすと,県が公の立場で戦没者の慰霊を行うことを相当数の者が望んでいるならば,その希望に応えた県知事の玉串料等の奉納は,県と宗教とのかかわり合いが相当とされる限度を超えないものとして,憲法第20条第3項にいう「宗教的活動」に当たらない。憲法この問題の模試受験生正解率 91.6%結果正解解説判例は,県知事が靖国神社及び県護国神社における恒例の宗教上の祭祀に際して,県の公金を用いて玉串料等を支出したことの合憲性が問題とされた事例において,「靖國神社及び護國神社に祭られている祭神の多くは第二次大戦の戦没者であって,その遺族を始めとする愛媛県民のうちの相当数の者が,県が公の立場において靖國神社等に祭られている戦没者の慰霊を行うことを望んでおり,そのうちには,必ずしも戦没者を祭神として信仰の対象としているからではなく,故人をしのぶ心情からそのように望んでいる者もいることは,これを肯認することができる。そのような希望にこたえるという側面においては,本件の玉串料等の奉納に儀礼的な意味合いがあることも否定できない。しかしながら,明治維新以降国家と神道が密接に結び付き種々の弊害を生じたことにかんがみ政教分離規定を設けるに至ったなど……憲法制定の経緯に照らせば,たとえ相当数の者がそれを望んでいるとしても,そのことのゆえに,地方公共団体と特定の宗教とのかかわり合いが,相当とされる限度を超えないものとして憲法上許されることになるとはいえない」としている(最大判平9.4.2 愛媛県玉串料訴訟 憲法百選Ⅰ〔第7版〕44事件)。よって,本記述は誤りである。
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民法判例の趣旨に照らすと,Aが所有する甲土地を要役地,Bが所有する乙土地を承役地とする通行地役権が設定された後,Bが乙土地をCに売却した場合,売却の時に,乙土地がAによって継続的に通路として使用されていることがその物理的状況から客観的に明らかであるとしても,Cがそのことを認識していないときは,Aは,Cに対し,地役権設定登記なくして通行地役権を主張することはできない。民法この問題の模試受験生正解率 90.0%結果正解解説判例は,本記述と同様の事例において,「譲受人は,通行地役権が設定されていることを知らなかったとしても,特段の事情がない限り,地役権設定登記の欠缺を主張するについて正当な利益を有する第三者に当たらない」としている(最判平10.2.13 民法百選Ⅰ〔第8版〕63事件)。その理由として,同判決は,第三者に登記の欠缺を主張することが信義に反すると認められる事由がある場合には,当該第三者は,登記の欠缺を主張するについて正当な利益を有する第三者(民法177条)に当たらないとした上で,通行地役権の承役地の譲渡時に,承役地が要役地の所有者によって継続的に通路として使用されていることが物理的状況から客観的に明らかであり,かつ,譲受人がそのことを認識又は認識可能であったときは,譲受人は,要役地の所有者が承役地について通行地役権等を有していることを容易に推認することができ,また,要役地の所有者に照会するなどして通行権の有無,内容を容易に調査することができるため,譲受人は,通行地役権の存在を知らないで承役地を譲り受けた場合であっても,何らかの通行権の負担があるものとしてこれを譲り受けたものとして,譲受人が地役権者に対して地役権設定登記の欠缺を主張することは,通常は信義に反することを挙げている。よって,本記述は誤りである。参考佐久間(物権)83~84頁。
内田Ⅰ459~460頁。 -
刑法判例の立場に従って検討した場合,背任罪の主体である「他人のためにその事務を処理する者」には,独立の権限をもって単独の意思で事務を処理する者のみならず,事実上の補助者としてその事務の処理に当たる者も含まれる。
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憲法「法の支配」の原理の内容としては,憲法の最高法規性の観念,権力によって侵されない個人の人権,法の内容・手続の公正を要求する適正手続,裁判所の役割に対する尊重などが重要であると考えられている。憲法この問題の模試受験生正解率 94.2%結果正解解説「法の支配」の原理とは,専断的な国家権力の支配を排斥し,権力を法で拘束することによって,国民の権利・自由を擁護することを目的とする原理をいう。この原理の内容として重要なものは,①憲法の最高法規性の観念,②権力によって侵されない個人の人権,③法の内容・手続の公正を要求する適正手続,④権力の恣意的行使をコントロールする裁判所の役割に対する尊重などである。よって,本記述は正しい。参考芦部(憲法)13~14頁。
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民法抵当権は目的である物の交換価値を把握する権利であるから,被担保債権が抵当目的物の価格を上回っている場合でも,物上保証人が目的物の価格に相当する額を弁済すれば,抵当権は消滅する。民法この問題の模試受験生正解率 61.1%結果正解解説不可分性とは,担保物権者が,被担保債権全額の弁済を受けるまで,目的物の全部についてその権利を行使することができるという担保物権の性質をいい,民法に定める四つの担保物権全てに認められる(民法296条,305条,350条,372条)。したがって,抵当権においても,被担保債権全額の弁済を受けるまでは,抵当目的物の全部に対してその権利を行使することができるので,被担保債権が抵当目的物の価格を上回っている場合に,物上保証人が目的物の価格に相当する額を弁済しても,抵当権は消滅しない。よって,本記述は誤りである。参考道垣内Ⅲ9頁,234~235頁。
