判例の立場に従って検討した場合、甲は、Vの頭部を多数回殴打した結果、恐怖心による心理的圧迫によりVの血圧を上昇させ、Vに脳出血を発生させてVを意識消失状態に陥らせた。甲は、意識を消失したままのVを建材会社の資材置場まで自動車で運搬し、同所に放置して立ち去ったところ、Vは、甲とは無関係な何者かから角材で頭頂部を殴打され、死亡するに至ったが、Vの死因は甲の殴打行為により形成された脳出血であり、資材置場で受けた殴打行為は、既に発生していた脳出血を拡大させ、幾分か死期を早める影響を与えるものであった。この場合、甲の上記殴打行為とVの死亡の結果との間には、因果関係はない。