内田Ⅲ485頁,569頁。 -
刑法判例の立場に従って検討した場合,甲は,V女の顔面を拳で殴打するなどして,その反抗を抑圧してV女の金品を強取した直後に,V女を強いて性交し殺害しようと決意し,V女の首を絞めながら性交した。V女は,一時気を失ったが,死亡するには至らなかった。甲に強盗・強制性交等殺人未遂罪は成立しない。刑法この問題の模試受験生正解率 46.8%結果正解解説平成29年法改正以前の旧刑法241条後段は,「よって……死亡させたとき」と規定されていたことから,同条は結果的加重犯である強盗強姦致死罪のみを定めており,殺意があっても強盗強姦殺人罪は成立しないと解されていた(大判昭10.5.13)。これに対して,現行の刑法241条3項は,「よって」という文言を用いない規定ぶりに改められ,殺意がある場合も含まれることが明らかにされた。同項に未遂犯処罰規定(同243条)が設けられているのも,強盗・強制性交等殺人罪が未遂に終わった場合を想定したものである。本記述では,甲は,強盗罪を犯した上で,さらに同一の機会に強制性交等罪を犯し,その行為として殺意をもってV女の首を絞めたが,V女は死亡するに至らなかったため,甲には強盗・強制性交等殺人未遂罪(同条,241条3項)が成立する。よって,本記述は誤りである。参考西田(各)203~204頁。
大塚ほか(基本刑法Ⅱ)230~232頁。
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憲法最高裁判所の判例の趣旨に照らすと,条例は,住民の代表機関である議会の議決によって成立する民主的立法であり,実質的には法律に準じるものであるから,法律の授権がなくても条例に罰則を定めることができる。憲法この問題の模試受験生正解率 52.8%結果正解解説判例は,条例による罰則制定の可否が争われた事例において,「憲法31条はかならずしも刑罰がすべて法律そのもので定められなければならないとするものでなく,法律の授権によってそれ以下の法令によって定めることもできると解すべきで,このことは憲法73条6号但書によっても明らかである」としている。もっとも,法律の授権が不特定な白紙委任的なものであってはならないとした上で,「条例は……公選の議員をもって組織する地方公共団体の議会の議決を経て制定される自治立法であって,行政府の制定する命令等とは性質を異にし,むしろ国民の公選した議員をもって組織する国会の議決を経て制定される法律に類するものであるから,条例によって刑罰を定める場合には,法律の授権が相当な程度に具体的であり,限定されておればたりる」としている(最大判昭37.5.30 憲法百選Ⅱ〔第7版〕208事件)。したがって,同判決は,条例に罰則を定める場合には,法律による授権が必要であるという前提に立っている。よって,本記述は誤りである。
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民法判例の趣旨に照らすと,Aが,Bのためにその所有する甲土地に抵当権を設定した後に甲土地の上に乙建物を建築した場合,Bの抵当権が実行されたときは,甲土地とともに乙建物も競売することができる。民法この問題の模試受験生正解率 54.7%結果正解解説民法389条1項本文は,抵当権の設定後に抵当地に建物が築造されたときは,抵当権者は,土地とともにその建物を競売することができるとしている。更地に抵当権が設定された後,建物が築造された場合,法定地上権は成立しないから(同388条参照),建物所有者は,土地についての抵当権が実行されると,その買受人である新たな土地所有者から建物収去土地明渡請求を受け,それに応じざるを得ない。しかし,この結果は建物の取壊しという社会経済的損失を生じさせ妥当ではない。そこで,そのような事態を回避するために,土地抵当権者に,土地と建物の一括競売をする権利を認めたのである。よって,本記述は正しい。参考内田Ⅲ526~528頁。
道垣内Ⅲ160~161頁。
松井(担物)88~89頁。
新基本法コメ(物権)294~295頁。 -
刑法判例の立場に従って検討した場合,罰則を定めた特別法上の法条に,「過失により」との明文の規定がない場合であっても,過失犯として処罰されることがある。刑法この問題の模試受験生正解率 80.5%結果正解解説過失犯は,「法律に特別の規定がある場合」に限り処罰される(刑法38条1項ただし書)。もっとも,判例は,罰則を定めた特別法上の法条に,「過失により」との明文がなくても,過失犯を処罰する趣旨が読み取れる場合には,過失犯として処罰することを認めている(最決昭57.4.2 刑法百選Ⅰ〔第6版〕49事件参照)。よって,本記述は正しい。参考山口(総)242頁。
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憲法独立行政委員会は委員の任命や予算編成の上で内閣のコントロール下にあるから憲法第65条に違反しないとする見解に対しては,裁判所も独立行政委員会と同様に位置付けることになってしまうという批判が可能である。憲法この問題の模試受験生正解率 65.8%結果正解解説独立行政委員会は委員の任命や予算編成の上で内閣のコントロール下にあるから憲法65条に違反しないとする見解は,行政権を行使する組織の全てが内閣の下にあることが要求されることを前提としている。しかし,この見解に対しては,任命権と予算権だけで内閣のコントロール下にあるとすれば,裁判所も独立行政委員会と同様に内閣のコントロール下にあると解することが可能となってしまうという批判がある。よって,本記述は正しい。参考芦部(憲法)334~335頁。
佐藤幸(日本国憲法論)529~530頁。
野中ほか(憲法Ⅱ)202~204頁。 -
民法判例の趣旨に照らすと,Aが自ら所有する建物をBに賃貸し,Bに対して引き渡した場合,BがAの承諾を得て,建物の屋上に増築部分を建築したときは,当該部分について外部へ出入りするためには,建物内のはしご段を使用するほかない等の事情があったとしても,Bが増築部分の所有権を取得する。民法この問題の模試受験生正解率 84.2%結果正解解説民法242条本文は,不動産の所有者は,その不動産に従として付合した物の所有権を取得するものとするが,同条ただし書は,その物が権原によって附属させられたものである場合には,付合した動産の所有権は,附属させた者に留保されるとしている。そして,判例は,本記述と同様の事例において,建物賃借人が賃貸人兼所有者の承諾を得て,建物の2階部分を増築した場合,外部から増築部分へ立ち入るには,建物内のはしご段を使用するほかないときは,増築部分はその構造の一部をなすものであり,それ自体では取引上の独立性を有しないので,建物の区分所有権の対象たる部分には当たらないから,当該増築部分について賃借人名義の所有権保存登記がされていたとしても,同条ただし書の適用はなく,増築部分の所有権は,賃貸人兼所有者に帰属するとしている(最判昭44.7.25 民法百選Ⅰ〔第8版〕73事件)。よって,本記述は誤りである。参考リーガルクエスト(物権)149~150頁。
論点体系判例民法(2)309頁,313頁。 -
刑法判例の立場に従って検討した場合,共同正犯者の一人について過剰防衛が成立する場合でも,他の共同正犯者について必ずしも過剰防衛が成立するとは限らない。刑法この問題の模試受験生正解率 51.1%結果正解解説判例は,「共同正犯が成立する場合における過剰防衛の成否は,共同正犯者の各人につきそれぞれその要件を満たすかどうかを検討して決するべきであって,共同正犯者の一人について過剰防衛が成立したとしても,その結果当然に他の共同正犯者についても過剰防衛が成立することになるものではない」としている(最決平4.6.5 刑法百選Ⅰ〔第8版〕90事件)。よって,本記述は正しい。参考山口(総)360頁。
大塚ほか(基本刑法Ⅰ)406~409頁。
条解刑法135~136頁。
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憲法憲法第30条について,「法律の定めるところにより」という文言を重視して考えると,憲法第30条は,憲法第84条に規定されている租税法律主義を国民の義務の面から確認したものと解することができる。憲法この問題の模試受験生正解率 84.7%結果正解解説憲法30条は,「法律の定めるところにより」と規定していることから,租税法律主義(同84条)を国民の義務の面から確認したものと解されている。よって,本記述は正しい。参考佐藤幸(日本国憲法論)191~192頁。
野中ほか(憲法Ⅰ)565頁。
新基本法コメ(憲法)252頁。 -
民法自筆証書遺言は,法定の法務局において保管することができる。民法この問題の模試受験生正解率 54.7%結果正解解説法務局における遺言書の保管等に関する法律(以下「遺言書保管法」という。)1条は,この法律は,法務局における自筆証書遺言の保管及び情報の管理に関し必要な事項を定めるとともに,その遺言書の取扱いに関し特別の定めをするものとするとしている。そして,同2条1項は,遺言書の保管に関する事務は,法務大臣の指定する法務局が,遺言書保管所としてつかさどるとしている。よって,本記述は正しい。
なお,遺言書保管法は,自筆証書遺言が,作成後に紛失したり,相続人等によって隠匿又は変造されるおそれがあること,また,相続人が自筆証書遺言書の存在を知らないままに遺産分割が終了し,後になってその存在を知ったことにより,遺産分割協議が無駄になること,及び,自筆証書遺言書の作成の真正等をめぐって深刻な紛争が生じること等を考慮して,平成30年民法改正に伴い制定され,令和2年7月10日に施行された。参考潮見(詳解相続法)428~429頁。
窪田(家族法)459~460頁。
リーガルクエスト(親族・相続)379頁。 -
刑法判例の立場に従って検討した場合,甲は,客を集めて有料でわいせつな映画を観覧させて利益を得る目的で,自宅付近の人通りの多い路上で,通行人に声をかけ,これに応じた5名の客に対し,外部との交通を厳重に遮断した自宅の一室において,わいせつな映画を観覧させて利益を得た。この場合,甲にわいせつ物公然陳列罪は成立しない。刑法この問題の模試受験生正解率 78.7%結果正解解説わいせつ物公然陳列罪(刑法175条1項前段)の「公然」とは,不特定又は多数の者が認識することができる状態をいう。判例は,わいせつな映画を上映した部屋が,外部との交通が遮断されていて,観客も5名程度に限られていても,その5名が不特定多数人を勧誘して集められた者であれば,結果としてわいせつな映画を不特定の者に観覧可能な状態にしたといえるとした原審の判断を是認している(最決昭33.9.5)。したがって,本記述において,甲にわいせつ物公然陳列罪が成立する。よって,本記述は誤りである。参考リーガルクエスト(刑法各論)384頁。
条解刑法510頁。
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憲法朝日訴訟判決(最高裁判所昭和42年5月24日大法廷判決,民集21巻5号1043頁)は,生活保護法第3条にいう「健康で文化的な生活水準」は,憲法第25条第1項に由来するものであるが,その具体的内容は,理論的には特定の国における特定の時点においては一応客観的に決定すべきものであり,またし得るものであるとした。憲法この問題の模試受験生正解率 53.0%結果正解解説本記述の最高裁判所判決(最大判昭42.5.24 朝日訴訟 憲法百選Ⅱ〔第7版〕131事件)は,生活保護法に基づき厚生大臣(現:厚生労働大臣)の設定する生活保護基準が同法の規定に違反して違法であるかが争われた事例において,原告(上告人)が上告中に死亡したことから,相続人による訴訟承継を否定し,訴訟終了を宣言したが,「なお,念のため」として,「憲法25条1項は,「すべて国民は,健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。」と規定している。この規定は,すべての国民が健康で文化的な最低限度の生活を営み得るように国政を運営すべきことを国の責務として宣言したにとどまり,直接個々の国民に対して具体的権利を賦与したものではない……。具体的権利としては,憲法の規定の趣旨を実現するために制定された生活保護法によって,はじめて与えられているというべきである。……右の権利は,厚生大臣が最低限度の生活水準を維持するにたりると認めて設定した保護基準による保護を受け得ることにあると解すべきである。もとより,厚生大臣の定める保護基準は,法(注:生活保護法)8条2項所定の事項を遵守したものであることを要し,結局には憲法の定める健康で文化的な最低限度の生活を維持するにたりるものでなければならない。しかし,健康で文化的な最低限度の生活なるものは,抽象的な相対的概念であり,その具体的内容は,文化の発達,国民経済の進展に伴って向上するのはもとより,多数の不確定的要素を綜合考量してはじめて決定できるものである」としている。よって,本記述は誤りである。
なお,同判決の第一審判決(東京地判昭35.10.19)は,生活保護法上の受給権と憲法25条の関係について,生活保護法は憲法25条を現実化・具体化し,生活保護法3条は保護請求権を付与したものであるとした上で,同条にいう「健康で文化的な生活水準」は,憲法25条1項に由来するものであるが,「健康で文化的な生活水準」の具体的な内容は,「決して固定的なものではなく通常は絶えず進展向上しつつあるものであると考えられるが,それが人間としての生活の最低限度という一線を有する以上理論的には特定の国における特定の時点においては一応客観的に決定すべきものであり,またしうるものである」としている。 -
民法判例の趣旨に照らすと,債権者は,根保証契約の保証人に対して,元本確定期日前に,保証債務の履行を請求することはできない。民法この問題の模試受験生正解率 16.8%結果正解解説根保証契約の元本確定前に,債権者が保証人に対して保証債務の履行を請求できるかについては,根保証の法的性質と関連して,争いがある。根保証の法的性質について,①期間中に生じる個々の被保証債権について個々の具体的保証債務が成立するとみる個別保証集積説からは,履行請求を肯定することに親和的であり,一方,②将来確定された時点で存在する債務を保証するものとみる根抵当類似説からは,履行請求を否定することに親和的であるとされる。判例は,「根保証契約を締結した当事者は,通常,主たる債務の範囲に含まれる個別の債務が発生すれば保証人がこれをその都度保証し,当該債務の弁済期が到来すれば,当該根保証契約に定める元本確定期日……前であっても,保証人に対してその保証債務の履行を求めることができるものとして契約を締結……しているものと解するのが合理的である」として,元本確定前の保証債務の履行請求を認めている(最判平24.12.14 民法百選Ⅱ〔第8版〕24事件)。よって,本記述は誤りである。参考内田Ⅲ451頁。
潮見(プラクティス債総)674~677頁。
中田(債総)611~612頁。 -
刑法判例の立場に従って検討した場合,賄賂罪の「賄賂」とは,公務員の職務行為と対価関係にある不正な報酬としての利益をいい,その利益には,人の需要・欲望を満たすに足りる一切の利益を含む。刑法この問題の模試受験生正解率 92.1%結果正解解説賄賂罪の「賄賂」とは,公務員の職務行為と対価関係にある不正な利益をいう。その利益には,有形・無形を問わず,人の需要・欲望を満たすに足りる一切の利益を含む(大判明43.12.19)。よって,本記述は正しい。参考山口(各)619~620頁。
西田(各)516頁。
大塚ほか(基本刑法Ⅱ)467~468頁。
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憲法最高裁判所の判例の趣旨に照らすと,筆記行為の自由は,様々な意見,知識,情報に接し,これを摂取することを補助するものとしてなされる限りにおいては,憲法第21条第1項の趣旨,目的から,いわばその派生原理として当然に導かれるといえるから,その制限又は禁止には,表現の自由に制約を加える場合に,一般に必要とされる厳格な基準が要求される。憲法この問題の模試受験生正解率 81.9%結果正解解説最大判平元.3.8(レペタ事件 憲法百選Ⅰ〔第7版〕72事件)は,「筆記行為は,一般的には人の生活活動の一つであり,生活のさまざまな場面において行われ,極めて広い範囲に及んでいるから,そのすべてが憲法の保障する自由に関係するものということはできないが,さまざまな意見,知識,情報に接し,これを摂取することを補助するものとしてなされる限り,筆記行為の自由は,憲法21条1項の規定の精神に照らして尊重されるべきであるといわなければならない」とした上で,「筆記行為の自由は,憲法21条1項の規定によって直接保障されている表現の自由そのものとは異なるものであるから,その制限又は禁止には,表現の自由に制約を加える場合に一般に必要とされる厳格な基準が要求されるものではない」としている。よって,本記述は誤りである。
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民法判例の趣旨に照らすと,善意の利得者が,利得に法律上の原因がないことを認識した後,利益が消滅した場合であっても,現存利益の範囲は,法律上の原因がないことを認識した時点において算定されるべきである。民法この問題の模試受験生正解率 57.9%結果正解解説利得者は,原則として,得た利益の全部を返還しなければならないが(民法704条),善意の利得者は,現存利益のみを返還すれば足りる(同703条)。そこで,善意の利得者が後に悪意に転じ,さらにその後に利益が消滅した場合,いつの時点で返還すべき利益を算定すべきかが問題となる。判例は,AがBと普通預金契約をしており,口座に入金がなかったにもかかわらず,Bが誤ってAに対して払戻しをし,その3時間後にBがAに対して返還請求をしたが,Aが本件払戻金を第三者に交付してしまったため,現存利益の有無が争われた事例において,「善意で不当利得をした者の返還義務の範囲が利益の存する限度に減縮されるのは,利得に法律上の原因があると信じて利益を失った者に不当利得がなかった場合以上の不利益を与えるべきでないとする趣旨に出たものであるから,利得者が利得に法律上の原因がないことを認識した後の利益の消滅は,返還義務の範囲を減少させる理由とはならない」として,当該事例では,AがBから返還請求を受け,払戻しに法律上の原因がないことを認識した時点での利益の存否を検討すべきであるとしている(最判平3.11.19 平3重判民法7事件)。よって,本記述は正しい。参考論点体系判例民法(7)474頁。
リーガルクエスト(事務管理・不当利得・不法行為)44~45頁。
平野(債各Ⅱ)35頁。 -
刑法判例の立場に従って検討した場合,新聞記者である甲による取材行為が国家公務員法上の守秘義務違反のそそのかし罪に該当したが,当該取材行為は,真に報道の目的から出たものであり,その手段・方法が法秩序全体の精神に照らし相当なものとして社会通念上是認されるものであった。この場合,甲の取材行為の違法性は阻却される。刑法この問題の模試受験生正解率 64.2%結果正解解説判例は,報道機関の取材行為に秘密漏示そそのかし罪(国家公務員法100条1項,109条12号,111条)が成立するかが問題となった事例において,「報道機関の国政に関する取材行為は,国家秘密の探知という点で公務員の守秘義務と対立拮抗するものであり,時としては誘導・唆誘的性質を伴うものであるから,報道機関が取材の目的で公務員に対し秘密を漏示するようにそそのかしたからといって,そのことだけで,直ちに当該行為の違法性が推定されるものと解するのは相当ではなく,報道機関が公務員に対し根気強く執拗に説得ないし要請を続けることは,それが真に報道の目的からでたものであり,その手段・方法が法秩序全体の精神に照らし相当なものとして社会観念上是認されるものである限りは,実質的に違法性を欠き正当な業務行為」であるとしている(最決昭53.5.31 外務省機密漏洩事件 刑法百選Ⅰ〔第8版〕18事件)。よって,本記述は正しい。参考山口(総)113頁。
西田(総)213頁。
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憲法公の支配に属しない事業への公金その他の公の財産の支出を禁止する憲法第89条後段の趣旨を,公費の濫用を防止することにあると解する立場は,「公の支配」の意義について,公の権力が当該事業の運営,存立に影響を及ぼすことにより,当該事業が公の利益に沿わない場合にはこれを是正し得る途が確保されていれば足りるという見解と結び付く。憲法この問題の模試受験生正解率 55.3%結果正解解説憲法89条後段は,公金その他の公の財産は「公の支配に属しない慈善,教育若しくは博愛の事業に対し,これを支出し,又はその利用に供してはならない。」と定めている。この規定の趣旨に関しては,大別して①私的事業に対して公金支出を行う場合には,財政民主主義の観点から,公費の濫用を来さないように当該事業を監督すべきことを要求するものであると解する立場(公費濫用防止説)と,②私的な事業への不当な公権力の支配が及ぶことを防止し,事業の自主性を確保するための規定と解する立場(自主性確保説)とがある。そのうち,①の立場は,公費が濫用されない程度に,事業についての監督が及んでいればよいと考えるから,「公の支配」に属するを,「国又は地方公共団体の一定の監督が及んでいることをもって足りる」というように,緩やかに解している。具体的には,業務や会計の状況に関し報告を徴したり,予算について必要な変更をすべき旨を勧告する程度の監督権を持っていれば足りるとする。よって,本記述は正しい。参考芦部(憲法)376~377頁。
佐藤幸(日本国憲法論)574~575頁。
野中ほか(憲法Ⅱ)343~347頁。 -
民法債務の履行について不確定期限が定められていた場合,債務者は,履行の請求を受ける前でも遅滞の責任を負うことがある。民法この問題の模試受験生正解率 62.1%結果正解解説民法412条2項は,債務の履行について不確定期限があるときは,債務者は,その期限の到来した後に履行の請求を受けた時又はその期限の到来したことを知った時のいずれか早い時から遅滞の責任を負うとしている。よって,本記述は正しい。参考内田Ⅲ59頁。
潮見(プラクティス債総)125頁。
中田(債総)119頁。 -
刑法判例の立場に従って検討した場合,甲は,所持金を全く有しておらず,代金を支払う意思がないのに,乙の営業する飲食店で料理を注文し食事をした後,隙を見て同店から立ち去ったが,これに気付いた乙に追跡されたので,携帯していた拳銃を発砲し,乙を殺害した。この場合,甲には詐欺罪と殺人罪が成立し,強盗殺人罪は成立しない。刑法この問題の模試受験生正解率 62.6%結果正解解説判例は,代金を支払う意思がないにもかかわらず,あるかのように装い,飲食店において注文をし,飲食物の提供を受けた行為について詐欺罪(刑法246条1項)が成立するとしている(最決昭30.7.7 刑法百選Ⅱ〔第8版〕53事件)。また,判例は,財物を窃取又は詐取した直後に被害者からの返還請求又は代金支払請求を免れるために,同人を殺害しようとしてこれを遂げなかった事例において,窃盗罪(同235条)又は詐欺罪と強盗殺人未遂罪(同243条,240条)のいわゆる包括一罪として重い後者の刑で処断すべきであるとしている(最決昭61.11.18 刑法百選Ⅱ〔第8版〕40事件)。したがって,本記述において,甲には1項詐欺罪と強盗殺人罪(同条後段)が成立し,重い後者の包括一罪となる。よって,本記述は誤りである。参考山口(各)225頁,258頁。
大塚ほか(基本刑法Ⅱ)182~183頁。
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解答
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憲法思想の表明としての外部的行為によって現実的・具体的な害悪が生じたとしても,当該行為が思想内容の表明であることを理由として,当該行為を規制することは許されない。憲法この問題の模試受験生正解率 38.1%結果正解解説特定の「思想」を有すること,又は有しないことを理由として刑罰その他の不利益を加えることは,憲法19条によって禁じられる。例えば,思想内容の表明としての外部的行為が現実的・具体的な害悪を生ぜしめた場合,思想内容とかかわりない現実的・具体的な害悪の発生を理由に当該行為を規制することは,許される。しかし,思想内容の表明であるということを理由として当該行為を規制することは,許されない。よって,本記述は正しい。参考野中ほか(憲法Ⅰ)312頁。
注解憲法Ⅰ381頁。 -
民法判例の趣旨に照らすと,妻が婚姻中に懐胎した子について,夫と子との間に生物学上の父子関係が認められないことが科学的証拠により明らかである場合,夫は,親子関係不存在確認の訴えをもって父子関係の存在を争うことができる。民法この問題の模試受験生正解率 54.2%結果正解解説妻が婚姻中に懐胎した子は,夫の子と推定され(嫡出推定 民法772条1項),同条の推定を受ける子について父子関係の存否を争うには,夫が子の出生を知った時から1年以内に嫡出否認の訴えを提起することとされており(同774条,775条,777条),これと異なる方法により父子関係の存否を争う訴えは基本的に不適法とされる。もっとも,判例は,同772条2項の推定要件を満たしていても,妻がその子を懐胎すべき時期に既に夫婦が事実上の離婚をして夫婦の実態が失われ,又は遠隔地に居住して,夫婦間に性的関係を持つ機会がなかったことが明らかであるなどの事情が存在する場合には,その子には実質的に同条の推定が及ばないとして,親子関係不存在確認の訴えなどにより父子関係の存否を争うことができる場合を認めている(最判平12.3.14 平12重判民法11事件など)。そこで,妻が婚姻中に懐胎した子ではあるが,夫と子との間に生物学上の父子関係が認められないことが科学的証拠により明らかである場合,実質的に同条の推定が及ばない場合に当たるのかが問題となる。判例は,「夫と子との間に生物学上の父子関係が認められないことが科学的証拠により明らかであり,かつ,子が,現時点において夫の下で監護されておらず,妻及び生物学上の父の下で順調に成長しているという事情があっても,子の身分関係の法的安定を保持する必要が当然になくなるものではないから,上記の事情が存在するからといって,同条による嫡出の推定が及ばなくなるものとはいえ」ないとした上で,前掲最判平12.3.14が判示した嫡出推定が及ばないと認められる事情の存否を検討して,本件ではそのような事情は認められないとして,親子関係不存在確認の訴えを却下している(最判平26.7.17 民法百選Ⅲ〔第2版〕28事件)。このように,判例は,夫婦の長期間の別居等で妻が夫の子を懐胎し得ないことが外観上明白な場合に嫡出推定が排除されるという外観説に立つものと考えられている。よって,本記述は誤りである。参考リーガルクエスト(親族・相続)128~129頁。
窪田(家族法)196~200頁。
平26最高裁解説(民事)282~285頁。 -
刑法判例の立場に従って検討した場合,注意義務に違反して人を負傷させた場合,相手方に重大な過失があれば,過失の責任を免れることができる。刑法この問題の模試受験生正解率 80.5%結果正解解説刑法においては,過失相殺は適用されない(大判大11.5.11)。また,注意義務違反によって人を負傷させた以上,相手方に重過失があっても,行為者は過失の責任を免れることができない(最決昭33.4.18 交通事故百選〔初版〕88事件)。相手方にも重過失があったということは行為の際の具体的事情として,行為者の過失の有無を判断するための一資料となるにすぎない。よって,本記述は誤りである。参考大谷(講義総)194頁。
団藤(総)344頁。
大コメ(刑法・第3版)(3)107~108頁。
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憲法最高裁判所の判例の趣旨に照らすと,公職選挙法が,衆議院議員選挙における小選挙区選挙につき候補者届出政党にのみ政見放送を認め,候補者を含むそれ以外の者には政見放送を認めないとしたことは,候補者届出政党に所属する候補者とこれに所属しない候補者との間に,質量ともに大きな差異を設けたというべきであり,政見放送の持つ影響力の大きさなどを考慮すると,この差異は,合理性を有するとは到底いえない程度に達していると認めざるを得ない。憲法この問題の模試受験生正解率 83.7%結果正解解説判例は,公職選挙法に,平成6年に導入された小選挙区比例代表並立制の合憲性が争われた事例において,同法が「小選挙区選挙については候補者届出政党にのみ政見放送を認め候補者を含むそれ以外の者には政見放送を認めないものとしたことは,政見放送という手段に限ってみれば,候補者届出政党に所属する候補者とこれに所属しない候補者との間に単なる程度の違いを超える差異を設ける結果となるものである。……このような差異が設けられた理由は,小選挙区制の導入により選挙区が狭くなったこと,従前よりも多数の立候補が予測され,これら多数の候補者に政見放送の機会を均等に提供することが困難になったこと,候補者届出政党は選挙運動の対象区域が広くラジオ放送,テレビジョン放送の利用が不可欠であることなどにあるとされているが,ラジオ放送又はテレビジョン放送による政見放送の影響の大きさを考慮すると,これらの理由をもってはいまだ右のような大きな差異を設けるに十分な合理的理由といい得るかに疑問を差し挟む余地があるといわざるを得ない。しかしながら,右の理由にも全く根拠がないものではないし,政見放送は選挙運動の一部を成すにすぎず,その余の選挙運動については候補者届出政党に所属しない候補者も十分に行うことができるのであって,その政見等を選挙人に訴えるのに不十分とはいえないことに照らせば,政見放送が認められないことの一事をもって,選挙運動に関する規定における候補者間の差異が合理性を有するとは到底考えられない程度に達しているとまでは断定し難いところであって,これをもって国会の合理的裁量の限界を超えているということはできない」としている(最大判平11.11.10 憲法百選Ⅱ〔第7版〕152②事件)。よって,本記述は誤りである。
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民法判例の趣旨に照らすと,使用者責任が成立するためには,他人を使用する関係の存在が必要であるが,この関係は,非営利的なものでもよく,また,一時的なものであってもよい。民法この問題の模試受験生正解率 86.3%結果正解解説民法715条1項本文は,ある事業のために他人を使用する者は,被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負うとしている。そして,同項本文にいう事業とは,広い概念であり,一時的か継続的か,営利か非営利か,及び,適法か不適法かを問わないものと解されている。よって,本記述は正しい。参考潮見(基本講義・債各Ⅱ)145頁。
論点体系判例民法(9)410頁。
リーガルクエスト(事務管理・不当利得・不法行為)266~267頁。 -
刑法判例の立場に従って検討した場合,甲は,乙の両足をロープで縛り,5分間にわたり引きずり回した。この場合,甲の行為は継続して乙の場所的移動の自由を奪ったといえるから,甲に逮捕罪が成立する。
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憲法憲法第14条第2項は,貴族制度を禁止しているが,これは,大日本帝国憲法下において存在した華族をはじめとする貴族制度を廃止するとともに,将来にわたって類似の制度が復活することのないように,改めてその廃止を明文で述べたものである。憲法この問題の模試受験生正解率 94.7%結果正解解説憲法14条2項は,「華族その他の貴族の制度は,これを認めない。」と規定して,華族をはじめとする貴族制度を禁止している。貴族は一般に世襲の特権階級をいうため,貴族制度を設けることは,同条1項後段列挙事由の「門地」による差別として禁止されるが,同条2項は,大日本帝国憲法下において存在した華族をはじめとする貴族制度を廃止するとともに,将来にわたって類似の制度が復活することのないように,改めてその廃止を明文で述べたものである。もっとも,今日の皇族については,皇室典範により定められた地位として,同項の例外とされる。よって,本記述は正しい。参考芦部(憲法)131頁,140頁。
佐藤幸(日本国憲法論)232頁。
野中ほか(憲法Ⅰ)300頁。
新・コンメ憲法167頁。 -
民法質権の設定における目的である物の引渡しは,占有改定によることができる。民法この問題の模試受験生正解率 61.1%結果正解解説民法344条は,質権の設定の効力は,債権者に目的物を引き渡すことにより生ずるとしており,当事者が質権設定契約をするだけでは効力を生じない。そして,同345条は,質権設定者による目的物の代理占有を禁止していることから,占有改定(同183条)は,同344条の「引き渡す」には当たらない。よって,本記述は誤りである。参考道垣内Ⅲ85~86頁。
内田Ⅲ590頁。
我妻・有泉コメ557頁。 -
刑法判例の立場に従って検討した場合,有価証券虚偽記入罪の「虚偽の記入」とは,有価証券に真実に反する記載をする全ての行為をいう。刑法この問題の模試受験生正解率 54.7%結果正解解説判例は,「刑法162条2項にいわゆる「虚偽ノ記入」(現:「虚偽の記入」)とは,既成の有価証券に対すると否とを問わず……,有価証券に真実に反する記載をするすべての行為を指すものであって,手形にあっては基本的な振出行為を除いたいわゆる附属的手形行為の偽造等をいうものと解するを相当とする」としている(最決昭32.1.17 刑法百選〔新版〕80事件)。よって,本記述は正しい。参考山口(各)482~483頁。
大塚ほか(基本刑法Ⅱ)444頁。
条解刑法470頁。
科目名
科目名
解答日・解答結果
設問
設問・解答
解答
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憲法内閣総理大臣は,国会議員,すなわち衆議院議員又は参議院議員であることが求められるが,参議院は衆議院と異なり,内閣との間に解散などの制度がなく,内閣は国会に対して連帯責任を負うとされていることなどからすれば,内閣総理大臣は衆議院議員でなければならないと解することとなる。憲法この問題の模試受験生正解率 72.5%結果正解解説内閣総理大臣は,国会議員,すなわち衆議院議員又は参議院議員の中から指名される(憲法67条1項前段)。文言上は衆参両議院のどちらの議員から指名してもよいとされている規定ぶりになっているが,内閣総理大臣は衆議院議員の中から指名されるべきであるとする見解がある。この見解は,参議院は衆議院と異なり,内閣との間には,解散などの制度がないことを根拠とする。他方,参議院議員が内閣総理大臣になることは排除されていないとする見解は,参議院議員も国民から直接選挙されており,また内閣は国会に対して連帯責任を負う(同66条3項)とされていることなどを根拠とする。したがって,内閣は国会に対して連帯責任を負うということを根拠とするのは,内閣総理大臣は衆議院議員でなければならないとする見解の根拠ではない。よって,本記述は誤りである。参考野中ほか(憲法Ⅱ)179~181頁。
渡辺ほか(憲法Ⅱ)292頁。
新・コンメ憲法576~577頁。 -
民法判例の趣旨に照らすと,抵当不動産の賃借人を所有者と同視することを相当とする場合を除き,抵当権者は,抵当不動産の賃借人が取得すべき転貸賃料債権に対して物上代位権を行使することができない。民法この問題の模試受験生正解率 87.0%結果正解解説判例は,「民法372条によって抵当権に準用される同法304条1項に規定する「債務者」には,原則として,抵当不動産の賃借人(転貸人)は含まれない」としている(最決平12.4.14 平12重判民法2事件)。その理由として,同決定は,「所有者は被担保債権の履行について抵当不動産をもって物的責任を負担するものであるのに対し,抵当不動産の賃借人は,このような責任を負担するものではなく,自己に属する債権を被担保債権の弁済に供されるべき立場にはない」ことなどを挙げている。もっとも,同決定は,「所有者の取得すべき賃料を減少させ,又は抵当権の行使を妨げるために,法人格を濫用し,又は賃貸借を仮装した上で,転貸借関係を作出したものであるなど,抵当不動産の賃借人を所有者と同視することを相当とする場合には,その賃借人が取得すべき転貸賃料債権に対して抵当権に基づく物上代位権を行使することを許すべき」としている。したがって,抵当権者は,抵当不動産の賃借人を所有者と同視することを相当とする場合を除き,当該賃借人が取得すべき転貸賃料債権を目的債権として物上代位権を行使することができない。よって,本記述は正しい。参考道垣内Ⅲ152頁。
内田Ⅲ503~504頁。 -